春は、こうはく。やうやう厚くなりゆく、面の皮少し剥がして、紫だちたる中のゆるくうごめきたる。
夏は、黒。かびるころはさらなり、餡もなほ、蝿の多く飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち潰して行くも、をかし。雨などに晒すも、をかし。
秋は、ぱちぇりー。五寸釘のさして、命の終わりいと近うなりたるに、仲間の寝どころへ行くとて、
三つ四つ、二つ三つなど、跳び急ぐさへあはれなり。まいて、涎などのつらねたるが、いと艶かしく見ゆるは、いとをかし。
巣に入り果てて、咳の音、赤子の音(ね)など、はた言ふべきにあらず。
冬は、れみりゃ。雪の降りたる中放置するは言ふべきにもあらず。仕草のいとうざきも、またさらでも、
いと寒がり、火など急ぎおこして、炭持て押し付けるも、いとつきづきし。
昼になりて、日の差すところへもていけば、ゆるりと白き灰になりて、わろし。
最終更新:2008年09月14日 09:23