ミスティア×ゆっくり系2 ゆっくりいじめ鰻篇 後編

「ゆ゙っ!」
 体内に八目鰻を飼う団子三姉妹のうち、三女が叫び声を詰まらせ白目をむいた。
「ゆ゙げえええええええええ」
 胃酸と残飯と鰻がごちゃまぜになったものを口から絞り出すように吐き出すゆっくりれいむ。
鰻が消化器官を出ても、体内を杭でかき回されるという想像を絶する不快感は止まらない。
「ゆ゙えええ、ゆ゙ええええ、ぐる゙、じい、よ゙おおおお」
 もう消化器官ごと口から出てくるのではないかという勢いで胃酸を吐き出し続ける。
息を吸う暇もない激しい嘔吐。
 熱せられた大地に吐き出された吐瀉物はたちまち臭い立ち、まずはゆっくりパチュリーに伝染した。
「む゙ふっ!」
 勢いよく吐き出すという風情のゆっくりれいむと異なり、
ゆっくりパチュリーの吐瀉物は口から垂れ流されたといった態で吐き出されていく。
 そしてそれはすぐ真下にいるゆっくりれいむの顔にだらりと下がり、最悪のみたらし団子ができあがった。
「ゔわあああ!ぎもぢわるいよ!ぎもぢわるいよ!」
「む゙ふっ!む゙ふっ!ごめ゙んなざいいいい!」
 全身を使って脈動しながら吐瀉物をまき散らす二匹の上で無事にいられるはずはなく、
すぐにゆっくりまりさも地面へと戻す。
 残ったのはぜはあ、ぜはあと激しくゆっくりする串団子だった。
 そのとき。
 地面の上で太陽に焼かれのたくりまわる八目鰻が、涼しそうな穴を見つけた。
それは日陰で、波に揺れるように動いていて、そして鰻が好きそうな穴倉に見えた。
 八目鰻はわれ先にと飛び込む――ゆっくりれいむの口へ。
「ゆ゙っ!」
 そして喉の奥に見えるより小さい穴へと鰻が競争しながら潜っていく。
「ゆ゙ゎああああああああ」
「れ゙いむ゙ううううううううう」
 必死に舌で追い出そうとするゆっくりれいむ。しかし反応が遅すぎた。胃が拒絶反応を起こし、
激しく脈動して鰻を追い出そうとする。そのたびに食道を鰻が行ったり来たりする。
 ゆっくりパチュリーとゆっくりまりさは、仲良しだったゆっくりれいむに何が起こっているか知っている。
 自分たちもさっきまで体内に鰻を飼っていたのだ、その苦しみは誰よりもよく分かっている。
 でもどうすることもできない。
「ゆ゙ふっ!」
 一際大きくせき込んだゆっくりれいむがわずかな胃酸とともに吐き出したものは、餡子だった。
 ひゅー、ひゅー、と音を立てるゆっくりれいむ。呼吸のリズムと関係なく起こる吐瀉の衝動で呼吸は完全に乱れていた。
「む゙ぎうううううううう」
「れ゙いむ゙ううううううううう、ゔわ゙ああああああん!ゆ゙っぐりじだいよおおおおおおお」
 自分とはほとんど離れていない位置に家族のような親友がいて、確実に死に向かっている。
 しかしゆっくりまりさとゆっくりパチュリーにできることは何もなかった。
 日光がじりじりと三匹を焼いていく。

             *       *       *

 太陽が傾いてきたことを教えたのは、皮肉にも自分たちを貫く影だった。
 ゆっくり日時計といえばゆっくりに怒り心頭の農民たちも喜ぶかもしれない。
だがその農民すら来る気配はない。妖怪の小路であるこの地に通りかかる者は全くいなかった。
「ぐずっ、ぐずっ・・・れ゙いむ゙ううううう」
「むきゅー・・・むきゅうううう」
 オーケストラのように様々な音を発し続けたゆっくりれいむが何も音を発さなくなって、
しばらく経とうとしていた。
 口には出さないが、二匹はゆっくりれいむの魂が天へと向かったことを悟りつつあった。
 涙、鼻汁、汗を垂れ流し続け、胃の中のものも口の中のものもすべて吐き出しつくし、
それでも叫び続けて日光に焼かれ続けて・・・ゆっくり饅頭たちの表面はほんの数時間前までしっとりとした餅であったことは
想像もできないような状態になりつつあった。
「のどかわいた・・・」
「む・・・きゅー・・・ぴー・・・」
 ゆっくりれいむと直に接している、それどころか杭を激しく打ちこまれたためゆっくりれいむにめりこんですらいる
ゆっくりパチュリーはゆっくりれいむの体から絶対的な死のイメージを感じ取っていた。
「むり・・・むきゅー」
 絶望の台詞が遂にゆっくりパチュリーの口から吐かれた。
 しかしそれが逆にゆっくりまりさの消えかかっていた心の焔に再び明るさをもたらした。
「むりなんかじゃないよ!」
「むきゅー」
「ゆっくり・・・おうちかえる!」
 そういうとゆっくりまりさは、身動きすると全身を鈍痛と吐気が襲うことを知っていながら、大きく伸びあがった。
元々地面を跳ねて移動するゆっくり種のこと、伸びあがるのは得意だった。
 頭を杭が強く押さえつける。くじけそうになった。でも絶対にここからゆっくりパチュリーを連れて帰る。
 その一心でゆっくりまりさは杭を押し上げた。
「む゙きゅうううう」
「ゆ゙っぐりがまんしでね!!」
 ぐい、ぐい、とほんの数ミリずつだが杭が地面を抜けていく。
三匹の体液と吐瀉物が地面を柔らかくし、地面と接したゆっくりれいむが苦しみでのたうちまわるたび地面をほぐしていたのだ。
 ゆっくりまりさだって辛い。苦しい。でもここで焼き団子になって死ぬのはもっと嫌だ。
 森の静かな洞に帰りたい。平和だったあの頃に、帰って・・・でも・・・れいむはもう戻ってこない。


「ゆ゙っ・・・ゔわあああああああああああああああああああああ!!」


 からからに乾ききった喉で最後の叫びをあげるゆっくりまりさ。喉がはがれ、ぽろぽろと胃に餡子が落ちてくる。
「むっ!むきゅー!」
「ばぢゅりー?」
 ゆっくりまりさの心に灯った希望の焔は、ゆっくりパチュリーに確実に勇気を与えていた。
早死にする運命を受け入れ半ば諦めていたパチュリーに、生きたいという大きな力をもたらしたのだ。
「ゆっ!」
「むっ!」
『くりゃあああああ!』
 ぐいっ、と杭が押し上げられる。
 体内を杭の表面がこすり、耐えがたいほどの嘔吐感が襲っても、二匹は怖くなかった。
 そして数度目かのジャンプのとき、すっ・・・と杭が動いたのだ。
 杭が地面から抜けたのなら、このまま片方に体重を預ければ串団子は串ごと倒れる!
そう考えたゆっくりパチュリーはそう伝えると、すぐに行動に移した。希望への大いなる一歩を踏み出そうとした。

             *       *       *

 串は動かなかった。
 絶望は体内をしっかりと貫き、そして大地にしっかりと根付いていた。
「どうじで・・・」
 もう枯れたと思っていた涙がゆっくりまりさの目からこぼれる。
 杭は、最初に打たれたとき、満腹で膨れた三匹を貫いて地面に少し刺さったのだ。
 つまりこの杭は満腹の三匹を縦に積んだ高さよりも高い。
 水分を失い、養分を失い、一匹は命も失った今、一回り小さくなったゆっくり饅頭たちを貫いても杭にはまだまだ余力があったのだ。
「ゔわあああああああああああああああああああああ!!」
「むぎゃああああああああああああああああああ」
 もう何度目か分からない、絶望の叫び。

 ゆっくり日時計はまた動いていた。
 放心した二匹は言葉を交わすことすらなく、これまでの人生を思い返していた。

 そのとき、奇跡が起きた。
 ぽつり、地面に黒い点ができる。
 そして次の瞬間には地面は次々と黒くなっていった。雨が降り始めたのだ。
 乾いた二匹には恵みの雨・・・となるはずだった。

「な゙んで!な゙んでえええええ!!」
 ゆっくりまりさの山高帽は絶妙な雨避けとなっていた。
 目線の数センチ先には、あんなにも欲しかった水がたっぷりとあるのに。それは自分には触れずに逃げていく。
「!! !!!」
 乾ききったゆっくりまりさはもはや声を発することはできなくなっていた。
 目の前が真っ暗になりかけたその瞬間、ゆっくりまりさは顎に湿気を感じた。
「むきゅー」
 ゆっくりパチュリーが、ゆっくり霊夢が浸透圧で吸い上げた水分をゆっくりまりさに与えていた。
「むきゅー」
「ゆ・・・ゆっくりしていってね!」
「むきゅー!」
 わずか、ほんのわずかずつ、二匹は潤いを取り戻していく。
死の淵にいたゆっくりパチュリーがゆっくりまりさに最後の力を与えた。
「ゆ゙っ!」
「む?」
「ゆ゙っ!」
 さっきまで大きく上に伸びあがっていた体を、大きく前に突き出すゆっくりまりさ。
上下運動の時は杭に体内をくすぐられるだけだったが、この前後動はゆっくりまりさの体を切り裂いていく。
「むきゅ!?むきゅうう!!」
「ゆっくりしててね!すぐたすけるからね!」
 ゆっくりまりさは、杭から強引に自分の体を切り離そうとしていた。
 そんなことをすれば体は半分引き裂かれる。この雨だ、ものの数分で自分の体からは致死量の餡子が流れ出るだろう。
 しかしそれまでの間に最後の力を振りしぼれば、杭を引き抜くことができるはず。
 杭が皮膚を切り裂くたびに気の遠くなるような激痛が全身を貫くが、ゆっくりまりさは動きを止めなかった。

 ・・・そしてその決死の賭けは実を結んだ。

             *       *       *

「むきゅー!むきゅー!」
 遂に自由を手に入れたが、失ったものはあまりに大きかった。
 ゆっくりれいむは絶命し、ゆっくりまりさは自分の前で今まさに死に至ろうとしている。
「ゆ・・・これでゆっくりできるね・・・」
 そういうとゆっくりまりさはにやりと笑う。
「むっ・・・きゅ・・・ぷはっ・・・」
 平和だったとき何度もそうしたように、ゆっくりパチュリーはゆっくりまりさと唾液を交換する。
「ゆっ・・・パチュリー!だいすきだよ・・・!」
「むきゅああああ」
「ゆっくりしていってね!」
 そしてゆっくりまりさは絶命した。
 その顔は喜びで満ち溢れていた。

             *       *       *

「うっ・・・むっ・・・」
 涙でかおをぐちゃぐちゃにしながら、体を引きずるようにしてゆっくりパチュリーは巣へと向かっていた。
 もう自分の横には誰もいない。でも彼女の頭にはゆっくりまりさの山高帽が載っていた。
そしてその下にはゆっくりれいむのリボンがあった。
 杭で貫かれた穴から少しずつ餡子がこぼれているが、それを気にする余裕はもはやなかった。
とにかく生命の地へ戻ること、それだけが彼女のすべてだった。

 そのとき、妖怪の小路に日傘をさした一人の少女が駆け込んできた。
 軽やかに駆けるその少女は、ひまわり畑とその横の机に置いてきた読みかけの本のことを考えていた。足元は見ていない。
 たっ、たっ、たっ・・・美しくウェーブした髪を弾ませながら幽香はたちまちゆっくりパチュリーに追いつき・・・

 ぐちゃっ

 ゆっくりパチュリーは絶命した。
 誰にも意識されず、誰にも見守られず、餡子の塊に姿を変えた。

「あっ」
 幽香が言う。
 そして、
「やだ、靴が汚れちゃった・・・」

 人間が蟻を踏んでも気にしないように、強大な妖怪はゆっくりまりさ(のように彼女には見えた)を踏んだところで意に介さないのだ。

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最終更新:2008年09月14日 10:38
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