天気は晴れ。煌々と太陽の光が照りつける。
セミがジリジリと鳴き、遠くに陽炎が立っている様はまさしく真夏。
暑い。とにかく暑い。
美鈴は門の前で暑さのあまりへばりついていた。
「ふぁー…あつー…」
某格ゲーキャラみたいにスク水になったら涼しいかな…でもそれってかなりアイデンティティの崩壊じゃ…
そんなことを虚ろながら考えていたとき、ふと遠くに
ゆっくりが見えた。
いつか見た自分そっくりのゆっくりめいりん、略してゆめいりんと、その他のゆっくり。
その他は主にまりさ。れいむも何匹かいるようだ。
ゆめいりんに他のゆっくりたちが体当たりしている。
季節的に押し競饅頭してるようには見えないし、遊んでいるようにも見えない。
耳を澄ますと、こんな会話が聞こえる。
「ほらほら!ゴミクズはいいこえでないてね!!!」
「くずはしょせんくずなんだよ!!!」
「なけ!さけべ!そしてゆっくりしね!!!」
どうやら虐められているようだ。
自分そっくりのゆっくり(当然私には似ていないだろという確固たる自信の気持ちはあるがね)が
虐められているとなんだか自分が虐められているようで面白くない。
「こら!そこの饅頭ども!何してんの!」
「ゆ?」
不本意ではあるがどうせ暇だし止めてやることにした。
「このゆっくりめーりんはゴミクズだからいじめてるんだよ!!!」
「ぜんぜんしゃべんないゆっくりはゆっくりできないゆっくりだからころさなきゃね!!!」
「ゆっくりできなさそうなおねーさんはどっかいってね!!!」
相変わらず腹の立つ声だ。
どうせ私が何か言っても聞く耳(耳なんて無いけど)持たないだろう。
そういうのは鬼意山のごとく潰しにかかるに限る。
しかし自分に虐待趣味は無いのでシンプルに潰そう。
「俺のこの手が光って唸る!お前を潰せと輝き叫ぶ!食らえ!
憎しみと八つ当たりと怒りの、シャ~イニング…フィィンガァァソードォ!」
作者はあんまりガンダムとか知らないのよね。
美鈴の手が光ったかと思うと、まりさのとなりにいたれいむが真っ二つになり、木にぶつかり砕け散った。
「ゆぶぇっ!!」
れいむは訳も分からず一瞬であの世逝きになった。
そんなれいむを見て他のゆっくりが無反応のはずがない。
「どうしてそんなことするのおおおおおおおお!!!!!?」
「そんなことするおねーさんはゆっくりしね!!!」
濁点めんどっちい。
ゆっくりごときが人間はおろか、妖怪である美鈴に勝てるはずがない。
美鈴はゆっくりに向かって手をひねり引っ掻くように動かす。
するとゆっくりは三分割され、その場に倒れ伏した。
断末魔を吐く余裕すらなかった。さすがは南斗聖拳の一派。
さすがに勝てないと思ったまりさたちは、
「いじめるならそのゴミクズをいじめてね!まりさはにげるよ!!!」
と憎まれ口を叩きながらすごい勢いで逃げていった。
追いかけて切り裂いてもいいが、季節が季節だけに面倒くさい。五月病だね!
足元にいるゆめいりんはあちこちが凹んでいる。どうやら皮が厚いだけあって命に別状はないようだ。
しかし目からは涙が流れている。
虐められていたから泣いているのか、美鈴が怖いから泣いているのかは知ったことではない。
「あーもう、泣かないの、ただでさえ不細工な顔が更に酷くなるじゃない」
美鈴は気を送り込んでゆめいりんの凹みを直してやる。
「でも最近のゆめいりんは喋らないのね…まぁ静かだからいいか」
凹みが無くなったゆめいりんを美鈴は地面に降ろす。
「さ、さっさと行きなさい、虐められたときはちゃんと抵抗しなくちゃ」
美鈴は行くように言うが、ゆめいりんは名残惜しそうな目で見ている。
あんまりゆっくりに構ってるとまた起こられそうだし。
「行きなさいってば、早くいかないと…蹴り殺すぞ」
ちょっと気迫を出した美鈴を見てゆめいりんはぴょんぴょん跳ねて向こうに消えた。
「全く世話の焼けrげぶがぁっ!?」
急に痛みがやって来たと思ったらまた頭にナイフが刺さっていた。
「こ、このナイフはッ!いないはずの!買出しに行って今はいないはずのッ!」
美鈴が後ろを振り向くと、後ろに完全で瀟洒なメイドがいた。
「十六夜咲夜ッ」
「Yes I am!チッ♪チッ♪美鈴、後で私の部屋に来なさい」
「ヒイイイイイーッ」
美鈴には悪い予感しかしなかった。