でびりゃまん (その1)
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≪はじめに≫
デビルマン→でびりゃまん
……ええ、強引なのは承知していますとも。
れみりゃの昨今の捕食者ブレイクっぷりに、思わず書いてしまいました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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月明かりが照らす森に、"ゆっくりしていってね"という声がこだまする。
本来、夜は捕食種達の時間であり、他の
ゆっくり達は巣で眠るのが普通だった。
だが、ここ最近は少しばかり様子が違う。
夜にもかかわらず、れいむ種やまりさ種といった、
本来寝ているはずのゆっくり達が、のうのうと出歩いていた。
それには理由があった。
"捕食種れみりゃの弱体化"である。
本来、れみりゃは捕食者であり、ゆっくり達の食物連鎖の中では上位に立つ存在のはずだった。
だが、近頃はゆっくり達も学習を重ね、れみりゃからの逃げ方・いなし方を熟知しだしていた。
そして、中には逃げるだけでなく、戦い方を覚え始めるゆっくりさえいた。
集団で戦えばじゅうぶん勝機があることを、ゆっくり達は学んだのだ。
もちろん危険は伴うが、もし勝つことができれば、れみりゃは"いつでも好きなだけ食べられる肉まん"となる。
もはや、ゆっくり達にとってれみりゃは、絶対的な脅威でも捕食者でも何でもない。
単に少しだけ大きくて強い、取るのが大変なエサ……くらいの相手として認識しだしていた。
また、れみりゃ種の天敵である"ゆっくりフラン"や、
れみりゃ種単体では歯が立たない"ドスまりさ"が増えていることも、
れみりゃ達の肩身をせまくしていた。
れみりゃの捕食種としてのカリスマは、完全にブレイクしたといっても過言ではなかった。
しかし、当然それに納得できないもの達がいた。
ことの当事者・れみりゃ達だ。
「うー! なっとぐいかないどぉー!」
「そうだどぉー! だんここうぎするどぉー!」
満月の下、森の奥深くに広がる、円形の広場。
そこに、そろいもそろったり、50匹以上のれみりゃ達が大集合していた。
ゆっくりの中でも一際学習能力が低く、
甘えん坊でワガママで泣き虫なれみりゃ種ではあったが、
近頃の居心地の悪さは、さすがに認識しだしていた。
だからこそ、近隣から遠方に至るまで、こうして多くのれみりゃ達が一同に会し、
"第1回☆れみりゃサミット"を開くことになったのだ。
「うーっ! そこでぇー、れみりゃは良いことをかんがえたどぉー!」
切り株の上、他のれみりゃ達より高い位置に立ったれみりゃが、他のれみりゃに呼びかける。
「これをみるどぉー!」
「「「うーー?」」」
壇上のれみりゃが、一冊の古ぼけたノートを取り出し、両手で天高く掲げた。
そのノートの表紙には"よげんのしょ"と平仮名で書かれていた。
「これはぁー! よげんのしょだどぉー!」
「「「うーー?」」」
首をひねる50匹近いれみりゃ達。
「ここにはぁー! これから、れみりゃ達がゆっくりするための方法がかいてあるんだどぉー!」
「「「うーーー♪」」」
壇上のれみりゃの言葉を聞いて、他のれみりゃ達の顔がいっせいに輝く。
信憑性や方法は二の次、とりあえず"ゆっくりできる"という魅力に負け、
あっさり"よげんのしょ"の存在を信じこむ、れみりゃ達。
壇上のれみりゃも自分の主張が認められて、嬉しそうにニコニコしている。
余談だが、このれみりゃ、元は飼いゆっくりであったため、簡単な平仮名くらいは何とか読めるらしい。
「よぉーし! さっそくじっこうに移すどぉーー!」
「「「うーー♪」」」
意気揚々。
壇上のれみりゃが"よげんのしょ"を持ってドタドタ走り出す。
それに続いて、50匹のれみりゃ達もまた、両手を上げて「うー♪」と叫びながら走っていく。
深夜の森で繰り広げられるそれは、さながら百鬼夜行……ならぬ、れみりゃ夜行であった。
* * *
「「「う~う~うぁぁ~! う~う~うぁぁ~!」」」
40匹近いれみりゃ種が輪になって、うぁうぁステップを踏みながら行進をしている。
だが、その「うぁうぁ」はいつもの気色円満ではなく、どこか怪しい響きを伴っていた。
そのれみりゃ達の輪の中央。
そこには平たい岩があり、その上には妊娠して、いつもの倍近く顔を下膨れさせたれみりゃがいた。
「うーうー♪ れみりゃはがんばってげんきな赤ちゃんうむどぉ♪ きっとかぁいい良い子どぉ♪」
嬉しそうな妊娠れみりゃ。
「う~~~♪ れみりゃとフランの赤ちゃ~ん、ゆっぐりうまれでねぇ~~~ん♪」
そう、このれみりゃを妊娠させたのは、
本来れみりゃ種の天敵であるはずのゆっくりフランだった。
しかも、自然な妊娠ではない。
"よげんのしょ"に従い、れみりゃ種達が人為的に行った交配だった。
あのサミットの晩、れみりゃ種達は、親フランが出払っていて留守の巣を狙い、
眠っている子供のフランを誘拐してきた。
そして、自分達の中でもひときわ太って栄養状態が良いれみりゃを選び、
さらってきた子供のフランと"すっきりぃ~♪"させたのだ。
子供とはいえ、フランをおとなしくさせ、
その上で"すっきり"させ、しかる後に処分するのは大変だった。
その間に10匹以上のれみりゃが負傷し、そのうち半分は既にこの世にいない。
だが、苦労のかいあって、れみりゃ達の計画は成功した。
"すっきり"させられたれみりゃは妊娠し、今まさに出産の瞬間を迎えようとしていた。
「「「う~う~うぁぁ~! う~う~うぁぁ~!」」」
呪文のように"うぁうぁ"踊りを続けるれみりゃ達。
その時、妊娠れみりゃの体が、ビクンと跳ねた。
「うぁぁぁうぁぁぁっっ! うまれるぅぅぅ! うまれちゃうどぉぉぉーーーっ!」
妊娠れみりゃが叫び出す。
「いだいぃぃぃっっ! いっだいどぉぉっ! ざぐやぁぁぁぁぁーーーっ!!」
痛みのあまり仰向けに倒れ、平らな岩の上をゴロゴロ転がりまわる。
そして、次の瞬間。
「ぷっぎゃぁぁぁぁ!」
妊娠れみりゃの顔が破裂し、
飛び散る肉餡の中から、新たな命が生まれ出た。
それは、ピンク色ではなく、紫色のおべべに身を包んだれみりゃだった。
「う、うー…?」
生まれたがかりのれみりゃは、きょろきょろと周囲を見回す。
「まんまぁー?」
あたりに母親の姿は見えない。
が、その代わりに、たくさんのれみりゃ達が自分を囲んで微笑んでいるのに気付いた。
「うーーれみりゃがいっぱいだどぉ♪ みんないっしょにゆっくりするどぉ♪」
周囲の40匹のれみりゃ達に向かって微笑む、赤ちゃんれみりゃ。
その言葉を聞いたれみりゃ達は、自分達の計画が成功したことを知り、歓喜の叫びをあげた。
「「「うーーーーっ♪」」」
れみりゃの中の一匹が、"よげんのしょ"を掲げる。
「すべてはこの"よげんのしょ"どおりだどぉー!」
「うんめいの子がうまれたんだどぉー!」
「この"よげんのしょ"どおりにすれば、れみりゃたちはむてきだどぉー!」
「いじわるなフランもにんげんも、もうこわくないどぉー!」
40匹ものれみりゃが、赤ちゃんゆっくりに向けていっせいに声をかける。
「「「はっぴぃばーすでぇーだどぉ♪ でびりゃまーん♪」」」
* * *
「「「うあああーっ! うあああああーーーっ!!」」」
「ゆっくり死ね!」
薄暮の森。
3匹のれみりゃが、1匹のゆっくりフランに追われていた。
あまりにも違う飛行能力と運動性。
れみりゃ達はあっという間にフランに追いつかれてしまう。
「「「こあいどぉぉ!」」」
恐怖で号泣する、れみりゃ達。
「ゆっくり死ね♪」
フランは、楽しそうに、れみりゃ達の羽を一枚ずつもいでいく。
「「「うんぎゃぁぁぁ!!」」」
叫びながら、地面に落下する3匹のれみりゃ。
フランは華麗に着地し、1歩また1歩と動けない3匹へ近づいていく。
3匹のれみりゃは、互いの顔を一瞥しあった後、
精一杯の叫び声をあげた。
「「「だしゅげでぇーーっ! でびりゃまぁーーん♪」」」
「う?」
不思議がるフラン。
すると、どこからともなく、れみりゃ種のものと思わしき歌が聞こえてきた。
「うぁうぁものの~名を~う~けて~♪
ぷでぃんを食べてぇ~たた~かう~れみりゃ~♪」
「?」
周囲を見回すフラン。
フランは、ある一点で視線を止める。
10メートルほど離れた木の枝の上に、紫色のおべべを来たれみりゃが立っていた。
「でびぃぃぃーーーーーりゃ!」
ぎゃおー!と両手をバンザイするように上げて、れみりゃが叫ぶ。
その姿を見て、羽をもがれた3匹のれみりゃは、やんややんやの喝采を送った。
「かぁ~~~っこいいどぉ~~~! さっすが、れみりゃ達の"きゅーせーしゅ"だどぉ♪」
おもしろくないのはフランの方。
"なんかつまんない。さっさところそう"そう思うや否や、
木の上のれみりゃへ向けて、飛翔する。
一方、木の上のれみりゃは、
フランが離陸するのを見てから、楽しそうに声をあげる。
「でびりゃうぃーーんぐ♪」
他のれみりゃ種に比べて、少しだけ大きい羽を動かして、
そのれみりゃは急上昇する。その速度は、胴体無しのれみりゃや、うーぱっくに匹敵した。
「うっ!?」
胴体付きのれみりゃ種らしからぬ動きに虚をつかれるフラン。
木の幹にぶつかりそうになり、あわててブレーキをかける。
「のうさつ☆ひっぷあたっくだどぉ♪」
その隙を見計らって、れみりゃが今度は急降下。
ブレーキをかけた直後で反応が遅れたフランの顔へ、ヒップアタックをする。
「うっ!」
不快そうに声を漏らすフラン。
対して、れみりゃはニヤ~と口の端を上げる。
「でびりゃびぃーーむ! ……だどぉ♪」
ばぶぉぉぉぉっ!!
れみりゃの体内にたまって濃縮されたガスが、ジェット気流となって尻から放射される。
「うわぁぁぁっ!」
零距離で放屁をかがせられ、苦しみ出すフラン。
地上へ落下し、しばらくのたうちまわった後、ピクピクと痙攣しだしてやがて気を失ってしまう。
放屁して「いやぁ~ん♪」と頬を赤く染めたれみりゃは、
フランが動かなくなったのを確認してから地上へ下りると、
両手でフランを抱えあげて、3匹のれみりゃ達のところへ歩いていく。
「う~♪ れみりゃは、せいぎのみかた・でびりゃまんだどぉ♪ とぉーーっても強いんだどぉ♪」
ドサっと地面にフランを落とす、紫色のおべべのれみりゃ……もとい自称・でびりゃまん。
「「「さっすがだどぉー♪」」」
でびりゃまんの勇姿に、感嘆する3匹のれみりゃ。
その後、でびりゃまんと3匹のれみりゃは、気を失ったフランを仲良く食べた。
初めて食べた天敵の味は、実に甘くて美味しかった。
しかし、その甘味をかみしめながら、羽をもがれたれみりゃ達は、あることを思い出す。
そして、悲しそうに悔しそうに、目に涙をためながら口を開く。
「……う~~~、でびりゃまぁ~~~ん、れみりゃたちを助けてほしいんだどぉ」
「うー?」
「れみりゃ達をいじめるヤツがいるんだどぉー! あいつやっつけて欲しいんだどぉー!」
聞けば、この3匹のれみりゃ達は、
"そいつ"から逃げてきたところを、フランに見つかってしまったらしい。
「う~~♪ まっかせとけだどぉ♪」
胸を張る、でびりゃまん。
"こんなに可愛いれみりゃ達をいじめる悪い奴、そんな奴は正義の味方でびりゃまんがおしおきしてやる!"
でびりゃまんは、やる気満々になって、飛び上がる。
……が、すぐに下りてきて、
「う~、うっかりさんだどぉ♪」と苦笑して、3匹のれみりゃに話しかける。
「それでぇ~、れみりゃ達をいじめる悪いやつはどこのどいつだどぉ?」
3匹のれみりゃは、そろって同じ方向を指差した。
「うー! あそこにいるヤツだどぉ!」
その場所を確認したでびりゃまんは、今度こそとフワリと舞い上がる。
「わかったどぉ♪ それじゃでびりゃまんが悪をたいじしてくるどぉ♪」
「「「よろしくおねがいしますどぉ!」」」
頭を下げる3匹のれみりゃ。
「でびりゃ☆うぃ~~~んぐ」
叫び声は勇ましく、
されどスピードはあくまでゆっくり。
でびりゃまんは、羽をパタパタと動かし、うーっぱくと同じ程度の速度で飛んでいく。
その目指す先には、紅い色が特徴的な、大きなお屋敷が建っていた……。
幻想郷に住む人間、そして妖怪達は、
畏怖を込めてその場所をこう呼ぶ。
紅魔館、と。
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≪あとがき≫
むーしゃむーしゃしてやった。
れみりゃならだれでもよかった。
いまはゆっくり反省している。
……すみません、(たぶん)まだ続きます。
by ティガれみりゃの人
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最終更新:2022年01月31日 01:56