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≪はじめに≫
昨晩、布団の中で「雨風すごいなー」と思いながら考えた単発時事ネタです。
書いてる間に台風過ぎちゃいましたけどね…。
ゆっくり書いた結果がこれだよ!
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その日、とある森に嵐が近づいていた。
まだ昼だというのに空は暗く、風は湿り気をおびていた。
「うーー、なんだかお空がこあいどぉー」
体つきの
ゆっくりれみりゃが、木々の間をパタパタ飛んでいる。
その顔は、木々の隙間に覗く鉛色の空を見上げたまま、不安そう。
そのれみりゃのすぐ後ろ、少し遅れて4匹の子供のれみりゃが飛んでくる。
4匹の体は小さく、先頭のれみりゃが身長80cm程なのに対して、まだ40~50cm程しかない。
「う~~~、まんまぁ~♪ どうしたんだどぉ?」
「れみりゃ、おなかすいちゃったどぉ♪」
「はやくおまんじゅうつかまえにいくどぉ♪」
「れみりゃ、きょうはぷっでぃーんがいいどぉー♪」
おなか空いた~♪
と口を揃える子れみりゃ達。
このれみりゃ達は、親子だった。
「うー……」
母親れみりゃは、子れみりゃ達の顔見て、迷う。
最近、ようやくひとりで飛べるようになった可愛い可愛い子供達。
そして今日、ついには一緒に狩りに出かけるにまで至った。
子れみりゃ達は、今日狩りに行くことをとても楽しみにしていた。
現に、今も興奮し、みんな楽しそうだ。
だが……。
「うー、今日はおうちに帰った方がよさそうだどぉ」
「「「「うっ!?」」」
親れみりゃは、子供達に狩りの中止を提言した。
その言葉を聞いてショックを受けたのは子れみりゃ達だ。
「なんでだどぉー!」
「もうおなかペコペコだどぉー!」
「おまんじゅうつかまえたいどぉー!」
「ぷっでぃ~~~ん!!」
と、口々に不満をもらした。
「う~~~、ごめんだどぉ。でも、今日はおうちで
ゆっくりした方がいいどぉ」
親れみりゃには、記憶があった。
こんなふうに空が"こあい"日は、良くないことが起こると。
たとえば、
ビュビュー風が吹いて木に叩きつけられたり、
ピカピカゴロゴロ鳴く姿の見えない怪物が現れたり、
もの凄い雨が降ってきてお肌がぐじょぐじょになったり。
その時、すでに大人になっていた親れみりゃは、辛うじて見つけた"おまんじゅう"の巣に逃げ込み、
そこで"こあい"のがいなくなるまで、おまんじゅうを食べながら何とかしのいだのだった。
だけど、あれは運が良かったから助かったのだと、親れみりゃは感じていた。
人間に捕まりそうになった時より、フランに追っかけられた時より、あの時は絶望的で怖かった。
もう二度とあんな思いはしたくない。
ましてや、可愛い子供達にあんな思いはさせたくないし、
まだ小さな子供達では、"こあい"やつにやられてしまうかもしれない。
赤ちゃん達との狩りを楽しみにしてたのは親れみりゃも同じだったが、
それ以上に赤ちゃん達に何かあっては大変だという親心が勝っていた。
「「「「やだやだやだぁーーー!」」」」
親の心、子知らず。
涙を流してぐずり続ける4匹の子れみりゃ。
「うーっ! おねがいだどぉーママの言うこと聞いてほしぃどぉー」
困り果てる親れみりゃ。
「うぅうー♪ そうだどぉ! きょうはお家でとっておきのダンスを教えてあげるどぉ♪ とぉーてもえれがんとで楽しいどぉ♪」
「「「「そんなのいらないどぉーー! れみりゃたちはかりにいくんだどぉー!」」」
「ううーっ!?」
口を揃えて拒否をあらわにする、子れみりゃ達。
親れみりゃは、ガーンとショックを受けて、ションボリ俯く。
「う~~~、どうしてわかってくれないんだどぉ……」
そんなこんなで泣き叫ぶ続ける子供達。
だが、しばらくすると、1匹また1匹と子供達は泣き疲れ、地面にトテンと座りこんでしまった。
「うっ! 赤ちゃんたち、大丈夫かどぉ!?」
親れみりゃも地面に下りて、子れみりゃ達を心配する。
「……ぅー」
返事をする子れみりゃ。
だが、声は小さく弱々しい。
「う~~~~大変だどぉ! どうすれば良いんだどぉ~~!」
ジタバタ、ウロウロ。
親れみりゃは、その場を行ったり来たりする。
「おなか、へったどぉ……」
「ちからがでないどぉ……」
「ねむたいどぉ……」
「う~、まんまぁ……」
子れみりゃ達は、体力を振り絞り、親れみりゃに要望を伝える。
親れみりゃは、子供達の声を聞き、我意を得たりと得意気に顔を輝かせる。
「うー!
ゆっくりわかったどぉ! ママにまかせておくんだどぉー!」
親れみりゃは、キョロキョロ周囲を見回すと、
視線の先に、大きな木の根本に空いた洞を見つけた。
パタパタ飛んでいき中を確認する親れみりゃ。
入口は狭いが、中には直径2m弱の空間が広がっており、幸い誰もいないようだった。
親れみりゃは、子れみりゃを1匹ずつだっこして、その洞の中まで連れてきた。
そして、「えだぁにぃ~いしぃに~おおきなはっぱぁ~♪」と歌いながら、周辺を飛び回り、
枝や、石や、木の皮や、1mはあろうかという大きな葉っぱを集めて、洞へと運んでいく。
「まんまぁ……なにしてるどぉー……?」
不思議そうに親れみりゃの様子を見つめる子れみりゃたち。
「う~♪ 赤ちゃんたちが疲れたみたいだからぁ~、今日はここでキャンプをするどぉ~♪」
「「「「うーっ!?」」」」
キャンプ。
聞いたことの無い言葉に、興奮する子れみりゃ達。
先ほどまでの疲れっぷりもウソのように、笑顔をこぼしあって盛り上がる。
「きゃんぷきゃんぷぅー♪」
「えれがんとなひびきだどぉー♪」
「かえったらじまんするどぉ♪」
「さっしゅが、れみりゃのまんまぁだどぉー♪」
喜び合う子供達を見て、親れみりゃもホッと胸をなで下ろす。
ここでもうすぐやって来るだろう"こあい奴"をやりすごし、
それから狩りに行くなりお家に帰るなりすれば良い……親れみりゃはそう考えたのだ。
「わかってくれてうれしぃどぉー♪ みんな良い子たちだどぉー♪」
親れみりゃは、微笑み「うぁうぁ♪」リズムを刻みながら、
集めてきた材料で、洞の出入り口を閉じる扉を組み上げていく。
「うー……でもおなかがすいたどぉー……」
「そうだどぉー……おなかがすいてはきゃんぷはできぬだどぉ……」
「このままじゃ……おうたもうたえないどぉー……」
「うー……ぷっでぃーんたべたいどぉ……」
お腹が減ってるのを思い出し、落ち込む子供達。
親れみりゃは、子れみりゃを励ますように、力強く口を開く。
「だぁーいじょぶだどぉ! いまからぁーママがおいしぃーおまんじゅうとってきてあげるどぉ♪」
もうすぐ"こあい奴"が来ると知っている親れみりゃ、
内心はもう外には出たくなかったし、現に足も小刻みに震えているのだが、
子供達のためにと頑張って笑顔を作っていた。
「「「「やったどぉー♪」」」
子供達は、親れみりゃの言葉を信じ、すっかり安心しきったようだった。
「うー、それじゃ行ってくるどぉ♪ よい子でおるすばんしてるんだどぉ?」
「もちろんだどぉ♪」
「
ゆっくりおるすばんしてるどぉ♪」
「れみりゃはえれがんとないいこだどぉ♪」
「うー! ゆっぐりするどぉ♪」
子供達の返事に満足し、親れみりゃは洞の外に出る。
そして、洞の外から枝や葉っぱを重ねていき、組み立て途中だった扉を完成させていく。
「うー? まんまぁなにしてるどぉー?」
首を傾げる子れみりゃ。
「うーっ、お外はあぶないからぁーこうやって鍵をしめるんだどぉ♪ とじまりはれでぃーのたしなみなんだどぉ♪」
「「「「う~~! たしなみだどぉ~~♪」」」」
子供達の様子を見て、ニコニコする親れみりゃ。
やがて、扉は完成し、木の洞の入口は石と枝と葉っぱで隠される。
「うー♪ かんせいだどぉー♪」
うっすら額にかいた汗を、ピンク色のおべべで拭いて一息つく親れみりゃ。
「赤ちゃんたちぃ~! お外はあぶないからここから出ちゃダメだどぉ~♪
それからそれかぁ~、ママがいいっていうまでこの扉を開けちゃ"めぇー"だどぉ♪」
扉越しにいるであろう赤ちゃん達へ、呼びかける親れみりゃ。
「「「「うっうー♪ わかったどぉー♪」」」」
子供達の元気な返事を耳にして、満足げに頷く親れみりゃ。
親れみりゃは、遠くでゴロゴロ鳴りだした空に恐怖しつつも、
意を決して舞い上がり、パタパタ森を飛んでいく。
「こあくなんてないどぉ~♪ ふらんなんかう~そどぉ~♪」
早くおまんじゅう達を捕まえて、子供達のところへ帰らなければ。
親れみりゃは、自分自身を鼓舞するため、精一杯の大声で歌いながら、森の奥へと進んでいく。
その歌が、逆に
ゆっくり達に自分の存在を知らせているとも知らずに……。
* * *
横殴りの雨が滝のようにふりつけ、地上を襲う。
風は金切り声をあげながら、木々を薙ぎ倒そうとする。
空には稲光が瞬き、世界が割れるのではないかと思わんばかりの轟音を響かせる。
「う~~~っ! "こあい"やつがきちゃったどぉーー! ざくやぁーーー! たすげでぇぇぇっ!」
雨風にさらされながら、親れみりゃが空をとぶ。
いつものフワフワ浮かぶような飛び方ではない。
両手を目につきだし、体を地面と水平にして飛ぶ、全力飛行だ。
親れみりゃのおべべはぷっくら膨らんでおり、
その中には、どうにか捕まえて弱らせた、
ゆっくりれいむが入っていた。
本当なら、れいむを捕まえた時点で、れいむの巣で
ゆっくりしたかったのだが、
自分を待っている子供達のことを考え、こうして無理をしながらの飛行を強行していた。
だが、雨で視界はほとんど見えず、突風がれみりゃの飛行を妨げる。
嵐の猛威の前で、れみりゃはあまりにも無力だった。
「うわぁぁぁぁっ!」
横からの突風にあおられ、親れみりゃがバランスを崩す。
そのまま体を木に叩きつけられるれみりゃ。
それでも諦めず飛ぼうとすると、今度は真後ろからの突風に吹き飛ばされ、
顔面から木に衝突してしまう。
「ぷっぎゃぁぁぁっ!」
顔を真っ赤にし、地面に墜落する親れみりゃ。
「う~~~! いたいどぉーーー! れみりゃのおかおがぁぁーーーっ!」
地面でのたうち回る、親れみりゃ。
落下の際、おべべの中に入れていたれいむも地面に落ちて、もはや池と言っても過言ではない水たまりに落ちてしまう。
親れみりゃは、痛みを我慢しながら起きあがり、
ぐっしょり濡れた上に、泥だらけになったれいむを大事そうに抱え上げる。
「……うう、赤ちゃんたちぃー、ママはがんばってかえるどぉー」
親れみりゃは、その場で泣き出しそうになるのをこらえて、
れいむを胸に抱えたまま豪雨の中を歩いていくのだった……。
* * *
「「「「う~~~、まんまぁ~~おそいどぉ~~~」」」
木の洞の中、4匹の子れみりゃ達が、ぷくぅーと頬を膨らませていた。
すぐにおいしいおまんじゅうを持って帰ってくるはずの母親が、いつまで待っても帰ってこない。
自分達はこんなにおなかをすかせているのに。
くわえて、洞の中は狭くてジメジメしている。
れでぃーらしく「うぁうぁ」踊ろうにも窮屈だし、何より汗で服がぐっしょり湿って気持悪い。
それにさっきから外がうるさくて、
姉妹同士お話しをしたり、お歌を歌おうにも、外の音が邪魔をしてままならない。
子れみりゃ達のストレスはピークをむかえようとしていた。
「もぉーいやだどぉ! れみりゃはおそとにいくどぉー!」
1匹の子れみりゃが、外へ出ようと、洞の出入り口を閉じている扉に手を伸ばす。
「うっ! だめだどぉー! まんまぁとやくそくしたどぉー!」
「そうだどぉー! おそとはこあいどぉー!」
「れみりゃたちは、
ゆっくりおるすばんしてるんだどぉー!」
それを止めようとする、他の3匹の子れみりゃ。
「うーーー! でもでもぉーーこのままじゃおなかがすいてしんじゃうどぉーーー!」
「「「……う~~~」」」
実際のところ、たかが1食抜いたくらいで死ぬほど、この子れみりゃ達は餓えてはいない。
むしろ今までロクに運動もせずエサだけもらい続けてきたため、体はぷっくら膨らみ栄養状態はすこぶるよかった。
しかし、今まで親から甘やかされ続けてきた子れみりゃ達にとって、1食抜くというのは大事件であり、
いまの劣悪な状況は耐え難かった。
「うう~~~、どうすればいいんだどぉ~~」
「まんまぁ~~~! しゃくやぁ~~~~!」
「おなかすいたどぉ~~! むしむしきもちわるいどぉ~~!」
「う~~~っ! ぷっでぃ~~~んもっできでぇ~~~!」
4匹の子れみりゃ達は、座り込み、だだをこね出す。
と、その時だった。
"うーーーーーーーーーーーーーーーーー"
「「「「……う?」」」
"ううううーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ"
「「「「うー?」」」
どこからともなく、おそらくは外から"うー"という音が聞こえてきた。
子れみりゃ達は、その音を聞いて首を傾げた。
「「「「……だぁ~~~れだどぉ?」」」」
ハミングして?マークを出す4匹の子れみりゃ。
子れみりゃ達は、この"うー"という音を、仲間のれみりゃ種の声だと考えたのだ。
"うううーーーーーーーーーーーーーーっ"
"うううーーーーーーーーーーーーーーっ"
"うううーーーーーーーーーーーーーーっ"
音は四方八方から聞こえてきた。
「うー、おそとはれみりゃがいっぱいだどぉ?」
「でもなんだかくるしそうだどぉ……」
「すごいかずだどぉ……みんなつらそうだどぉ……」
「やっぱりおそとはこあいどぉ……」
子れみりゃ達は一カ所に固まって、ガタガタ震え出す。
すると、ドタドタガタガタ扉がゆれはじめた。
「「「「うっ!」」」」
驚く4匹の子れみりゃ。
扉がゆれるたびに、外から"うううーーーーーっ!"という音が聞こえてくる。
「「「「たっ、たいへんだどぉー!!」」」」
このままじゃ、"こあい"誰かが入ってきてしまう。
そう感じた子れみりゃ達は、扉が動かないよう協力して押さえつける。
* * *
4匹の子れみりゃ達が、必死に扉を押さえている時。
洞の外では、親れみりゃが中の子れみりゃ達に話しかけていた。
「う~~~っ! 赤ちゃんたちぃ~~~ただいまぁ~だどぉ♪」
だが、子供達の反応はない。
「う~~~~っ?」
もしかして、子供達の身に何かが?
一瞬肝を冷やすれみりゃだたが、自分が作った扉はこの通り残っている。
こあい人間やいじわるなフランが来たとも考えにくい。
「うーーっ! 赤ちゃんたちぃーー開けてほしぃーんだどぉーー!」
ドンドンと扉を叩いたり、押したりしてみる、親れみりゃ。
だが、中からは反応が無く、扉は押しても動かない。
「うーっ! なんであかないんだどぉー!」
ドンドンドン。
押したり叩いたりしても、扉は開かない。
かといって、壊してしまっては、これから自分や子供達が"こあいやつ"から隠れるのに心許ない。
「ううう~~~~っ!」
可愛い子供達は目の前なのに。
"こあいやつ"から隠れられる場所は目の前なのに。
あと一歩のところで思うようにいかず、親れみりゃは地団駄を踏む。
そうこうとしている間にも、雨風は親れみりゃを襲い続ける。
全身はぐっしょり濡れて、何度も転んで泥だらけ。
木にぶつかったり、叩きつけられたりで、じまんのおべべは破け、体も傷だらけ。
皮膚に相当する肉まん皮は、濡れてぐしょぐしょにふやけてしまっている。
子供達のために持って帰ってきたれいむも、雨で溶け出してグロテスクな黒餡の塊になってしまっている。
「さむいどぉーー! いたいどぉーーー! こあいどぉーーーーー! お願い開けてだどぉーーーーーーっ!」
親れみりゃのストレスもまた、限界だった。
いや、むしろ今までよくもっていた方だろう。
ため込んできたものが溢れだし、号泣しながら自分が作ったドアをドンドン叩く。
"うーっ"
「うっ!?」
その時、れみりゃは扉の向こうで子供の叫び声があがったのを、確かに耳にした。
子供達の存在に、笑みを浮かべる親れみりゃ。
嵐から逃れなければ死んでしまうという生存本能と、
子供達に早く会いたいという思いが、れみりゃの理性を吹き飛ばす。
「うっう~~♪ れみりゃの赤ちゃ~~~ん♪ お声もかわいいどぉ~~~♪」
ベリベリ。
バキバキ。
ゴトゴト。
親れみりゃは、外的から身を守り、風雨を逃れるために作った扉を、自らの手で壊していってしまう。
扉の上の方を壊すと、隙間から4匹の子れみりゃ達の姿が見えた。
「う~~! 赤ちゃんただいまだどぉ~~!」
バンザーイ!と両手を上げて喜ぶ親れみりゃ。
子れみりゃ達は、そろって扉の前で扉を押さえつけていた。
正常な判断力を失っていた親れみりゃは、それが何を意味するか理解できなかった。
そして、子供達が親れみりゃを見て、恐怖で白目をむいていることもまた、理解できなかった。
「う? 赤ちゃん、どぉーしたんだどぉ♪ まんまぁを早く中にいれてねぇ~ん♪」
親れみりゃは優しく微笑みかけた。
本人は、そのつもりだった。
が。
それを驚愕の眼で見て。
子れみりゃ達は、せきを切ったように叫び出す。
「「「「ば、ばけものだどぉ~~~~っ!!」」」」
「うーーーーっ!?」
最愛の子供達から化け物呼ばわりされ、戸惑う親れみりゃ。
念のためあたりを見回すが、雨が強いこともあって、周辺には誰も見えない。
「う~~、なにいってるんだどぉ♪ みんなのママだどぉ♪」
「「「「おまえなんかっ! まんまぁじゃないどぉーーーっ!!!」」」」
「ど、どぉーーじでぞんなごどいうんだどぉーーーーっ!?」
衝撃のあまり、再び泣き出す親れみりゃ。
しかし、子れみりゃ達は、明らかに親れみりゃに対して敵意と恐怖を露わにし続けている。
……親れみりゃの姿は、子供達の中の親れみりゃーのイメージから変わりすぎていたのだ。
子供達にとって、親れみりゃは尊敬の対象であり、
"きゅーとで、すまーとで、えれがんとなれでぃー"であった。
しかし、現在の親れみりゃは、そんな形容詞からはかけはなれている。
ブヨブヨにふやけた皮、ぼうぼうの髪、いつの間にかどこかへ飛んでいってしまった帽子、
傷だらけでところどころから肉餡がのぞく体、泥だらけで真っ黒なおべべ、大事そうに抱えるグロテスクな黒餡の塊。
極度のストレス状態にあった子れみりゃ達は、
そんな姿になった親れみりゃを親と認識できず、自分達に害をなす化け物と判断してしまった。
「ママはぁ~! みんなのまんまぁだどぉ~~!」
「「「「うーーっ! れみりゃたちはだまされないどぉぉっ!!」」」」
続く平行線の問答。
「うー……おねがいだどぉ……ママを信じてほしいどぉ……」
嵐の中でも自分を支えていたはずの子供達から、今まさに拒絶を受け続けた親れみりゃ。
精神的な支えを失ったことで、同時に親れみりゃの体もまた限界へと近づいていた。
「赤ちゃんお願い~~~♪ ママを助けてぇ~だどぉ~~~♪」
大粒の涙を流しながら、最後の力を振り絞って微笑む親れみりゃ。
が、子供達からの反応は拒絶のみ。とうとう扉が開けられることは無かった。
「……うー」
力なく呟く親れみりゃ。
「なんだか……つかれたどぉ……れみりゃはおねむだどぉ……」
親れみりゃは目を瞑り、体をフラフラゆらしだす。
そして、今まででも最高の突風が、親れみりゃの体を舞い上がらせた。
「う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ…………」
親れみりゃは叫び、そしてその叫びはあっという間に彼方に消えていった……。
* * *
「う~~、ようやくばけものがいなくなったどぉ!」
「やったどぉ! れみりゃたちのかちだどぉ!」
「れみりゃたちはとぉーってもつよいどぉ♪」
「まんまぁにも、ほめてもらえるどぉ~♪」
自分達の親を追い払ったとも知らず、4匹の子れみりゃ達は自分達の健闘を褒め称え合った。
「「「「うっう~うぁうぁ~♪」」」」
喜びのあまり、れみりゃダンスを踊り出す4匹。
「「「「れみ☆りゃ☆うー☆にぱぁ~~♪」」」」
ビシッ。
笑顔でポーズを決める子れみりゃ達。
が、同時にそのお腹から"ぐぅ~"という音が聞こえてきた。
「「「「うー……」」」」
ペタン。
その場に座り込む子れみりゃ達。
動いたことで、より空腹が増してしまった。
もはや、それを我慢することができないほどに。
「……れみりゃ、おそとにいくどぉ」
先ほど扉を開けようとした1匹が立ち上がる。
「だ、だめだどぉ!」
「まんまぁがぁ!」
「ぷっでぃ~ん!」
化け物は追い払ったが、外からは"ううううーーーっ"という音は相変わらず聞こえてくる。
しかし。
「だいじょーぶだどぉ! れみりゃたちはつよいどぉ! さっきばけものだってやっつけたどぉ!」
「「「うー! そうだったどぉ!」」」
この一言が決定的となり、他の3匹も外へ出るのに賛成しだす。
結局、4匹の子れみりゃ達は、満場一致で外へ出ることにした。
「それにぃ~おそとにはたくさんれみりゃがいるんだからぁ~きっとれみりゃたちにごはんをくれるどぉ~♪」
「う~~~! そのとおりだどぉ~~~! れみりゃおれいにおうたをうたってあげるどぉ~♪」
「おそとのれみりゃ、みんなたのしそうにうたってるどぉ~~♪」
「ぷっでぃ~~ん♪ ぷっでぃ~~~~ん♪」
4匹の子れみりゃ達は、外から聞こえる"うーーーー"という音を、すっかり都合良く解釈しだしていた。
「うー! それじゃとびらをあけるどぉ!」
「「「うっうーーー♪」」」
うーっしょ。
うーっしょ。
4匹のれみりゃは、協力して扉を押していく。
ついに、木の洞の出入り口を閉じていた扉は外れ……。
そのまま扉の残骸は空へと舞い上がった。
「うーーーーー♪ みんないっくどぉーーーー♪」
「「「うーーーーーっ!」」」
同時に、外へ飛び出す4匹の子れみりゃ。
そして……。
外は、嵐。
猛烈な雨風と雷鳴は、丸1日続くのだった。
* * *
木の根本、地中の穴の中。
れいむの一家が、乾燥した虫の死骸を食べながら楽しい団らんの一時をむかえていた。
「むーしゃむーしゃ♪」
「おいちぃー!」
「とっても
ゆっくりできるあじだよ!」
外は大嵐。
親れいむは子れいむ達を家の中に避難させ、冬越え用の食料で夕飯をとっていた。
"うううーーーーーーーっ"
"うううーーーーーーーっ"
"うううーーーーーーーっ"
隙間に反響して、嵐の風音が巣の中にも響いてくる。
「ゆゆっ! おかーしゃん!」
「だいじょーぶだよ、これはあらしさんの声だよ」
「ゆ? あらしさん?」
「そうだよ。でも、おそとは危ないから、れいむ達はしばらく巣の中で
ゆっくりしようね!」
「わーい! ゆっくりぃー!」
"うううーーーーーーーっ"
"うううーーーーーーーっ"
"うううーーーーーーーっ"
「ゆっ! おかーしゃん、なんだかれみりゃのこえみたいだね!」
「ゆふふ、れいむの赤ちゃんはおもしろいことを考えるんだね」
微笑む親れいむ。
それを見て、子れいむも楽しそうに笑う。
"うううーーーーーーーっ"
"うううーーーーーーーっ"
"うーーーー……………っ"
"うううーーーーーーーっ"
「でもね、れみりゃはおばかさんだから、こんな日にもお外にでちゃったりするんだよ」
「ゆっ、れみりゃはゆっくりできないゆっくりなんだね!」
「おお、おろかおろか」
うううーーーーーーーっ"
"うぁぁぁーーー………っ"
"うううーーーーーーーっ"
"たすけぇ………………っ"
"うううーーーーーーーっ"
「そうそう、こんな昔話があるんだよ」
「わーい!おはなしぃ~~!」
「おかーしゃん、れいむたちにゆっくりおはなしきかせてね!」
食事をすませ、親れいむの周りに集まる子れいむ達。
親れいむは、"ゆっへん"と咳払いの真似をしてから口を開く。
「これはほんとうにあったお話なんだよ。
むかしむかしあるところに、ばかなれみりゃの一家が狩りに出かけましたが……」
おしまい。
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≪あとがき≫
台風がらみのネタでどうしても書いてしまいたくなったので、書き殴りました。
時事ネタはよそうと思っているのですが……つい……。
by ティガれみりゃの人
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最終更新:2022年01月31日 01:57