※
ゆっくりでは無い生き物に変化させられた、ゆっくりふらんが登場します。
※レミリアによる、四肢付き
ゆっくり虐待。全体的に虐待描写ぬるめ。
※性的な描写を含みますが、18禁にはならないレベルです。たぶん。
※可愛がりシーンも存在しますし、さらにハッピーエンドです。お察しください。
※例の如く、ある意味レミリア虐めかも知れません。キャラ性格の俺解釈ひどすぎるので。
※「美鈴と森のゆっくり」の後日談的な感じとなっておりますが、このシリーズ単独でも
普通に読めるようにしたつもりです……一応。
※当然のように俺設定満載な感じです。
※原作キャラもゆっくりも俺設定要素多大ですので、イメージと大きく違う場合もござい
ます。ご注意ください。
「レミリアと森のゆっくり 後編その2」
ついテンションを高めすぎ、ゆっくりふらんを本物のフランドール・スカーレットだと
思い込み、レミリアは肛門性交を行ってしまった。
最初は抵抗していたふらんも、いつしか快楽に心を蝕まれ、最終的にはアヘ顔で淫語を
呟くような状態に堕とされた。
ふらんの肛内へ合計7回ほど射精してから、漸くレミリアは相手が妹ではなく妹に似た
生き物だと言う事を思い出す。
長時間の肛虐により身も心も疲れ果て、ぐったりするふらんを放置して帰るわけにも行
かず、レミリアは彼女を膝の上へ横抱きに寝かせ介抱していた。
紅魔館へ連れ帰って、いつでも気軽に使い放題の尻穴便器奴隷にしてしまおうとか、そ
の手の外聞をはばかりそうなエロ妄想にレミリアは頬を緩めている。
「ふふふ、そう言えばこいつ……食べ物で出来てるのよね……身体ばかりか、う、……う、
うん、ちとかも……」
独り言なのだから気にする必要がないにもかかわらず、排泄物を指す名詞を言葉にする
際、彼女は顔を赤らめ口籠もった。
御歳500歳の多感な幼女であるレミリアは、乙女らしく直接的な単語に対して強い羞恥
と抵抗を感じる。
「だ、だから……す、すすすす、すかと…………い、色んな倒錯プレイができるわねっ!」
誰も近くに居ないと思っていても気になるのか、あたりをきょろきょろと見回す。
見回したところで、特に異状は無い。
夜明けが近付いてきた夜の森が、ただ静まりかえっているだけである。
そして、それは唐突に現れ──レミリアへの攻撃を開始した。
「なっ、なに……!」
上空から何かが飛来してくる気配に、レミリアは上を向く。
迂闊であった。
こんな近くまで敵性が接近し、しかも攻撃を開始してくるまで気付かなかったのは、彼
女が淫猥な妄想に熱中していたからに他ならない。
素早くレミリアは、飛来してくる物の正体を見極める。
「ぐ、グングニル……って、え!? ウソぉ? なんで?」
飛来してくる物の正体に気付き、彼女は間の抜けた声で驚いた。
それは見慣れた形をした魔力を収束して作った紅い槍──自らの必殺技のひとつである
神槍「スピア・ザ・グングニル」に見えた。
「なっ、なんだって言うのよっ? くそっ!」
単なる奇襲であれば、充分に余裕を持って避けられたはずである。
しかし、敵が飛ばしてきた物が物だけに、驚きで対応がやや遅れた。
「わ、ちょ……え!? う、うそぉ……きゃあっ!」
何者かが放った魔力の槍が──レミリアの頭部を直撃する。
「うぅ……い、痛ぁい……うっ、痛……うぅっ…………あれ?」
とても痛い。
頭がぐわんぐわんして、ずきずきする。
目にはたくさんお星様が見える。
図書館に住まわせている友人を激高させ、ぶ厚い本の角で殴られた時と同じぐらい痛かった。
だが、それだけだった──。
「……なっ、舐めるなぁ! わ、私の技がこんな弱いわけ無いでしょ!」
頭部を完全破壊されるかもと思い、少しびびった自分へのやり場の無い怒りとともに、
レミリアは敵に向かって怒声を張り上げる。
痛みのあまり半べそをかいているため、あまり怖くはない容貌で上空の敵を睨む。
「……………………うそ……こんなの……」
敵の姿をしっかりと、その目に映したレミリアは、そう呟いた。
真っ青な顔で、全身をぷるぷると小刻みに震わせている。
月を背に上空に浮かぶは、蝙蝠のような翼を拡げ、やや紫がかった青い髪に赤いリボン
のついた帽子、薄桃色の服の腰には大きな紅いリボン、頭がでかく顔が丸い幼女の姿。
そう──ゆっくりれみりゃである。
「いやっ、うそよ……こ、こんなのって……ひ、ひど……ぐすっ、うぇぇぇぇぇん」
レミリアは──泣き出した。
「うっうー☆ れみぃこーげき、いたいいたい? れみぃすごいすごい?」
れみりゃは上空で得意げに胸を張り、にぱーと笑った。
声は湖に住む氷精に似ている。
悩みが無くて良さそうな感じの、凄く頭の悪そうな声であった。
その声を聞き、レミリアの涙に勢いが増す。
「うっ、ひっく……ぐしゅっ、わ、私が、なにをしたって言うのよ……ひ、ひどいわ、あ
んまりよ……ふぇぇぇぇぇん」
ゆっくりれいむ、まりさ、ふらんを見て、覚悟はしていた。
だが、見せつけられた現実は、そんな覚悟を吹き飛ばす破壊力を持っていた。
それに──レミリアは耐えられなかった。
弱いのは、まだいい。
ゆっくりふらんは通常弾幕しか放てないようだったから、弱いとは言え必殺技を放てる
分だけ、ゆっくりれみりゃは強いと思える。
だが、直撃なのに痛いだけ、人間なら下手すれば死ぬかも知れないぐらいの痛みだが、
痛いだけの威力しかないと言う点が、とても許せない。
こんな中途半端な威力の技を放たれては、それのオリジナルを持つ身として、非常に惨
めな気分になる。
姿の衝撃が大きかった。
自分はあんな丸顔じゃない。あんなに間抜けヅラじゃない。手足もあんなに短くはない。
可愛いかと聞かれれば可愛いと答えられるが、美しさが致命的に欠落しているのが、と
にかく許せない。
お気に入りの普段着が全く一緒なのに絶望した。
同じような着こなしなのに、死にたくなるほど似合っていない。
まるで自分のファッションセンスが全否定されたカリカチュアを見せつけられて、人格
までも馬鹿にされてるような気分だ。
とどめは声である。
可愛い声と言えば可愛い声なのだが、全く知性が感じられない。
質も調子も高さも話す内容も、馬鹿どころか白痴としか思えないような声。
殺伐としているふらんの声の方が、まだ数倍マシだと思える。
プライド高い幼きデーモンロードには、耐え難い己の似姿であった──。
「うー? どーしてどーして、ないてる? れみぃこーげき、いたいいたい?」
れみりゃは心配そうな目でレミリアを見下ろす。
別に倒して捕食するために攻撃したのではなく、弾幕ごっこをして遊びたかっただけで
ある。
だから、相手が泣いているのが心配なのであった。
「ふぇぇぇん……ひどいっ、やだっ、こんなの……ひっく、ぐすっ……」
膝の上に横抱きにしている、ふらんの胴体に突っ伏して、レミリアは肩を震わせ泣く。
突然攻撃してきた敵に、なんか心配されているのも、より一層心の傷を大きくする。
「うっうー? おねーさん、だいじょぶだいじょぶ? れみぃわるいわるい?」
上空から地上に降りてきたれみりゃは、レミリアより数歩離れた位置でおろおろとして
いた。
やりすぎてしまったと思ったのか、気遣い謝るような仕草をしている。
「……う、ぅ……ぁ……んー……」
気を失っていたふらんが目を覚ます。
身体がひどくだるいが、動けないほどではない。
ゆっくりだった時も再生能力を備えていたが、レミリアの血と精液を取り込んだ事によ
り、本物の吸血鬼には及ばないが、相当高い自己回復能力を身に付けている。
もっとも、自己回復や再生は外傷に対してがメインであり、疲労については「ちょっと
疲れが取れやすい体質」ぐらいの効果しか無い。
「ふぇぇぇぇん! もぅ、いやぁっ! 帰りたい! 咲夜ぁぁぁぁぁぁっ!」
自分を膝に乗せているレミリアが大泣きしているのに、ふらんは気付く。
「うー……れみぃわるいわるい? おねーさん、ごめんごめん……うぁぁぁぁぁん」
れみりゃがぽてぽてと歩み寄って来て、謝り泣き出した。
「……え? ちょっと、どうしたの? な、なんなの?」
わけがわからない。
目が覚めたら、あんなに強くて憎たらしくいやらしかったレミリアが、無力な幼女のよ
うに号泣している。
その上、この森で最強クラスの強さを誇る個体である、れみりゃが来ていて、何故かこ
いつも泣き出した。
ふらんは──混沌とした状況に混乱した。
懸命に、ふらんは状況を把握しようと頭を回転させる。
「………………どうしよ……わからない……」
考えてみても、全くわからなかった。
レミリアもれみりゃも、ふらんの思考の及ぶ範囲外の存在なのだから、考えてもわから
ないのは、当然と言えば当然であるが。
どちらを先に落ち着かせるべきかを、ふらんは次に考える。
「……どっちもこのままなら……わたしは、へいわ……じゃないのよね……」
どちらも別に泣いたままでも困らない、むしろ冷静にさせたら何らかのとばっちりが来
そうである。
かと言って、このまま放置するわけにも行かない。
すでにふらんは、ゆっくりであってゆっくりでは無い存在となってしまっている。
もう元の生活には戻れない事を、ちゃんと自覚していた。
レミリアの血と精液を取り入れた事で、入ってきた知識と高められた知能によって形成
された人格が、そのように結論づけている。
こうなった責任者に何とかして貰う以外、ふらんには今後の生きる術が思いつかない。
だるい身体を起こし、彼女はレミリアの膝から降り、裸の尻をぺとんと地面に落として
座る。
「ちょっと! なにがあったのよ? ねぇ、ちょっと!」
こんなやつに話しかけたくないけど、と思いつつ、ふらんはレミリアに声を掛けた。
「ぐすっ、うぅっ……な、なんでもないわよ……ふぇぇぇぇんっ」
何でもないわけがない。
「……なんでないてるのよ? どうしたのよ? ねぇ……れ、れみりあ!」
こんなやつの名前なんか呼びたくないが、肩を掴み、顔を見ながら呼びかける。
「うぅっ、ふぇ……ふ、ふぇぇぇぇぇんっ!」
「ちょ、だ、だきつかないでよっ! な、なんなのよぅ……もう……」
仕方ないと言った表情を浮かべ、ふらんはレミリアを抱き留め背中をさする。
「わぁぁぁぁぁん……ぐしゅっ、わ、私……ふぇぇぇぇん」
「あー、はいはい……よしよし……」
何の因果でこんな羽目にと思いつつ、ふらんはレミリアをあやす。
言いたい事は山ほどあるし、出来れば殺したいほど憎んでいる相手だが、最早これに頼
らねば今後どうすることも出来ない身の上であった。
「ぶぇぇぇぇぇんっ! れみぃもだっこだっこ! ぶわぁぁぁぁぁん」
レミリアばかりが優しくされていることに嫉妬したのか、れみりゃがふらんの肩を掴む。
「って、こっちもぉ? ど、どうしろってのよぉ~……やれやれ」
うんざりした顔で、れみりゃも一緒に抱きしめる。
地面の上に座った裸のふらんが、仲良く並んで声を上げて泣くレミリアとれみりゃを抱
きしめて、懸命にあやすという光景がしばらく続いた。
「……で、いったいどうしたってのよ? ねぇ、れみりあ?」
どちらもが泣きやんだ頃合いを見て、ふらんがレミリアに話しかけた。
「……むー……なんでも、ないわよ……」
「うっうー☆ ふらん~♪ れみぃとあそぼあそぼ!」
口を尖らせ拗ねるレミリアと、もう楽しそうに笑っているれみりゃ。
どちらにも共通しているのは、全く質問に答えようとしない態度である。
「なんでもないわけないでしょ? なに、ひょっとしてこいつになかされたの?」
ちょっと挑発的な口調で、ふらんはカマをかけた。
「なっ!? そっ、そそそんなわけ……あ、あるわけないでしょっ!」
慌て吃りレミリアは否定する。
このような否定の仕方では、図星ですと白状しているのと同じ事だ。
「むっうー! れみぃむし、しないしない! あそぼあそぼ!」
全く相手にされないのが不満なため、れみりゃはしきりに話しかけてくる。
「はいはい、あとであそぼうね……って、そうなんだれみりあは、こいつになかされたん
だ……ふーん、ぷぷっ」
れみりゃを軽くあしらいつつ、ふらんはニタニタとレミリアを見つめる。
色々と酷い目を見せてくれた相手に対して、なんとなく一矢報いられたようで、愉快な
気分になった。
「うっ、うるさいわねっ! し、仕方ないじゃない……こ、こんな……ぐすっ……」
育ちが良いため嘘が苦手なレミリアは、渋々事実を認める。
認めながら理由を言い訳しようとして、再び悲しい気持ちになって涙ぐむ。
「あー……ごめん、わたしがわるかったから、なんだかわかんないけど、ごめん」
泣かれると厄介であると経験を通して学んだため、すかさずふらんはフォローする。
あんなに強いレミリアが、どうしてれみりゃに泣かされたのかはわからない。
それに対して非常に強い興味を覚えるが、とりあえず今は理由を聞くべきでは無いと考
えた。
「あ、あんたなんかに……わ、私の気持ちが……ぐしゅ……ふぇぇぇぇん」
ふらんのフォローは効果が無かった。
「あー、ごめんってば……なかないでよ、れみりあ……」
よしよし、とばかりにレミリアの頭をふらんは撫でる。
もうどっちが年長者で主人なのか、傍目には良く判らない。
「うー☆ れみぃも、なでなでなでなで!」
ふらんがレミリアを撫でるのを見て、れみりゃは真似をした。
いい子いい子とばかりに、レミリアの頭を撫でる。
「だーっ! 元はと言えば、あんたの所為でしょっ! こいつっ!」
涙を流しながら500歳児は怒ってれみりゃの頬を叩いた。
乾いた音が周囲に響く。
「ぴゃっ!? ぶ、ぶぇぇぇん……ぶったぁ~っ……いだいいだい……う゛ぇぇぇぇん」
頬に走った鋭い痛みに、一瞬きょとんとした顔を浮かべてから、れみりゃは泣き出した。
「ちょ、ちょっとあんた……」
泣いていたと思ったら、いきなり怒り出したレミリアを宥めようと、ふらんは手を伸ば
す。
「うるさいっ、邪魔するな! 私の姿で泣くな! 情けない!」
制止の手を邪険に振り払い、さらに往復でれみりゃからビンタを取った。
「ぶべっ! な、なじずるのぉ~? ひどいひどい、やべでやべで……びぇぇぇぇん」
両頬を強く叩かれ、弱々しく抗議しながら、流す涙の勢いを強める。
どうして自分が打たれるのか、何故このお姉さんが怒っているのか、れみりゃには全く
判らない。
「や、やめなさいよ! そんなおとなげな……きゃっ!」
「黙れっ! 私に指図するな!」
ふらんはレミリアの両手を抑え、この一方的な暴力行為を止めようとしたが、はね退け
られ地面に尻餅をついた。
「い、いったぁ~っ……な、なによぉ、もう……ほんとにおとなげないわね……」
身を起こし、痛む裸の尻を手で摩りながら、呆れ声でぼやく。
「大人気なくて悪かったわね! あんた生意気よっ!」
彼女は怒りの矛先をふらんに向けた。
無防備なみぞおちへと拳を繰り出す。
「がふっ……」
強い衝撃を受け息が詰まり、苦しげな呼吸とともに中身を少し吐き出した。
「ちょっと良い具合のお尻してるからって、偉そうに意見すんじゃないわよ!」
ふらついたふらんの両肩を両手で掴み、レミリアは身体を密着させ、両脚の太ももへ交
互に膝蹴りを行う。
「あぐっ、いだぁっ! うぎっ、いぎぃっ!」
完全な八つ当たりである理不尽な暴力に晒されながら、ふらんは己の迂闊さを後悔した。
この相手が色々な意味で常軌を逸していると言うか、とんでもなく我が侭な暴君であ
る事を、すっかり忘れていたのである。
「痛い? 痛くしてるんだから当たり前よね! 私に意見するなんて百年早いわよっ!」
涙目になった顔を覗き込み、レミリアは吐き捨てるように言うと、地面の上へ無造作に
突き倒した。
「あうっ!」
覆う物無く露わにされている背中と尻を、強かに打ち付け、ふらんは苦痛に喘ぐ。
レミリアがふらんに関わっている隙に、こっそりと逃げれば良かったのだが、ずっとぐ
しゅぐしゅ泣いていたれみりゃは、この時になって漸く泣きやみ、
「う~……ぐしゅっ、おねーさんひどいひどい! れみぃ、おうちかえるかえる!」
この場から立ち去ろうと、もたもたと動き始めた。
黙って逃げていれば、気付かれずに済んだであろうが、この余計な別れの言葉がアダと
なる。
「あぁん? ふざけんじゃないわよっ!」
わずかに宙へ浮いている程度の高さに飛び上がり、歩くのと然程変わらない速度で移動
するれみりゃの羽を、レミリアは掴んだ。
「うー! やめてやめて! れみぃ、おうちかえるかえる!」
振り解こうと身を捩るが、逆に翼が引っ張られて痛い。
「帰るですって? あんた、私をおちょくって無事に帰れると思ってんの?」
ぐいっと掴んだ羽を引っ張って、逃げようともがく獲物を引き寄せる。
「うっうー! やー! おねーさん、こわいこわい! やめてやめて!」
じたばたと両手両脚をばたつかせるが、そんな程度の抵抗で怯む相手ではない。
先ほど突然攻撃した時のように、れみりゃが本気で弾幕を放つなりしていれば、多少の
隙は作れたであろう。
だが、捕食種と言えども、ゆっくりは基本的に警戒心の薄い生き物である。
明確な強い害意を向けられていても、なかなかそれに気付けない。
「あーっ、もうっ! いらいらする声ね! 鬱陶しいったらありゃしない!」
苛立たしげに怒鳴ると、れみりゃの翼を引き千切る。
「う゛ぎゃっ! いっ、い゛ぎゃぁぁっっ!」
灼けるような激痛を背中に与えられ、れみりゃは地上に落ち、のたうちまわる。
「たかが翼を失った程度で、なに情けない声出してんのよっ!」
地面を転がる己の戯画的似姿の脇腹をレミリアは蹴り上げた。
「ごぶっ!」
新たに発生した痛みと衝撃に、油混じりの中身を少量吐き出す。
自分はただ単に遊んで欲しかっただけなのに、何故こんな攻撃を受けるのか、れみりゃ
には全く判らなかった。
判っているのは、何だか知らないが豪く凶暴なお姉さんを、どう言うわけだか怒らせて
しまったと言う事だけである。
「ほら、立ちなさいよ……あら、泣いてるの?」
左手で襟首を掴み、自分の目の高さまで持ち上げ、涙と涎に汚れた顔を覗き込み、レミ
リアは軽蔑したような声を出した。
「うー……おねーさん、ごめんごめん……ゆるして、れみぃおうち……かえりたい」
ゆっくりふらん種と違って、ゆっくりれみりゃ種は、あまりプライドが高くない。
自分より弱い者には強く出て、強い者に対しては媚びを売り、許しを乞い、哀れみを誘
う事を、別に恥とは思わない。
怖い事、痛い事、苦しい事、悲しい事、楽しくない事を、れみりゃ種は極度に嫌い、避
ける傾向がある。
もっとも、それはれみりゃ種に限ったことではなく、いわゆる通常種と呼ばれるゆっく
りの特性とほぼ共通していた。
退く事を知らず、勝敗が決するまで戦う性質を持つ、ふらん種がゆっくりの中では異端
なのである。
しかし、そんな事を全く知らないレミリアは、先にふらん種と対峙した経験から、妹の
姿の方は闘争心に溢れているのに、自分の姿をした方は腑甲斐ないと言う印象を抱き、ま
すます不満を募らせる。
「敵に哀れみを乞うな! それでも私のゆっくりか? ふざけるな!」
怒声とともに空いている右手を振り上げ、れみりゃの左頬を打つ。
「う゛ぐっ! ぐじゅっ……ど、どうしてどうして、ひどいひどいするの?」
嫌悪と侮蔑に満たされたレミリアの眼を、涙に濡れた瞳で見る。
この怖い人が何を言っているのか、れみりゃには良く判らない。
「どうしてだって? あんたが腑甲斐ないからに決まってるじゃないの!」
今度は右頬を打つ。
「あびゃっ! い゛、いだい゛いだい……もうやぁっ! しゃくやしゃくやぁ~っ!」
本能に刻まれた保護者の名前を、れみりゃは呼んだ。
強い恐怖や危機にさらされたとき、会った事も見た事もない保護者に助けを求める習性
が、この種にはある。
「……咲夜ですって? あれは私のだ! 軽々しく名前を呼ぶな!」
全幅の信頼を置くメイド長の名を出され、レミリアはさらに激高した。
姿ばかりか人間関係までも、この存在は勝手に自分の真似をしているのかと思うと、非
常に腹立たしい。
先のグングニルと言い、この存在の猿真似は中途半端すぎるとレミリアは思った。
「忌々しいっ! あー……もう、バラすわ……こんなの」
様々な液体で汚れた顔面に唾を吐きかけ、レミリアは右手で相手の左上腕部を掴み、そ
のまま潰し切った。
「あぎっ! お゛、おででぇぇぇぇっ! いぎゃぁぁぁぁっ!」
まだ失われていない右腕と両脚を、めったやたらと無意味に動かし、れみりゃは突然訪
れた激痛から逃れようともがく。
当然、襟首を掴んでいるレミリアの身体に、その右腕や両脚はぶつかる。
「……たかが腕一本で、がたがた騒ぐな! じたばたと見苦しく暴れるな! そんなに腕
が惜しいなら、こうしてやるっ!」
ぐぢゅ、ぶぢゅ、べぢゅと言う水分過多な破砕音が、夜の森へ立て続けに三度こだまし
た。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ! う、う゛ぞぉっ! ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ほとんど一瞬のうちに、右上腕部、右太腿、左太腿に、強く圧迫されるような痛みが走
ったと思った直後、それらの箇所より先の部位が身体から生き別れとなり、れみりゃは半
狂乱の態で泣き叫ぶ。
四肢が揃っているから、一つ失っただけで騒ぐのであろう──ならば揃わなくしてやれ
ば良いという物凄い飛躍した理屈である。
「あははははははっ! いい格好よ! 可愛い可愛いダルマさんの出来上がりね……あは
ははははははっ!」
自分には四肢が備わっている、それに対してこの戯画的似姿は四肢を失った。
己を情けなく侮辱するような存在が、少しだけ自分そっくりではなくなったので、レミ
リアは上機嫌である。
「いぎゃぁぁぁっ! れ゛みぃのおででぇ! あんよぉ! やだやだやだやだやだやだや
だやだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
両翼に続き、両腕と両脚を失い、ただ胴体を蠢かせ、声を発する以外何も出来ない生き
物へと変容させられ、れみりゃはひたすら泣き喚き恐怖した。
時間が経てば、その身に備わった再生能力により回復するからと言って、平常心を保て
るほど強靱な精神構造では無い。
「あははははっ……ん?」
悲痛な叫びが心地良く、とても上機嫌になり哄笑していたレミリアは、ふと視線を横に
向ける。
「あ、あぁ……あぁぁぁ……」
ぺたんと地面の上に全裸のまま横座りしたふらんが、がくがくと震えていた。
ゆっくりふらんであった時と違い、今は普通の人並みに恐怖を表現出来るようになった
ので、新たに獲得した感情表現能力を存分に発揮している。
「なにそんな怖がってるの? ふふっ、私の下僕のくせにだらしないわよ」
にっこりと、ふらんに向かってレミリアは微笑みかけた。
今しがた生き物の四肢を生きながら潰し切ると言う、とても残虐な行為を行ったとは思
えないような優しげな笑顔である。
「ご、ごめん……わ、わたし……あんたが、こわいわ……」
もう今さら虚勢を張っても無意味だし、そんな事をする場面でもないので、ふらんは素
直に思った事を話す。
「あら、そうなの? ふふっ、さっきはあんなに反抗的だったくせに……可愛い子ね」
何かにつけて自分に対して突っかかって来て、いちいち気に触る事を言っていた下僕が、
少しずつ素直になって行くのは喜ばしい事であった。
恭しく傅かれるのは退屈だが、ずっと楯突かれるのも癪に障る。
気分を害さない範囲で多少逆らうぐらいが一番だと、我が侭な主は考えていた。
「そ、そりゃどうも……ってか、どうするつもりなのよ、そのこ?」
相変わらずぎゃんぎゃんと喚いている、れみりゃを指さして質問する。
「……! ……そ、そうねぇ……」
レミリアは動揺した。
どうするつもりかと聞かれても、全く考えて居なかったのである。
動揺が声と態度に表れるのと同時に、強く存在していた威圧感はどんどん薄れて行く。
「……かんがえて、なかったんでしょ?」
「なっ!? なに言ってんのよ! ちゃ、ちゃんと考えてあるわよっ!」
育ちが良いお嬢様による咄嗟の嘘や誤魔化しは、見破れない者の方が少数であろう。
戦闘や政治、外交を行う際など心構えがある局面ならばともかく、それ以外の場面では、
育ちが良ければ良いほど結果的に正直者となってしまう。
「ふーん……そうよね、あんたのいきざまって、いきあたりばったりだもんねぇ」
レミリアの血を飲んだ事により、その記憶を一部獲得しているふらんは、彼女自身が起
こした異変や解決に動いた異変、日常の生活を思いながら言った。
「失礼ね! い、行き当たりばったりだなんて……」
言葉では強く否定したが、そのように言われても否定出来ない事実が多すぎる事に気付
き、レミリアは口籠もる。
顔を赤らめ、視線を彷徨わせ、まごまごと言葉を探すが──見つからない。
そんなレミリアの姿を見て、
「……ま、まぁ、そ、そそれはいいわよ……どうすんの、そのこ?」
可愛いと思ってしまい、ふらんもまた挙動を不審にしつつ、話を本題に戻した。
「あー……その辺にうっちゃっておく?」
投げやりな調子で問いかけつつ、手に掴んだままのれみりゃを、ぐいっとふらんに向け
て突き出す。
「って……なんで、ぎもんけいなのよ?」
こっちに振られても困ると言いたげに、ふらんは口を尖らせた。
「ぐしゅっ……れみぃのはね、れみぃのおてて、れみぃのあんよ、ないない、ないない…
…ひどいひどい……」
泣き喚くのに疲れたのか、れみりゃはぐすぐすと泣きながら、力ない声で嘆き悲しむ。
「……んじゃ、殺す?」
あんまり気が進まなそうな顔で、究極的処置を口にした。
怒りの赴くままに行動している時ならともかく、冷めている今は、抵抗力を完全に喪失
した存在を殺すのは気が退ける。
失った四肢が回復しないのであれば、殺すのも情け──しかし、この程度なら再生する
と言う事を、レミリアは話に聞いて知っていた。
そのため殺してしまうのは、いささか後味悪い気分になりそうで、どうにも踏ん切りが
つかない。
己を風刺する戯画的な生き物は、確かに愉快な存在ではない。
だが、殺すほど不快とまでは、今は思っていない。
高貴なる者であり強く力のある存在だからこそ、卑賤な弱者に対しては、刃向かわない
限り寛容であるべきだとレミリアは考えていた。
圧倒的な暴力と残虐性だけでは、カリスマのある支配者には成り得ないと言う事を一応
知っている。
「いや、ってか……それは、んー……」
少し前、まだふらんが普通のゆっくりふらんだった頃ならば、嬉々として殺害に賛同し、
自らそれを楽しみながら実行したであろうが、今は違う。
すでに精神構造や考え方などが、ゆっくりふらんと言う種から離れているため、哀れみ
や情けなどの感情も備えている。
滑稽なほどに無様で哀れな者を、さっくり殺してしまえ、と言って切り捨てるのに躊躇
いがあった。
そもそも、ゆっくりふらん種は本能により、ゆっくりれみりゃ種を好んで捕食対象とし
ているが、同時に一部の例外を繁殖時のパートナー、つまり敵と認識しない求愛対象と定
義する事が良くある。
その一部の例外を決定する基準は、ふらん種の各個体ほぼ共通で、自らより強い力を持
つれみりゃと決まっていた。
一般的に、ゆっくりれみりゃ種はゆっくりふらん種より、知能も力も劣るとされている
が、それは長く生き残れるれみりゃが多くないため生じた誤解である。
れみりゃ種の戦闘能力は、だいたい生後二年を過ぎると急速に成長し、一年ほどで十年
前後生きたふらん種を追い抜く。
個体の生まれ持った素質と、その後の経験によって多少の変動はあるが、おおむね生後
二年で弾幕を放てるようになり、それから三ヶ月も経つとレミリア・スカーレットが得意
とする各種の技を、自然に会得してしまう。
威力に関してはオリジナルと比べものにならないが、対ゆっくりならば絶大なパワーで
あり、野生動物や低級な妖怪、普通の人間程度が相手ならば、倒せるだけの戦闘能力を持
つ。
そして、れみりゃ種もふらん種と同様に、生き延びれば生き延びただけ強くなる。
もっとも、戦闘能力の急成長は、生後二年からせいぜい生後四年までしか続かない。
その後の成長速度は、ふらん種とあまり変わらなくなるため、高位の妖怪などと渡り合
えるほどには、まずなり得ない。
また、れみりゃ種は強さの上昇に伴い、戦闘に関わらない能力が、ある一定段階まで退
化してしまう。
語彙が減り話し方がますます幼稚になるなど、言語能力が退化する個体が大半だが、生
殖能力をほぼ喪失したり、感情表現がふらん種以上に乏しくなったり、大部分の理性を失
いバーサーカーのようになる例もある。
今でこそ四肢を失ったダルマ姿でぐしゅぐしゅ泣いているが、このれみりゃもつい少し
前までは、ふらん種を凌駕した戦闘能力を持つ、この森で最強クラスの個体であった。
そのため、ゆっくりふらんの本能が多少残り、性格や思考が影響を受けているふらんは、
ゆっくりだった時の自分よりも強いこのれみりゃに対して、なんとなく好意を抱いている。
「なんていうかな……べつに、このこわるいことしてないんだし、ころしちゃうのはひど
くない?」
とりあえず殺処理に関しては、反対であると意思表明をした。
本当は「わたしといっしょにつれてかえったら?」と言いたいが、よく考えると自分を
この後どうするつもりなのか、レミリアはまだ言っていない。
ほぼ確実に彼女が自分を連れ帰るであろうと予測はしているが、下手な事を言うと余計
な意地悪をされかねないので、ふらんは発言に気をつけている。
「んじゃ、どうしろって言うのよ! 反対するなら代案を出しなさいよ!」
自案を下僕に否定され、主は機嫌を損ねた。
今のところ、れみりゃを連れ帰ってペットにすると言う選択肢は、レミリアの中に存在
しない。
すでに良く判らない生物を血を与えた下僕としたのだから、もう充分だと考えている。
「だいあんっていわれても……このこ、こんなにしたのあんたなんだから、あんたがじぶ
んでかんがえなさいよ!」
そのレミリア自身が考えた案に、代案も出さず反対している事は棚に上げ、ふらんは語
気を荒げた。
意見に反対されたからと言って、目に見えて不機嫌になったレミリアに対し、無性に反
発したくなったのである。
「なによ! 別に放っておいたって、別に……!」
言いかけて、レミリアは気付く。
何故ふらんが放置にも殺害にも賛同しなかったのか、直感的に察した。
にやっと人の悪い笑みを浮かべ、
「ふーん、そっかぁ……そう言う事ね……ふふっ」
揶揄するような態度を示す。
「なっ、なにが……そ、そういうことだってのよ……!」
顔を赤らめ、上手く回らなくなった舌で、照れを隠すように強く言った。
れみりゃに好意を感じているという事実が、レミリアに勘付かれたんだろうと、ふらん
もまた正確に推察している。
「あはっ、照れちゃって可愛いわね。ふふっ、良いのよ、それならそれで素直に言えば良
いじゃない」
四百数十年以上ずっと思春期な御歳五百歳のお嬢様は、他者の恋愛に強い興味と関心を
覚える。
妹に似た者が、自分に似た生き物に対して、好意と執着を持っているのが嬉しく愉快で
あった。
気分が良くなると寛容な気持ちになり、それを誇示し、感謝と尊敬を受けたい欲求が生
じてくる。
「良いわ、あんたもそいつも私が面倒見てあげるわよ……ふふっ」
さぁ思う存分に賞賛するが良い、とばかりにレミリアは薄い胸を張った。
「……くっ……あ、ありがと……」
得意の絶頂になっているのを見ると、どうにもそれを崩したやりたい衝動が芽生える。
だが、ここでまた我が侭すぎる相手の機嫌を損ねるのは得策ではないと、ふらんは現実
的な判断を下し、横を向いて視線を逸らしながら礼を述べた。
「ふっふーん、あんたもだいぶ素直になったわね? ほらほら、もっと喜びなさいよ……
あははっ」
レミリアは調子に乗った。
くすくすと笑いながら、ふらんを冷やかし、からかう。
「くっ……こ、こいつ……」
すげぇむかつく。めっちゃむかつく。ぶんなぐりたい。
嬉しくはあるが、それ以上に腹立たしい。
ぐっと唇を噛み、拳を握りしめて、ふらんは怒りを堪えた。
「ああ、そうだ! 良い事思いついた!」
上機嫌なレミリアは、名案を思いついたとばかりに、ぽんと手を打つ。
「……あっそ、よかったわね」
対照的に不機嫌なふらんは、吐き捨てるように言った。
「ええ、とても良い案よ、きっとあんたも喜ぶわ! 良かったわね!」
にんまりと笑いながら、レミリアはふらんに歩み寄る。
「へっ? わたしが、よろこぶ……?」
何を言ってるんだこのガキは、と口には出さず思いつつ、視線をレミリアに向けた。
「ふふふ……これが好きなんでしょ? だから……」
手にしていたれみりゃを、ふらんの足下へ猫の子でも投げるように放り捨てる。
「う゛びゅっ! う゛ぁぁぁぁぁん! いだいいだい、ひどいひどい」
両翼と両腕および両脚が失われているため、れみりゃは受け身を取る事が出来ず、顔面
を地面にぶつけ悲鳴を上げた。
再生能力によって切断面は早くも塞がっているが、まだ奪われた部位の回復は始まって
いない。
失った部位を蘇らせる際に、外部からの栄養補給が無いと、本格的な再生がなかなか始
まらず、そのスピードも栄養が充分な時より遅くなる。
「……だ、だから……な、なんなのよ?」
一瞬、痛くて泣いているれみりゃを介抱しようか迷ったが、ふらんはレミリアへの質問
を優先した。
好意を抱く相手が粗略に扱われ泣かされた事に文句の一つも言いたいが、それよりも何
を企んでいるのかが気になる。
この相手の発想が、あまり賢くない方向へ常軌を逸しているのを、ふらんは身を以て知
っているからだ。
「ふふっ、決まってるじゃない……だ、だか、だから……そ、その……」
言いかけて、レミリアは顔を紅く染め、もじもじと視線を彷徨わせる。
「……あー……すっごくいやだけど、あんたがなにかんがえてるか、わかっちゃった……」
ふらんは、うんざりとした顔でぼやく。
かくの如き反応を示しながら言い淀む案なんて──エッチな事としか思えない。
「そ、そう……は、はは話が早くて、う、嬉しいわ……じゃ、しなさい!」
「なにを?」
レミリアが何を自分にさせたがっているのか、ふらんには判っているが、あえてとぼけ
て見せた。
思惑通りに動くのは癪である。
どうせ具体的に命令されたら身体が勝手に動くのだから、その恥ずかしい命令をレミリ
ア自身の口から出させる事で、少しでも一矢報いてやりたい。
「なっ! な、何って……き、決まってるでしょ! あ、アレよアレ!」
大半の人間が変態的倒錯行為に分類するような、そこそこマニアックな性的虐待を、つ
い先ほど嬉々としてふらんに行ったくせに、レミリアは羞じらっていた。
多感な思春期の乙女であり、育ちが良く高貴なるお嬢様は、ノリノリなプレイ中でも無
い限り羞恥心を忘れない。
最終更新:2008年09月29日 19:42