ゆるやかな傾斜の山道を歩いていると、遠くの茂みから
ゆっくりれいむが現れた。
茂みから反対の茂みへ、道を横切ろうとしているれいむの側面には木の棒が付いている。
ゆんしょゆんしょと、ゆっくり跳ねるたびに木の棒の続きが茂みから現れ、
れいむの反対側の側面にも棒がついていて、2本の棒の間に布が張ってあるのがわかる。
さらに跳ねると、棒のもう一方の先を付けたゆっくりれいむが現れ、
2匹のゆっくりれいむが、ゆっくりサイズの担架を運んでいるのだとわかった。
担架に張ってある布は生体ゆっくりを1匹乗せられる程度の面積があり、
平行に渡してある棒の間はれいむの横幅より少し短い幅しかなく、
その棒の間に体をはさんで、内側から突っ張ることで担架を支えているようだ。
「ゆんしょ、ゆんしょ」
「ゆんしょ、ゆんしょ」
2匹が棒でつながっている状態の為、跳ねる距離やタイミングを合わせないと
うまく前進する事が出来ない。その為2匹で掛け声を合わせてゆっくりと跳ねていた。
ゆっくりが1匹で跳ねるよりも1歩1歩の間隔が長い為、すぐに追いついてしまう。
2匹のれいむは近づいてくる人間に気付いたものの、担架の棒に挟まれている為
人間の方に向き直る事が出来ず、横を向いたまま話しかけてきた。
「ゆっ!ゆっくりしていってね!」
「れいむたちにかまわないで、そのままさきにすすんでね!」
「お前達、そんなもの担いで何やってるんだ?」
「ゆ?れいむたちはきゅうきゅうしゃだよ」
ゆっくり達の間で救急車ごっこでも流行っているのか?
れいむは構わず先に進めと言うが、一生懸命担架を運ぶゆっくりの姿が可愛らしいので、
様子を眺めていたい衝動に駆られる。
「ああ救急車か、邪魔はしないから、私の事は気にせずにそのまま続けてくれ」
「ゆう…ほんとうにじゃましないでね?」
れいむ達は再び、ゆんしょゆんしょと前進を始め、道の反対側の茂みに入り込んで行く。
あまりにもゆっくりした行進だが、その後ろを距離を開けて付いて行く事にした。
棒の間に無理に挟まっている為、れいむの体を後ろから見るとずん胴なひょうたんのように窪んでいる。
担架に張ってある布は、元は白かったのだろうが洗っていないらしく、土や餡子がこびり付いて
汚れに汚れていた。遊びで餡子は付かないだろうし、実際に救急車として使っているのだろうか。
「ゆんしょ、ゆんしょ、みえてきたよ!」
先頭のれいむがそう言うと、前方に1匹のみょんが佇んでいた。
見れば頬の皮に小さな傷があり、ぽろぽろと涙を流しながらえぐえぐと嗚咽を洩らしている。
「マラっ、マラっ…」
「ゆっくりしていってね!いまきゅうじょするよ!」
「ち、ちーんぽ!」
2匹のれいむは体を器用に変形させて、担架をその場にストンと落として
みょんの左右に跳ねていくと、傷のある側に近づいたれいむがその傷をぺろぺろと舐めだした。
舐めて直すだけだったら、担架はいらないんじゃないか?
「ぺーろ、ぺーろ」
「ぺっ、ぺにぃぃ!」
「ゆっくりがまんしてね!」
傷を舐められてしみるのだろう、みょんは嫌がるようにれいむから離れようとするが、
反対側に付いたれいむに阻まれて逃げる事が出来ない。
それでもじたばたと暴れようとするみょんに舐める側のれいむが怒り出す。
「もうっ!うごいたらなめられないよ!かんじゃをおさえてね!」
「わかったよ、みょんはうごかないでね!」
「どぴゅっ!?」
押さえる側のれいむがみょんの頭上に飛び乗ると、
みょんの体は楕円形に大きく歪み、口から少量の餡子が飛び出す。
頭上にのったれいむも、振り落とされないよう体を低くして、みょんの頭に
れいむ型の帽子が乗っかっているかのような形になった。
「ぺにすっ!ぺにぃぃぃ!」
「ぺーろぺーろ、ゆ?なんだかちょっと甘くなってきたよ?」
「ど、どぴゅぅぅ!」
上から押さえつけて側面の皮が伸びた状態になっていた上、
舐め続けた事で傷口が広がり、餡子が露出してしまう。
それでもれいむは気にせずに、甘さを楽しみながらみょんの頬を舐め続け
餡子に直に触れられる痛みにみょんはますます暴れだした。
「うごかっ!ないでねっ!」
「どぴゅ!どぴゅっ!」
「ぺーろぺーろ、しあわせー!」
上に乗ったれいむはみょんの動きを止めようと、上下に跳ねてみょんを押さえつける。
その度にみょんは口から餡子を吐き出し続け、もう1匹のれいむは餡子を舐める事に夢中になっている。
これは治療じゃなくて拷問じゃないのか。
餡子を吐き続けたみょんが痙攣を始めても2匹は治療を止めず、ついにみょんは動かなくなってしまった。
「お、おい、そのみょんもう死んでるぞ」
「「ゆゆっ!?」」
傷を舐めていたれいむは言われて初めて気付いたのか驚愕に目と口を見開き、
上に乗っていたれいむもみょんの前に降り、みょんが苦悶の表情で死んでいる事を確認すると、
「ゆぅ…てをつくしたけど、たすけられなかったね」
「てんごくでゆっくりしてね…」
みょんの死を悲しがりだした。自分達の治療が原因だったとは思っていないようだ。
すると突然、片方のれいむのリボンがぴくっと動いた。
「ゆっ!あたらしいかんじゃだよ!すぐにしゅつどうするよ!」
「ゆゆっ!」
2匹はぴょんぴょんと、近くに置きっぱなしにしていた担架に向かう。
2本の棒の片方を咥えて持ち上げると、体を斜めにしながら棒の間に挟まり、
器用にもう片方の棒も持ち上げる。
せーの、とでも言わんばかりにリズム良く体を沈み込ませた所で聞いてみた。
「なあ」
「ゆっ?どうしたの?」
「その、お前達は怪我をしたゆっくりが、どこに居るかわかるのか?」
「わかるよ!だってきゅうきゅうしゃだもん!」
自信満々に言うと、またれいむ達はリズムを合わせて前進して行く。
いい加減な生き物だから、救急車の役をすれば患者の位置も感じ取る事ができるらしい。
先ほどぴくっと動いていたリボンをセンサーにしているつもりなのだろう。
またゆっくりとした行進の後ろをついて行くと、今度はまりさが叫びながら転がりまわっていた。
「いだいぃぃぃ!うわ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁん!」
「ゆっ!じゅうしょうだね」
「すぐにたすけるよ!」
転がるまりさの底には小さな穴が開いていて、どろりと餡子が漏れ出していた。
近くにある上部の尖った石にも餡子がついている。この上に乗って傷を作ってしまったようだ。
足にあたる底面の痛みに跳ねることが出来ないようだが、ゆっくりなら安静にすれば自然治癒するだろう。
2匹のれいむは泣き叫ぶまりさの横に担架をストンと下ろし、まりさを担架の方に押すと、
まりさはコロンと転がって担架の上に傷のついた足が乗った。
「ゆ゛、ゆ゛ぎぃっ!」
「ゆっくりはこぶよ、がまんしてね!」
後頭部を下にすればいいのに、傷の付いた足が不潔な布に乗った為、
土や古い餡子が傷口にしみたまりさは苦痛に顔を歪める。
それでも動けない自分を仲間が運んでくれる事に安心したのか、唇を噛んでぐっと我慢した。
担架を持ち上げる際は一旦片側の棒を上げるが、まりさが落ちないよう慎重に、
れいむ達は体を器用に使って左右の棒を交互に上げていく。
時間をかけて担架を持ち上げると、再びタイミングを合わせて前進を始めた。
布の上にまりさを載せて運ぶ姿は、神輿の様にも見える。
少し歩くと、眼前に川が現れた。山道だが上流ではない為、流れはそこまで速くない。
縦列駐車の要領で川のすぐ側に平行に止まり、ゆぅと一旦息をつく。
「ゆ?どうしたの?」
担架にのったまりさが疑問の声を上げるが、れいむ達は返事をせずに、
川に面した側の棒をゆっくりと下げていく。
斜めになった担架の上でまりさは川に向かって落ちそうになり、慌てて重心を川の反対に寄せる。
「ゆゆっ!?おとさないでね!ぜったいおとさないでね!」
「ああ、そんなセリフを言うと…」
「ゆ゛う゛ぅぅっ!」
角度が付いた担架の上からころんと転がったまりさは、じゃぽんと音を立てて川に落ちた。
流れこそ速くないもののそこそこの深さはあるらしく、すぐに沈んで気泡だけが上がってくる。
綺麗な水の中で何か叫ぼうとしてるのか、まりさは口をぱくぱくと開閉するが、
底面の傷から餡子が水に溶け出し、まりさ自身も川に流され行ってしまった。
れいむ達はストンと担架を下ろし、一仕事終えたといった顔で満足しきっている。
「な、なあ…」
「ゆ?」
「なんで川に落としたんだ?怪我をしたまりさを助けるんじゃなかったのか?」
「ゆー?」
そんな事もしらないのか?とでも言いたげな顔でれいむ達はため息をつき、
自信満々に胸を張って答えた。
「あのまりさはゆっくりできなくなったから、らくにしてあげたんだよ!」
「そうなのか…ゆっくりは足を怪我したら殺しちゃうのか?」
「ゆっくりできなくなるよりはましだよ!」
本当にそうなのだろうか。試しにれいむ2匹の頭を掴んで底面が見えるようにコロンと転がし、
底面に人差し指をぷすぷすと差し込んでいく。
「ゆぎゃっ!?いだい゛!なにずるのぉぉ!?」
「やめでね!ゆっくり゛なおじでね!?」
「直すの?さっきのまりさは直さなかったよね」
直して欲しいと叫ぶれいむ達を掴み、川の上に持ち上げると、
2匹とも目から滝のような涙を流し始めた。
「ゆっくり出来なくなったら、どうするんだっけ?」
「ゆ゛ぅっ!じにだぐないでず、なおじでぐだざい!」
「おねがいじまずぅぅ!」
「「おとざないでね!ぜっだいおとざないでね!」」
「ああ…そのセリフは落として下さい、って意味だよ」
2匹のれいむを掴む手を離すと、どぷんと川に落ちたれいむ達は
まりさがしたように口をぱくぱくと開閉しながら流されて行く。
後に残ったのは汚い担架のみである。
さて帰るか、と立ち上がり後ろを振り返ると、2匹のれいむが固まっていた。
先ほど落としたれいむとは別の個体のようだが、その2匹も汚い担架を担ぎ、
目と口を全開に広げてぷるぷると震えている。
ゆっくりの救急車は怪我をしたゆっくりの位置がわかるらしいので、
さっき底を傷つけたれいむ達を感知して急行してきたのだろう。
助けに来たゆっくりが目の前で川に落とされたので、恐怖に固まっているようだ。
この付近にどれだけのゆっくり救急車が居るのかはわからないが、
傷つけたゆっくりを助ける為に現れたゆっくり救急車も捕まえれ同様に傷つければ、
全ての救急車がこの川に集合するのではないだろうか。
目の前で固まっている2匹のれいむを捕まえる為に1歩踏み出すと、
れいむ達ははっと我に返って自分の危険を察知した。
「ゆっ!ゆっくりしないでにげるよ!」
「ゆんしょ!ゆんしょ!」
担架を捨てて散り散りに逃げればいいのに、わざわざタイミングを合わせた跳躍で
ゆっくり方向転換しようとしている。担架の側面をがっちり掴んであげると、
跳ねる事も出来ずにゆさゆさと体を揺さぶる。
「は、はなしてね!ゆっくりいかせてね!」
「まあ待ちなさい、他にもゆっくりの救急車は居るのかな?」
「ゆうっ、いるよ!だかられいむたちははなしてね」
「そうか、それじゃあれいむ達は、他の救急車をおびき出す為に怪我をしてね!」
「ゆううぅっ!?たすけてぇぇ!」
数日後、川の下流に数百匹を超えるゆっくりれいむの皮と、
尋常ではない量のあんこが流れ着き、里では異変の前兆かと問題になった。
いくらなんでもこんなに居るとは思わなかった。
おわり。
540 名前:名無したんはエロカワイイ[sage] 投稿日:2008/09/30(火) 11:53:07 ID:F1DZLaW9O
負傷したゆっくりの前に現れる、担架をくわえた二匹のゆっくり
「ゆっくりきゅうきゅうしゃだよ」と負傷ゆっくりを乗せて運び、崖下に投げ落とす
助けに来たんじゃないのか?と聞くと自慢気に胸を張り
「ゆっくりできなくなったから、らくにしてあげたんだよ!」
最終更新:2008年10月18日 14:29