初SSです。
酷い目にあわない性格の良い
ゆっくりがいます
まだ虐待シーンがありません、許して。
「「「「「「「ゆ~ん、ゆ~ん」」」」」」」
心地よい声を出しながら人里をバスケットボール大の成体れいむと成体まりさのペアと
まだバレーボールには足りないくらいの子まりさ3匹、子れいむ2匹、合計7匹の親子が歩いていた。
彼らの目的の家まで後もう少し。
「おにいさん、きっとよろこんでくれるよ!」
「きっとゆっくりしてくれるね!」
「たのしみだね!」
この一家は畑荒らしをしに来たわけでもなければ、ゆっくりプレイスを求めて人家を目指しに来てるわけでもない。
一ヶ月ほど前のある日、この一家が散歩中にれみりゃに襲われた。
たまたまそこは森の中でも陽射しがあまり通らない場所だったために、
連日餌を取れずに腹を空かして昼間に活動していた胴体付きのれみりゃに狙われたのだ。
昼間だった為に一家は、捕食種に対して無警戒だったのも重なった。
「「「「「「「「「れ、れみりゃだぁ~~~!?」」」」」」」」」
泣き叫び、逃げようとしたが、子ゆっくりが直ぐに一匹食べられ、もう一匹捕まれる。
「あま、あま、だどぉ~」
「でいぶのごどもがああああ゛あ゛ぁぁあ゛!!!!」
「ゆ、ゆっくりしないでにげようね!」
「おかーさぁぁぁぁぁぁん!!!」
「おねえちゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
二匹目の子ゆっくりの餡子を吸い尽くしたれみりゃが次のゆっくりに手を伸ばそうした。
その時、
「おー、身体つきだ。ラッキー」
そう言って、すっとれみりゃの身体を持ち上げる影が一つ。
それが今一家が向かっている家に住むお兄さんだった。
たまたま人里に近い場所だったこと。
お兄さんがたまたま散歩中だったこと。
まさにご都合主義と言っていい偶然の出来事だった。
「こりゃ久しぶりに肉質が食べれるな」
お兄さんとしては、ここのところ野菜とご飯ばかりで肉を食べてない。
たまに食べるのは魚なところに動く肉まんがいたので捕まえただけであるが、
このゆっくり家族にとっては天から使わされた救世主であった。
「んー、あー、お前らもこんな人里に近いところにいたら殺されても文句言えないぞ」
胴体付きのれみりゃを捕またせいで、掴んでるとはいえじたばた動いていて煩わしかった。
別に虐待お兄さんでもない彼は、他のゆっくりにまで手をかける余裕はそんなになかったのでそのまま去ることにした。
しかし、一家にとっては恩人である。
一家は遠巻きにお兄さんがどの家に入るか、里の側で見送ると巣へと戻っていった。
「「おにいさん、こんにちは!!」」
お兄さんの家の玄関前に来るとまず親れいむと親まりさが大きい声を上げた。
「なんだなんだ。お前ら?」
家の奥からどたどたとした音が聞こえてくると、直後にお兄さんが扉を開ける。
「なんだお前ら? まさかここを自分の家だなんて言うんじゃないだろうな?」
この村でもゆっくりによる畑荒らしや家荒らしは、少ないとはいえあることだった。
例にもれず、お兄さんもこの一家がゆっくりプレイスを求めて、家にやってきたのかと思ったのだが、
「「「「「「「おにいさん、このあいだはありがとう!」」」」」」」
次にゆっくり達から出た言葉は「ありがとう」であった。
?と頭をかしげるお兄さん。
こいつらに何かしたっけ? と不審に思っていると
「れみりゃからたすけてくれてありがとう! おれいにこれをもってきたんだよ!」
「これでゆっくりしてね!」
と言って、親まりさが帽子から蜂の巣を取り出した。
(あぁ、この間捕まえたれみりゃに襲われてたゆっくり達か)
どうやらそのゆっくり達が恩返しに来たらしい。とお兄さんは理解した。
ゆっくり達にとって蜂の巣を取ることは下手したら命にかかわることである。
更にハチミツは野性でくらすゆっくりが共食い以外で得られる最上級の甘さの食べ物だ。
たまにやってくる畑荒らしをした上にゆっくりプレイス宣言する害獣なゆっくりと違って、この親子は義に厚いようだ。
(別にそんなつもりじゃなかったんだけどな)
と思ったが、くれるというので貰っておくことした。
ゆっくりが登場したおかげで幻想郷の甘味事情も大分改善されたが、ハチミツで得られる甘さはそれとは違ったものだ。
ここは有り難く行為を受け取っておこう。
「「「おにいさん、これもうけとってね!」」」
なんてお兄さんが考えていると今度は子まりさ三匹が帽子にいっぱい詰まったキノコをお兄さんの前に出した。
「こ、これは……!?」
お兄さんは驚いた。
なんとマツタケが一本、二本、三本、いやザル山盛りにしても溢れそうなくらいの量があった。
これだけの量を見つけるのは人間だったら大変である。
「れいむたちもがんばったんだよ!」
「このキノコもおいしいからたべてね!」
えっへん、と子れいむ達が胸を張る。
売れば一ヶ月は、いやもしかしたら2~3ヶ月分の収入を楽に越えるかもしれない。
ゆっくり一家にとってはあんまりとれない美味しいキノコをお兄さんに食べてもらいたいと頑張っただけであるが、
お兄さんからすれば十分過ぎるほどのお釣りが来る御礼である。
「こんなに貰っていいのかい?」
ついそんな感じでゆっくり達にお兄さんは尋ねる。
「おにいさんはいのちのおんじんだからね!」
「とてもゆっくりとしたいいひとだよ!」
なるほど。人間の自分からすれば些細なことでも、こいつらからすれば一家の全滅を救ってくれた命の恩人なのだろう。
だから、こんなにお礼をしてくれるのだ。
とお兄さんは思った。
「少しここで待ってるんだぞ」
そう言ってお兄さんは家の中に戻ると、少ししてまた玄関前に戻ってきた。
手には飴玉がいっぱい入った袋と野菜がいっぱい抱えられていた。
もっと色んなお菓子を上げることも考えたが、あまり豪華すぎるものだと野性に暮す彼らの舌が肥えては大変だ。
なのでハチミツ程度の甘さの飴玉を袋いっぱいと一家がしばらく暮らすには十分な野菜を渡すことにした。
「これを持ってきな」
「ゆっ!? おにいさん、まりさたちはごはんがほしくてしてるんじゃないよ!」
「そーだよ!」
「いやいや、お前達がくれたキノコは人間にとってとても手に入りにくくて珍しいものなんだ。とても嬉しかったのと貰いすぎだと思ったからそのお礼さ」
マツタケが高く売れるからとか説明するより、釣り合わないと言っといた方がゆっくりには理解させやすいだろう。
そうお兄さんは思った。
「おにいさん、ほんとうにいいの?」
「あぁ、いいぞ。持ってけ」
「「「「「「「おにいさん、ありがとう!」」」」」」」
お兄さんから貰ったいっぱいの食べ物を親まりさと子まりさが帽子に詰めるのを見て、お兄さんは本当に賢いゆっくりで珍しいな、と思った。
我慢ができずその場で齧りだしてしまう子ゆっくりすらいないのはお兄さんを感心させた。
「それじゃ、おにいさんかえるね!」
「おにいさんはとてもゆっくりしてるひとだね!」
「「ひとだね!」」
「こどもたち、ゆっくりかえるよ!」
持ち終えた一家は、そう言って最後のお辞儀をした。
「他の人間がみんな良い人とは限らないからね。絶対に他の人に同じことをしたら駄目だ。今回は運が良かったと思うんだ。
前にも言ったけど人里は危険だから近づかないようにな」
「「ゆっくりりかいしたよ!」」
賢い一家だ。普段も人里に来るなんて滅多にないんだろう。
害獣として見てる人は人里にゆっくりがいたら即潰す。
食い物として見てる人は、甘い物欲しさに捕まえる。
虐待することを趣味としてる人だっている。
しかし、それはほとんどゆっくり側が人里を荒らすせいがほとんどだ。
聞くところによると近くに住み着いてるゆっくりの殆どが人里を荒らしにやってくるような酷いケースもあるらしい。
この村でも少ないとはいえ、ゆっくりに被害がたまにある。
ゆっくりがみんなあんな一家だったらいいのにな。と思いながらゆっくりが森に戻っていくのをお兄さんは見届けた。
その一家の様子を途中から遠巻きに見ていたあるゆっくりが一匹。
「ゆっへっへっへ、これはいいことをしったんだぜ」
誰が見ても聞いても一発で解るこのゲスまりさは、畑の野菜を食べ、その後、人家を乗っ取ろうと考えて人里にやってきた。
まさに典型的な真性ゲスである。
(彼女の脳内では)幾らまりさが強いといえど、人間が複数やってきたらただではすまない。
ならば、あの一家の真似をして安全に餌を頂こう。あの一家よりキノコをいっぱい集めれば家だって貰って当然だ。
ゲスまりさの目にはあの一家がキノコと交換に大量の食べ物を貰っている部分が映っていたのだ。
「さっそくかえって、れいむたちとキノコをあつめるんだぜ!」
そう言うとぴょんぴょんと飛び跳ねてゲス家族の待つ巣へと戻っていった。
続く。
最終更新:2008年10月17日 22:13