ゆっくりいじめ系1463 ユックリシテミル

まえがき

パロディです。
巧妙なトリックとか、あとから「えー!?アレってあーだったの!?」という展開はありません。ごめんなさい。
これに登場するゆっくりはモミアゲの部分とか、髪の毛の一部を手のようにして使えます。
ニコニコ動画にあった、パソコン連打するゆっくり霊夢みたいな感じで。
それと、ゆっくりの頭がそれなりに良いです。
話の展開上我慢してください。
プラス、全部ひらがなだとメンドイので(書くのも読むのも)普通に漢字使って喋ります。

では本編をどーぞ。


木枯らしが吹く寒い季節。
森に1人の男がやってきた。
20歳くらいの男性だ。
執事にも似た、その場に似つかわしくない格好をしている。
そして、それを見に集まってきたゆっくり達に淡々と告げた。
アルバイトの案内。
それは、とある実験の参加者を募集するものだった。




………それを聞いた、あるゆっくり。

「冬を越えるにはこれしかないよ……。おチビちゃん達、お母さんがゆっくりさせてあげるからね!」
「ゆゆー!おかーしゃん!がんばっちぇ!」
「おるしゅばん、がんばりゅよ!」
「しんじてゆ!」

越冬を前に、この一家は危機的状況にあった。
なぜなら冬ごもりのための食糧が、まるで集まっていないからだ。
「一緒にゆっくりしよう」と言いよって来たゆっくりは、自分の種の子供ができないと知るやいなや、マッハで逃げだした。
その結果、子守に追われて満足に狩りもできなかった。

「きっと……きっとゆっくりできるよ……!」

男の話はかなり怪しい。だが、もうこれしかない。
そのゆっくりは、子供達のために参加した。



………それを聞いた、あるゆっくり。

(ゆひひ……あの人間の話はとってもゆっくりできそうだよ!)

男の話の胡散臭さになど、まるで気がついていなかった。

(かんたんにゆっくりできるんだよ………!)

そのゆっくりは、警戒心ゼロで参加した。



………それを聞いた、あるゆっくり。

「あの話が本当なら、きっとゆっくりできるね!」
「でも、人間の言うことは信用できないよ!きっといじわるする気だよ!」

忠告をした方のゆっくりは、家族を人間に殺されていた。
だから、信用ができなかった。

「でも本当だったらゆっくりできるんだよ!?」
「ゆぅ……でも嘘だったらいじわるされるんだよ…?」

いつまでも同じような内容の会話を繰り返す2匹。
結局、どちらも折れることがなかった。

「ゆ……ひとりだと不安だから、いっしょについて行くよ」

そのゆっくりは、特に何も考えずに甘い蜜に誘われて参加した。
相方のゆっくりは、恋人と離れるのが嫌で参加した。



………それを聞いた、あるゆっくり。

「あの人間の話はとってもとかいてきね!」
「むきゅ!甘い話には裏があるのよ!」
「慎重に行動するちーんぽっ!」

この3匹は、仲良しグループだった。
子供のころから友達で、大人になった今でも狩りなどを共にしている。

「でも、とかいはになるためにはもっとゆっくりする必要があるのよ!」

そう言ったのは、3匹をいつも引っ張ってきたリーダー格のゆっくり。

「むっきゅ……いつものこととはいえ、こまったものね」
「でもそれがいい所だみょん!」

そのゆっくりは、都会派になるために参加した。
残りの二匹は、いつものことだと諦めて参加した。



………それを聞いた、あるゆっくり。

「むきゅぅう……きけんだわ………!」

そのゆっくりは、群れの次期リーダー候補の中の1匹であった。

「おバカな子達が、人間さんにだまされていじわるされちゃう……」

だとすればどうすればいいのか。
頭をひねる。

「むきゅ!閃いたわ!」

そのゆっくりは、悪い人間から仲間を守るために参加した。



………それを聞いた、あるゆっくり。

「ゆぅううう………おがあぢゃああ………」

広い巣に、1匹だけたたずむゆっくり。
このゆっくりの家族は、先日の豪雨で全滅してしまった。
運よく生き残ったのだが、このゆっくりは群れに所属していなかったため、誰も助けてくれなかったのだ。

「ゆぅ………にんげんざん………ゆっぐりざぜでぇええ………」

そのゆっくりは、寄り添う者を求めて参加した。



………それを聞いた、あるゆっくり。

「はやくご飯をとってきてね!」
「しょうだよ!はやくね!」
「もっとごはんをとってきてね!」
「はやくごはん!」
「もっとあまあまをとってきちぇね!」
「おしょいよ!」
「ごはん!」

巣に響く喧しい声を、そのゆっくりはただ1匹で浴びていた。

「ゆっ!あの人間のところにいってね!そうすればかぞくはゆっくりできるよ!」
「しょうだにぇ!」
「はやきゅいっちぇね!」
「もうおなかしゅいたいよ!はやきゅ!」

そのゆっくりは、自らの意思とは関係なく参加するハメになった。







次の日。

10匹のゆっくりが、男の説明した施設の前に集まっていた。

「ゆー!すごくゆっくりしたお家ね!」

その声を上げたのは、10匹の中でただ1匹のゆっくりアリス。
施設はドーム型のモノ。間違ってもお城ではないし、実は11匹いるとかそういうオチもない。

「君たちは参加するゆっくりかな?」

説明をしに来た男が入口に立っていた。

「そうだよ!れいむたちは参加しに来たんだよ!ゆっくり中に入れてね!」

随分と傲慢な態度だったが、男は気にすることなく門を開けた。
するすると入っていく10匹。
最後の1匹が門をくぐると、男はバゴーンと音を立てて門を閉めた。

「ゆゆっ!びっくりしたよ!」

抗議の声を上げたのは、小さなゆっくり霊夢だった。



施設に入ってすぐの部屋は、何もない部屋だった。
あるのは奥へと続く扉と、入って来た扉。
そして可愛らしい小さな座布団が20ほど。

「ゆっ!すごくゆっくりしたクッションだね!」
「これはとってもとかいはなクッションね!」

クッションに乗っかり、ぽふぽふ跳ね始めたのは4匹のゆっくり。
黙って座っているのは6匹。

「『ゆっくり館』へようこそ。ちょっとお話をしましょうか」

奥へと続く扉から、一人の男が現れた。
入口にいた男と格好は同じ。

「ゆゆ!れいむたちは実験に参加しにきたんだよ!」
「はやくゴハンを出してね!」
「こどもたちが待ってるんだよ!」

喧しく騒ぐゆっくり達を、男はまーまーと言いながらなだめる。

「では、みなさん参加ということでよろしいのでしょうか?一度実験を開始したら、10日間出ることはできませんが?」

そんなもんとっくにゆっくり理解してるぜ!とばかりに1匹のまりさが声を荒げる。

「しってるよ!だからはやく開始してね!!まりさはゆっくりしたいんだよ!」

それにそーだそーだと9匹が続く。

「そうですか。では説明を始めます。ゆっくり聞いて、ゆっくり理解してください」

男は「報酬」について話し始めた。


1.10日過ぎたらエサを山ほど送る

この説明をすると、10匹は色めき立った。
「これくらいあげます」と、運ばれてきたリヤカーいっぱいに詰まった野菜を見て、まりさなどは涎を垂らして痙攣したほどだ。


2.これ以外にもボーナスがつくかもしれない

痙攣していたまりさが、さらにビクンビクンと震えた。
実験の成績が良ければ、これに加えて綺麗な巣や美ゆっくりまで送られるのだという。


3.実験中は、美味しいご飯と外敵のいない環境が保障される

過酷な実験を想定していたゆっくりは、これに安堵の表情を浮かべた。
自然界で死ぬ大半の理由が消えたのだ。


4.実験は10日間。その間、絶対に外に出ることはできない

これはすでに知っていた説明だ。
特に反応はなかった。


5.死ぬことはほぼ無いが、痛い思いをするかもしれない

ゆっくり達の嬉しそうな顔が、少し暗くなった。
だが、すぐに元に戻る。
エサと安全な環境があるのに、そんな思いをするわけがない。
そんな安直な思考だった。



「………と、簡単な説明は以上です。詳しい話は、実験開始してから教えます。では参加する子はこちらに来てください。やめたい子は帰ってかまいません」

10匹はすぐに男のもとへと集まった。
覚悟は決まっているようだ。

「かしこまりました。全員参加ということで、始めます。ついてきてください」

男は入って来た方向とは逆にある扉を開けた。
するとそこには階段があり、地下へと降りるようになっていた。

「ちょっと身体検査をするよ。まずは君から」

先頭を跳ねていたまりさが、階段で待機していた別の男に捕まった。

「ゆゆ?なにするの?まりさに痛いことしたらゆるさないよ!」

ぷんぷん膨れるまりさを、クルクル回転させる。

「ゆべえええ!!ぎぼじわりゅいいいぃぃい!!」

そして男はまりさから帽子を取り上げた。
帽子には、1本の木の枝が入っていた。

「これは没収するよ」

すぐ横にあったゴミ箱に、木の枝が放り込まれる。

「まりさの帽子返して!」
「ほら、もう検査は終わりだ」

頭に帽子を戻し、まりさは階段を降りることを許された。

「ゆぼおぉぉおおおっ!!!」

その背後では、れいむがクルクルと回されているのだった。



「ここが君たちのゆっくりプレイスです。10日間、頑張ってください」

男は天井から顔を出して告げた。
階段を降りると、そこには穴があいており、10匹は落とされたのだ。
上を見上げる10匹は男を睨んでいた。
中には痛みにゴロゴロと転がっているものもいる。

「上にはどうやっても上がってこれません」

バカなゆっくりにも分かる。
男が顔を出している天井の穴までは、ゆうに5mはあるだろう。
ちなみに落下の衝撃は下に敷かれたクッションのおかげで吸収できた。

「では、また10日後に」

ゆっくり達の反応を待つことなく、男は顔を引っ込め、穴に蓋をした。
これでもう、ここにはゆっくりしかいなくなった。

「むきゅー。これからどうすればいいの?」

そう呟いたゆっくりパチュリーの帽子には、「1」という札が付いている。

「ゆゆっ!ゆっくりしていればいいんだよ!」

それに応えるゆっくり霊夢のリボンにも「1」という札。
これはゆっくりを識別できない人間向けのものだ。
この地下室には、いたるところに監視カメラが付いている。
後で編集して一部のゆっくり愛好家に渡すのだが、そのときどのゆっくりか分かりやすくするためだ。
そして、もうひとつ重要な意味があるのだが、それは後になって分かる。

※札が「1」のゆっくり霊夢の場合、「れいむ1」って感じで表記します。

「そうだね!みんなでゆっくりしようね!」

れいむ2もそれに続く。
狩りをする必要がないので当然だ。

「まりさは探検がしてみたいよ!」

他のゆっくりが無言で意見を肯定する中、まりさ1が唯一反対した。

「むきゅ。ここはみんなでゆっくりするのがいちばんなのよ」

ぱちゅりー2が話しかけるが、まりさ1は気にせず部屋を跳ねまわっている。
この施設は、全体的に丸い。
ドーム型であるし、上から見てもばまん丸だ。
この実験会場である地下施設も、円形だ。
今いる場所は、大きなクッションがある部屋。
談笑ルームという位置づけだ。
クッションを降りると、やわらかいマットが敷かれている。
壁は曲線を描き、東西南北に小さな扉がついていた。

「ゆゆっ!あそこに扉があるよ!」

これは個室に移動するための扉だ。
この施設は、大雑把に言うと中心に円形の談笑ルームがあり、それを囲むように廊下、そして放射状に延びるような形で個室が10ほどある。
例えるなら、向日葵の花のような形。
中心の種がある茶色い部分が談笑ルーム、黄色い花びらが個室、そんな間取りだ。

「ちちっ!ちーんぽっ!ここになにかあるよ!」

ようむが見つけたのは、赤ちゃんゆっくりを模した人形。
10体が並んで置かれており、口にはその体には大きすぎるカードキーをくわえている。
ちなみにこれは、人形ではなく剥製である。
もちろん10匹のゆっくりは気が付くはずもない。

『ゆっくり達。最初の指示を出します』

突如、部屋に響き渡る声。
部屋に仕掛けられたスピーカーから流れたものだ。
びくんと震えるものもいれば、眼を輝かせて指示を待つものもいた。

『その人形からカードキーを1匹1枚とってください』

言われるまま、10匹のゆっくりはカードキーをとった。
れいむ1はそのカードキーを眺める。
思ったよりも軽い、そしてツルツルした表面。
子供達に見せてあげたら喜ぶだろうな、そんなことを思っていた。

「とったよ!ゆっくりしないでつづきを教えてね!」
「そうだよ!まりさはたいくつしてるんだよ!」

全匹が、天井の穴があったところを見て叫んでいる。
そこにスピーカーはないのだが。

『君達の巣にはプレゼントが用意してあるから、それであけてね』

プレゼントという言葉に、10匹がゆーと歓声を上げる。

『じゃあ今から巣に入ってもらうよ。巣の入口にはカードキーと同じ絵が書いてあるから、確かめて入ってね』

れいむ1はカードキーに描かれたトンボの絵を見て、ゆっくり理解した。

『巣は廊下に出れば分かります。では移動を開始してください』

フィーンと音を立てて、扉が開く。
ゆっくり達は東西南北、バラバラに出て行った。




れいむ1は東の扉から廊下に出た。
廊下は曲線を描いており、なんだか方向感覚がおかしくなりそうだ。

「ゆ…。なんだかゆっくりできない道だね!」

誰に言うでもなく言った言葉。
だが、それに返事をするものがいた。

「ゆっ!ほんちょにゆっくちできにゃいね!」

れいむ1が目線を下げる。
そこには、小さなゆっくり霊夢、れいむ3がいた。
サイズ的に考えて、子ゆっくりだろう。

「ゆ?おちびちゃん、どうしたの?」

参加者にやけに小さいのがいたような気がするが、まさかこんな子供が?
れいむ1は首をかしげた。

「ゆぅうう……れいみゅ、かぞくがみんにゃしんじゃったのぉお……」

言いながら、れいむ3はれいむ1にすり寄った。
幼い子供、すりすりして親に甘えたい年頃だ。

「ゆっ。そうだったの。短い間だけど、れいむといっしょにゆっくりしようね」

れいむ1はれいむ3にすりすりで応えてあげた。
残してきた子供達と同じくらいの大きさだ。
なんとなく、情が沸く。

「ゆうぅうう!!れいみゅ、ゆっくちできりゅ!?ゆっくちちていってね!?」
「ゆゆ!ゆっくりしていってね!!」

ぴょんぴょん跳ねて、れいむ3は喜びをアピールした。

「いっしょにおウチを探そうね」

れいむ1の横で満足げに跳ねるれいむ3。
すぐに1つめの巣が見つかった。
入口にはナイフとフォークの絵が貼ってある。

「ゆゆ?れいむはトンボさんだよ。おちびちゃんは何の絵なの?ゆっくり教えてね」
「れーみゅはありしゃんだよ!」

れいむ3が差し出した、というより必死で加えていたカードキーにはアリの絵が描かれていた。
どうやら2匹ともハズレらしい。

「でも、ちょっとだけ見てみようね」

扉に近づくと、音もなくスルリと開いた。
自動ドアになっているのだが、れいむ1には理解できない。

「ゆ?なかなかゆっくりできそうだね!」

部屋は六畳ほどだった。
特に何が置かれているわけでもなく、殺風景なものだ。
だが野生で生きるゆっくりにとっては十分良い巣である。
部屋の隅に色が違う床があるのだが、このときれいむ1もれいむ3もそれに気が付きはしなかった。

『はやく自分の巣を見つけてください。あまりゆっくりしていると罰を与えます。違うゆっくりの巣を自分の巣にしても同じです。
 ちゃんとカードと同じ絵の部屋に入って次の指示を待ってください』

罰を与えられてはたまらない、とばかりにれいむ1とれいむ3は跳ねる速度を上げた。
次に見つかったのは、鬼の絵が描かれた部屋。

「ゆゅ・・・なんだかこわいよぉ」
「ゆゆっ!ここも違うね!」

先ほどの部屋と違い、全面ガラス張りで中がよく見える。
それにさっきの部屋の3倍はありそうだ。
しかしのんびりはしていられない、れいむは次の部屋を目指した。

「ゆっ!ここがおちびちゃんのおウチだよ!」

次に現れたのはアリの絵が張られた部屋。
念のため、カードと比較してみたが間違いはなかった。

「それじゃおちびちゃん、ゆっくりしていってね!」
「ゆゅ……」

不満げなれいむ3。
無理もない、信頼できそうな大人に出会ったのだ。
離れたくはないだろう。

「ダメだよ!おちびちゃんは自分の部屋でゆっくりしてね!人間さんにいじわるされちゃうよ!」
「ゆゅ」

それから10分ほど説得し、ようやくれいむ3はアリの部屋に入って行った。
すぐに扉はしまってしまったため、れいむ1は中の様子を見ることができなかった。

「れいむも急がないとね!ゆっくり急ぐよ!」





「ようやくついたよ!」

ようやく、れいむ1はトンボの部屋にたどり着いた。
途中、何度か他のゆっくりとすれ違ったが、なぜか口を聞く気にはならなかった。
初対面だし、あれはきっと隣の群れのゆっくりだろう。
そこまでれいむ1は社交的でもないのだ。

「すごくゆっくりしたおウチだよ!」

その部屋も六畳ほどの部屋であった。
フォークとナイフの部屋と違うのは、ふかふかのクッションが用意されていたこと。
ためしにれいむ1が飛び乗ると、全身をつつみこむ暖かい感触が返ってきた。

「ゆっくりぃ~」

思わず、眼を閉じてしまった。




『それではルールを説明します。ゆっくり理解してください』

れいむ1はその声で、眼を開いた。
どうやらクッションの近くにあるスピーカーから声が聞こえるようだ。
スピーカーの上部にはプロジェクターによって映像が映し出されている。

『ボーナスはどうやったらもらえるか、それを説明します』
「ゆっくり教えてね!」

壁に向かってれいむ1は声を上げた。



1.ゆっくり達には「虐待」をしあってもらう

これを聞かされた時のれいむ1の表情といったら。
まるでこの世の終わりのような顔だった。
人間に捕まったら地獄のような虐待をされる、というのは群れの常識だ。
まさか自分がそれをやる立場になるとは!?
そう考えるだけで餡子が思考停止してしまったのだ。
だが、次の説明で餡子が再び動き始める。


2.虐待はキッカケだけで良い。続きはスタッフのお兄さんが行う

虐待っぽいことをすればそれで任務は達成する。
そのあとは、スタッフのお兄さんがどこからか現れて、被害ゆっくりを別室に連れて行き、虐待の続きをするのだ。
別室とは、さきほどれいむ1が覗いたガラス張りの部屋。鬼の絵が張ってあった。


3.虐待をしたゆっくりには「お兄さんボーナス」が与えられる

れいむ1は、クッションの近くに置かれていた紙を見た。
お兄さんボーナスとデカデカと書かれており、その下にはいくつかの写真がある。
大きな洞窟、深い巣穴、巨木の洞、どれも素晴らしい巣だ。
これは「お兄さんボーナス」で獲得できる巣のカタログだと説明された。
思わずれいむ1の頬がニヤける。
この巣なら越冬も怖くないし、みんなに自慢ができるはずだ。


4.虐待をされたゆっくりは10日間の実験が終了するまで、ずっとスタッフのお兄さんに虐待され続ける

れいむ1は、自身の餡子が冷えるのを感じていた。
人間は怖い。
れみりあなんかよりもよっぽど強い。
そんなものにずっと虐待されたら……。
ぶるぶると体が震えてしまう。


5.虐待をされたゆっくりには「虐待ボーナス」が与えられる

お兄さんボーナスのカタログの下に、また紙があった。
これには虐待ボーナスとデカデカと書かれている。
ただ、これは選択制ではないらしく、野菜と果物が山のように置かれた写真一つであった。
比較用なのか、笑顔のゆっくり霊夢が一緒に写っている。
美味しそうな野菜だが、虐待されるのは嫌だ。
れいむ1はモミアゲを器用に使ってその紙を投げ捨てた。


6.虐待をしたゆっくりを指摘し、かつ当たっていたら「復讐タグボーナス」が与えられる。ただし、ハズレだった場合は報酬はすべてゼロになる

報酬はゼロ。
これは本来与えられるハズの基本給、野菜の山も没収するのだと、ご丁寧に説明された。

「ゆ!そんなのはゆっくりできないよ!ぷんぷん!」

怒るれいむ1。
それはそうだ、エサが欲しいから参加したのに手ぶらで帰っては意味がない。
だが、れいむ1は復讐タグボーナスのカタログを見て目を丸くした。

「ゆっ……!す、すっごくゆっくりしてるまりさだよぉ~」

紙には、美ゆっくり達の写真が貼ってあった。
美れいむ、美まりさ、美ありす、美みょん……etc
そして裏には、美味しそうな野菜と果物の山。
選択制らしい。
復讐タグボーナスでは、美ゆっくりの伴侶、もしくはエサがもらえる。

「れいむ、すてきなまりさとゆっくりしたいよ……」

れいむ1は伴侶のまりさに逃げられていた。
生まれた子供がすべてれいむ種だったから、それだけの理由で。
ゲスなまりさだった。

「すりすりしてみたいよ!」

写真の中の美まりさは、やわらかそうな肌と煌めく瞳。
どれをとっても素敵だった。
思わず、頬に粘着質のある体液が滲み出てきたほどだ。


7.指摘され、その場にいるゆっくりの過半数が「虐待した」と判断した場合、指摘されたゆっくりはスタッフのお兄さんに虐待される

もちろん、実験最終日までずっとだ。
だが今度はれいむ1はおびえなかった。
なぜなら自分が誰かを虐待することなどありえないからだ。
虐待をしなければ、犯人になることもない。
だから指摘されることもない。
実に単純な思考をしていた。


8.別に虐待をしなくても、何も問題はない

これが最後の説明だった。
無理やり虐待させるのならともかく、ゆっくりしたいならご自由にゆっくりしていいそうだ。
ならばわざわざ危険な橋を渡る必要もあるまい。
10日ゆっくりして、エサだけ貰って帰ろう。
れいむ1はゆっくりすることに決めた。


『以上で説明を終わります。最後に、クッションの下に置かれたモノをどうぞ。カードキーを近付けるとあけることができます。それと巣の移動は今から自由とします』

それだけ言うと、男の映像は途切れ、部屋に静寂が戻った。

「ゆっゆっ!」

力を込めて、クッションをひっくり返す。
そこにはれいむ1よりふたまわりほど大きい箱があった。
綺麗な装飾がしてある、まるで宝物だ。

「すごくきれいだね!子供たちにも見せてあげたいよ!」

ゆんゆんと歌いながら、カードキーを近付けた。

ピンポーン♪

そんな音がして、ガショリと箱の蓋が持ち上がる。
これも自動ドアのようなものだ。

「なにがゆっくりしてるのかなー?」

楽しげに箱を除くれいむ1。
先ほどの説明からすれば、もう中に入っているものなど予測がつきそうなものだ。
虐待をさせるのが目的だというのに、道具を与えないわけがない。
箱の中に、甘いお菓子が入っているわけがない。

「ゆ?」

そこには、れいむ1ほどの透明な箱と、茶色のビンが入っていた。

「ゆっくりりかいできないよ」

見たこともない物。
どうすればいいのかわからない。
茶色のビンには、液体が入っているので、飲んでしまおうか。
そうれいむ1が思ったときにようやく、箱の隅に入った紙を見つけた。
メモランダムだ。

「ゆ!説明書だね!がんばってりかいするよ!」

れいむ1は紙を読んだ。


<監禁>
ゆっくり虐待をするうえで、最初に必要となるのは場所だろう。
暴れられても大丈夫な場所、そして逃げられないよう閉じ込めておける場所。
虐待と同時にそれを満たすことができれば、さぞ便利に違いない。
透明な箱はその点では最も優秀な道具の一つと言える。
閉塞感と圧迫感を与えつつ動きを封じることができ、その利便性から数多くのSSに登場する。
初期のゆっくり虐待の傍らには、いつも透明な箱があったと言っても過言ではない。
そして、これを普及させるきっかけとなったSSの一つに「アリス×ゆっくり系1」があることは間違いないだろう。
この箱を手にしたあなたは、他のゆっくりを閉じ込め虐待をするのだろうか?
するのならば茶色のビンを使うといい。飲ませれば睡魔が襲い、結果、相手を確実に箱に収めることができるはずだ。
だが、する必要はないのかもしれない。すでにあなた達はこの大きな箱に閉じ込められているのだから。



「ゆ……」

れいむ1は、1時間かけてその意味を理解した。
どうやらこれを使えば「虐待」したことになるらしい。
茶色いビンの中身を飲ませれば、相手を眠らせ、この透明な箱に収納できるともある。

「で、でも……。れいむは、れいむはゆっくりするんだよ!」

そう、誰も虐待しない。
れいむは決めていた。
こっちが悪いことをしなければ、誰も自分に悪いことをしてこない。
だからみんなでゆっくりするのだ。
人間にゆっくりをお願いするのは、自分の身を守るためなのだ。
れいむ1はそうやって生きてきた。
これからもそうだ。

きっとみんなでゆっくりできるよ。
れいむ1はクッションに飛び込んだ。

「それに、ごはんに注意すればゆっくりできるよね!」

れいむ1はこう考えていた。
全員が同じものを配布されたのだと。
残念ながら、その幻想はすぐに打ち砕かれることになる。

「おねーしゃん!」

いきなり飛び込んできた声。
入口にいたのは、さきほど別れたれいむ3だった。
部屋の移動は自由と言われたのでやってきたのだ。

「おちびちゃん、ゆっくりしていってね!」
「ゆゆ!おねーしゃん、れーみゅ、こりぇよめにゃいよ!よんでよんでっ!」

おもちゃを見せる子供のように、れいむ3は一枚の紙を渡した。



<生ゴミ>
ゆっくりを長期間虐待するときに必要となってくるのが食糧だ。
人間の用意する食料は、ゆっくりにとっては上等なものばかり。
そんなときに登場するのが生ゴミだ。
生活感あふれる虐待に、思わず顔をしかめた人間も多いはず。
これが虐待道具に変わったのはいつからだろうか。
生ゴミを使ったSSで印象深いのは、やはり「灰色の檻の中で」である。
処理機としてゆっくりを利用する、感情のなさに肝を冷やした読者も多いことだろう。
さて、生ゴミを手にしたあなたは、これを誰の食卓に盛るのだろうか?
だが気をつけてほしい。この生ゴミはとにかく臭う。
灰色の世界の住人以外は手をつけにくいはずだ。



「うっかりした結果がこれだよ…」

れいむは波乱の10日間を、ようやく理解した。



つづく。














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最終更新:2008年11月10日 05:15
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