ゆっくりいじめ系1919 ダメな子 2



「むきゅ! 戻ってきたわね、お兄さん!」
「……ああ」
 体が弱いぱちゅりー種にしては、ずいぶんと元気がある。閉じこめられた精神的重圧
……ゆっくり出来ないストレスとやらを、感じていないかのようだ。
「ぱちぇには全部わかってるわ。だから、ぱちぇを選ぶと良いのよ」
「違うわ! お兄さんは、とかいはなありすを選ぶべきよ! いなかもののむさいお兄
さんも、ありすの導きでとかいはに生まれ変わらせてあげるわ!」
「まりさは役に立つよ! 狩りだって上手だし、それにすっごく強いんだぜ!」
「れ、れいむが……ぃだいぃいいい! い、痛くて、ゆっくり上手に喋れないよぉ……」
「「やっぱりれいむは無能ね」」
「ゆがぁあああ……!」
「……何の話だ?」
「お兄さんは、とてもゆっくりしたカップルを、ここから出してご馳走をくれてゆっく
りさせてくれるって言ったわよね?」

 後半の、「ご馳走」だの「ゆっくり」だのは言った憶えもないが、とりあえず「似た
ようなことは言った」と頷いておく。

「お兄さん、新しいゆっくりの世話をしたいのでしょう? なら、ぱちぇにしなさい。
賢いぱちぇが、お兄さんを奴隷として上手に使ってあげるわ」
「ぱちゅりーなんて、すぐにしんじゃう役立たずよ。それにお兄さんはもう、ありすの
とかいはな魅力にメロメロでしょう?」
「「(ぱちぇ/ありす)は、まりさを選ぶから、これでカップルは決まったわね!」」
「ゆ? じゃあ、まりさはどっちでもここから出られるんだね? 安心したよ!」
「ゆぁあああ……ど、どぼじで……でいぶはぁ……?」

 自分こそが俺に選ばれると、自信満々のぱちゅりー種とありす種。まりさ種は、どち
らにしても自分は安泰だとくつろぎ始める。そして、れいむ種はひたすら打ち拉がれて
いた。
「どうして俺が選ぶような話になっているのか、よくわからないんだが……れいむは、
自分をアピールしたりしないのか?」
「ゆ……? れ、れいむを助けてね……!」
「そうじゃなくて、れいむの良いところ、優れたところは? 俺はともかく、まりさへ
のアピールにはなるだろう?」
「ゆぅ……ゆ〜……れ、れいむは、とってもおしゃれで……」
「おしゃれなんて言えないわ。言わないでしょう、れいむ? とかいはなありすから見
れば、れいむのおしゃれなんて顔を舐め回してリボンを気にするだけだもの」
「ゆぐぅう……! で、でも、れいむは……か、狩りは、まりさほどじゃないけど……」
「むきゅ、正確に言いなさい。まりさには遠く及ばないほど鈍くて、ぱちぇの様に頭を
使うことも出来ないでしょう」
「ゆうう!? そ、そうだけど……で、でも、ぱちゅりーより……」
「ぱちぇは、この豊富な知識と冴える英知で、動きが鈍くてもご飯を集められるわよ。
れいむは何も出来ないけど」
「ゆぅ……れいむぅ……」
「ま、まりさ……! まりさなら、れいむの良いところを知ってるよね? れいむの良
いところを、みんなに言ってあげてね! れいむが素敵でゆっくりしてるって、みんな
に教えてあげてね!」
「むきゅ? でも、さっき酷い顔でまりさを罵っていたわよ」
「ぐちゃぐちゃの汚い顔で、とってもいなかものだったわ」
「ゆ〜……あれは汚かったよ」
「ゆぁああああ……!」
 言われたい放題だ。しかも反論できないらしい。
 それにしても、俺がゆっくりの中から誰かを選んで……とか……そういえば「新しい
ゆっくりの世話」とか言っていたか。

 そのことを、なぜそんな話になったのかぱちゅりー種に訪ねると、得意げな顔でふん
ぞり返って見せた。
「むきゅん! 賢いぱちぇには余計な説明は不要よ。低脳なお兄さんの説明じゃ、余計
に伝わりにくいわ」
「怒らせたいのか、俺を?」
「むきゅっ!!? ち、違うわ! お兄さんの気持ちはわかっていると言いたいのよ!
おバカな頭でゆっくり理解してね!」
「よくわかった。怒らせたいんだな」
「むきゃぁああああっ!? 違うわ違うわ! お兄さんは本当に低レベルな理解力ね!
ぱちぇの言うことがわからないなんて、さすがは愚かな人間だわ! ゆっくり説明して
あげるから、良く聞きなさい!」
「いや、いいよ、もう」
「むきゅー!? むきゅー!? むきゅー!?」
「そうかそうか、無休で……休みなく回して欲しいか。いいぞ。引き千切れるまで回し
てやる」
「むっっっきゅぁあああああっ!?」
 蓋をずらして、ぱちゅりー種を鷲掴みにして持ち上げた。蓋を再び閉めたとき、ぽつ
りと、れいむ種が呟く。
「ぱちゅりーの言い方じゃ、お兄さんがゆっくり出来ないのも当然だよ……」
「……どうして、そう思うんだ?」
 ぱちゅりー種を振り回そうとする腕を止めて、囲い越しにれいむ種へ顔を近づける。
問いかけに、後頭部の穴の痛みに耐えながら、顔を上げてれいむ種がこちらを見てきた。
 れいむ種は弱って声が小さくなっているから、しっかり聞き取ろうとしているのに、
鷲掴みにされたぱちゅりー種が、やかましく何度も咳き込んでいる。叫びすぎたせいだ
ろう。
 時折体内のクリームを咳とともに吐き出すほど激しいもので、どうにも煩いので腕を
張ってちょっと体から遠ざけた。
「バカとか……ていのーとか……ゆっくりできない言葉だよ……それくらい……れいむ、
わかるよ……」
「その通りだ。ぱちゅりーなんかより、れいむの方が賢いんじゃないのか?」
「むきゅああ!? ばがいわないでげべげふっごふげふがぼっ!」
「落ち着け。咳込みすぎて、途中から何を言ってるのかわからないから」
「むひゅ〜……むひゃ〜……で、でいぶが……れいむ、ぐぁ……げふげふっ! れいむ
が、ぱちぇより、かしこい、なんて、そんな……ぜひゅ〜ぜひゅ〜……」
 しばらくの間、ぱちゅりー種の呼吸が落ち着くのを待ってみる。何を言っても余計に
興奮させるだけのように思えたし、それで咳き込み続けられても面倒なだけだ。
 鷲掴みにされたまま、ぱちゅりー種が宙ぶらりんの状態でぜーぜー言っているのに、
「お兄さん、やめてあげてね」も「ぱちゅりー、ゆっくりしてね」も聞こえてこない。

「ふんっ、やっぱりぱちゅりーは弱っちくてダメね。とかいはなありすに酷いことを言
うから、そういう目に遭うの。ゆっくり理解できたら、これからはありすのことを崇め
なさい」
 ありす種は、何度も何度も嘲笑い罵り続けている。
 ぱちゅりー種が「ボキャブラリーも貧困な低脳」と言っていたが、確かに語彙は少な
そうだ。
「ま、まりさはグルグルしないでね! グルグル回されると、ゆっくり出来ないよ!!
まりさをゆっくりさせてくれないのなら、お兄さんはゆっくりしないで早くしんでね!」
 まりさ種は、ひたすら自分のことばかりを言っている。
 自分は助けてくれと懇願するだけなら聞き流しても良いが、必ず俺への罵倒も混じる。
ぱちゅりー種がなぜこうなっているのか、理解していないのだろうか。
「……ゆ」
 れいむ種は、冷ややかな目でぱちゅりー種を見ているだけだ。後頭部の穴が痛いのだ
ろう、あまり喋りもしないし、動きもしない。

 そういえば、れいむ種を回しているときも似たり寄ったりだったか。立場は変わって
いるが……

「そろそろ落ち着いたろう、ゆっくりキチンと答えてくれるかな?」
「むぎゅ……だ、だから、お兄さんは新しいゆっくりが欲しいんでしょう? ゆっくり
したカップルの、ゆっくりが欲しいんでしょう?」
「なんでそうなるんだ?」
「無能なクソめーりんに、飽きたから……」
「……ほほう」
「むぎゃ!? ……ゆゆ?」
 鷲掴みに、ぶらりと下げていただけのぱちゅりー種を、一度上へ放り投げるようにし
て持ち上げ、両手で受け止め、持ち直す。
 ちょうど俺の目線に来る高さへ持ち上げると、ぱちゅりー種が勢い込んで喋りだした。
「ぱちぇは、賢いの! 無能で喋れもしない、弱いクソめーりんなんかより、ずっと素
晴らしいわ! 役にも立てるの! だがら゛げふげふっ! ごぶっ!」
 口角泡を飛ばす……という言葉があるが、今のぱちゅりー種はまさにそれだった。
 大声で喋るたびに俺の顔へ唾がかかり、咳き込み始めてかかる唾の量が増え、その上
激しく咳き込んだときはクリームまでぶっかけられた。
 気色悪いことこの上ない。

「……だいたい、わかった」
「ぐぶっ! げほけほ……むぎゅ……ぞぉ……そうなのね、やっとぱちぇの言うことが
ゆっくり理解できたのね」
「ああ、どんな見当違いをやらかしてるのか、よくわかったよ」
「むきゅ?」
「そういえば、お前達は『お空を飛んでるみたい』って喜んだりするよな。こういうの」
 ゆっくりと優しく、両手で支えたぱちゅりー種を上下してやる。ふわり、ふわりとい

う感じを与えられるように。
「むきゅ……そうね、これは素敵よ。お空を飛んでいるみたいだわ。自分で動かなくて
もいいから、ゆっくりしていられるの。ゆっくりしていても、ゆっくりと景色が変わる
のが、とっても気持ちいいのよ」
「じゃあ、もっとお空を飛ぶと良い」
「むきゅ!? むきゃっ……!」
 ふわりと宙へ、ぱちゅりー種を放り投げる。途切れた悲鳴を残して、ぱちゅりー種は
高く舞い上がった。
 天井なんて上等なものはない。2階建てとは言わない、せめて屋根裏部屋がある一軒
家にと願いはするが、ここは住んでる俺が見てもボロ屋なのだ。ただし、剥き出しの梁
が見えている構造なので、上方は十分に広い。
「ゅぁぁあああああああむぎゅっ!?」
 まっすぐ上へ、梁を超えて屋根裏に届くかというほど高く舞い上がり、まっすぐ落ち
てきたぱちゅりー種を、上手く衝撃を殺すようにして受け止めてやる。
 目を回して「むひゅーむひゅー」と息を荒げているぱちゅりー種の様子に気付かない
のか、まりさ種とありす種が歓声を上げ、騒ぎ出した。
「すごいよ、お兄さん! とってもゆっくりお空へ行って、ゆっくり降りてきたよ!!
今度はまりさにそれをやってね!」
「ありすよ! とかいはなありすは、とかいはらしくお空を飛ぶ感覚を味わうべきだわ!
さぁ! ゆっくりしないで、ありすに空を与えなさい!」
 今のが「ゆっくり降りてきた」ように見えたのだろうか? それに「空を与えろ」と
は大きく出たものだ。

「まぁ、待て。ぱちゅりーが、もう一度やって欲しいと言うかもしれないだろ?」
「そんな弱っちいクズはどうでもいいから、とかいはのありすをもてなすべきだって、
どうしてお兄さんはわからないの? いなかものにもほどがあるわよ!」
「む……むきゅ……ぱちぇには、刺激が強すぎるわ。ありすみたいなクズはどうでもい
いけど、まりさにやってあげて」
「ゆゆ〜ん! ありがとう、ぱちゅりー! まりさ、ぱちゅりーが大好きだぜ!」
「ま、まりさぁあああっ!? ありすとの愛はどうしたのぉおおお!?」
「そんなの初めから無いわよ。まりさ、お礼には及ばないから、ぱちぇと交代して……」
「ぱちゅりーも、遠慮するに及ばないぞ」
「……むきゅ?」
「ほれ、もう一回行ってこい」
「いいぃいいぃいらないぃぃんむきゃぁあああああああっ!?」
 今度は狙いをつけて、先ほどよりも慎重に放り投げた。
「むきゅっ!?」
 狙い通り、一番太い梁にとすんとぱちゅりー種は着地する。
 投げた勢いがちょうど切れて、落ち始めるところで梁に着地できたはずだから、それ
ほど衝撃もなかっただろう。
「むきゅ? ここはどこ? 暗いわよ? それに、地面が細い……お、大きな穴がある
わ!? いつの間に!?」
「お〜い、穴じゃないぞぉ。下を見てみろ」
「むきゅきゅ? 穴の中から声が……むきゅぁああああぁおえげふげぶっ! ごふ!」
「咳き込んでる場合じゃないだろ」
「お、降ろしてぇえ! こんなところじゃ、ぱちぇはゆっくり出来ないわぁあ!」
「そこまで誰もいけないから、飛び降りろよ」
「ム゛リ゛い゛わ゛な゛い゛でぐほげほがへ!!」
「大丈夫だって。こっちで受け止めればいいんだから」
「げふっ……こほっ……ほ、本当に? ホントでしょうね? ぱちぇは賢いから、嘘な
んて見抜いちゃうわよ?」
「他には方法もないぞ? そこはネズミの通り道だから、のんびりしてると食われるだ
ろうし」
「むきゅあ!? じゃ、じゃあ、飛ぶわ……飛ぶわよ? ちゃんと受け止めるのよ!?」
「はいはい」
「ゆっくりやさしく受け止めるのよ!」
「注文が多いな」
「い〜ち……に〜の……むきゅ!」
「注文が多いが、頑張れよ、まりさ」
「ゆあ!?」
「むきゅ?」

 数瞬。

「むぎゅべっ!?」
 グシャともベシャともつかない音とともに、土間の床へ追突したぱちゅりー種が短い
声を上げた。顔から床へ突っ込み、衝撃でクリームが周囲へ飛び散っている。
「あ〜あ。まりさがちゃんと受け止めてやらないから」
「ま、まりさが!? どうしてまりさなの!? まりさ知らないよ!?」
「知らないってことはないだろ」
 ぱちゅりー種の様子を確かめながら、おざなりに言った俺の言葉を、れいむ種が引き
継いだ。
「まりさは……ぱちゅりーと、仲良くゆっくりするんだよね……なら……まりさが弱い
ぱちゅりーを助けるのは、当然だよ……」
「…………」
「ゆぁああ!!? そ、そんなの、ぱちゅりーが勝手に言ったことだよ!! まりさは
弱っちいぱちゅりーなんて好きじゃないんだぜ!」
「むっ、むげぅ……!」
「そうよ、何言ってるの。まりさはありすと一緒に、ここから出てお兄さんにお世話し
てもらうのよ。ぱちゅりーなんか助ける必要ないわ」
「む……げぅう……!」
 まりさ種とありす種の発言に、ぱちゅりー種がビクビクと反応する。一見したときは
中身を撒き散らして完全に潰れたかと思ったが、まだ生きているようだ。
 ただし、お得意の「むきゅ」とかいう発声が出来ないほどの重傷ではあるようだが。
「ば……でぃざぁ……ひどぃ……むぐぅ……」
 ひっくり返してみれば、歯はボロボロに欠け、顔中に裂傷をこさえている。無事とは
とても言えない有様だ。
 飛び散ったクリームの大半は、墜落するときに吐いたものなのだろうが……今も裂傷
から、ジクジクとクリームを滲ませている。
「ほら、まりさの大好きな、賢いぱちゅりーだぞ」
「ゆぁああああああっ!?」
 言いながら蓋を開けて、まりさ種へ傷だらけでクリームに汚れたぱちゅりー種を押し
つける。
「ぎだないぃいいいっ! ぎぼぢわるいぃいいいい!」
「どぼじでぞんなごどゆぐべげほがほげへべっ!」
 人間で言ったら、血塗れの脱力した他人が覆い被さってきた感じなのだろうか。
 だからって、傷ついている相手の意識があるのに「汚い」「気持ち悪い」なんてこと
は、人間ならば……仮に思っていても、言わないだろう。
「汚いぱちゅりーはゆっくりしないで、ありすのまりさから離れてね! ふんっ!」
「ぶぎゅっ!」
 傷だらけの友人──友人のはず、だよな?──を、ありす種は体当たりで突き飛ばす。
つくづく、相手を思いやるという情が、欠如した連中だ。

「さぁ、次はまりさだったな。お空を飛ぶといい」
「ゆぁああっ!? や、やめてね! やめてね! まりさ、お空なんて飛びたくないよ!
ぱちゅりーみたくなりたくないよ!」
「でも、まりさはぱちゅりーが大好きなんだろ? だったら、おそろいが一番だ」
「いやだよ! おそろいってなに!? わからないこと言わないでね! 変なことを言
うお兄さんはゆっくりしないでさっさとしんでね!」
「……とかいはなありすなら、知ってるよな?」
「ゆうっ!? あ、ありすは、空なんて飛びたくないし、弱っちいぱちゅりーは大嫌い
よ!?」
「そうじゃなくて、カップルはペアルックでお洒落するのが“とかいは”だろう?」
「ゆ……? ぺあるっく……? ペアルックね! わかるわ! とってもとかいはよ!」
「ほらな、まりさ。だから、まりさはぱちゅりーと同じ目に遭わなくちゃダメなんだ」
「いやぁああああっ! いやだっでいっでづのに、なんでわがらないの、ごのジジイ!
バガなの!? じぬの!?」
「大丈夫よ、まりさ! まりさはぱちゅりーなんて大嫌い、とかいはなありすを愛して
るって言えばいいのよ!」
「ゆ? ど、どぼじで……?」
「ペアルックだからよ!」
「わがらだいよ……」
「ありすとカップルになれば、まりさもとかいはになれるのよ。ぱちゅりーみたいに、
ボロボロで汚くなる必要はないわ」
「ゆ……そ、そうだね! ありすと一緒なら、ありすは怪我もしてないから、大丈夫な
んだね!」
「むぎゅ……ばでぃざぁ……!」
「……」
 勝利を確信した表情のありす種。救われた表情のまりさ種。傷だらけの体に追い打ち
の言葉を受けたぱちゅりー種。
 れいむ種は、また冷ややかに眺めているだけだ。

「ちょっと待ってろ、れいむ」
「ゆ……」


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最終更新:2009年01月11日 13:31
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