ある一匹の
ゆっくりが、暗くなった森の中を歩いていた。どこへ向かっているのだろう。
こんな夜中に一匹で出歩くなど、普通のゆっくりなら自殺行為である。
れみりゃやふらんなどの捕食種が徘徊しだす時間帯だからだ。
しかし、このゆっくりは、そんなもの大した問題ではないといった様子で、どんどんと進んでいった。
そこへ、一匹の胴付きれみりゃとこのゆっくりはばったりと鉢合わせした。
「うー?」
「あら、こんばんは。ゆっくりしていってね!」
このゆっくりは、捕食種を見ても全く動じずに定番の挨拶をした。
「うー♪ゆっくりしていってねだどぉ~♪」
こう挨拶をされたら、どんなゆっくりであろうと同じように挨拶を返す。それがゆっくりがゆっくりたる所以である。
先に口を開いたゆっくりは、それを見ると何事も無かったかのように再び前に進みだした。
それを見たれみりゃは、釈然としなかったのか、
「う、うー!ちょっとまてどぉー!」
「ん?」
そのゆっくりを呼び止めた。
「れみぃをみてもこわくないのかどぉ~?うー!たーべちゃーうぞー!・・・」
両手を挙げて威嚇するそのれみりゃは、内心驚いていた。
普段自分の食料になっている通常ゆっくりに、自分を見ても恐怖しない奴は居なかったはずだ、と。
だが、そのゆっくりは、微笑みながら、
「ちょこっとだけあじみしてみなさい。それでもたべたいとおもうならごじゆうにどうぞ」
と言って、自分の頬をその辺りの茂みに当てて切り、滲み出した半透明で薄緑色の中身のついた枝を咥え、
さらにそれをれみりゃに寄越してきのだ。
「う~?」
れみりゃは、言われるままに、その枝に付いた緑色を舌で舐めとってみた。
「うっ・・・にがいどぉ~・・・」
それは、酷く苦かったようだ。
れみりゃは口に入れた苦味を飲み込まずにペッと吐き出し、涙を目に滲ませる。
味見させたゆっくりは、不敵な笑みを崩さずに、
「どう?たべてみる?」
と言った。
回復したれみりゃが目をぬぐって答える。
「うー・・・えんりょしとくどぉー・・・ひどいめにあったどぉ~」
「ふふっ」
そのゆっくりは、笑顔のまま、れみりゃの脇を通り過ぎて、森の先へと進んでいった。
人間の村のある方向へ。
このゆっくりの名前は、ゆっくりえーりんと言った。
なかなか頭もよく、ゆっくりの病気や、薬草の使い方などの知識に長けているため、他のゆっくりから頼られることも多い。
また、中身が「アロエ軟膏」で出来ているので、ゆっくりの怪我に対応でき、
さらに中身が美味しくない(美味しくないハズだ。作者は食べたこと無いけど。誰か試してください)ので、捕食種からも狙われず、
さらに中身が中身なので常に健康でいられる、つまり長生きできるのだ。
そんなゆっくりえーりんが、なぜ人間の村へ向かっているのか?
それは、えーりんが元々いたゆっくりぷれいすでの、不運が重なって起こった、大量のゆっくりが死亡した出来事が関係している。
その出来事が原因で、番や恋ゆっくりを失った他のゆっくり達から責められ、それから逃れるように群れを出て行ったのだった。
居場所をなくしたえーりんが頼れるのは、その事件の時知り合った人間の青年だけだ。
だから今、こうして夜中に人間の村へ向かっているというわけだ。
またしばらく進んでいると、家々の窓から明かりが漏れてくる光景が目の前に現れた。村に着いたようだ。
(よかった、にんげんさんたちはまだねむるじかんじゃないみたい)
だから、あの青年もまだ起きている可能性が高い。
(でもあのおにいさんのおうちのいちをおぼえてないわ・・・)
というわけで、とりあえず一番近くに建っていた家の住人に尋ねてみることにした。
えーりんは玄関の前で、大声で
「ごめんください」
と言い、数秒間待った。
ガラガラと窓を開ける音が聞こえてきた。えーりんはそちらに目を向ける。
「はいはい」
顔を出したのは、
「やぶんおそくしつれいしま・・・す・・・」
「あ」
ビンゴ。なんと、あの青年だった。
「おにいさん!」
「えーりんじゃないか!どうしたんだこんな夜中に・・・上がりな」
「はい」
青年はえーりんに向かって両の手を伸ばし、えーりんを手のひらに乗せて家の中に入れた。
「さてと、どうしたんだ?何かあったのか?」
青年はタオルでえーりんの身体を拭きながら聞く。
「はい・・・じつは」
えーりんは事情を全て話した。
青年を村まで案内している最中に、ぷれいすが捕食種に襲われていたこと、
自分が居なかったので怪我をしたゆっくり達は成す術もなく永遠にゆっくりできなくなっていったこと、
生き残ったゆっくり達にそのことで咎められて、あのぷれいすはもうゆっくりできないと判断して青年を頼りにきた、
ということを。
「・・・というわけなんです」
「・・・あの時道に迷ってなければ・・・なんか俺も悪いことしちまったみたいだな」
青年は暗い顔で言った。
「そんなことありません!」
えーりんは即座に否定する。
「・・・それで、ええとなんだっけ・・」
「あ、そうです、おにいさんにおねがいがあるんです」
えーりんは、改めて青年に嘆願する。
「おにいさん、ここにすまわせてください!」
「・・・」
「ごはんはじぶんでとってきます、ぜったいにおにいさんにごめいわくはおかけしません!
おねがいします、わたしにはここしかたよれるところがないんです!おねがいします!」
顔面を床につけて青年に言う。
数秒の沈黙の後。
青年は口を開いた。
「飯はこっちで用意させてもらうよ」
「!!」
えーりんは、顔を上げ目を輝かせて、青年の言ったことを確認する。
「それってつまり・・・!」
「断る理由がないしな」
「あ、ああ・・・ありがとうございます!」
「いいのさ。君に会ってから、ゆっくりを飼ってみたいって思ってたところだしなw」
青年は笑いながら言う。
「そうなんですかw」
えーりんもつられて笑った。
えーりんが青年の家に居ついてから三日経過したある日。
こちらは森の奥深くにあるゆっくりぷれいす。えーりんが元々いた場所である。
そこの長を務めている巨大なドスゆかりんの巣穴のもとへ、一匹の成体まりさがやってきた。
「どす!どすゆかりん!」
「何よ?」
ゆかりんは不機嫌そうに、近づいてきたまりさに聞き返す。
「えーりんがいなくなっちゃったのぜ!どこさがしてもいないのぜ!
みんなしんぱいしてるのぜ!どこにいったのかしらないかなのぜ?」
ゆかりんは呆れて溜め息をついた。
これでもう6匹目だ。らんから大々的に発表してもらったはずなのだが。
「えーりんはここを出て行ったわよ」
都合の悪いことは忘れてしまう通常ゆっくりの性質に、ゆかりんは嫌気が指してきた。
まりさは、一瞬間を置いて、次にマヌケな表情で
「・・・はぁ?」
と言った。
「聞こえなかった?もう一回言う?」
「い、いや、そうじゃなくて・・・え、その・・・なんで?」
ゆかりんはまた溜め息をつく。えーりんが出て行った原因の張本人・・・いや張本ゆんの一匹であることをこのまりさは自覚していないのだろうか。
「それをあなたが聞くの?」
「どういうことなのぜ!?」
「あなたとかがえーりんにゆっくりできないこと言ったからでしょ」
「えっ」
「なにそれこわい」
ゆかりんの背後のらんが振り向いて言った。
「らん、ちょっと黙ってなさい」
「もうしわけありません」
「・・・まりさとかもれいむとかも、みんな散々えーりんをボロクソに叩いてたくせに、
いざとなると頼るのよね。恥ずかしくないのかしら?」
「ゆ・・・ど・・・どうじでぞんなごどいうのぜ?まりざなんにもわるいごどなんで・・・」
「やったっていうか、言ったでしょ。間違いなく」
「ゆぅぅ・・・」
まりさは顔を真っ赤にし、目に涙を浮かべながら俯く。
そんなまりさを見ながら、呆れた表情のまま、溜め息混じりに言った。
「そんなにえーりんが必要なら人間さんの村に行きなさいな・・・居ると思うわよ」
「ゆ!?」
まりさは顔を上げる。
「どす、えーりんはにんげんのむらにいるのぜ!?」
「恐らくね」
「どこにあるのぜ?!」
「東・・・えと、太陽さんが登ってくる方向に2時間ほどよ」
「わかったのぜ!」
巣穴から出て行くまりさの後姿を見ながら、ゆかりんは
(行った結果あなたが何をして、何をされようとも、私には関係ないことなんだからね)
と心の中で言った。
ゆかりんからえーりんの居場所を聞き出したまりさは、群れのゆっくり達を集めてこう言った。
「えーりんのいばしょがわかったのぜ!」
「ゆ!?」「どこなのよ?」
「にんげんのゆっくりぷれいすにいるってどすがいってたのぜ!」
その話を聞いたゆっくり達はざわめきだした。
三日の間に、えーりんの存在の重要性を思い知らされたゆっくり達。そのえーりんが、人間のところに居るというのだ。
「にんげんのゆっくりぷれいすってどこにあるのよ?」
「たしか、ここからたいようさんののぼるほうこうにむかってにじかんってきいたのぜ」
「いがいとちかいんだね~、わかるよー」
そこで、まりさはゆっくり達に提案した。
「みんな、えーりんがいないとこまるのぜ?」
「ゆん」
「だから、みんなでつれもどしにいくのぜ!」
それを聞いたゆっくり達は困惑した。れいむが心配そうに言う。
「にんげんはつよいってどすがいってたよ?」
「なにいってるのぜ!べつにたたかうひつようはないのぜ!それいがいでもなんとでもなるのぜ!」
まりさは続ける。
「まりさたちはかわいいんだから、それをひきあいにだしてせっとくすれば
にんげんもすぐいうことをきくにきまってるのぜ!」
常人には理解しがたい理論でゆっくり達を説得する。
そして、
「ゆ!そうだね!れいむのかわいいおちびちゃんもつれてけば、にんげんもめろめろだね!!」
それをゆっくり達はいとも容易く信じてしまった。
「それに、もしたたかったとしてもまりさたちがまけるはずないのぜ!まりさたちはつよいのぜ!」
その言葉のおかげで自信がついたのか、ゆっくり達のほとんどは村へえーりんを連れ戻しに行くことに賛同した。
だが、異を唱えるゆっくりもいた。
「むきゅ・・・でもにんげんさんって、きいたはなしだと、どうつきのれみりゃよりからだがおおきいってきいたんだけど・・・だいじょうぶなの?」
「じゃお・・・」
「ちぇんもぱちゅりーとめーりんとおなじように、しんぱいなんだよ~・・・わかるよ~」
「それに、えーりんはにんげんにつれていかれたんじゃなくて、
じぶんのいしでぷれいすをでていったんだから、えーりんのいしはそんちょうすべきだとおもうのだけど・・・」
だがまりさ達は聞く耳を持たなかった。そもそも耳が無いのだけれど。
不安そうな言葉を吐くちぇん達を無視して、
まりさは新たにこう言い出した。
「ゆ!そうだ、にんっしんっしたれいむとちぇんもいたのぜ!」
その言葉を聞いたにんっしんっゆっくり二匹は声を上げた。
「ゆ?れいむのこと?」「わかるよ~」
「もうすぐうまれるらしいっていってたのぜ?」
「「ゆん」」
二匹は頷く。
「しゅっさんっのばめんをみせてあげればにんげんさんもゆっくりしてくれるにきまってるのぜ!!」
だそうだ。
「ゆ!わかったよ!!れいむもいくよ!!あかちゃんはゆっくりできるもんね!!」
「ゆんゆんわかるよ~」
「ゆっくりできるものはおおいほうがいいのぜ!!」
なんだかんだ言っても『ゆっくりしてもらおう』としているのは感心できる。意外とこのまりさは純粋なのかもしれない。手段はともかく。
というわけで、れいむ二匹(片方はにんっしんっしている)に、まりさとありすとちぇん(にんっしんっ済み)とみょんそれぞれ一匹ずつ、合計6匹は、
「さっそくしゅっぱつするのぜ!!」「「「「「ゆーー!!」」」」」
「・・・」
それぞれの子供達をつれてぷれいすをしゅっぱつっしていった。
そのゆっくり達を、ぱちゅりーとめーりんと、幹部のらんと恋仲であるちぇんは心配そうな目で見送った。
「じゃおじゃお」「むきゅむきゅ」
「・・・なんですって」
「ほんとうだな?」
「そうだよらんしゃま、わかってね~」「じゃおぉ・・・」「むきゅ」
ちぇんはぱちゅりーとめーりんと共に、ドスゆかりんに先程の事を報告した。
「あの馬鹿・・・行くなら一匹で行けってのに・・・なんで周りの馬鹿共まで巻き込んでいくのかしら・・・」
「もしものことがあればたいりょうのゆっくりがゆっくりできなくなるというのに・・・」
「一匹だけなら群れに大した損害は無いのだけれどね・・・」
ドスゆかりんとらんは溜め息をついた。 ・・・今日は溜め息をついてしまうような出来事が多い。
あいつらは群れを森の奥に移してしばらくしてから生まれた組だから人間について知らないのは仕方の無いことだが。
捕食種の襲撃から間もないのに、また大量のゆっくりが永遠にゆっくりできなくなる事態に陥れば、このままでは群れの存亡に関わるだろう。
出発したゆっくり達が何もゴタゴタを起こさなければいいのだが、それには期待できない。というか、ゴタゴタを起こさないような展開を想像できない。
「いかがいたしましょうか?」
らんがゆかりんに問う。
「らん、指令を出します」
「はい」
「なんとしてでもあいつらを連れ戻してきなさい」
「わかりました」
「あなたのスピードなら追いつけるはず。頼んだわよ。」
「はい」
「らんしゃま、いってらっしゃいだよ~」
「じゃお」
「きをつけてね」
「ああ」
えーりんの恐らくの居場所を言ったのはゆかりんなのだから少々理不尽な気もするが、
ともかく巣穴から出て行くらんの後姿を四匹は見届けた。
「ゆ~ゆゆ~♪」「ゆっくり~のひ~♪」」
などと下手糞な歌を大声で歌いながらゆっくり達は行進を続ける。
「ゆ~!おきゃーしゃんのおうたはゆっきゅりできりゅね!」
「ゆ~ん♪おちびちゃんありがとう♪」
「なんちぇおうたなの~?」
などと雑談をしながら、ひたすら東へと進み続けて30分。
それぞれが頭に乗せていたり、口の中に入れていたりする赤ゆっくりの体重などの負担により疲れた身体を休めていると、
まりさ率いるゆっくりの群れの背後の茂みから、ガサガサと音がした。
ゆっくり達はビクッとする。
「ゆ!?だれなのぜ!?まりさたちはいまきゅうけいちゅうなんだぜ!じゃましないでなのぜ!しないならいっしょにゆっくりしてあげてもいいのぜ!!!」
とまりさは言い放ち、身構えた。
その茂みから姿を現したのは、
「はぁ、はぁ・・・よかった、まにあった」
「「「「「「らん!?」」」」」」
自分達のゆっくりぷれいすの幹部を務めている、あのらんであった。
ちなみにらんはどちらかというと群れの中では新参なほうであるが、群れに来る以前も他のぷれいすの重要な役目についていたらしく、
かなり優秀なゆっくりである。実際、らんはゆかりんの期待に応えられなかったことは一度も無かった。
なぜ以前のぷれいすを去ってきたのかはわからないが。
「ふぅ・・・」
らんは一息ついた。
「らん、どうしたのぜ?」
まりさは問いかける。
「ゆ!らんもえーりんをつれもどすのをてつだってくれるんだね!」
と、れいむは言った。その言葉に、他のゆっくり達も期待に目を輝かせる。
らんは自分達よりも遥かに強い。そのらんが協力してくれるのなら、これほど心強いものは他には無い。
だが、口を開いたらんが放った言葉は、それと正反対のことだった。
「おまえら、いますぐぷれいすまでもどれ」
「ゆゆ・・・?」
「ゆかりんさまは、まりさ、おまえがまわりまでまきこんでにんげんさんのむらにむかおうとしたことをおこっておられる。
おまえいっぴきだけがむかったならもんだいにはならなかったのだが」
「ゆ・・・?ど、どすが・・・」
「それと、ちぇんとぱちゅりーとめーりんからきいたが、やめておけ。
にんげんさんは、たとえゆかりんさまがあいてをしたとしてもかてるあいてではないのだ」
「ゆ、ゆ~!?な、なにいってるのぜ!そんなわけ・・・」
まりさが動揺するのをらんは感じ取った。らんはさらに言葉を続けようとした、
「だかr」
その時、
「ゆ!わかったよ!どすはにんげんにすらかてない”むのう”だったんだね!」
何を勘違いしたのか、にんっしんっしていないほうのれいむは頭の上に3匹の赤れいむを乗せながらこんなことを言い始めた。
「あん?」「ゆ!?」
「でもあんしんしてね!!れいむたちはどすとちがってつy」
「おいれいむ。きさまいまなんといった?」
「ゆ~?」
「ゆかりんさまがむのうだと?」
「ゆ!そうだよ!にんげんにかてないなんてつかえないどすだったんだね!!」
「ゆ!おきゃーしゃんのいうことはただしいからおきゃーしゃんのいうとおりなんだよ!ゆっきゅりりきゃいしてね!!」
親であるれいむの言うことを信じてしまった一匹の赤れいむが、親と同じく得意げな顔で言う。
「ちょ、れいむなにいってるのぜ!」「ちんぽっ!」「やめなさいれいむ!」
「おねーしゃんにゃにいっちぇるの!?」「れーみゅたちがどしゅにかちぇるわきぇにゃいでしょぉぉぉぉ!!??」
らんの様子を察知した他のゆっくり達はれいむの口を閉じさせようと飛びかかったが、
「ゆっと」「ゆむっ」
一匹の赤れいむは親れいむの髪を咥えて振り落とされないようにし、
「ゆべっ」「ぺにっ」「ゆぎゅっ」
親れいむは機敏にそのほかのゆっくりの体当たりを避けて、
「ゆびゃっ」「ぴゅぅ・・・」
頭の上にいた他の2匹の赤れいむを振り落とし、またさらにとんでもない言葉を続ける。
「だってそうでしょ?れいむたちはまけないのにどすはまけちゃうんでしょ?だからどすはれいむたちよりよわいってことだよ!!!」
「しょーだね!そんなどしゅにまもらりぇてたにゃんてはじゅかしいね!!」
「・・・」
らんは得意げな顔のれいむをみつめながらプルプルと怒りに震えている。
そして次にれいむが口を開こうとした瞬間、辺りに餡子が飛び散った。
「・・・ゆ?」
らんが中身の米粒をれいむに向かって撃ち出したのだ。米粒弾によってれいむの頬に小さく穴が開けられている。
一瞬のことだったので、れいむはらんが何をしたのか分からず、また痛みも感じなかった。
「ゆ、ゆ!?」
「・・・たたかったこともないくせに」
らんはれいむに歩み寄る。
「ちょ、ちょっとまっt」
「しったようなくちを」
身体をひねる。
「お、おきゃーしゃん!?」
「きくなぁーーーっ!!」
9本の尻尾がれいむの顔面を抉り飛ばす。衝撃で頭の上の赤れいむは地面に転げ落ちた。
ベシャッという音が近くにあった大木から聞こえてきた。
まりさ達はその方向を見る。大木には、黒い餡子と、呆然としたれいむの顔がそっくりそのまま張り付いていた。
そしてボトッという音がして、れいむの眼球が地に落ちる。
「ゆ・・・っ」「ゆうぅっ」「ゆぐぇええぇぇ・・・」「えれえれえれ」「え゛え゛ぇぇぇぇぇぇっ・・・え゛ぇ゛え゛っ」
その惨状を見た5匹は吐いた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
目を見開きながら、らんは荒い息をついている。
「ゆ・・・?」「お・・・おきゃ・・・」「・・・」
赤れいむ達は、目の前の現実が受け入れられず、呆然としていた。
「ゆっ・・・ふぅ・・・ぅっ」
らんより先に落ち着いた5匹は、
「み、みんな、にげるよ!!」
「ゆ、ゆぅっ!」
一目散に逃げ出した。先程進んでいたのと同じ方向へ。
「まっでぇぇぇぇ!!!にんっしんっじでるがらはやぐうごげないのぉぉぉぉ!!!」
「ま、まってねぇ~っ!ちぇんをおいていかないでぇ~っ!!!らんしゃまこわいよぉぉぉぉぉっ!!」
「・・・!!」
ちぇんの言葉でハッと我に返ったらんは、自分がとんでもないことをしでかしたことに気付いた。
「ゆっ・・ふぅっ」
「はぁーーー・・・はぁーーーっ・・・」
ゆっくりらしからぬ速度で全員が同じ方向に逃げ、ある程度進んだところで、まりさ達は止まった。
少し遅れてにんっしんっ組が追いついた。
「ゆはぁ・・・ゆはぁ・・・」
「ゆ・・・ごわがっだよぉぉぉぉぉぉ・・・」
ちぇんは安堵感からか、泣き出してしまった。
「ゆふぅ・・・ちぇ、ちぇん、おちついてくれなのぜ・・・おなかのあかちゃんがゆっくりできないのぜ?」
「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・ぅ」
まりさが近づいて、ちぇんの涙を舐めとる。
「ゆぐ・・・まりざ・・・ありがどうなんだよー・・・」
まりさは何も言わずに微笑んだ。その時、背後からありすが歓喜する声が他の四匹に届いた。
「ゆぅ!みなさいみんな!にんげんのゆっくりぷれいすよ!!」
「「「「ゆっ!!!」」」」
「はい、これでだいじょうぶよ」
「じゃお!」
「おお、ありがとうえーりん」
青年の家で生活しつつ、村の飼いゆっくりを治す役目に就いたえーりんは、早速現れた怪我めーりんの傷を治していた。
飼い主の男はえーりんに礼を言う。
今までゆっくりの怪我はオレンジジュースと小麦粉で治してきた村のゆっくりの飼い主たちは、えーりんの登場に喜んでいた。
わざわざオレンジジュースを使わなくても、無料でゆっくりの怪我を治すことが可能になったのだ。
「じゃおーん♪」
「こいつ落ち着きが無くてな・・・」
「げんきがいいしょうこですよ」
「そうか?」
会話をする男とえーりんを横目で見つつ、
えーりんの飼い主である青年とテーブルを挟んで向かい合っている、もう一人の青年は口を開く。
「落ち着きのあるゆっくりなんていんの?」
えーりんはそれに答える。
「わたしのむれのどすゆかりんは、いつもおちついてしじをだしてくれていましたが・・・」
「へぇ・・・」
「ある程度歳とると落ち着いてくるんじゃね?人間と同じくさ」
えーりんの飼い主である青年は言う。
今、えーりんを飼っている青年と向かい合っている彼は、青年の幼馴染である。
ちなみにこの彼、筋金入りの虐待お兄さんである。虐待死したゆっくりは数知れず。
だから、青年はできるだけ彼とえーりんを近づけたくなかったのだが、
「俺が飼いゆっくりに手を出したことがあったか?」
と言っていたので、この言葉を信じることにしたのだった。
「落ち着きのある、といえば、えーりん」
「はい?」
「君も落ち着きがあるよな。もしかして、実は君h」
と青年が言いかけたその時、
バッ
と幼馴染が物凄い速度で首を窓のほうに向けたので、青年は台詞を中断して幼馴染に問いかけた。
「どした?」
「外からゆっくりの気配がする・・・」
「はぁ?」
「ちょっくら見に行ってくるわ」
「あ、そう。いってらっしゃい」
言うが早いか、幼馴染は猛スピードで走り去って行った。
「・・・なんだアイツ。俺には気配なんて全然わかんねぇぞ」
「なんでしょうね」
「じゃおーん・・・」
「対ゆっくり限定で発動するスタンド能力とか?」
「それは違うと思うぞ」
などと雑談をしているうちに、幼馴染は青年の家へ戻ってきた。
「おかえり。で?勘は的中?」
と青年は聞く。
幼馴染の様子が妙だ。彼は口を開いた。
「・・・えーりん、聞けよ?」
「・・・?はい」
えーりんは首を傾げつつ答える。
「えーりん。君の群れのゆっくり達が君を連れ戻しに来た」
「・・・え?」
あとがき
次への構想がまとまらないのでここで一旦中断。
でもここからどう展開しよう・・・
えーりん奪還組の結末はともかく、ゆかりんとらんとか、群れから必要とされてると知ったえーりんはどう決断するのかとか・・・
またしばらく構想を練る作業が始まるお・・・
それと、以前
「森のお医者様」では『めーりん萌えの人』と名乗らせていただきましたが、
自分で自分のことを『~の人』と名乗るのも変だなと思ったので
今後は『めーりん萌え』と名乗らせて頂きます。作者は美鈴とめーりんが大好きなのです。
byめーりん萌え
最終更新:2011年07月30日 02:09