ゆっくりの中には特殊な美しさの基準がある。
生まれつきの髪飾りの形、色合い、後発的なものでは髪のつやなどがある。
しかしそれよりもっと重要なものがあった。
人里からかなり離れたところ、森の奥深く。
そこにはゆっくりの集落がある。
ある玄翁を持った少女一人に壊滅寸前に追い込まれた複数の群れが集まって出来たものだ。
それ以後、人間の存在を恐れたゆっくりたちはこの森でひっそりと暮らしていた。
時々加工所の人間に仲間が攫われることもあるが、それ以外は日差しもよく、醜い豚もといれみりゃやふらんも来ないので、
ゆっくりたちはとてもゆっくりできていた。
ある日までは。
「ゆっゆ~♪ ゆっくり~♪」
ゆっくりまりさは今日も(ゆっくりの基準で)ゆっくりしていた。
友達のありすたちと共に蝶々を追いかけたて食べたり、蜂の巣を食べようとして逃げたり、けどそれでも楽しいとてもゆっくりした時間を過ごした。
夕方になり、恐ろしいれみりゃの時間である夜になる前にみんな自分の家へ帰った。
まりさも自分の両親が待つ家に戻っているところであった。
しかし集落の自分の家の近くに戻ると、なにやらゆっくりだかりが出来ていた。
どうしたのだろう。母まりさの姿を見つけたまりさは何があったのか聞き出す。
「おかーさん、ただいま! どうしたのみんな?」
「ゆ、まりさお帰り! けど大変なことになったよ!!」
「ゆ~? 大変なこと?」
まりさは首をかしげ、母が見ていた方向を見る。
そこにはゆっくりれいむがいた。しかもただのゆれいむではない。
しもぶくれっぷりはとても大きく、大人ゆっくりの中でもかなりの巨体だ。
まりさは息を呑んだ。そのあまりの美しさに。
ゆっくりたちのなかでは、下膨れの大きさは髪飾りや髪のつや以上に美しさの基準となっている。
下膨れが大きいということは、それはとてもゆっくり出来た証拠ということであり、威厳の象徴にもなっているのだ。
人間から見たら理解できないことであるが。
まりさは見とれていたが、すぐに意識を戻す。
たしかに美しいれいむ(以下美れいむとする)だ。しかし外のゆっくりが集落にたどり着くことはそんなに珍しいことではない。
それの何が大変なんだろう?
そして気づいた。その美れいむがいた場所に。
そこには群れの長である老ぱちゅりーが倒れていた。
中身であるクリームを口から吐き出し、痙攣している。もう助からないのは目に見えている。
状況からまりさはわかった。この美れいむがやったんだと。
しかし何故大人たちは手を出さないんだ?
答えは簡単だ。皆美れいむに手を出せないのだ。
自分達のことを何よりも考えてくれ、教育してくれた老ぱちゅりーを殺したのは許せない。
だがその美しさの前に誰も手が出せないのだ。美れいむは近づくのも憚られるほどの美しさを誇っていた。
現に真っ先に仇を取ろうと動いたゆっくりのいくらかは、あっさりと寝返った他のゆっくりに殺された。
美れいむはその様子をほくそ笑んだ様子で眺めていたのだ。
美れいむは以前別のゆっくりの群れにいたが、そのあまりの美しさのあまり嫉妬を買い、追い出されたのだ。
しかし実はそれ以外にも要因はあった。
「美しいれいむのためにたべものをもってきてね!!」
美れいむがその美しさを傘に着て、群れのゆっくりに貢ぐように要求したのだ。
そして群れを追い出された美れいむは、以前骨抜きにしたありすからこの集落のことを聞き出し、やってきたのだ。
そのありすは発情して生意気にも自分に擦り寄ろうとしたのですでに殺した。
自分は美しい。この世のどのゆっくりよりも。薄汚いありすごときが近寄るな。
美れいむは本気でそう思っていた。
そしてそのありす以外の、以前から自分に完全に忠誠を誓ったゆっくりを率いて集落にやってきたのだ。
その後老パチュリーを殺害し、何匹かをその容姿で骨抜きにした美れいむは反撃も許さなかった。
寝返ったゆっくりたちは前々から老パチュリーに不満を持っていた、まりさやありすたちだった。美れいむは狡猾にもそれを狙ったのだ。
老パチュリーは人間の恐ろしさ、残虐さを必死で後世のゆっくりたちに伝えようとした。
しかし100匹単位の集落なのだ、中には愚かで自意識過剰で己のみを弁えない者も出てくる。
寝返ったまりさやありすはその筆頭だった。
そして美れいむの、悪魔の誘いを嬉々として受け入れたのだ。
集まったゆっくりたちに向かって、美れいむは高らかに宣言した。
「いまからここはこのれいむのおうこくだよ! うつくしいれいむはこのよでもっともゆっくりできるゆっくりだよ!
おまえたちみたいなうすぎたないゆっくりはれいむのためだけにそんざいするんだよ!!
うつくしいれいむにみとめられたせいえいたちはいつもおまえたちをみはってるよ!! わかったらいごはれいむのためだけに
ごはんをもってきて、れいむのためだけにはたらくんだね!!」
その後は地獄が始まった。
平和な集落は一夜にして変わってしまったのだ。
美れいむに忠誠を誓ったものたち以外は奴隷としてひたすら働かされた。
あるれいむは歌を歌えと言われ、恐怖に震えながらも歌ったが、下手と言われた挙句潰されて殺された。
あるまりさは得意の帽子で川渡りを要求され、激流の中を泳がされ、滝に落ちて姿を消した。
あるありすはすっきりされろと言われ、自信満々で発情しすっきりさせようとしたが、美れいむの興がさめた瞬間に配下の別のありすに犯された。
またあるれいむとまりさはれみりゃの肉を食わせろと要求され、子供を人質にとられれみりゃに立ち向かうも、返り討ちにあって死んだ。
その上子供たちは役立たずの子供といわれ、無残にも処刑された。
毎日普通のゆっくりの10倍以上の食事を美れいむは要求し、さらに配下のゆっくりは美れいむの威光を笠に着て他のゆっくりから搾取した。
結果ゆっくりたちはわずかな食事しか許されず、餓死するものが相次いだ。
しかしそれでも数は減らない。親達は必死で子供を生かし、自分が犠牲になってまで助けていたからだ。
美れいむは満足していた。
まさに自分の王国が持てたからだ。
この世で最も美しく、ゆっくりしているれいむは何をしても許されるんだ。
ゆくゆくはドスまりさをも手中に収め、そしていずれは人間どももれいむの威光の前にひれ伏させてやる。
美れいむは完全に奢っていた。
かつてそんな思考に陥ったゆっくりがどうなったのかわからないのだ。
その顔は美しいものであったが、しかし内面はとても正視できないほど醜いものだった。
しかしそんな暴君の政治が長く続くわけがない。
反乱の芽は芽生えつつあった……。そう、大きくなったあのまりさによって…。
続く
あとがき
なんかきめぇ丸が来る に似ちゃってますね…。なんとか自分流な結末にしたいです。
ちなみに美れいむの恐怖政治は2週間くらいです、ゆっくりはその短い間でも大きくなるという設定です。
JUMくん
最終更新:2008年09月14日 07:11