C子「Y岡さん、ここは…?」
Y岡「ゆっくり加工場さ」
「KYし…もとい文々○新聞の方ですね、お待ちしておりました。ゆっくり製菓加工工場長です」
Y岡「やあ、今日はよろしくお願いします」

工場の中に案内される2人。奥に進むにつれ、何かざわめくような音がする。
C子「この音は一体…?」

…………っ゙………………゙ι゙ぃ…………ぃ゙ゃ……………………………ペ……

Y岡「ゆっくりの鳴き声さ」


工場長「ここが当社の人気製品『揚げゆっくり一口』の加工現場です」
通された大部屋の中にはさらに、シャワールームのように仕切られた小さな部屋が並んでいる。
その一つの前で立ち止まる。耐熱ガラス製のドア越しに、その中にいる加工員が会釈する。
「や゙め゙ぢぇ゙ぇ゙ぇぇ」「ゆ゙っぎゅ゙りざぜぢぇ゙ぇ゛ぇぇぇ」「だぢゅげでぇぇぇ」「じに゙だぐだにぃ゙ー」
その部屋の床にはコンロと油鍋が置かれている。鍋の上には滑車があり、そこから一本のロープが伸びている。
さらにそのロープの先には5匹ほどのちびゆっくりがまとめて錘のようにくくりつけられており、油の輻射熱と
目前に迫った未来に喘いでいる。
「ゆ゙ーっ、ゆ゙ーーっっ゙!!ゆっぐぐぅっゔゔぅ」
親まりさが鍋の横で、滑車に掛かったロープの端をくわえ必死にちびゆっくりを支えている。口を離せば子はドボン。
あまりにもテンプレート通りだが、それだけに精度の高い“加工”法の一つだ。
「ゅっぐ、ι゛ヵ゛ぅ゙、ぇぇ゙」
油は普通の揚げ物を作る温度としては低すぎる温度に保たれている為、“加工”の触媒として先に放り込んで
おいた一匹のちびれいむは未だに絶命せず、油の中でうめき声を挙げている。
C子「おや? 滑車が鍋の上だけでなく、鍋の真横にもありますね」
工場長「ええ、いいところに気が付いてくれました。ロープを鍋の真横の滑車を経由させることで、ロープを
 引っ張るために動くと、自身が火元に近づくことになります。つまり引き上げられず落とさずの状態が
 続くことになります。以前のタイプではこの状態を適当に長引かせるのが難しかったのですが―」
構造がいま一つ想像しがたいという方は、三角定規を思い浮かべてください。直角の部分が鍋の底・火元です。
残りの角が滑車です。ちびゆっくり達は高さ部分にぶら下げられています。そして親まりさが底辺でロープを
引っ張っているわけです。

しばらく経ち、進むも引くも適わないことをようやく理解した親まりさは、動くのをやめてロープを支える
ことに専念するようになった。
Y岡「膠着状態ですね…、こういう場合はどうするんですか?」
工場長「ええ、ですがこれも“加工”のうちの一過程です。このような状態になったら…ホラ!」
部屋の中の加工員が何かのリモコンをいじくると、壁に埋め込まれたブラウン管が起動した。
それに映し出されるは棚の上辺の端から紐でぶら下げられたちびゆっくり達。そして親まりさが
それを見つけ、紐を口で巧みに手繰り寄せ、ちびゆっくりたちを棚の上に救出した。
加工員は明るい声で親まりさに呼びかける。
工員「おやぁ?まりさなら簡単に子供たちを引き上げられるみたいだね。さぁ、ゆっくりがんばってね!!」
ちびゆっくりにも映像とそれによって引き出された記憶、それと工員の言葉を組み合わせて理解できるほどの
知能は持ち合わせていた。しかしそこまでがゆっくりブレインの限界である。
「おかーしゃん、はやくゆっくりさしぇてね!!」「はやくーはやくー」「わかるよーかんたんだよー」
親まりさはふひゅるぶふゅると抗議のような息を漏らすが、ロープを咥えた状態で喋ることなどかなわないし
たとえ喋れたとしても反論など思いつきようもないだろう。
「お゙がーじゃん、ゆっぐり゙はやぐだずげでね!」「どじでひぎあげでぐれないのぉ゙?」「わがらないよぉ!!」
一向に動かない、いや動けない親に、鍋からの輻射熱に耐えかねたちびゆっくりたちが抗議の声を投げつけ始める。
C子「すごいわ!こうやって親に子を、子に親を“加工”させるのね!」
そしてダメ押しとばかりに工員がさらなる“加工”を促す。
工員「そっかー、まりさゆっくりできてないね、こんなに息切らしちゃって。重いもんね、きみの赤ちゃん」
親まりさとちびゆっくりのゆっくりブレインに工員の言葉が染み渡ってゆく。
工員「まりさがゆっくりする邪魔にしかなってないね。こいつらのせいでゆっくりできないね」
親まりさはロープを噛み締めた歯の間から息を必死に吐き出す。否定の意を表そうとしているのだろう。
工員「でも、ロープをゆっくりすぐにはなせばすぐにゆっくりできるよね。どうしてそうしないのかなぁ?」
一度持ち上げて叩き落す、これぞ基本であり王道である。
工員「そうか! まりさをゆっくりさせないやつにはゆっくりしんでもらうんだね! すぐにおとしたら
 ゆっくりしなないもんね! ゆっくり熱であぶってゆっくりくるしんでからゆっくりしんでもらうんだ!」
一瞬の静寂のち、湧き上がるちびゆっくりたちの怒号と罵声と、
「こんなおがーちゃんじゃゆ゙っぎゅりでぎなぃよぼお゙ぉぉぉ」「゙おがーじゃんな゙んがい゙や゙あ゙ぁぁぁあ゙ぁぁ゙ぁ゙」
「わ゙がっだよー、おがーじゃんはおがーじゃんじゃないよぉぉぉぉ」「ゆ゙っ゙ぐりじだぃい゙ぃぃ゙ぃ」
親れいむは必死に、息だけでなく体を震わせ小さく跳ねて抗議するが、子供に伝わるはずもなし。
「お゙じじゃんだずげでぇぇぇえ゙え゙ぇぇえ゙ぇ゙ぇ゙」「わがるよーだずげでも゙らぅ゙んだよー゙」
「れ゙い゙むだじをゆっぐりざぜでぇぇ゙え゙ぇぇぇ゙えぇ」「ゆ゙っ゙ぐりぃい゙いい゙いぃぃ゙ぃぃいい゙ぃ゙ぃいぃいいいい゙ぃ」
唯一すがることができそうな相手を見つけ、哀願する声が響く。
工員「いやーでも、きみたちはこいつの赤ちゃんだしねぇー」
愛し守る対象の変心と罵声、肉体の限界、無力感と絶望、終わりの予感、もはや時間の問題であろう。
C子「鮮やか!これぞ熟練の職人技ね!」

Y岡「いやー実に見事だったね。――ところでさっきから気になっていたんですが、あの上の方の滑車、なんか
 皿のようなものがぶらさがっていますね。あれは何の意味があるんですか?」
工場長「ああ、それはですね―」
突如チリンチリンと、ベルのような音が響く。右手を見やると、なにやら別室のドア上の緑色のランプが点灯している。
工場長「おや、向こうの部屋で加工が終わったようですね。行ってみましょう」
促されるままにその部屋の前へ移動する。中を見やると、同じような滑車の仕掛けはあるが、そこに掛かって
いるはずのロープ、そしてそれにぶら下がっているちびゆっくり達が見当たらない。ただ、小気味よく油の
中で水分がはじける音と
「いぃ゙い゙い゙や゙あ゙あ゙あ゙ぁぁ゙ぁ゙ぁがぁ゙ぁうぅ゙あ゙あああうぶぐでいぶどあ゙がぢゃぁあ゙あ゙あぁぁん゙んんんんぐぶぇ゙え゙ええ゙え゙ぇぇ」
この部屋の“親”と思しき大きなゆっくりれいむの絶叫、
「ぶぐぎゃばぁあおげぇうっ゙ぶぁあ゙あああ゙ぁ゙ぁ゙ぁ」「ぶぅおぐぁあ゙ぢゃぶぁあ゙あ゙んんじゅぶうぁあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ」
「ぢーっ、でぃーっ、でぃ゙んぼー、ぉー、ぉ゙おー」「どぶぇらでぶぐふぅぅ゙ぅぅぐ」「ぐひぃ゙ーびひぃ゙ぅ゙ぐぶゔ」
低温でじっくりと揚げられているちびゆっくりたちの長い長い断末魔

工場長「さあ、ここからが腕の見せ所です。お静かに」
Y岡「へぇ、こりゃ見ものだ」
「おじざん、どぼじでだずげでぐれながっだのれ゙いむ゙のあがぢゃあ゙ぁぁ゙ぁぁんんん」
工員「えーだって、れいむがその気になればゆっくりすぐにたすけられたじゃないか」
「でぎないよぼぉおお」「どうして?」「だっで、だっで、ひがぁあぁ」「火が?」
「ひがれーむ゙のまえ゙にあっだがらぁ゙あ゙あ゙」「あるとどうなるの?」「れいむ゙がやげじゃうぅ゙ぅゔ」
「つまりれいむは、自分が火で焼けるのが嫌だったから、代わりに赤ちゃんを揚げ饅頭にしちゃったんだね?」
静かにはなったが、鍋の中の断末魔は小さいながらもまだ響いている。息のあるやつらにはおそらく聴覚が
まだ残っているだろう。
「ぢがぶぅづゔぅうう」「何が?」「だっ゙で、れ゙ーむや゙げじゃっだら、ぴも゙、ばなじ゙ぢゃゔぅゔ」
「我慢すればいいじゃない」「ぞんな、ぞんな゙、でぎない゙ぃ゙いい゙じんじゃゔぅ゙」
「じゃあ、何が悪かったのかな?」「びもが、びもがながずぎだぜい!!ながずぎで、あがじゃんをゔえにびっぱれなかっだぜい!」
いかにもわざとらしく、仕方ないなぁといった風情で工員は床に落ちたロープを手繰り寄せ、再度滑車に引っ掛け、
揚げ饅頭から鋏で切って離す。念には念を入れて、鋏は体で隠し親れいむに見られないようにする。
工員「じゃあ、試してみようか? 本当にひもが長すぎたかどうか」
「ゆ゙!?」
親れいむが暴れだすより早くその体をふん捕まえ、ロープの一方を髪と髪飾りに結わえ、部屋の隅に
備え付けてあった油まみれの透明の箱の中に投げ入れる。
ここで揚げ饅頭を仕上げる。鍋の火力を一気に強め、ザルですくってバットに置く。
工員「さあ、れいむの赤ちゃんにも本当かどうか見てもらおうか?」
火力最高の鍋の上に親れいむをぶらさげる。バットの饅頭は顔がすべて部屋中央にぶら下げられたれいむに
向くよう置いてあるご丁寧っぷりである。
「い゙やぁああ゙あ゙ぁぁぁ゙あずぃびぶぃいいぐぇえええぇ゙」
親れいむは沸騰した油の霧に焼かれ絶叫する。
工員「熱いよねぇ。そんなところにれいむの赤ちゃんたちはゆーーーーーーーっくりぶらさげられてたんだねぇ」
聞こえているのか聞こえていないのか、親れいむは痙攣でその言葉に答える。
工員「じゃあゆっくり長さをはかってみようね!」
「あげぶぁ゙ああ゙あ゙あ゙!!!!!」
工員は手元に手繰り寄せていたロープを放す。親れいむは一気に鍋の近く10cmほどの高さに落とされ、
激増した熱さに反応しひときわ高い鳴き声を上げる。
工員「ゆっくり確かめてね!!!」
工員はゆっくりと、ロープを鍋の横側にある滑車に掛け、改めてすこしずつ手元に手繰り寄せていく。
親れいむはロープに引き上げられ、少しずつ熱源から遠ざかり、やがて、吊り下げられている感覚が無くなった。
C子「あ、あれは山岡さんが気にした皿!」
親れいむは件の滑車にくくりつけられた皿に乗っかったのだ。
工員は、ロープの片端を、親れいむに見えるようしっかり握っている。
工員「紐が短ければ、れいむは引っ張って赤ちゃんを持ち上げられて、この皿に乗せられたんだよね?」
「そ、そうだよ!わるいのはこのひもだよ!」
最後の希望を見つけたかのように、勝ち誇ったような顔で叫ぶ。
工員は皿から親れいむを一度下ろし、また少し下に下ろす。
「あづ、あづいよ゙ぉおお゙」
親れいむは再び油の蒸気に焼かれ空中でのたうち回る。
すると工員は突如親れいむの髪をひっつかみ一気に引きちぎった。このときに髪飾りを完全に引きちぎって
しまうと繁殖に回すのが難しくなってしまうので、ギリギリ取れそうで取れない程度に止める。職人の技である。
「ぎゃぶらぁ゙ばら゙ぁ゙!!!」
工員「見ろ」
取れそうな髪飾りをつかみながら、苛立ちも怒りも嫌悪感も何も無い、本当に無感情な声で命令する。
「わ゙、わがりま゙じだぁ、み゙ま゙ずぅ」
この期に及んでもなお、髪飾りは命より子供より大事らしい。
親れいむは今度は一気に引き上げられ、再び皿の上に載る。
工員「つまり、れいむがひもをここまで引っ張れれば赤ちゃんは助かったんだよね?」
工員の声が、猫なで声に戻った。
熱さからの開放と声色の変化で安堵した親れいむは自慢げに答える。
「そーだよ!ながすぎでひっぱれなかったんだよ!そこまでひっぱれれれば」
工員「ここまで?」
工員の片手はロープの端を掴んでいる。そしてその手は滑車と火元とのちょうど中間くらいにある。
工員「そっかー、ここまで引っ張れれば助けられたんだ」
親れいむが固まる。すかさず工員は親れいむを抱き上げる。
工員「ゆっくり見てみようか?」
工員は親れいむを、自分の片手を置いてあった場所に降ろす。
工員「そっかー、ここまで引っ張れれば助けられたんだ」
火は、遠い。親れいむは気付いているか分からないが、火力は最低に下げられている。
この箇所には何の危険も無い。その意味を理解するのには、ゆっくりと、ゆっくりとする必要があった。
工員「そんなに火が怖かったんだね。赤ちゃんを揚げ饅頭にしちゃうほど」
ぐいと引っつかみ、バットの中身を見せ付ける。苦しそうな、恨めしそうな顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔
顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔
顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔

「ぱぴぷぺぽろぐぉぉ!!!??」
全てを理解した親れいむは餡を吐き出しショックで絶命しようとするが、工員は人にあるまじき速さで
巨大なステープラーを掴み、親れいむの口蓋を封印する。
工員「今回の赤ちゃんは揚げ饅頭になっちゃったけど」
親れいむは白目をむき、なんとも付かない粘液物を垂れ流している。
工員「また、ゆっくり赤ちゃんを産んできてね!!!」

部屋の外の緑ランプは消え、代わりに青のランプが点灯した。
工員はこれといった感情が無いが、無感情でもないごく普通の表情を浮かべてドアを開ける。
「「お疲れ様でーす」」
工場長と工員は同時に帽子を取り、挨拶を唱和させる。
工員はワゴンに手際よく、失神したゆっくりをワゴンに備え付けの透明な箱に放り込み、バットの中身を
より大きなバットに移す。
工員「おや、見学ですか?」
C子「ええ、そんなところです…ってY岡さん!!」
Y岡の目はワゴンに乗せられたブツに釘付けである。
これには工員と工場長は大笑い。
工員「はっはっは、あれだけ美味しそうな鳴き声を聞いていれば無理も無い。私だって…」
と慌てて口を塞ぐ。
Y岡「アヒャー、ところでこの大きなほうのゆっくり、“加工”は終わったようですが、どういう製品になるんですか?」
工場長「通常なら繁殖に回すところですが…、こいつの味に興味がありますか?」Y岡「ええそりゃもうもろちん!」
C子「Y岡さん!んもぉ~」
C子も、恥ずかしさと呆れと興味が三分の一づつのようだ。

Y岡「うんめこりゃうんめ!」
食堂のテーブルの上には、件のゆっくりが透明な箱に入れられている。ただ、今度の箱には直径5cmほどの穴が
開いている。ここからゆっくりのこめかみに穴を開け、餡を取り出すのだ。
C子「すごいわ…このお汁粉。成熟したゆっくりの餡はだらしない甘さって聞いてたけど、これはただ甘いだけ
 じゃなくてとても深いお味。コクがあって舌触りが滑らかで、シャッキリポンと(ry
工場長「どうです、美味しいでしょう」
Y岡「うん美味しい美味しい!」
C子「Y岡さんったらもう…」
工場長「でも成熟ゆっくりの餡には独特のクセがありますからね、やはり市場ではちびゆっくりのほうが
 喜ばれるんですよ。甘みが弱いのが逆に製菓材料として尊ばれまして…」
びくりびくりとゆっくりが痙攣するが、それに注目するものはいない。
餡はその中の一割ほどしか取り出していないので、命に関わることはありえないからだ。


C子「驚いたわ…ゆっくりの加工場なんて聞いたからもっと無機質で冷たい印象を抱いていたけれど、
 あそこはとてもゆっくりらしい温もりに満ちていたわ」
Y岡「あそこにはゆっくりの生と死、喜びと悲しみとゆっくり、すべてがあるのさ。
 それを美味しくいただくのが、俺たち人間がゆっくりに送れる最大の賛辞なのさ」

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最終更新:2022年04月14日 22:49