ゆっくり飾り2
2匹の異端ゆっくりを捕まえてから、はや1ヶ月が過ぎた。
俺はその間、農作業の合間を縫って、畑から少し離れた場所に落とし穴を掘った。
直径約2m、高さ約3mもある。
俺は穴の底に大きめの木の板を敷き、穴の壁には細長い木の板を貼り付けていく。
おまけに、隙間には水を含んで柔らかくなった粘土を敷き詰める。
乾けばカチカチに固まるだろう。
これは、穴に落ちたゆっくりが、土に穴を開けて逃げられないようにするためだ。
俺は、里へ出掛ける度に廃材を集め、
休日ともなれば香霖堂で使えそうなものを物色した。
作業を終えた俺は、落とし穴にぶら下がったロープを伝って外にでる。
「これだけ掘れば十分だろ。」
そう言って感慨深げに穴を見下ろす。
これだけ深いと、ロープでも無い限り人間でも脱出は困難だ。
次に俺は、穴のすぐ近くに木で出来た塔を建てた。
塔のてっぺんには、横に伸びた木の棒がくくりつけられている。
ここに異端ゆっくりを吊るすのだ。
これが俺特製の「ゆっくりホイホイ」。
ゆっくりが、死んだゆっくりの飾りをつけた者を襲う特性をいかした罠だ。
畑を荒らしにやってきたゆっくり達は、野菜に目もくれず目の色を変えて異端ゆっくりに襲い掛かる。
しかし、ゆっくりの跳躍力では届かず、そのまま穴に真っ逆さまに落ちる寸法だ。
この「ゆっくりホイホイ」を掘っている間は、何度かゆっくりに畑を荒らされそうになったが、
その度に甘言でそいつらを家に誘き寄せ、異端ゆっくり達に始末させた。
人間が味方についている異端ゆっくりに、普通のゆっくり一家が歯が立つ訳が無かった。
穴が完成した翌朝、俺は香堂で手に入れた透明な箱に1匹の異端ゆっくりを入れると塔に吊るした。
まるで首吊りの処刑場みたいだな。
「おにーさん、どーしてれーむをこんなところにとじこめるの?ゆっくりできないよ!だしてよ!つかまっちゃうよ!」
こうして罠をセットし終わると、ギャーギャー喚く異端ゆっくりを尻目に家に戻った。
夕方になり、様子を見に穴の傍にやって来た。
「おお、いるいる」
既に穴には、10数匹のゆっくりたちが底で騒いでいた。
中には、落ちてきたゆっくりに潰されて既に絶命しているものもいる。
また、全てのゆっくり達に言えることだが、皆ダメージを負っているようだった。
こんな3mの高さから落ちれば当然か。
「さっさとまりさたちをだしてね!」「れ”ーむ”のごどもがああ!!!」「こんなところじゃゆっくりできないよ!」
「お”があ”さ”ん”い”だい”よ”お”!!」「せまいよー、くらいよー、こわいよー!!」
「ここはれーむたちのおうちだよ!ゆっくりできないひとはでていってね!」
それでもどこかの漫画で聞いたような台詞や、既に自分家宣言して叫んでいるゆっくり達をよせに、
俺は大きな声でこう言った。
「1匹だけ助けてあげるよ!助かるのは1匹だけだよ!親も子供関係ないよ!」
しばらく、互いに顔を見合わせていたゆっくり達だったが、突然魔理沙が隣にいた子霊夢に襲い掛かると様相は一変した。
傷ついた身体にムチを打ち、生存本能にしたがって生き延びる為に殺し合いを始めたのだ。
魔理沙にいたっては、自分の子供と思わる他のゆっくり達にも平気で噛み付いていた。
「お”があざんや”めでいだいよ!!!れ”い”む”のあ”ん”ごがああああ!!!!!」
そこで親霊夢が魔理沙に渾身のタックルを仕掛ける。
どうやら霊夢は自分の命より子供の命を優先して戦っているようだ。
もっとも、とうの子供は既に絶命しかけているが...
また、ボディプレスを仕掛けて自分の方が割れてしまうものもいた。
「ゆっくりしね”え”え”え”え”え”え”え”、がらだがあ”あ”あ”!!!!!!!い”だい”い”だい”だい”い”い”い”い”!!」」
最初に穴に落ちた時点で、身体に少し亀裂が入っていたのだろう。無茶しやがって...
阿鼻叫喚の絵図が繰り広げられている穴を尻目に、俺は吊り下げられていた異端ゆっくりの箱を地面に下ろしてた。
そして手に持っていた風呂敷を箱にかけ、家に戻った。
何故風呂敷を掛けたのかというと、異端ゆっくりが俺の家に入る様子を他のゆっくりたちに見られては困るからだ。
聞いた話によれば、異端ゆっくりを飼っていたことが他のゆっくり達にバレ、
家を大量のゆっくりに襲撃された例があるという。そうなってはかなわない。
何にせよ、単純なあいつらは1匹になるまで殺しあうだろう。
次の日の朝、早速穴の中の様子を見に行く。周りには、何匹かのゆっくり達が叫んでいた。
珍しくゆっくりちぇんやパチュリー、アリスもいた。
「ゆー!いまたすけるよ!!」「ゆっくりまってね!だしてあげるよ!!」「ちーんぽ!!」
夕方から今朝にかけてあれだけ騒いたので、近くを通りかかったゆっくり達が気づいたのだろう。
助けようとはしているが、どうにも出来ないでいる。
俺は後ろから無言で近づくと、穴の周りにいたゆっくり達を1匹残らず蹴り落とした。
「いたいよ!おじさんなにするの!!」「どうしておとすの!!」「ゆっくりしんでね!!」
そんなゆっくり達の抗議の声を無視し、中の様子を観察してみる。
「大分少なくなって来たな。」
中にいる、昨日穴に飛び込んだゆっくり達は見るも無残な姿をしていた。
穴の底に張られた板には、夥しい量の餡子が張り付いており、ゆっくり達の皮や毛髪や飾り等が散らばっていた。
その上をさっき蹴り落としたゆっくり達が跳ね回っていた。
生き残ったと思われる、ボロボロのゆっくり魔理沙は、端っこでうずくまっている。
相当過酷な戦いだったのだろう。自慢の帽子はよれよれで、餡子だらけだ。
そんな生き残ったゆっくり魔理沙は、俺に向かってこう叫んだ。
「おにーさん、一人になったよ!!おなかすいたよ!もうだしてよ!やくそくだよ!」
「一匹じゃないじゃないか!そいつらも殺さないと出してあげないよ!お腹がすいたら、殺して食べれば?」
昨日の戦いで吹っ切れたのだろう、ゆっくり魔理沙は底にへばりついた餡子を少し頬張ると、
周りにいる新しいゆっくり達に喰い付き始めた。
この「ゆっくりホイホイ」において、最後の1匹なるというのは並大抵のことではない。
なぜなら、日中は殺しあっている最中にも、次から次へと新しいゆっくりが落ちてくるからだ。
そえに加え、食べ物は与えられない為、どんなに仲の良かったゆっくり達も、最終的には共食いを始める。
おまけに俺がけしかける。
それでも、穴からは出られないし、食料は無いので新しく落ちてきたゆっくり達を襲う。
何もしらない新しいゆっくりたちは、訳も分からず殺されたり、パニックに陥ったり、
生き延びようと反撃を試みたり、逃げ出そうとする。
そうして、ある程度淘汰されると、彼らはようやく状況を理解するのだ。
「殺らなければ、殺られる!」
おまけに、この穴は直径が2mしかなく狭い。
だからずっとライバル達と一緒にいなくてはならないので、ゆっくり眠ることも出来ないのだ。
よって、絶対にゆっくりするこはできない!
もちろん、喰いつかれたゆっくり達からすれば、冗談ではない。
あれだけ助けるといっていたのに、落ちた途端攻撃されたからだ。
「痛いよ!ゆっくり止めていってね!」「まりさどーしてこんことするの!」「きけんなまりさはゆっくりしんでいってね!!」
既に体力を使い果たしていたゆっくり魔理沙は激しい反撃にあい、壁に叩きつけられるとゆっくり永遠の眠りについた。
「おーい。お前達!最後の1匹だけになったら助けてやるぞ!でも新しいゆっくりが落ちてきたら、殺さないと無効になるぞ!」
俺はそう叫ぶと、異端ゆっくりを取りに家に戻った。
俺は昨日とは違う片方の異端ゆっくりを透明な箱に入れ、風呂敷を被せると穴に戻り、
穴のそばにある木の塔に箱を結びつける、俺は家に戻っていった。
穴の中からは、口汚い罵りあいや、悲鳴が聞こえてくる。
畑で農作業をしながらたまに落とし穴の方を見ると、ゆっくり1家が異端ゆっくりに攻撃しようと近づき、あわれにも穴に落ちていった。
こんな光景が日に何度も起きていた。
このゆっくりホイホイを作ってから、ゆっくりによる畑襲撃はピタリとなくなった。
効果は抜群だった。
最終更新:2022年05月03日 17:02