※あんまり虐待してません
※俺設定をひたすら書き綴ってみたくなったので、書いてみました
※ここのゆっくりは、すっきりするゆっくりです

タイトル『ゆっくりの光』


ゆっくりゲージの中で、ゆっくりが全滅していた。
幅1メートル、奥行き2メートル、パイプフレームに全面透明プラスチック板を嵌め込んだゲージだ。
天井部分には20センチ四方の蓋が付いており、そこから餌を入れたりできる。
二階一戸建て、その一階の空き部屋にビニールシートを敷いて、その上に設置した。
ゆっくりハウスとして段ボール箱を隅に、その側に水場、対角線上にトイレを置いていた。
全滅したゆっくりはいずれも苦悶の表情を浮かべ口から泡を吹いて死んでいた。
やることのなかった青年は、死因特定のための解剖を行った。
それで何かが判るとも思っていなかったが、意外な発見があった。
未消化な昆虫の外骨格の断片が見つかったのである。
他のゆっくりも、昆虫の断片や木の実などが未消化のままであった。
これは、ゆっくりが餡子化できていなかった、ということである。
悪食なゆっくりは、なんであれ、食べたモノを餡子化できると一般的に考えられている。
しかし、このゲージで全滅していたゆっくりは、例外なく未消化な何かがあった。

ゲージに入っていたゆっくりは、ゆっくりショップを経営する青年の友人から押しつけられたモノだ。
その友人はゆっくりを増産する際、うっかり作り過ぎてしまった。
潰してゴミにする場合、ショップからだと産業廃棄物として処理しなければならないので、手間と費用がかかる。
そこで、両親が海外出張中に自宅警備員として待機している青年に白羽の矢を立てたのだ。
野生で拾ってきてショップで繁殖させてから良種を選別した、20世代目のゆっくりだった。

青年はゆっくりについてほとんど知識を持ち合わせていなかった。
ゆっくりを引き取ったときも、飼育方法など、調べることすらしなかった。
ただ、ネットで検索したとき、「ゆっくりコンポスト」のHPに興味を引かれた。
「ゴミ箱代わりに使えるのか、餡子に変換できるんなら、生ゴミの臭い消しもいらねーな」
自宅警備員だから、外にゴミ出しに行くのは保安上問題がある。
しかし、生ゴミはため込むと悪臭が発生してしまう。
せめて生ゴミだけは何とか処理しないと…。
そこで赤ゆっくりを引き取る条件として、中古のゆっくりゲージを貰いうけた。
ゲージは密閉度が高く、臭いも漏れない。
万が一、ゆっくりの処理能力を上回る生ゴミを投入してしまっても大丈夫だ。
もっとも、インスタント食品中心の食生活をしているので、そんなに生ゴミが出ることはないが。

ゆっくりを引き取ってから、早くも問題が発生した。
餌不足である。
生ゴミの臭い消し代わりに導入したゆっくりだが、餌となる生ゴミが出なければ意味がない。
かといって、愛着のないゆっくりごときのために、ゆっくりフードを購入する気もない。
しばらく放置していたら、ゲージ内に全く見たことのないゆっくりを発見した。
白、緑、黒の斑模様で、何か毛のようなものに覆われている。
「新種発見!まあ嬉しい!」
早速写メを友人に送信したら、返信ではなく電話が直接かかってきた。
「バカ野郎!そいつは死体にカビがはえてんだよ!」
青年は驚いた。
ネットの情報では、ゆっくりは仲間が死体になると、それがゆっくりと認識できなくなり、喰らうとあったからだ。
共食いもせず、餓死死体をカビが生えるまで放置していたとは、なんと冷たい連中だ。
とりあえず青年はビニール袋に手を突っ込み手袋のようにして死体を掴み、そのまま袋を裏返して口を縛り、ゴミ箱に捨てた。
「このままでは生ゴミ処分場が死体生産場になってしまうな…」
自宅警備員である青年は、食料は全てネット注文宅配店で調達している。
ゆっくりごときのために、わざわざ追加発注するのも勿体ない。
このままではゲージ内が腐海になってしまうので、裏山からゆっくりの食料になりそうなものを集めてくることにした。
ネットで調べた結果、野生のゆっくりは主に木の実やキノコ、昆虫を食すらしい。
大きめのゴミ袋を片手に、餌になりそうなものを片っ端から放り込んだ。

ゲージ中央に大きめの紙皿を置いて、そこに先ほど集めたゆっくりの餌をぶちまける。
餌はご丁寧に、ネットで調べた通りの、木の実、キノコ、昆虫の死骸だった。
「ソフトボールサイズだから、こいつらは子ゆっくり。よって、食べやすく潰してやる必要はないな」
しかし子ゆっくり達は食べようとしない。
ペットショップで世代交代を繰り返してきたゆっくりには、目の前の皿に盛られたそれがごはんと認識できないのだ。
青年が「ごはんだよー」と言うのに対し、こんなものは食料ではない、ゆっくりフードをよこせと抗議してくる。
そこで青年は証拠映像を見せてやると、ゲージの壁面に液晶モニタを設置して、ネットで公開されている野生ゆっくりの食事風景ビデオを流してやった。
画面上でまさに眼前に在る木の実、キノコ、昆虫を「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」する野生ゆっくり達。
それを見た子ゆっくり達は、おそるおそる餌を食べる。
あまりの不味さに吐き出してしまう個体もいたが、それ以外の餌を与えられない状況なので、必死に飲み込んだ。
「むーしゃ…むーしゃ…ふしあわせー…」

青年は、文句ばかり言うゆっくりを見て、こいつらがゆっくりできないのはナチュラルじゃないからだと悟った。
人間もジャンクフードばかり食べていたら、イライラする。
日本の若者が荒れているのも、ジャンクフードのせいらしい。
アメリカじゃ、それが原因で暴動まで発生したではないか。
この子ゆっくり達も、ゆっくりフードばかり食べていたから、イライラしているのだ。
今こそ自然食を食べて、ネイチャーゆっくりに回帰するときなのだ!
青年はなんだかよく判らない使命感に目覚め、突き動かされるように山に行っては餌を取ってきてはゆっくりに与えた。
そして冒頭の惨劇につながる。
ゆっくりフードはゆっくりがゆっくりするために研究開発されたもので、それが原因でゆっくりできないことはあり得ない。
しかし、青年のように天動説を信仰しているような人間には、そんなの関係ねぇ。

青年は何故子ゆっくりが全滅したのか考察していた。
同じ食事をしている野生のゆっくりと全滅した子ゆっくりの映像を見比べてみる。
その違いは明白で、「しあわせー♪」と「ふしあわせー…」にあった。
しかも、「しあわせー♪」の時には、『パアァァァ』と光り輝いているように見える。
そういえば、ゆっくり関係のHPにすっきりしている映像もあったが、「すっきりー♪」の時も同様の輝きが見られた気がする。
この光こそが、餡子成分の欠片もないような物質を、餡子変換させる秘密に違いない。
青年はこの光を「ゆっくり光」と名付け、ゆっくりの生命活動の根幹であるとの仮説を立てた。
早速、ゆっくりショップに行って1匹2円の、パチンコ玉より価値のある野良ゆっくりを買い込んでゲージに放り込んだ。

ゲージからランダムに選出したゆっくりれいむを取り出して、別室に連れて行く。
そこで同じくゆっくりショップで買ってきたゆっくりフードを与える。
空腹だったれいむはかぶりついた。
「むーしゃ、むーしゃ、」
しあわせ〜♪を発する前に、青年は手に持った刃渡り60センチのブッシュナイフでれいむを正中線に沿って両断した。
見事に真っ二つになったれいむの口内から後頭部近くにかけてまで、未消化のゆっくりフードが確認できた。
ゆっくりの内臓は発見されていない。
あにゃる付近まで未消化物あることから、この辺りがそうなのだろうと仮定した。
次に、先ほど両断したれいむと同齢と思われるれいむを、同じく別室で食事させる。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」
青年主観で『パアァァ』とゆっくり光が出た後、同様に両断した。
れいむの断面からは、未消化物は確認できなかった。

青年はこの結果から仮説を更に発展させた。
  • ゆっくりが摂取した物質を餡子に変換する際、ゆっくり光を発する
  • 「ゆっくり光」は物質の原子配列変換時に放出される、光子である
以上より、体内で餡子変換を行う「ゆっくり線」の存在が推測される。
ゆっくりが摂取した物質に「ゆっくり線」が照射されると、「ゆっくり光」が体外に透過されるのだ。

青年は更に実験を重ねた。
ゲス個体、とくにまりさ種に良く見られる採餌行動の時はどうだろう。
サンプリングしたゲスっぽいまりさに、大量の高級餌「ゆっくりの缶詰(通称:ゆ缶)」を与える。
「うっめ、これ、めっさうっめ!」
汚く食い散らかすまりさを、れいむ同様両断。
喉らしき部位からあにゃるにかけてバルーン状にたっぷりゆ缶が詰まっている。
予想通り、「しあわせー♪」とゆっくり光を発した後は、全て餡子変換されていた。

「このゆっくり線を自由に使用できるようになれば、すごいことになる」
青年は友人に大量のゆっくり断面写真を見せつけながら言った
「第二次産業革命の始まりだ!地球にやさしくなれるッ!」
「自由に使えりゃ、な」
ゆっくりの餡子変換能力を利用ようと、様々なプロジェクトが立ち上がった。
しかし、いずれも謎の塊であるゆっくりを制御できずに失敗した。
結局、ゆっくりはペットとしての存在価値しかない。
青年もそのことはよくわかっていた。
「うん、ゆっくり線の解明は現在の科学では不可能だろう」
「で?俺を呼んだ理由は?」
「これを見て貰いたい」
青年はテーブルの上にフィールドスコープを置いた。
対物レンズに手作りらしきフィルターのようなものがテープで貼り付けてあった。
「なんだこりゃ?」
「ゆっくり光スコープ、だ」
青年が野良ゆっくり相手に実験中、「しあわせー♪」しているゆっくりを見ている他のゆっくりの目が光った気がした。
そこでゆっくりの目玉を取り出し、板に挟んで引き延ばして円盤状に整形して、フィルターを作成。
フィルター素材の生体部品は乾燥に弱いので、薄いガラスにゆっくりの目玉を挟み込んでキャップに嵌め込み密封してある。
ゼラチン質のゆっくり目玉フィルターを通して見るゆっくりは、ぼやけて見えた。
そして「しあわせー♪」した瞬間、ゆっくりの輪郭が輝いたのが観察できた。
ゆっくり光を青年の感覚ではなく、視覚で捉えることに成功したのだ。

農業地域におけるゆっくり害は深刻化していた。
耕作地に侵入してきたゆっくりは、人間や簡単なトラップで退治できた。
犬を訓練してゆっくりハウンドとして、ゆっくりを狩らせたりもした。
しかし、そうやって高められた選択圧は、ゆっくりの性能を飛躍的に向上させた。
ゆっくりは餡子に記憶を刻み込むため、全体の記憶容量はかなり限定されている。
生息環境によって、生存に必須な記憶を本能として餡子に刻み、次世代に継承させることも必要になる。
強烈な繁殖力を持つゆっくりは、各個体それぞれが膨大な戦略パターンを展開し、人間をも出し抜く個体を出現させた。
巣の迷彩、野外活動時における擬態などが、かなり高度なレベルに進化したのだ。
以前は簡単にわかる巣も、ゆっくりハンターや訓練された犬でさえ発見困難なほどの迷彩を施す。
擬態も高レベルになった。
ある農家が鍬で耕作していたとき、雑草を掘り起こそうとしたら、おりぼんにそれを結び付けたれいむがでてきたのだ。
土に穴を掘って潜り込み、土から露出した部分を草で偽装していたのだ。
掘り起こすまでそれと分からないほどの偽装に、農家は舌を巻いた。
某グリーンベレーのように全身に泥を塗って土壁と同化したり、おぼうしに枝葉をさしてゆっくり畑に接近したりする個体も発見された。
ゆっくりは本来、忍耐力が致命的に欠如している。
おやさいさんがめのまえにあったら、もうがまんできない!
だがこの新しい個体群は、苦手であったはずの待機行動を「ゆっくりできる」状態として本能を書き換えることに成功した。
土の中で待つ、泥を体に塗って壁に張り付いて待つ、おぼうしを偽装して待つ…。
それらを実に「ゆっくり」できる行動として、餡子に刻み込んだのだ。

友人はゆっくり害対策について、専門家として意見を求められていた。
だが、ここまで特化したゆっくりを見たことがなかった。
データを集めようにも、巣を見つけることが困難で、発見される個体も死体ばかりだ。
打つ手がないと思われたところに、この「ゆっくり光スコープ」だ。
これが実用に耐えうるものなら、決定的な武器になる。
青年は、このスコープは生体部品を使用しているので劣化が早く、2日しか持たないことと、野生のゆっくりほどゆっくり光感受性が高いことを説明した。
友人は早速この「ゆっくり光スコープ」を借り受け、ゆっくり害が酷い農村へ出向いた。
はたして、スコープを覗いて山を観察したところ、いくつかの光点を確認できた。
さっそく光点の場所へ行くと、迷彩が施され、普通だと絶対分からないゆっくりの巣が発見された。
農村は救われた。



あとがき
読んでいただいた方、ありがとうございます。
ドキュメンタリーっぽく書こうと思ったけど、上手くいきませんでした。
暇を持て余して、一つのことに集中できる環境があると、良いアイデアが出たり発見があったり。
そんな状況にならねーかなー、とか妄想してたら、こんなんができました。
あまり文章が上手くなくてすみません、精進します。

これまで書いた作品
ゆっくり爆弾

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最終更新:2022年05月21日 22:51