※ゆっくりでやらなくてもいいだろ
※むきゅ、湿らせた葉っぱさんは燃えないの!きっと燃えないのよぉおお!




ぱちゅおかさん




「むーしゃむーしゃ、幸せぇぇぇええええ!!」
「むーちゃむーちゃ、しあわせぇぇえええ!!」
「むしゃむしゃ、幸せだわぁああああああ!!」

ゆっくりの群が住む森の、ちょっと奥にあるまりさ邸。
ここではまりさとありす、そして子まりさの三匹が平和に暮らしている。

今日の朝ご飯は昨日の夜にまりさが一所懸命捕まえたムカデと野苺。
ムカデのコリコリした歯触りに濃口の味が食欲をそそり、その後で食べる苺の甘さを引き立てる。
豪華と言う程ではないものの、ゆっくり的にはかなり美味しい部類に入る食事だ。

「やっぱりムカデさんは美味しいね!」
「おとーさんはかりのめいじんだね!」
「流石愛しのダーリンね!」

三匹が三匹とも大絶賛の朝食。
しかし今日は特別な朝食でもあった。

「ゆふふ、実はこれだけじゃないんだよ!」
「「ゆゆー!?」」

驚く二匹を尻目に、まりさは帽子からあるモノをゆっくりと取り出した。
野苺は甘い、しかし野苺ゆえに多少の酸っぱさも残る。
だがその酸っぱさを抜き取った完璧な野苺、その名も「腐りかけ野苺!」

「ささ、ゆっくり食べるんだよ」
「いっただきまーす!むーちゃむーちゃ……」
「じゃあ私もいただくわ、むーしゃむーしゃ……」

口に含み、何度も噛み、その甘さを堪能する。
思ったより反応がないため、まりさが焦りだしたその時!

「う、ううううううううめぇええ!めっちゃうめー!!」
「だ、だめよまりさ!とかいははそんな言い方を……う、うめぇ!めっちゃうめぇ!!」

良かった、そう言わんばかりにうふふと笑顔を漏らすまりさ。
今日は最高の朝食だった、これで今日も餡子の芯までゆっくりできる。





「むきゅ、そんな苺は偽物よ!!」





「「「ゆゆゆっ!?」」」

突然の来訪者にまりさ一家のしあわせーは一時中止となった。
入り口の方を見渡すと、そこには一匹のぱちゅりーがいた。

「ぱちゅりー!ゆっくりしていってね、でも偽物ってどういう事なの!」
「そうよ、まりさの採ってきてくれた野苺よ、偽物なんて失礼だわ!」
「どぼじでぞんなごどをいうのぉおおおおお!おとーさんののいちごさんはほんものだよぉぉぉぉ!ゆっくりあやまってねぇぇぇ!ゆわぁぁぁぁああああん!!」

しあわせーを中断された上に、至福の野苺まで否定されて黙っているわけにはいかない。
一家は全力でぱちゅりーを否定する。

しかし。

「むきゅ!じゃあお日様が3回おはようした時にもう一度ここに来てね、ぱっちぇが本物の野苺さんを用意するわ!」

そう言ってぱちゅりーは踵を返し、広場へと跳ねていった。
残されたまりさは……

「ゆぐぐぐぐぐ、じゃあこっちももっと美味しい野苺をとってくるよ!」
「まりさ、ありすもお手伝いするわ!」
「まりさも!」

もちろん憤慨していた。
そしてまりさ一家による「しこうののいちご」探しが始まった。
野苺の酸味が完全になくなり熟しきった甘みだけが残る、その上で三回おひさまがこんにちはした瞬間に最高の甘みを引き出せる野苺を。





そして三日が経った。





「むきゅう、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「おお、ゆっくりゆっくり」

まりさの家にはまりさ一家とぱちゅりー、対峙するはぱちゅりーときめぇ丸。

「むきゅ、彼女はゆっくり料理記者歴4日間のきめ・ぇ丸よ!」
「今日は野苺対決にお招き頂き、誠にありがとうございます」
「彼女には公平な審査と報道をお願いしているわ!」
「ゆ!望むところだよ!」

睨みあう両者の中央に、神妙な顔と思われるきめぇ丸が鎮座する。

「じゃあまずはまりさの野苺を食べてもらうよ!」

自信満々のまりさは草の上に盛った野苺をぱちゅりーに差し出した。

「むきゅ!?」
「ふふふ、どうやらとかいはな調理に驚いているようね」

野苺の上には黄金のソースが輝いていた。
それはゆっくりにとって究極のご馳走と言える『はちみつ』である。
腐りかけの芳しい匂いの上に、蜂蜜の濃厚な甘みの匂いが重なり、その匂いは鼻腔をくすぐり、ゆっくりでなくとも虜になるであろう。

「むきゅ……むーしゃむーしゃッ!?」
「おお、あまいあま……!?」

きめぇ丸の餡子脳をさたでーないとふぃーばーが駆け巡る!
ゆっくりにとって見れば酸味の残る野苺でさえ至高の甘み、それの酸味を取り除き、なおかつ最高級品と言われる蜂蜜まで乗っているのだ。

「おお、まさに甘みの宝石箱宝石箱」
「むきゅう……」
「ゆふふ、どうやらまりさの勝ちのようだね!」

きめぇ丸の反応を見て勝利宣言を上げるまりさ一家。
しかしぱちゅりーの顔にはそれと同等か、それ以上の勝ち誇った表情があった。

「むっきゅん、じゃあぱっちぇの野苺を食べてもらうわ!」

そうしてぱちゅりーもまりさと同じく草の上に野苺を乗せ、まりさ一家ときめぇ丸に差し出した。

「……なにこれ、ただの野苺さんだよ!」
「とかいはをバカにしているのかしら?」
「きっとすっぱいいちごさんだよ!」
「おお、普通普通」

中立のきめぇ丸でさえ落胆する程の野次が飛び交う。
だがぱちゅりーの顔から敗北の色はなかった。

「まずは食べてもらおうかしら!」

ぱちゅりーの気迫に押されたのか、各々が野苺を頬張りだす。

「むーしゃむーしゃ……」
「むーちゃむーちゃ……」
「むーしゃむーしゃ」
「おお、むしゃむしゃ」














それはひとすじの風。
スィーで味わう人工(ゆん工?)的な風ではなく、山の神が織り成す吐息のような優しく優雅で、時に荒々しい風。
一噛みする度に野苺の甘みの匂いが口内を駆け抜け、ゆっくりの餡子を落ち着かせる。

そして押し寄せる怒涛の甘み。
最初はせせらぎの様な甘みの流れ、しかし噛む程にその甘みは勢いをまし、岩をも砕く激流となる!!

永遠と続く、いや永遠と続いて欲しいその感動も終わりを迎え、咀嚼した野苺がゆっくりの喉を流れ行く。
その瞬間でさえ優雅な風が、荒々しい激流が喉を、体を、餡子を駆け巡って行く。

「しあわせ……」
「しあわちぇ…」
「しあわせ……」
「おお、おお……おおおお……!」

四匹のゆっくりは同じ様に食べ、同じ様に噛み、同じ様に飲み込み、そして……






同じ様に泣いた。






「ぱちゅりーありがとう」
「ぱちゅりーおねえさん、ありがとう!」
「ありがとうぱちゅりー、これはもう勝ち負けの話じゃないわね……」
「おお、感謝感謝」

憎しみの欠片もない、ただそこには至高の野苺と、それを与えてくれたぱちゅりーに対する感謝だけであった。
そんな感謝の空気をまりさの一言が切り裂いた。

「ありす……申し訳ないけど離婚して欲しいよ……」
「まりさ!?」

突然の離婚宣言。
周囲の空気が一瞬で凍りついた。

「どうして!」
「まりさはこれを、いやこれ以上の野苺を探しに行きたいよ!でもそんなまりさの我侭にありすやおちびちゃんを巻き込めないよ!」
「おとーさん……」

まりさの頬を流れる感謝の涙は、いつしか決別の涙となっていた。
ゆっくりの奥底に流れる探究心がまりさのゆん生を煽る、しかしそれは命がけの旅、家族を巻き込むわけにはいかない。

「まりさ、約束したわよね……ありす達はずっとゆっくりするまで一緒だって」
「おとーさん!まりさもおとーさんときゅーきょくののいちごさんをさがすよ!」
「ふたりとも……ッ!」



その日の昼下がり、まりさ一家はぱちゅりーに一言のお礼を言い、家を後にした。
ぱちゅりーはこの野苺の作り方を伝授しようかと持ちかけたがそれをまりさは断った。

「まりさはぱちゅりーの野苺を越えた野苺を探すよ、そして今度はぱちゅりーにその野苺を食べて欲しいよ!」

彼女達の旅は過酷を極めるであろう。
もしかすると全員が無事に帰ってこれないかもしれない、数々の犠牲を払っても究極の野苺は見つからないかもしれない。
しかしまりさ達の探究心はそれを止める事ができなかった。



それがまりさ一家の求める真のゆっくりだから……





あとがき

ゆっくりしていってね!
ちなみにぱちゅおかさんはタイトルであって、別にこのぱちゅりーは普通のぱちゅりーです。



書いた人




おまけーね

「おお、ぱちゅりーさん、これはどうやって作ったのでしょうか?」
「むきゅ?そんなに難しくないわよ?」

ぱちゅりーはきめぇ丸を家へと招待した。
自宅にはゆっくりとは思えない料理の機材が揃っていた。

「まずはこれでもかッ!って程の野苺を用意して、それを湿らせた葉っぱに乗せるの」
「おお、山盛り山盛り」
「そしてそれをこの窪みに引いて……」

小さな穴の空いた岩山に葉っぱを引き、そこに山盛りの野苺を入れる。

「そしてこれを一気に煮詰めるのよ、もこたんお願いね!」
「ゆっくりわかったよ!!がいふーかいせー……」

岩山の中は空洞になっており、そこにはゆっくりもこうが収まっている。

「ぼるけいの!ぼるけいの!!」

もこうが叫びだすと同時に岩山からは爆炎が吹き出し、野苺を加熱してゆく。

「あとは葉っぱが燃えないように適度に水を加えながら煮詰めて、濃縮野苺を作るの」
「おお、それを中をくりぬいた野苺に詰めるわけですね!?」

むっきゅんと胸?を張るぱちゅりー、今日も彼女達の究極のごはん探しは続く。



おまけーねのあとがき

すんません。
残った野苺は料理記者歴40年の虐待お兄さんが美味しく頂きました。

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最終更新:2022年04月16日 22:25