<< ゆっくりズvs >>

初投稿です。
俺設定発生。
『ありえない奴』が出てきます。
賢いゆっくりが登場します(ゆっくりの出来る事超えてる?)。
ドスがでます(それ以外のゆっくりは漢字を使えません)。
人間が負けたりします。
描写に不自然なところがあると思います。
無駄に長いです。



陽が地平線に沈む頃、一匹のうーぱっくが空を飛んでいた。
「う~♪う~♪」
体であるダンボールには黒くて丸い物体が大量に入っている。
運び屋としての一面もあるうーぱっくは、報酬さえ払えば何でも運んでくれる便利な存在だ。
このうーぱっくも、とある人から依頼を受け荷物を運んでいる最中だった。

「う~♪う~♪―――うっ!?!?」
その時突風が!
うーぱっくはたまらず体勢を崩す。
「うー!!うー!!」
しかし大きく揺れた際に荷の一部が地上に落ちてしまった。
「うー!!う~……」
何たる失態。運び屋としてあってはならないミスだった。
しかし大部分は無事であるのだし、黙っていれば雇い主にはばれないだろう。
「うー♪」
気を取り直したうーぱっくは、再び高度を上げ目的地に向かって行った。



某所の山の中。
とある洞窟の中。
非常に広い洞窟の中に数え切れないほどのゆっくりがひしめき合っていた。
それもそのはず。
山中のゆっくりが集まっていたからだ(一般的な普通種のみで捕食種は除く)。
この山のゆっくり達は、一匹のドスの群れに属していた。
ざわざわと騒ぐゆっくり達だったが、一段高い場所にこのゆっくり達を率いてきたドスまりさが現われると静かになる。
そして、ドスまりさがゆっくりと口を開く。
「よく聞いてね! みんなで話し合った結果……山を降りて人間を攻撃する事にしたよ!」
その言葉を聞いたゆっくり達は喜んだ。
今まで人間と関わりあう事を禁止していたドスがついに思い腰を上げたのだ。
―――だが、ドスをそうさせたものはなんだったのだろうか?
するとドスの後ろから数十匹のゆっくりが姿を現した。
そして、そのどれもがドスほどはいかないが、普通種では考えられない大きさになっている。
それぞれのゆっくりは二メートル近くあり人間より大きかった。
このゆっくりたちは、ある日突然急激に大きくなり、ドスの持つ特殊能力などは使えないが、
ゆっくりにはないほどの運動能力(ゆっくり基準)と高い知能(あくまでゆっくり基準)を持つようになっていた。
このように頼もしい仲間が増えた普通サイズのゆっくりたちはドスに要求した。
『もっとたくさんの食べ物を』
『もっと広い家を』
『もっとよいゆっくりプレイスを』
加え彼らはこれより少し前に、山の麓で村を作り始めた人間によって住処を追われ、その際に多くの仲間を殺されていた。
そのこともゆっくり達を駆り立てた要因かもしれない。

今までは人間にやられるだけだった。
だが、もうそれはおしまいだ。
この山にいるゆっくりおよそ1000。
この巨大なゆっくり達。
そしてドスまりさの存在。

今こそ―――戦いのとき!

「明日人間の村を攻めるよ! みんなのゆっくりプレイスを取り戻すよ!!」
「「「「「「えいえい、ゆーーーーー!!!!」」」」」」
洞窟にゆっくり達の声が響き渡っていた。



文々新聞、一面
『巨大ゆっくり、村を強襲!!』
先日、幻想郷某所の村にドスまりさや巨大ゆっくり十数匹が村に攻め入るという事件が発生した。
この村は先月、森を切り開いて作られた村で、今後の森林開拓の足がかりとなるはずの場所だった。
村を襲った巨大ゆっくりは普通サイズのゆっくりを従えており、その数は1000を超えていた。
村人は必死に戦ったが、数や巨大ゆっくりの大きさに圧倒され、村は現在無人状態。
ゆっくりに占拠されてしまっている。
今後、加工所の職員や有志を募り、ゆっくりの駆除に乗り出す模様だ。

『まさかのゆっくり! 人間が敗北!!』
今日昼過ぎ。
村を占拠するゆっくりを駆除するため、有志の鬼井さんや加工所の人間が村に乗り込んだ。
だが、ゆっくり達は村の周りにバリケードの杭を建て、人間の侵入を阻み、
村の中から投石攻撃を繰り出してきた模様。
さらにはうーぱっくを使っての空中投石もあったの事。
それをかいくぐり何とか村にたどり着くものの、入り口を守る巨大ゆっくり達に追い返されてしまったそうだ。
中には腕の骨を折るなどの重傷を負った職員もいる。
今後、増長したゆっくり達が近辺の村の制圧に乗り出すのも時間の問題とされており、
近辺の村や加工所は対策に追われている。

『ゆっくりは何が目的なのか? ゆっくりと村を改築中』
村を占拠したゆっくり達だが、なにやら村に穴を掘っている模様。
ゆっくりは地中に巣を作る習性があるため、そのための穴とも考えられる。
同時に、森の木々を使って杭を作り、村の外周警備をさらに固めた模様。
夜間はみはりを立てる用意周到さで、やはり何かを企んでいるのは確実といえる。

『ゆっくりの群れが拡大。それに対し河童達になにやら動きが』
ゆっくりが人間の村を占領したという噂は、周囲のゆっくりにも伝わったようで、
多くのゆっくりが村を目指して移動してきている模様。
群れはさらに多くなり、今では1500ほどのゆっくりを確認した。
一方、増え続けるゆっくりに対し、人間の盟友である河童達が何やら動きを見せている。
なんでも、外から流れ着いた『あるもの』を使って、日々怪しい実験を重ねているらしい……。



夜。
森のふくろうが鳴いている。
それに混じり「だいたいみんなひどいよ。わたしはおんなだよ」という愚痴が聞こえる。
虫達の声に加え、どこからともなく「そーなのかー」という声も聞こえる。
「ちーん、ちーん」という言葉は変だが綺麗な声も聞こえる。
そんな幻想郷の住民の声を無視し、その『視線』はある村に向かっていた。
村の様子を見る。
モノクロ―――紫外線探知
『視えない』
村の様子を見る。真っ赤―――光源探知
『視えない』
村の様子を見る。黒―――熱探知
『視えた』
わずかな熱移動を示す青い小さな塊。
拡大する。
同時に視聴精度も向上させる。
視えた。
聴こえた。
視線の主は村に向かって駆け出した。



「ゆ、ゆ、ゆ」
夜、満月が浮かぶ空。
ゆっくりに占拠された村。
村の入り口にはところどころ太めの杭が打ち込まれており、人間の侵入を防ぐ働きをしていた。
といっても人間から見れば気休め程度にしかみえないのだが……。
その周辺を警備する夜警ゆっくり達。
「ゆ、ゆ、ゆっくりいじょうな~し!」
村の中は畑や家がたくさんあるが、畑は無残に食い荒らされ、家の襖は破かれ外から丸見え。
家の中も荒らされ放題だった。
さらに、村の奥にある広場には大穴が開いていた。
ここ数日でゆっくり達が掘った穴で、いずれここに多くのゆっくりが来る事を見越して作った住居だった。
その地下は非常に広く掘られており、1000以上のゆっくりが暮らせるように考えられていた。
しかしいまは建設途中なので中には誰もいない。
ゆっくり達は村を占拠すると、ここを自分達にあったゆっくりプレイスにしたのだった。
家の中では何匹ものゆっくりが寝ており、その広場の横にある村一番の大きな家では、
ひときわ大きい……おそらく二メートル以上あるゆっくりまりさとれいむがいびきをかいていた。
このまりさとれいむは、今回村を襲った巨大ゆっくりの一匹で、占領の際人間と最も戦った功労を認められ、
前線基地のリーダーとして村に居座っていた。
「ゆびゅ~……まりしゃしゃまは……さいきょ~……なんだじぇ~……」
「ゆ~……まりさ~……かっこいいぃぃ~……」
時折薄ら笑いを浮かべつつ寝言言っている。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆっくりいじょうな~し」
入り口のれいむはさっきから馬鹿正直に点呼を繰り返している。
と、同じ見張りなのにうとうとしていた成体まりさが目を覚ました。
「ゆ~……れいむうるさいよ!ゆっくりねむれないよ!」
「ねたらだめでしょーーーー!!まりさもゆっくりみはってね!」
「まりさはねむいんだよ!よるはゆっくりねむるんだよ!」
「りーだーにいいつけるよ!」
「ゆっ……」
「うごかないからねむくなるんだよ! まりさはれいむゆっくりしないでこうたいしてね!」
「ゆ……ゆっくりりかいしたよ……」
「ゆっくりちゃんとみはってね!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
れいむの剣幕にまりさは眠たい目を無理矢理あけて、れいむと見張りを交代する。
眠ってゆっくりできないのは苦痛だったが、リーダーに告げ口されて『永遠にゆっくりできなくなる』のはもっといやだった。
普通種のゆっくりは夜行性ではないため、夜間は巣の中で寝るのが普通である。
だが、このゆっくり達は夜の見張りを立て、夜間の襲撃に対処するという事をしていた。
このれいむとまりさの他にも、見張りを行なっているゆっくりは村の外周各所にいる。
全てが二匹一組で構成されており、警備には万全を期していた。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆっくりいじょ―――」

この瞬間までは

「ゆ?まりさ?」
突然聞こえなくなったまりさの声。
れいむは不審に思いまりさが歩いていた方へと向かう。
「まりさ?ゆっくりでてきてね?」
火からちょうど死角になっているところ、その小さな暗黒に―――
「まりさ?」
体を中心から上下に真っ二つにされたまりさが横たわっていた。
まだかすかに生きているのか「ゆ……ゆ……」とうめき声をもらしつつ、体をびくんびくんと痙攣させている。
「ゆ“ーー!?」
驚いたれいむは背を向け、異常を報せようと村に走ろうとした時―――
何かに口をふさがれ、そのまままりさと同じ暗闇の中に引きずられていった。

「~~~~~~!!」

ぐしゃ
最後の見張り役であるゆっくりまりさが潰れる。
口を押さえられている為に声も出せない。
中身の餡子が地面に飛び散る。
だが、まだ生きている。
「ゆっ、ぐじ……じ、だ、げっ……」
既に虫の息で悲鳴も上げられないが、体は痙攣し、その顔は苦痛でゆがんでいた。
まりさを杭に突き刺した人物は、続いて村の中へと歩を進めていった。

村の中にある一軒屋。
本来ならば人間が住むこの場所は、いまやゆっくりによって蹂躙されている。
居間の中心に布団が投げ出され、その上にゆっくりの家族が寝ている。
父まりさ、母れいむ、赤まりさ三匹に赤れいむ二匹だ。
「ゆ~……。ゆ~……」
「ゆゆゆゆゆ~……」
この日も日中は、畑の野菜を腹いっぱい食べたり、村の広場で他の家族と遊んだりした。
遊ぶほかにも、この村の拡張工事も手伝い、仕事の汗をかいた。
誰にも邪魔される事なく、最高のゆっくりプレイスでずっとゆっくりする……そんな夢が今まさに現実となっていた。
「ゆふふふ……まりしゃぁ~れいむしあわせ~」
母れいむが寝言を呟く。
その時だった。
ヒュンッ 
「ゆ~……ゆぶぇっ!?」
突然の衝撃と圧迫感。眠気で朦朧としているが何かがおかしいことはわかった。
「ゆ、ゆっくりおき……ゆゆっ!?」
体が動かせない。よく見ると自分達は丸ごと何かに包まれてしまっているようだった。
家族の周りに網のようなものがまとわり付いている。
しかも包まれた衝撃で、布団からはじき出され部屋の隅まで来てしまっている。
「ゆ! ゆっくりやめてね! ゆっくりやめてね!」
何がなんだかわからないがこのままではゆっくり出来なくなると思い、暗闇に向かって叫ぶ。
「ゆぅ~……れいむ?」
「ゆ! まりさ! なんかへんだよ! ゆっくりできないよ!」
「ゆ……? ゆ!? なんでうごけないの!? れいむはゆっくりはなれてね!」
まりさとれいむはお互いの真正面を見つめあう感じで密着していた。
「だめだよ! れいむはうごけないよ! まりさこそゆっくりしないではなれてね!」
「まりさはうごけないっていってるでしょぉおおお! れいむがゆっくりはなれてね!!」
「れいむだってうごけないっていってるでしょぉおおおお!!」
二人がお互いを罵り合っていると。
「ゆ“~~~……」
と小さな声が聞こえた。
「「ゆ?」」
二人は一旦喧嘩をやめて不思議な顔をする。
そして視線を下に向けると……
赤いリボンがわずかに動いているのが見えた。
なんと二人の間に赤れいむが挟まってしまっているのだ。
「ゆゆっ!! れいむのおちびちゃん!? ゆっくりしないででてきてね!」
「ゆ“ーーー!!」
なにやら体を動かしているが子れいむは出てこない。
「れいむ! れいむがまりさとこどもをはさんでるからでれないんだよ! ゆっくりどいてあげてね!」
「れいむはうごけないっていってるでしょ!! まりさこそゆっくりしないではやくどいてね!!」
再び言い争いが始まってしまう。
「ゆ~ん……うるちゃいよぉ~……」
「ゆっきゅしねらりゃれぇないよぉ~……」
他の子ゆっくり達が両親の声に目を覚まし始めた時だった。

シュルルルル

家族を包んでいる網の端側ががすごい勢いで回転を始めた。
それに対し反対側の網の端っこは家族を包み込むようにしっかりとホールドされていた。
結果、網はねじれるようになる。
雑巾を絞る感じだ。
そしてそれは中にいるゆっくりを―――
「ゆゆ!! なんかきつくなってきたよ!!」
「ゆっ! おちびちゃん! ゆっくりしないではやくでてね!」
「ゆ“~~~~~!!!」
網はどんどん家族を締め付けて行く。
「ゆ!! あみさんゆっくりしないでやめてね! れいむたちつぶさないでね!!」
「ゆ“ーーーきゅるちぃーーー!」
「まりぢゃだち“ちゅぶりぇちゃうにょー!」
「たずげでえ“え”え“え”え“え”!!」
赤まりさ達も外側から網によって両親に貼り付けられる。
「うぎぎぎぎぃぃぃ……」
まりさは潰されまいと全身に力を入れた。
その時。

ブチャ

と、れいむとまりさの間から音がした。
「ゆ?」
二人が目線を下げてみると……
二人の体の間にあったリボンの下から黒いものが染み出ていた。
「「……」」
「ゆびぃぃぃぃぃ!!! おきゃあちゃんとおちょうちゃんがいみょーとちゅぶちちゃあああああ!!」
「ゆびぇぇぇぇぇーーーん!! まりちゃ“のいも”ーどきゃあああーー!!!」
「ぴゅだりはゆっくぢじねぇえええ!!」
「「どぼじでそ“ん”な“ごどい”う“お”お“お”お“お”お“ぉ”ぉ“ぉ”!!」」
子れいむの罵倒に両親は涙を流しつつ弁解する。
そんなことしている間にも網はどんどん締め付けを強くしていく。
「ゆぐぐ……」
「ゆっぐ、り……でぎにゃ……」
すでにどのゆっくりも声を上げられない。そして
「……ゆびゃ!!」
網は両親の体を切り裂き食い込む。最後に子れいむたちの体を巻き込み一本の綱のようになる。
限界まで網が細くなると、まきつきは自動的に止まった。
家族を圧殺した網からは、なんともいえない甘い匂いが漂っていた。

「ゆぅ~?」
一番大きな家で寝ていた巨大まりさは目を覚ました。
原因は強烈に匂ってくる甘ったるい匂いだった。
「ゆ! これはあまあまのにおいだね!!」
あまあまのにおいに釣られ、まりさは夜の村に飛び出した。
ちなみにれいむはね入りが深いのか眠ったままだった。
「ゆんゆん……ここから匂うね!」
一番近くの民家に飛び込む。
そこには床にこびりついた大量の餡子があった。
「ゆっゆ~ん♪ あまあまさんゆっくりたべるよ!」
なにやら綱のようなもからあまあまは染み出ているようだ。
まりさはその上からあまあまを舌で嘗めとっていく。
「うっめ! これめっちゃうっめ!!」
その時、舌に妙な感触が。
「ゆ?」
それはリボンだった。それもよく見るれいむのリボン。
「ゆゆ~?」
広がる餡子。
その中かられいむのリボン。
よくみると黒い帽子のようなものも混ざっているような?
「……ゆ“ーー!?!?」
まりさは自分が食べたものに気がついた。
「どぼじでみ“ん”な“しんじゃっでる”の“ぉ”ぉ“ぉ”!?!?」
まりさは外に飛び出し他の家を見て回った。
綱のようなものから餡子が染み出している。
無造作に踏み潰された塊。
何かに真っ二つにされた体。
共通している事は、どの家にいるゆっくり達もすでに永遠にゆっくりしている事だ。
「見張りはどうじだぁぁぁーー!!!」
入り口のほうに向かう。
しかし、入り口はもっと酷かった。
体が上下に裂かれたれいむとまりさが杭の上に突き刺さっていたのだ。
他は家の中のゆっくり達と同じく、潰されたり無残に引きちぎられたりしていて全員死んでいた。
「ゆ“うううううう~!!!!」
恐ろしい光景の連続に、完全に我を失ったまりさは愛しのれいむの元へ逃げ戻った。
「でい”ぶ~~~~!!びん“な“じん”じゃっでるの“ぉ”ぉ“ぉ”お“お”お“お”お“お”」
しかし、れいむは全く反応しない。
まりさに背を向けて眠っている。
「でい“ぶ”! ざっざどお“ぎでね“!!」
れいむは寝ている。
「ゆ“っぐりお”ぎろぉ“ぉ”ぉ“ぉ”ぉ“!!!」
まりさがれいむに体当たりした。

ズルッ

「ゆ“!?」
れいむの体が真横に真っ二つになり、上半分が床に滑り落ちた。
「……」
訳がわからなかった。
いつものように寝て。
あまあまの匂いがしておきたらみんな死んでいて。
戻ってきたられいむもすでに死んでいた。
すでにまりさの脳はパンクしかけていた。
だから―――後ろに立っていた死神にも気づかなかったのだ。

目の前にある丸い『モノ』。
熱探知すると今の状態がはっきりわかる。
発熱する周りの赤い部分。
その中央にあるわずかに温度が低い丸い部分。
これは極度の興奮状態と芯まで冷える恐怖に支配された状態だ
死神は突然姿を現すと、持っていた槍でまりさの体の芯―――温度が低い丸い部分を軽く一刺しした。

「ゆびっ!!」
……
……しんじゃう?
まりさしんじゃう?
……
やだ
やだやだ
やだやだやだ
しぬのはいやだ!!!
しぬ!
しんじゃう!
なにがどうなってるの!?
れいむのからだもどうなってるの!?
みんなどうなってるの!?
なんでまりさがこんなこわいめにあうの!?
どすのせいだ
どすがここをつかわせてあげるなんていったせいだ
どすがにんげんをこうげきするなんていったせいだ
どすがわるいのに
まりさはわるくないのに
まりさはにんげんをたおせるつよいゆっくりなのに
ゆっくりしてたのに
これからもゆっくり、するの……に
もっ、と……ゆっく……りぃ―――

死神は動かなくなった『モノ』を見ている。
その表情は仮面の下に隠れていてわからなかった。



次の日の朝

森の中を移動するゆっくりの集団がいた。
その数、ざっと1500。
成体、子、赤ゆっくり。加えて巨大ゆっくり。そしてドス。
巨大化した普通種が数十匹いた。
皆食料を持っており、楽しそうに会話を楽しみながら移動している。
「きょうはゆっくりお引越ししようね」
ドスの大きさは3メートル以上もあった。
ドスと巨大ゆっくりを中心とした群れは、その数のせいもあって、まさしく民族大移動のようだった。
「うばったにんげんたちのむらにいくんだね!」
「みょーーーん!」
「おっきいれいむたちがいればにんげんなんかいちころだもんね!」
「これからはありすが、にんげんたちにとかいはがどういうものかゆっくりおしえてあげるわー!」
「おっきいみゃみゃだしちゅき~」
「おちびちゃん!あぶないからぼうしのなかからでるんじゃないぜ! ゆっくりしてるんだぜ!」
「このまえのにんげんたちもばかだったよねー」
「わかるよー。ちゃんたちがこわいんだよー」
「やっぱりにんげんなんてたいしたことないんだぜ!」
「もっともっとゆっくりぷれいすをひろくしようね!」
彼らは人間に宣戦布告し、手始めにふもとの村を乗っ取った。
緒戦は大勝した。
その後の襲撃も軽くいなした。
もはやゆっくり達の思考は、『人間は自分達でもあっさり倒せるもの』に変わっていた。
そして今日は、その更なる下準備のため、乗っ取った村へと引越しをしているのだ。
「どすやおっきいみんながいればあんぜんだね!」
「どす~みゅらにはまだちゅかにゃいの?」
「もーちょっとだよ、もう少し待っててね!」
「ゆ~♪ に~んげん~なんか~♪ よわい~♪ よわい~♪」
「にんげんのやさいはすべてまりささまがいただくんだぜ!」
「いなかもののにんげんなんてありすにかかればいちころよ!」
「はやくゆっくりぷれいすがひろがるといいね~」
「ゆ~♪ ゆゆゆゆ~♪ ゆ~♪」
「ゆっくりはつよさをあっぴるなどしてない……」
と、雑談に花咲かせている。
中にはにんっしんしているゆっくりも混ざっているが、ドスや巨大ゆっくりまりさの帽子の上や中に入りゆっくりしている。
ゆっくりたちは明るい未来を夢想してやまなかった。
ドスがいる
大きなゆっくりもいる
何より自分達は人間に勝った。
もっともっと、ゆっくりプレイスを広くしていこう
そして、そこでいつまでもゆっくりしていよう
そんな……

都合のいい白昼の夢を見続けていた。



やがて村へと到着する一行。
「ゆっくりついたよ!」
一番に村に入った巨大ゆっくりまりさが元気よく挨拶する。
だが、いつもと様子が違う事に気づく。
いつもならゆっくり達がゆっくりしている声が家や広場から聞こえているはずだった。
「ゆ? ゆっくりしていってね!!」
さらに大きな声で挨拶する。が、村からは応答がない。
「ゆゆ? みんなゆっくりねてるのかだぜ?」
「まりさ~どうしたの~?」
巨大ゆっくりれいむが尋ねる。
「みんなのこえがしないんだぜ!」
ぞろぞろと森を越えて姿を現すゆっくり達。
「まだみんなゆっくりねてるのかな~?」
「ゆ~そんなことないはずだよ! 少なくともみはりのみんなはおきてるはずだよ!」
「みょーーーん?」
「みんなどうしたの!」
姿を現したドスが巨大ゆっくり達に尋ねる。
「むらのようすがへんなんだぜ!」
「わからないよー。みんながどこにもいないんだねー」
「ゆゆ? それはほんとう?」
ドスは一番近い民家を覗いてみた。
「ゆ? 中に誰もいませんよ」
民家の中はものけのからだった。
ドスは考えた。
「ゆ~……みんな! 大きい子についていきながら村の中を見回るよ! ぱちゅりーは何人かで食料を新しい巣に運んでね!
「「「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」」」
ドスは役割分担を決め、村の検索隊と持ってきた食料を運搬するチームに分けた。
大きいゆっくりは今ではドスの補佐役といった感じで、群れのみんなはドスの指示を素直に受け止め的確に行動して行く。
そんな仲間達を頼もしく思いながら、自分も村の見回りを始めた。
「むきゅ? あれはなにかしら?」
食料運搬を任された、参謀巨大ぱちゅりーは妙な事に気がついた。
この参謀ぱちゅりーも巨大化したゆっくりなのだが、体の弱さはあまり改善されておらず、やはり頭を使う事多かった。。
ぱちゅりーが見たのは、自分達のやってきた森の木に村側を向いて付いている『黒いモノ』だった。
虫の匂いも草の匂いも土のにおいもしない。
舐めてみたが何の味もしない。
「むきゅきゅ~?」
「ゆ~! ぱちゅりー。ゆっくりしないではこうぼうよ~」
「むきゅ! ゆっくりいくわね」
考えてもよくわからないので、とりあえず与えられた仕事をこなす事にした。

ドスたちは村の中を探すが、先遣隊のゆっくり達はどこにもいなかった。
「ゆううう……みんなどこにいったんだろう……?」
「どす! こっちにもいなかったんだぜ!」
「こっちもいなかったよ!」
その時だった。
「ど、どすーーーー!!」
「「「「「ゆぎゃああああああああああああ」」」」」
「ゆ!?」
それは広場に作った新しい巣に食料を運びに行った参謀巨大ぱちゅりーと他のゆっくりの声だった。
声はとても切羽詰った様子で、ゆっくり出来ていない感じがした。
「ゆ!ぱちゅりーのこえだよ!ゆっくりしてないよ!」
「みんな行くよ!」
ドスたちは広場へと向かった。

村の一番奥にある広場にドス達は到着した。
「どうしたのぱちゅりー!?」
「むきゅ~~~~……」
「ごんなのがいはじゃないわあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”」
「べにいいいいいいいいいいいいいいいずうううう!?!?!」
広場のすぐ入り口で参謀巨大ぱちゅりーと普通サイズのゆっくり達が錯乱状態になっていた。
周りに運んでいた餌が散乱している。
「どうしたんだぜみんな!!」
「わからないよー! ゆっくりしてよぉーー」
「あ、あれ……」
参謀巨大ぱちゅりーは目を閉じたまま上を見上げるように顔を向ける。
ドスはゆっくりと視線を上げた。
「!!!」
それはゆっくりにとっては悪夢のような光景だった(ゆっくりから見ると)。

広場には一本の木が生えている。
そして、その柱に貼り付けられているもの。
皮。
ゆっくりの皮。
ゆっくりの髪飾り。
中身の餡子を失ったデスマスクと髪飾りが棒に貼り付けてあったのだ。
その中にはひときわ大きい皮と髪飾りもある。
おそらくこの村を守っていた巨大まりさとれいむのものだろう。
そしてその木の根元には、そのゆっくり達の中身であったであろう餡子が固まっておいてあった。
その中には歯や目、舌なども混じっていた。
ゆっくりの餡子の塊の上に立つ、ゆっくりの皮をまとった木。
かつてゆっくり出来た広場は、死臭漂う地獄となっていた。

「どうな“っでるのお“お“お“ぉ“ぉ”ぉ“ぉ”ぉ“!?!?!?」
「おう“ぇえええええ」
「……」
「わがら“な”い”よ”ぉ“ーま”り“さ”がぁーーーー」
ドスはかろうじて正気を保ったものの、広場に来た普通ゆっくり達は相当ショックを受けたようで、
気絶するものや餡子を吐いてしまうものもいた。
「どすーーー」
先ほどの絶叫を聞きつけた他のゆっくり達が広場に集まってきていた。
「ゆ~。どす? なにがあっ…………びゃあああああああああああああ……うまい~」
「ゆ”ゆ”ゆ”ーーー!?!?」
「まりざがあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!」
「どうじでごんなごどになっでるのぉ“ぉ”ぉ“!!!」
「えれえれえれえれ」
「ゆーーー!! あかちゃんゆっくりあんこはかないでね!! ゆっくりできなくなるよ!!」
「ごんなんじゃゆ“っぐりでぎないいいいい!!!」
「い“や”だぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“あ”あ“あ”ぁ“ぁ”ーーーーーー!!」
「ゆびぇ!! ふまないでええええー!?!? あか“ち”ゃんがあ“あ”あ“あ”!?」
広場にやってきてその惨状を見たゆっくり達はたちまち大混乱に陥った。
錯乱して精神異常をきたすもの。
ただただ絶叫するもの。
赤ゆっくりには特に刺激が強かったようで、既に餡子を吐いて絶命したもの。
混乱して飛び跳ねる他のゆっくりに潰されるもの。
その様子を見てわけもわからずわめくもの……。
まさしく、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

「み、みんな! ゆっくり落ち着いてね!! 大丈夫だからゆっくりおちついてね!!!」
ドスはみんなに呼びかけるが、あまりに数が多いためその声は喧騒にかき消されてしまう。
補佐役の巨大ゆっくり達でさえ、何匹かは気絶したり、わめき散らしたりしてしまっている。
ドスがただおろおろしていると、参謀巨大ぱちゅりーが言った。
「む、きゅ……どす……おーらよ、ゆっくりおーら……」
参謀巨大ぱちゅりーもクリームを吐いているが、容量が多い分まだしゃべれる余裕があった。
「ゆ! そうだったよ!」
ドスのもつ特殊能力『ゆっくりオーラ』。
ドスの体から発せられる特殊なオーラによって、周りにいる生物をゆっくりさせる力があるのだ。
「ゆ~。みんなゆっくり、ゆっくりしていってね~」
ホワワワワ~~ン
怪しげな効果音(心象風景)と共にオーラが発せられる。
オーラは広場全体を包み、やがてゆっくり達が落ち着きを取り戻す。
「「「「「ゆ~ゆっくりぃ~~~」」」」」
しかし、これには最大の弱点があった。
そろいもそろってみんな「ゆっくり~」な状態になってしまうため、群れを混乱に貶めた原因であるモノを片付ける事ができないのだ。
かといってこのままゆっくりオーラを止めたら、再び群れは大混乱になってしまう。
「(ゆ~……このままじゃどうにもならないよ)」
オーラはいつまでも出せるものじゃない。
しかも連続して出す事も不可能だ。
再び群れが混乱に陥ったら納める事は出来ないだろう。
「(ゆ“~~~誰がたすけてぇぇぇぇ!!)」
ドスが心の中で助けを叫んだ瞬間だった。

シュバッ ズガーン

「ゆ!!」
突然の爆発音。
ドスはオーラを出す事も忘れそちらの方向を振り返った。
燃えていた。
ゆっくりの皮と髪飾りが貼り付けられた木が。
その下にあった餡子も燃えていた。
ゆっくりには火葬という概念はない。
仲間たちの死体はありがたく食料とするか、そのまま土に返すかである。
ドスもなんとかして仲間の死体を丁寧に葬るつもりだった。
しかし、今その死体が火の中で燃えている。
ゆっくりのデスマスクは炎の中であぶられ変形し、火で焼かれる苦痛でないはずの表情を歪めているようだった。
「ど、ど、ど、どうなっでるのお“お”お“お”お“お”!?」
「ゆ~? どす~? ゆっくりしていってね!」
ゆっくりオーラがなくなったため一部のゆっくり達が意識を取り戻す。
ゆっくりオーラでゆっくりしたゆっくり達は、先ほどまでの記憶なんぞ忘れてしまっている。
「ゆ~!! きれいなあかあかだね~!」
「でも、ちょっとあちゅくてゆっくりゅできにゃいね」
「ゆっくりはなれるよ! ゆっくりみるよ!」
「ゆ~ゆ~ゆ~! とってもあかるいよ~」
その下で燃えているものが何なのか判別できないゆっくり達は、真っ赤に燃え上がる木をみて楽しそうな声を上げている。
「みんななによろこんでるのぉぉぉ!? まりさたちが燃えちゃったんだよおおお!?!?」
「ゆ? なにいってるのどす? まりさたちなんかいないよ?」
「そーだよ。 れいむたちきれいきれいみてるんだからじゃましないでね!」
「ゆっくりさせてくれないどすはゆっくりしね!」
「な“ん”でぞん“な”ごどい“う”の“ぉ”ぉ”ぉ“ーーー!?」
燃えてるものが何なのかわからないゆっくりたちはドスを罵倒する。

そんな広場の状況を『彼』は静かに観察していた。
広場の状況を確認する。
彼は仮面をつけていた。
仮面は目の部分がモニターとしての役割も果たしており、ゆっくり達を認識するとデータを映し出した。

<対象危険指数>
『普通種ゆっくり―――危険指数……データ化不可』
『巨大ゆっくり―――危険指数100/01』
『どすゆっくり―――危険指数100/05』
<対象処理方法>
『普通ゆっくり―――放置』
『巨大ゆっくり―――放置』
『どすゆっくり―――作戦対象個体:捕獲(最優先)』

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最終更新:2022年05月03日 21:16