※虐待分は薄めです





「・・・・・・」

ゆっくりまりさは困惑していた。

理由は分からないけど、さっきすれ違った人間に尾行されている。

「ねえ、おじさん!どうしてまりさについてくるの!」

その人間は何度文句を言っても返事ひとつしない。

「・・・・・・」

家へと急ぐまりさの足取りは次第にせわしないものになってゆく。

しかし、人間にとってはちょうど良い速さだ。

「ゆっ!ゆっ!ゆっ!」

相変わらず何も言わずに、無機質な表情で追いかけてくる人間のあまりの不気味さに、まりさはいつしか全力疾走になっていた。

もっとも、それでも人間にとってはちょっと早足で歩く程度の速さでしかない。

「・・・・・・」

「ゆぅ!・・・ゆっ!」

逃げても逃げてもその人間はひたすら追いかけてくる。

あまりにしつこいのでついに我慢の限界に達したまりさは振り返りざまにその人間の足に体当たりを食らわす。

「・・・・・・」

すると、何も言わずに仰向けに倒れ、そのまま動かなくなった。


「ゆう・・・ゆぅ・・・。まりさのいうことをきかないからこうなるんだぜ!」

と、得意げな笑みを浮かべながら人間を一瞥し、巣に戻ろうと再び歩き出す。

「・・・・・・」

同時に、倒れたはずの人間は再び起き上がり、またまりさを追跡し始めた。

「ゆううううう!!なんでおきあがるのおおおお!!」

「・・・・・・」

さっき自分がやっつけたはずの人間が平然と起き上がったのを見て、もはや攻撃する意思を完全に失い、逃げ惑うことしか出来なかった。

だからと言って、無視して巣に帰るのはリスクが大きすぎるので、そこら中を延々と徘徊して必死に撒こうとする。

けれど、全ての面でゆっくりの上を行く人間を撒くことなどできるはずもなく、ただ悪戯にまりさの体力だけが奪われていった。

「・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・もう、げんかい・・・。これじゃ、ゆっくりできないよぉ・・・」

とうとう限界に達したまりさはその場にへたり込み、多少の餡子を吐き出すと意識を失った。



目を覚ますと4つの目がまりさを見つめていた。どの瞳にも何の感情も宿っておらず、まるで昆虫に凝視されているようだ。

「ゆうううう!!なんでふえてるのおおおおおおおおお!!」

「「・・・・・・」」

まりさは重い体を引きずって再び勝利無き逃走を開始した。

必死で飛び跳ねるまりさをただ凝視しながら追跡する2人の男にはサディスティックな感情さえも感じられない。

「「・・・・・・」」

一体何が楽しくてこんなことをしているのだろうか?

もしかしたら、こうやって追い掛け回しているだけで何も危害を加える気はないのかもしれない。

それなら・・・このまま現在にんっしん中のパートナーのゆっくりれいむの待つ巣に帰っても良いのではないだろうか?

そんな考えが頭をよぎる。しかし、そんな誘惑を振り払ってまりさはひたすら逃げ回る。

「ゆっ!ゆっ!ゆっ!」

「「・・・・・・」」

どんなに頑張っても勝てるはずが無い。そんなことは嫌というほど承知している。

けれど、人間をうかつにれいむのそばに近づけるわけには行かない。

「・・・ゆっ!・・・ゆっ!」

「「・・・・・・」」

追跡者はその歩みを止めることなくひたすら追いかけてくる。

目的なんてあるのかどうかさえ分からない。しかし、ただひたすら追いかけてくる。

今のまりさにとって重要なのはそのどうしようもない事実であり、目のそらしようの無い現実なのだ。

「・・・ゆぅー・・・ゆぅー」

「「「・・・・・・」」」

気がつけばまりさを見つめる目が6つに増えていた。

しかし、増えたところですることは今までと何ひとつ変わりない。

ただ、無表情のまままりさを凝視しながらどこまでも追いかけてくるだけ。

そう、どこまでもどこまでも。ただ一心にまりさを追いかけてくる。

「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」

不意にまりさは見慣れた場所に到着していることに気付いた。

そこはまりさとれいむの巣のすぐそばだった。

「お、おじさん!こ、ここ、ここにはなにもないよ!」

もし、巣が見つかったら大変だ。そう思ったまりさはゆっくりなりに人間を巣から遠ざけようと試みる。

しかし、3人の男たちはまりさの言葉に全く耳を貸さず、相変わらず淡々とまりさを凝視していた。

「ま、まりさぁ!?」

すると、突然巣から身重のれいむがゆっくり飛び出して来た。

「ゆぅ!?どほぢでででぐるのおおおおお!!」

れいむを守りたい一身で気を失うまで走り続けたまりさとしてはこの事態は涙目も良いところだ。

「だっでぇ・・・にんげんがあああああ!!」

だが、そういって巣のほうに目をやるれいむもまた涙目になっていた。

れいむの視線の先、巣の入り口には・・・・・・

「「「・・・・・・」」」

3人の男が一切の感情を押し殺した無機質な表情のまま、じっと仁王立ちしていた。



その絶望的な状況を前にして、2匹はしっかりと身を寄せ合い、歯を食いしばって恐怖に耐えている。

「ま、まりさぁ・・・」

「ゆ!だいじょうぶだよ!れいむもあかちゃんもまりさがまもるよ!」

「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

しかし、いつまでも人間たちは無機質なまなざしを送り続けるだけで、それ以上何もしようとしない。

「ねえ、まりさぁ・・・こひとたちなんなのぉー・・・!」

「わ、わからないよ!でも、れいむはまりさがまもるよ!」

「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

「「「・・・・・・」」」

草むらから更に3人の男が沸いて出てくる。

しかし、やることはといえばやっぱりただ淡々と凝視するだけ。

その瞳には何の感情も宿っておらず、それゆえに言葉にならない気味の悪さがあった。

「ゆ、ゆぅ・・・まりさぁ・・・おうちにかえりたいよぉ・・・」

情けない声を上げてまりさにすがりつくれいむ。身重の分、れいむのほうが大きいのだが、見かけよりもずっと小さく見える。

「そ、そうだね・・・ここじゃゆっくりできないね!」

巣の場所は知られてしまっているし、こんな大勢の人間を出し抜けるとも思えない。

自分たちに出来ることは・・・この人間たちの行為がただの悪戯であることを祈ることしかない。

そう判断したまりさは、人間たちの様子をじっと伺いながられいむを視線から庇うように位置取り、ゆっくりと巣に戻っていった。

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

総勢10名にも及ぶ男たちはその様子を相変わらずの無感情な眼差しで見つめ続けていた。




---あとがき?---
この作品はネタを「ゆっくりいじめ系480 ストーキング 」から借用しています
ただひたすら人間がゆっくりを凝視し続けるだけです。何がしたいんだこいつら?

byゆっくりボールマン

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最終更新:2022年05月03日 19:12