加工所公式サイト、キッズページで「しゃかいこうけん」という項目をクリックすると、こんなページが出てくる。

 【加工所はアフリカの土地で、ゆっくりを使った地雷除去を行っています】

 ゆっくりんピースの活動などにより、一部では悪い印象を持たれているのも事実。
 イメージ戦略の一環として、こういうこともしているようだ。
 右下にはかわいくデフォルメされたれいむとまりさが、笑顔で喋っているイラストが付いている。
 そのセリフは?
 れいむちゃん「れいむたちはみんなのためにがんばりたいよ!」
 まりさちゃん「ゆゆ~ん♪ かこうじょのゆっくりはこんなところでもかつやくしてるんだね!」


 どん、どん、どん、どん……。
 ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……。

 太鼓の音が響く。
 かつての内戦地。じりじりと暑く草一つない亜熱帯アフリカの大地にて。
 横一列×十行に並んだゆっくりたちが一糸乱れぬ調子で前進していた。
 ひとつドンと鳴るたびに一歩進む。機械のように、ただただリズミカルに進む。

 (おちびちゃん! れいむは、れいむはぜったいにしなないよ……!)
 横のゆっくりとの間に、スキマはまったくない。ほっぺとほっぺをくっつけて、決して遅れないよう進んでゆく。

 どんどん。ドン!
 「ゆびっ!!」
 どんどん。ドン!
 「ぼっぢょっっ!!」
 どんどんどん。ドン!
 「ゆがぼべ!!」

 立て続けに三匹、永遠にゆっくりした。れいむの頬に、爆風と爆音。ゆっくりの断末魔が突き刺さる。
 そして餡子の底から不快になる死臭が風に乗ってやってくる。
 しかしどのゆっくりもまったく歩みを止めようとしない。
 はねるたびに、大地の暑さによって染み出てきた汗がとびちる。

 どんどんどん。
 突然に、風が一吹きあった。
 「ゆゆっ! まりさのおぼーしさん! まってね!!」
 このまりさは、ただちょっとお帽子を取りたかっただけだ。
 「ぺぎょっ!!」
 そこで小さい爆風。まりさは中枢餡を爆破されこの世を去った。
 止まったり列を離れたりしたゆっくりはどんな理由であれ、体内にうめこまれた爆薬でぶち殺されるのである。
 自由な行動を許しては、地雷の除去はままならない。

 どんどんどん。
 一歩おきに、地雷に殺される可能性がある。その恐怖。
 どのゆっくりも泣きそうな顔をして、死への道をただただ進むのだ。
 顔を真っ赤にして号泣して、それでも死にたくないから止まれない。
 「むっぎょおおおお!!! ぼういやああああ!!! ばちゅおうぢにがえるううううう!!!!」
 また爆風。
 このぱちゅりーのように恐怖のあまり狂って、走ったり暴れたりするゆっくりもいた。
 恐怖に耐えられないゆっくりも、列からずれ次第爆破される。珍しくない出来事だ。

 どんどんどん。
 死と隣り合わせの極限状態。また。しずかに、ただ太鼓の音だけが響きはじめた。
 れいむは祈りながら、一歩ずつ慎重に進む。地雷がないように、あっても何かの間違いで爆発しないように。


 交通の発達とともに世界中に繁殖したゆっくり。
 れいむはこの暑く草もまばらな土地から少し南の、あるジャングルで生まれ育ったゆっくりだった。

 雨が多いことが熱帯雨林に住む上での唯一の難点である。
 しかし食べ物が多く、なんといっても越冬する必要がないことがゆっくりの繁殖を許した。
 それぞれの力は弱くても種全体としては力強いゆっくりは、凶悪な外来種としてここでも猛威をふるっているという。

 そんなれいむが地雷除去ゆになったのは、人間さんたちのゆっくり狩りが原因だった。
 豊富に繁殖した熱帯雨林のゆっくり。そこのゆっくりを使うのが量の面でも、コストの面でも良いと担当職員は考えたのである。
 れいむは捕えられたあの時を、いつも反芻している。
 あの時ふらんに捕まってさえいなければ、今だってゆっくりできたはずなのに。

 ~~~~~~~~~~
 ツルや低木がごちゃごちゃと並ぶ中、高い木の根元、そこに巣をつくってれいむたちは暮らしていた。
 夫のまりさ、そして十五匹のおちびちゃん。食べ物は豊富で、最高にしあわせーな家庭であった。
 「「おちびちゃんたち、おかーさんとおとーさんはかりにいってくるよ!」」
 「「「「「ゆっくちいってらっちゃい!!」」」」」
 天使のような子供たちの笑顔。れいむとまりさもついついにっこりしてしまう。
 しかしこれが親子でした最後の会話となってしまった。
 おちびちゃんとふれあったあの日々。れいむは、もうずいぶん前の事の様な気がしている。

 育ち盛りの赤ゆを抱えたれいむとまりさ。沢山ごはんを採るため群れで有名な狩りスポットへ行こうとした。
 ぱぱいやさんも生っているゆっくりした場所。しかしそれが運の尽き、そこはすでに地獄だった。
 ゆっくりが集まることを見越して、捕獲用ふらんが大量に放たれていたのだ。

 「しね! しね!」
 「「「うー☆」」」
 「ゆんやあああ!!! ありちゅをたべにゃいでええええ!!」
 「おぢびぢゃああああああんんんん!!!!」
 「ばりざおいしぐないよおおおお!!!」
 「でがばらぢんぼおおおおお!!!」
 「みんなあああ!!! みんなにげでえええええ!!!」

 逃げ回るゆっくりはいとも簡単に捕まり、次々と巨大なバケツに放り込まれている。
 重量がない子ゆ・赤ゆは軽過ぎて地雷除去ができないので、食べられるか殺されるかだ。
 にげてと叫ぶ長ぱちゅりーも、まばたきした一瞬に連れ去られ、バケツ行きになった。

 ふらんが群れのみんなを捕まえている! 捕まって食べられてしまう、そんなの冗談じゃない!
 れいむはまりさにふりかえった。
 「ゆゆ! ゆっくりしないで、れいむたちもにげるよ!」
 自分達も逃げないとゆっくりできない目にあいそうだ。はやく逃げなければならない。
 しかしまりさの返答は、漢気あふれる勇敢な物。みんなのことを考え命を捨てる、そんなゆっくりにしかできない答えだった。
 「まりさは……にげないよ! れいむとおちびちゃんたちだけでにげてね!! まりさはふらんとたたかって、むれのみんなをまもるよ!!」
 「ま、まりさ!! なにいってるの!? いくらまりさがむれでいちばんつよいからって!」
 まりさは成ゆ三匹を相手にしてなお無傷で立つ。この群れ十年に一度の戦士だった。
 その自信もそこからきているのだろう。まゆげはキリリと伸び、表情は自信に満ち溢れている。
 れいむは悲しくなり涙を浮かべたが、これが自分の愛したまりさだと思うと、それ以上止める気にはならなかった。
 まりさならふらんたちを倒せるかもしれない。
 「わかったよ……、でも、ぜったいいきてかえってきてね! まりさがしんだられいむもおちびちゃんもないちゃうよ!!」
 「もちろん! しんぱいしないでね! ふらんなんてちょちょいのちょ……おそらをとんでるみたい!!」
 まりさはキリリとした顔のまま、ふらんにおさげを掴まれあわれバケツ行きとなった。
 「ばりざああああああああ!!!!」
 れいむも同じ道をたどったことは言うまでも無い。
 ~~~~~~~~~~

 (ぜったいにいきのこって、おちびちゃんとゆっくりするよ! ぱぱいやさんをたべて、ゆっくりするよ!)
 つがいのまりさはあっけなく爆死したが、れいむはまだ死んでいない。
 れいむは希望を持っていた。地雷除去ゆたちは、がんばったゆっくりから群れに帰れるとふきこまれている。
 だが現実、ゆっくりがおうちに帰ることはは二度とない。
 ゆっくりを働かせるための口実だろう。この土地の地雷処理が終われば次の土地に輸送されるだけである。
 地雷を踏んでしまうその日まで、この地獄は終わらないのだ。

 「Back!」
 人間さんの鋭い掛け声とともに、ゆっくりたちは反転する。
 Go aheadで進み、Backで戻り、Waitで止まる。その三つ以外の事は求められない。地雷処理ゆ全てだ。

 (ゆふぅ、かわいいれいむはきょうもいきのこれたよ)
 反転したゆっくりたちは、自分が歩いてきた土をまた踏むことになる。
 念のためということで、一つの場所を何度も往復するのだ。
 一度踏んだ土の下に地雷は無いはずだからと、ゆっくりたちもここにきてやっと安堵の表情を見せる。
 ただ運よく何週間も地雷除去を続けているゆっくりはそんな簡単に安心できず、不安そうな顔をしている。
 ここから死ぬゆっくりも沢山いるのだともう知っているのだ。

 その瞬間、れいむの視界はスローモーションになった。

 大きな音。大きな音。どこから?

 それは、れいむの下から。

 「ぶぎょっ!!」
 れいむの体の真下。餡子の重みで地雷が爆発した。
 筋餡も中枢餡も、なにがなんだかわからないぐらいまざりあって、粉々にふきどんだ。
 れいむは死んだ。走馬灯を見る暇すらなかった。
 軍事上の理由から複数回踏まなければ爆発しない地雷、誤作動により爆発できなかった地雷。
 二度目以降でも爆死するゆっくりはいる。

 しかしなんてことはない。ゆっくりが死ぬのはいつものこと。
 人間さんも、周りのゆっくりも、れいむの死などなかったかのように行進を続けた。
 行進が終わったあと、残されたのは死んだゆっくりたちのバラバラになったおかざりと、ぶちまけられた大量の中身だけであった。 





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最終更新:2024年02月09日 11:56