「それじゃさっそくレッスンを始めましょう!」
「うー! それよりゆっくりするどぉー! れみりゃはつかれたんだどぉーー!」
私は家にれみりゃを連れ込み、地下室へと案内する。
そこは、ブリーダー時代に作ったゆっくり用の生活ルームだ。
6畳ほどの部屋に、ゆっくりが生きるために必要なものは一通り揃えてある。
「なにしてるんだどぉー! さっさとぷっでぃんもってくるんだどぉー!」
れみりゃは、部屋に入るなり、私に悪態をつきだした。
移動に疲れたことで、機嫌が悪くなっているのだ。
もっとも、実際たいして疲れているはずはない。
森からここまで、私が抱っこしてきてあげたのだから。
「いいの? そんなワガママばかり言っていると"おぜうさまこうほ"になれないわよ?」
「だぁーめぇー! れみりゃはおぜうさまこうほになるのぉー! ぷっでぃんもたべるのぉー!」
「……それじゃ、レッスンが終わったらプリンを食べさせてあげるわ」
「う~! おねーしゃんケチケチだどぉ! それにおぶぁかさんだどぉ~♪ プリンじゃなくてぷっでぃ~んだどぉ♪」
「ふふふ、ぷっでぃ~んね……覚えておくわ」
どんなに悪態をつかれようが、ゆっくりに馬鹿にされようが、私の気分が害されることはない。
何しろ、これでようやく押さえ込んでいて暗い欲望を解放できるのだから。
私の胸は、怒りどころか、幸福感と興奮で満たされていた。
「……う~? なにしてるんだどぉ?」
れみりゃは、ふと私の行動に疑問を覚えたようだ。
その時、私は手にローションを塗っていた。
"互いの"肌が荒れないようにするための処置だ。
「これは、レッスンの準備よ。これをやらないと、ゆっくりできないの」
「う~~、れみりゃはゆっくりしたいどぉ……」
"ゆっくりできない"という言葉に過剰反応するれみりゃ。
れみりゃ種といえど、やはりゆっくりに違いはないのだ。
(もっとも、この場合"ゆっくり"することが幸せとはかぎらないでしょうけど)
準備を整え、私はれみりゃを抱え上げて、地下室の備え付けのベッドへつれていく。
「それじゃ、レッスンを始めるわよ」
「う~♪ れっすん~れっすん~♪」
私はベッドに腰掛け、その膝の上にれみりゃを座らせる。
そして、片腕をれみりゃの胴に回してしっかり抱きしめる。
まるで、少女がクマのヌイグルミを抱きしめるように。
(……少女、というのは我ながら無理があるか)
私は苦笑して、もう片方の手をじっと見つめる。
一度はこの"手癖"を、"病気"を呪ったこともあった。
(だけど、もういい。もう押さえつけはしない)
私は、自分の手にそう念を送ってから、すぅーと息を吸い込む。
そして、己の衝動を解放した。
「いくわよ、れみりゃ」
私は、れみりゃの下ぶくれた顔の下側、頬から下あごにかけてのラインに手のひらをあてる。
そして、押すように引っ張るように、撫でるようにスリスリするように、手のひらを動かし、
極上の料理を舌の上で転がすように、れみりゃの下ぶくれを手のひらで転がしはじめる。
それは、人間が太った人の下あごの脂肪をからかう時によくやる動作に似ている。
"たぷたぷ"
まさにそんな擬音が相応しい行動。
私は、リズムを刻みながら、れみりゃの下ぶくれを"たぷたぷ"し続ける。
「うー?」
たぷたぷ。
「おねーしゃん、なにしてるんだどぉ?」
たぷたぷ。
「くしゅぐったいどぉー♪」
たぷたぷ。
「我慢してね、このレッスンに耐えられないようじゃおぜうさまこうほにはなれないわよ」
「う~~~♪ れみりゃおぜうさまこうほになっちゃうどぉ~~~♪」
笑顔で応じるれみりゃ。
私がたぶたぷと手を動かすのにあわせて、れみりゃも「たぁ~ぷたぁ~ぷ♪」と楽しそうに口ずさむ。
(さて、その余裕がいつまでもつかしら?)
ゆっくりが私の"たぷたぷ"を嫌がる理由の一つ。
それは、私が"たぷたぷ"する場所が、主に頬から下あごにかけての部位にあたるからだ。
種族ごとの差はあるが、そのあたりにはゆっくりにとっての生殖器官や出産口、
胴無しゆっくりの場合はさらに跳ねるための運動器官や排泄器官までもが集まっている。
言わば、ゆっくりにとって、もっとも大事で敏感でデリケートな部分なのだ。
そこに刺激を与え続けられては、ゆっくり達も堪らない。
殴られるのとも撫でられるのともスッキリとも違う、
極めて異常な感覚を、ゆっくり達は感じるらしい。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「うーうー♪」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「たぷたぷだどぉー♪」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「う、うー♪」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「う、うぅー、たぁーぷ、たぷ」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「うぅ~~~~っ」
れみりゃの顔に、徐々に戸惑いとも嫌悪ともとれる色が浮かび始める。
だが、私は構わず"たぷたぷ"を繰り返す。
「う~~~、お、おねーしゃん」
「ん、なに?」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「れ、れみりゃ、そろそろゆっくりしたいどぉー♪」
額にうっすら汗を浮かべながら、こちらに微笑みかけるれみりゃ。
だが、私はそれを軽くいなす。
「う~~~、なんでむしするんだどぉ!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
(ああ、やっぱりいい……)
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「う~~~! はやくやめるんだどぉ~~~!」
徐々にれみりゃの顔から笑みが消え、抵抗が増していく。
しかし、抑圧された衝動を解放した私に、その叫びが届くことはない。
(すばらしい! とまらない! とめられない!)
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「いうこときかないと、た~べちゃうぞぉ~~っ!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「う、うそじゃないどぉー! ほんとにほんとにたべちゃうぞぉーーっ!?」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「ぎゃお~~~っ! ぎゃお~~~~っ!!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「ううう~~~っ! さ、さくやぁ~~~~!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「うぁぁぁーーー! やめるどぉぉぉーっ!!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「はなすんだどぉーー! もう、おうちかえるぅーーーっ!!」
とうとう、れみりゃは泣き叫びだし、私から逃れようとジタバタ暴れ出す。
しかし、ガッチリと抱いた私の手から逃げることはできない。
「あら、おぜうさまこうほになりたくないの?」
「いやぁぁぁーーっ! れみりゃはおぜうさまこうほになるのぉーーーっ!」
「それじゃ、この程度の"たぷたぷ"で音を上げちゃダメよ?」
「やだやだやぁ~~~! たぷたぷはいやだどぉ~~~っ!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「ぷぎゃぁぁぁ! もうやめてぇぇぇーーっ!! たぷたぷやぁだぁ~~~~っ!!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「やめろぉぉーー! やめるんだどぉーーー!」
「だめよそんな言葉、はしたない」
「はしたなくないどぉーー! れみりゃはえれがんとでぷりてぃーなれみりゃだどぉーーー!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「……ふふふふ、いいわよれみりゃ。……とってもいい!」
「あばばばばばばばっ!」
体をピクピクさせ、口角から肉汁の泡を吐き出して苦しむ、れみりゃ。
しかし、私は自分の顔がニヤけるのを止められない。
そして、"たぷたぷ"する手もまた、止まらない。
「うあ、うあ、うあぁ……」
やがて、れみりゃは暴れ疲れて静かになる。
かわりに、目尻に大粒の涙を浮かべながら、顔を真っ赤にして苦悶しだした。
「うぅ~~~れみりゃへんになっちゃうどぉ~~~はしたないどぉ~~~~」
どうやら、"たぷたぷ"され続けたことで、
専門用語でいうところの「スッキリ」をしているのに近い感覚を覚えだしているようだ。
「おかしぃどぉ……れみりゃのおからだがへんになっちゃうどぉ……」
不快感と悦楽。
タブーを犯すが如く背徳感と、未知の行為への恐怖と期待。
それらの感情がないまぜとなって溢れだし、れみりゃの体を支配していく。
「うぁ~~うぁ~~~! ぞくぞくだどぉ~~~! ぞくぞくがきちゃうどぉ~~~!」
「ふふふ、いいのよれみりゃ、その感覚に身をまかせなさい」
れみりゃの様子を楽しむが如く、私は"たぷたぷ"するリズムを上げていく。
自分の襲う未知の感覚に翻弄される、れみりゃ。
「うぁぁぁ! こあいぃーーー! こあいどぉーーっ!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「ぎゃぁぁおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」
突如、奇声ををあげるれみりゃ。
そして、それを境に気を失ってしまう。
「……はぁ、はぁ、はぁ」
気付くと、私の息はずいぶんとあがっていた。
ずっと"たぷたぷ"しどおしの手は赤くなり、痙攣している。
けれど、その痛み苦しみ以上に、
私の胸はマグマのように熱い快楽で満たされていた。
(いまわしい手癖……いまわしい病気……でもそんなことどうだっていい……)
だって。
それ以上の幸福感が、私の体を貫いているから。
「ふふふ、れみりゃ……これからも私を楽しませてね」
私は、優しくれみりゃの髪を撫でてやった。
* * *
それから、私とれみりゃの"たぷたぷ"生活は朝も夜も関係なく続いた。
そして何日目かの朝、私はれみりゃの異変を目にすることになる。
「ど、ど、ど、どういうことなんだどぉ~~~!?」
れみりゃは困惑し、オロオロと慌てふためいている。
私はというと、そんなれみりゃを、ただ静かに眺めていた。
その"異常"は確かに珍しいケースだったが、決して有り得ないことではない。
故に、私はいつも通りれみりゃに接することにする。
たとえ、れみりゃの下ぶくれ顔が昨晩までの"倍以上"になっていようと。
「どぉーしてれみりゃが、にんっしんしてるんだどぉ~~~っ!?」
そう、れみりゃの肥大した下ぶくれ顔は、
まさしく胴体付きゆっくりれみりゃの妊娠した姿そのものだった。
「おめでとう、れみりゃ」
私は、心ない祝福を贈る。
しかし、当のれみりゃはそれどころではないようだ。
「な、なんでだどぉー、れみりゃ、すっぎりしでないどぉー……」
れみりゃは、肥大化した下ぶくれ顔を、重たそうにして苦しんでいる。
自分の体がどうなってしまったのか、この重たい下ぶくれをどうすればいいのか、わからないでいるのだろう。
「こ、こあいどぉ……れみりゃのおからだ……どうなっちゃったんだどぉ……」
よく見ると、れみりゃは小刻みに震えていた。
"すっきり"もしていないのに妊娠してしまうのは、確かに常軌を逸した事態だろう。
もし同じような状況に陥れば、人間だって困惑し、まともではいられないかもしれない。
けれど、私は知っている。
人間ならまだしも、ゆっくりならばこういうことも起こり得ることを。
詳しいことはまだ研究中らしいが、
ゆっくりの妊娠というのは性行為をともわなくとも起こることらしい。
私が以前読んだレポートによると、
人間の手で半日ほど振動を与え続けられたゆっくりが、子供を宿したこともあるという。
故に、私が"たぷたぷ"を長時間続ければ、もしかすると妊娠することもあるのではないか?
それは、私がブリーダーをやっていたころから、頭の片隅で思っていたことだった。
そして、その仮定はどうやら正しかったようだ。
「大丈夫よ、れみりゃ。私に任せておけば元気な赤ちゃんを産めるわ」
「……う、うぅ~~? あ、あがぢゃん~~~?」
不思議そうな顔をするれみりゃ。
どうやら、妊娠のショックと、肥大化した下ぶくれ顔の重みが苦しくて、
"赤ちゃんが産まれる"という肝心な部分を失念していたらしい。
「れみりゃ~、もしかしてまんまぁになるどぉ~?」
「そうよ、あなたは親になるんだからしっかりしなきゃね」
"赤ちゃんが産まれる"
"自分が子供達のママになる"
れみりゃは、それをゆっくり理解し、落ち着きを取り戻していく。
「うっう~♪ れみりゃあかちゃんうんじゃうどぉ~♪ れみりゃそっくりでかぁ~いいいどぉ~♪」
「私も協力は惜しまないわ。がんばりましょう!」
私はフレンドリーにれみりゃに近寄った……つもりだった。
が、私の申し出に対し、れみりゃはむすぅ~と頬を膨らませる。
「だぁ~めぇ~! おねーしゃんはゆっくりできないひとだどぉ!」
「そんなことないわ。私はゆっくりできる人よ?」
「しんじないどぉー! こーなったのもぜんぶおねーしゃんがれみりゃをゆっくりさせないせいだどぉ!」
どうやら、ここ数日間の"蜜月のたっぷり生活"で、私はすっかり信用を無くしてしまったらしい。
「おねーしゃんはれみりゃのいうこときいてればいいんだどぉー!」
「だから言ってるじゃない、協力は惜しまないって」
「だったらぁー! さっさとれみりゃとあかちゃんのためにぃ、ぷっでぃ~んもってこいだどぉ!」
「いいわよ、赤ちゃんが生まれたら持ってきてあげる」
「うー! れみりゃはいまたべたいんだどぉー! さっさともってくるんだどぉ!」
「そうね……それじゃ、今は"ぷっでぃ~ん"よりもっと良いものをあげるわ」
「う~? なんだどぉ?」
「それはね……」
私は両手を広げ、れみりゃの退路を塞ぎながら近寄っていく。
「そ、そこでとまるどぉ! こっちきちゃダメだどぉ!」
私を警戒し、壁際へ逃げ去るれみりゃ。
私は口角を歪ませながら、れみりゃを追い詰めていく。
「く、くるなぁ~~っ! くるんじゃないどぉ~~~っ!」
れみりゃは、口では抵抗しつつも、私の雰囲気に気圧されてペタンと地面に座り込んでしまう。
「あっちいけぇーー! あっちいくんだどぉーーっ!!」
両手をグルグル振り回す、れみりゃ。
私は、舌なめずりをしてから、れみりゃを捕まえて抱き上げる。
「うああああっ! はなせぇーーっ! れみりゃのぷりてぃぼでぃーはなすんだどぉーーっ!!」
「だめよ……これから妊娠祝いに良い物をあげるんだから」
私はベッドの上に腰掛けて、れみりゃを膝の上に座らせて抱きしめる。
そこまでくれば、れみりゃもこれから何をされるのかわかったのだろう。
より一層、抵抗を強めていく。
「いいものいらなぁーい! そんなのぽーいぽーい! おねーしゃんもぽーいするのぉ! ぽぉーい!」
「遠慮しなくていいのよ、れみりゃ」
「えんりょしてないどぉー! おねーちゃんのぶぁーかぶぁーーか!」
私は、腋ではさむようにれみりゃの肩を押さえ込むと
左右両方の手を、肥大化した妊娠れみりゃの下ぶくれ顔にあてがう。
「や、やめるんだどぉ~~~! いやぁ~いやぁ~~~!」
「さぁ、妊娠祝いの特別サービス! 両手たぷたぷよ!」
「たぷたぷやだぁぁぁ~~~~っ!」
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
「うわ、あ、うあ、うああああっ!」
妊娠して肥大化したれみりゃの下ぶくれを、
揉みしだくように、こねまわすように、さするように、私は両手で"たぷたぷ"していく。
いつも以上の激しい"たぷたぷ"に、ガクガク体を震わせ息もたえだえで苦悶する、れみりゃ。
「いいわ! 妊娠していっそう"たぷたぷ"しがいが増したわ!」
「や、やめてぇ~~~! あがぢゃんがゆっぐりでぎないどぉ~~~っ!」
「大丈夫よ! 赤ちゃんはきっとゆっくりしているわ! ううん、それ以上に"たっぷり"しているはずよ!」
「ちがうどぉぉー! そんなのぜんぜんえれがんとじゃないどぉーーー!!」
"赤ちゃんがたっぷりしているはず"という私の言葉に、
れみりゃは強い拒否反応を示す。
「おねがいあがぢゃん~~! ゆっぐりうまれでぇ~~~!」
れみりゃは、涙を流しながら体内の赤ん坊に話しかける。
「ゆっくりよりこっちのが気持いいわよね~♪ ほぉーらたぷたぷたぷたぷ~♪」
「うぎぃぃぃ! やべどぉぉっ! あがぢゃんだまじじゃだべぇぇぇ!」
「ねぇー赤ちゃん♪ こんなおぜうさまのなりそこないはほっといて一緒に"たっぷり"しようねぇ~♪」
「ぎゃぼぉぉーーー! でびりゃばぁ、でぃっばなぼでうじゃまだどぉーーーっ!!」
激しい"たぷたぷ"と、嗚咽混じりで、れみりゃの言葉は既にまともな発音を得ていない。
私は、そんなれみりゃの様子を楽しみながら"たぷたぷ"振動を加えつつ、体内の赤ん坊をあやしてからかう。
「ほぉ~ら、たぷたぷ~♪ たぷたぷぅ~♪」
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
日が沈んで、月が昇って。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
月が沈んで、日が昇って。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
雨が降って、風が吹いて。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
さんさん太陽が照りつけて。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
それからまた、日が沈んで月が昇って。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
それからまた、月が沈んで、日が昇って。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
そうして月日が経った頃。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
「う、うぎぃぃーーー! うまれるぅぅぅ! うまれちゃうどぉぉーー!?」
私に抱かれながら"たぷたぷ"され続けていた、れみりゃが突如叫び声をあげた。
近頃はすっかりぐったりして、「…ぅー、ぅー」としか言わなかったのに。
「あ、あがじゃんがぁーー! でびりゃのあがじゃんがぁーーーー!」
どうやら、れみりゃは産気づいたらしい。
極限まで肥大化した下ぶくれの底部が、ピクピクと脈打ち始めている。
「いだい~~! いだいどぉ~~っ! あがじゃんゆっぐりじないでででぎでぇ~~~!」
私は出産経験が無いのでわからないが、人間にとってもゆっくりにとっても、
体内から新たな生命を産み落とすというのは、相当な苦痛を伴うものらしい。
れみりゃは、いきみながら、必死に赤ん坊を産みだそうとしている。
「そうよ! お母さんのためにもゆっくりしないで、"たっぷり"でてきてね!」
「ぎゃぼぉぉぉぉ~~~っ! よげいなごどいうなどぉぉ~~~っ!」
私の応援は、どうやられみりゃのお気に召さなかったらしい。
仕方ないので、私は"たぷたぷ"を繰り返すことで、出産を励ますことにある。
「た、たぶたぶじゃべぇぇぇぇーーー!!」
「ほらほら、がんばりなさいれみりゃ!」
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
「うあ、うぁ、うぁぁ、ぁぁ、うぅぁ」
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
「うっ!? ううううーーっ!?」
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
たぷたぷ。たぷたぷ。
「う、うううううううーーーーーーーっ!!!」
ビクン!
れみりゃの体が大きく揺れ、
叫び声と同時に下ぶくれの底辺から赤ん坊が飛び出した。
赤ん坊は、クッションの効いた床に落ち、ころころ転がっていく。
やがて、よちよちと四つんばいの姿勢をとり、ゆっくりと目を開いていく。
「……う~?」
不安と期待と希望を込めて、あたりをみまわす赤ん坊。
ピンク色のベビー服のようなもので身を包んだそれは、
まごうことなきゆっくりれみりゃの赤ん坊・通称べびりゃだった。
「うぁーー……、うぁーー……、うぁーーー……」
親となったれみりゃは、いきみ続けた反動で息を荒げ、口からは肉汁の泡をこぼしている。
が、少しずつ平静を取り戻していき、自分が産んだ赤ん坊を見ると、目尻に涙を浮かべて喜びの笑みを浮かべた。
「うううう~~~♪ やったどぉ~~~れみりゃのあかちゃんだどぉ~~♪ か~わいいどぉ~~~♪」
感動の声を上げるれみりゃ。
その声に反応して、べびりゃがれみりゃを見上げ……首を傾げた。
「みゃんみゃぁ~?」
「う~~♪ そうだどぉ~~ママだどぉ~~♪」
「う~~♪ みゃんみゃぁ~ぶちゃいくなおかおだどぉ~~♪」
「……う?」
れみりゃは、べびりゃが何を言っているのか理解できいようだ。
一方、べびりゃは親の戸惑いなど知らず、キャッキャとはしゃいでいる。
「う、うー? あ、あかちゃ~ん、ママはおぜうさまこうほになるんだどぉ~、ぶちゃいくなんかじゃないどぉ~?」
「みゃんみゃぁへんなおかおだどぉ~♪ ちわちわぶちゃいくだどぉ~♪」
「ううーっ!?」
聞き間違いではなく、我が子が自分をブサイクだと言っていることを知ったれみりゃ。
その顔は途端に暗澹としていく。
「……そうね、確かにブサイクね」
「お、おねーしゃんまでなにをいいだすんだどぉー!?」
私は、れみりゃを抱き上げて立ち上がり、鏡の前まで連れて行く。
れみりゃは、鏡で自分の姿を見ると、バカにしたように笑い出した。
「う~~~♪ ひんどぉいおかおだどぉ~~♪ こんなぶちゃいくなれみりゃみたことないどぉ~~♪」
鏡に映ったれみりゃは、顔の下側から気持ち悪いほどダランと皮が垂れ下がっている。
そして、顔自体もしわくちゃで、醜く変形してしまっていた。
れみりゃは、それが自分の姿だとは認識できないようだ。
だから、私は事実をありのままに、ゆっくり教えてあげることにする。
「それ、あなたよ」
「……う?」
「ね? あなたブサイクでしょ?」
「……う、うそだどぉ」
「う~~♪ みゃんみゃぁ~のおかお~みれたもんじゃにゃいどぉ~~♪」
「うがぁーーーーーん!」
れみりゃは、鏡に映ったブサイクなれみりゃが自分だと知り、呆然と立ち尽くす。
肉汁の泡をブクブク吹き出しながら、何かをブツブツ呟くれみりゃ。
「……"たぷたぷ"の後遺症ね。肥大化した皮や内組織が変形して、戻らなくなってしまったのね」
私の呟きも、今のれみりゃの耳には届いていなかったようだ。
一方、べびりゃの方は、私が発したとあるキーワードに耳ざとく反応した。
「うっうー♪ たぷたぷぅ~たぷたぷぅ~♪」
「あら? あなたは"たぷたぷ"してほしいの?」
「う~~♪ たぷたぷしゅきしゅきぃ~♪」
"たぷたぷ"その忌まわしき言葉を聞いた親れみりゃが、反射的に叫んだ。
「だべぇぇぇ! だぶだぶはだべだどぉーーー!」
「うるちゃいどぉ~! ぶちゃいくなみゃんみゃぁはだまってるどぉ♪」
「あ、あがじゃんひどぃぃぃぃ! ぞんなごといっちゃだべぇだどぉぉーーー!」
(あのれみりゃ、もう限界か……)
気が狂ったように叫ぶれみりゃを見て、私は"たぷたぷ"する対象を切り替えることに決める。
優しくべびりゃを抱きかかえ、ベッドの上にこしかける。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「う~~♪ きもちぃぃどぉー♪」
きゃっきゃとはしゃいで喜ぶ、べびりゃ。
(どうやら、私の狙いは成功したようね)
胎内にいたころから"たぷたぷ"し続けたことによって、
このべびりゃは"たぷたぷ"に抵抗を感じなくなっているのだ。
そう、このべびりゃこそ、私が私の悪癖のために生み出した、世界で1匹のれみりゃに他ならない。
「やべでぇぇぇ! あがじゃんだぶだぶじじゃだべぇぇぇ!!」
「う~~! ぶちゃいくはしぃーなの! れみりゃはおねーしゃんにたぷたぷしてもらうどぉ~♪」
「うぁぁぁぁっ! あがじゃんだばざれるなどぉぉぉーーっ!!」
たぷたぷ。
たぷたぷ。
たぷたぷ。
「うふふ、あなたは最早ただのれみりゃじゃないわね」
「うー?」
「そう、あなたは"たっぷりれみりゃ"・・・・・・すなわち"たっぷりゃ"よ!」
「う~~~♪ えれがんとぉーなひびきだどぉー♪」
私の命名に喜ぶ赤ん坊。
べびりゃ改めたっぷりゃは、私に微笑みかけてこう言った。
「たっぷりしていってねぇ~ん♪ ……だどぉ♪」
おしまい。
========================
≪あとがき≫
すみません、こんなに長くなるとは…。
これ書いている間、異様に眠かったので、誤字脱字等結構あるやもしれません。
「モ○ダーあなた疲れているのよ…」とどこからか声が聞こえた気がします。
何卒、ご容赦下さい。
by ティガれみりゃの人
========================
最終更新:2022年05月04日 00:03