「ゆ?れいむはおねーさんのことしらないよ」
れいむは私を見つめながらそう言った。
とてもとても透き通った眼で私を見つめている…
私はれいむを掴むと無言で地面に叩きつけた。
「ゆべっ!」
奇妙な声をあげて形がひしゃげる。
私は痛みのためかひくひくと痙攣しているそれを拾うと
何度も何度も地面にたたきつけた。
「ゆぶ!なんでれいむに、ゆべっ!ひどいことす…ぶべっ!」
私がそのゆっくりと出会ったのはとても晴れた天気のいい日だった。
3日間も雨が続いていたのが嘘のように雲ひとつ無く晴れ渡っている。
その日私はいつもの空き地に来ていた。
ここは市街地からはやや離れており子供はおろか人もめったに通りかからない。
「はあ…」
私は今日のことを思い出してため息をついた。
嫌なことがあるとついここに来てしまう…いい加減もうこないようにしないと。
「おかーしゃーーん!」
その時草むらの影から女の子の声が聞こえてきた。
何か事故でもあったのか?私は恐る恐る声のするほうに近づいていった。
そこでは喋る生首と別の生首を食べている子犬がいた。
私は一瞬ぎょっとしたが、その生首がゆっくりといわれる生き物?であることに気づいた。
数年前から突然現れた知性を持つ饅頭、それがゆっくりだ。
田舎のほうではよく見かけるらしいがこのあたりではあまり見かけることは無く、
私もペットショップくらいでしか見かけたことは無かった。
犬に食べられている方のゆっくりはバレーボール大の大きさだったようだが
すでに犬に体の1/3近くを食べられている。
すぐ側で泣いているのはまだ子供なのかソフトボール程度の大きさだ。
先ほどの台詞から察するに親子なのだろう。
「おかーしゃんからはなれろ!」
子ゆっくりは子犬に体当たりをしだした。
だが饅頭でできたゆっくりの体当たりでは犬にダメージを与えることはできない。
ダメージこそなかったものの興味を持ったのか子犬は子ゆっくりに向き直った。
「ゆ、ゆっ!こっちにこないでね」
獲物を見つけた獣の目をしている…
『お願い、彩ちゃん私の靴返して!』
『返して欲しかったら自分で取れば?』
がんばってとりかえそうとするけど彩ちゃんは私の頭を押さえつけ
私の靴を持った逆の手は高く掲げており靴を取り返すことができない。
私は子犬に向けて落ちていた小石をいくつも投げつけた。
ゆっくりを助けたかったからじゃない、子犬の目を見ていたら
なんだが胸のあたりがむかむかしてきて嫌な気分になったからだ。
子犬は小石が痛かったのかキャンと小さく吠えるとすごすごと逃げていった。
私はしばらく呆然としていたがふと気がつくと子ゆっくりは親ゆっくりの側で泣いている。
「おかあしゃあああぁぁぁん!しんじゃいやだあああぁぁぁ!」
親ゆっくりはぴくりとも動かない。体の破損具合からしても明らかに手遅れだろう。
なんだか居たたまれない気持ちになり、私は子ゆっくりの涙をハンカチで拭いてやる。
「おねーしゃん…さっきはたすけてくれてありがとう」
しばらくしてやっとれいむは泣き止んだがその表情は暗い。
「これからどうするの?」
私はゆっくりに聞く。
「れいむは…れいむはひとりでいきていくよ。おかーしゃんのぶんまで」
私はこの子が放っておけなくなってしまった。
後から考えて見ればこのれいむを助けることで自分を助けたかったのかもしれない。
「わ、わたしが友達になってあげるよだから元気出して」
私はゆっくりの頭を撫でた。ゆっくりはくすぐったいような表情をする。
「ありがとうおねーしゃん、れいむのなまえはれいむっていうのよろしくね」
この日私とれいむは友達になった。
『冷たいよ!なんでこんなことするの!』
彩ちゃんは私に水をかける。逃げたいけどここはトイレの個室。逃げられない。
『あなたの臭いにおいを洗い流してあげるのよ』
彩ちゃんは獲物を見るような眼で私を見つめている…
それから私は毎日空き地に来るようになった。
れいむは最初は落ち込んでいたようだがすぐに元気を取り戻し
やがて私を笑顔で迎えてくれるようになる。
「こんにちは」
「ゆっくりしていってね!」
私の挨拶にれいむは笑顔で挨拶を返す。
とても澄んだ綺麗な眼。れいむの瞳を見つめていると嫌なことを全部忘れることができた。
れいむは友達だった。多分私が中学生になってからはじめての友達だったと思う。
「おねーさんみてみて!」
ある日れいむに会いに行くと頭から蔓が生えていた。本で見たことがあるがこれは妊娠の前兆らしい。
ゆっくりが妊娠すると植物のように頭から蔓が生えそこから子供がなるらしい。
れいむに恋人ができたらしいことは前に聞いていたがそんな仲にまで発展していたとは。
今度相手を紹介してもらおう。
「多分明後日くらいにはれいむの赤ちゃん生まれるよ」
れいむは嬉しそうに話す。
「その時はおねーさんに最初にみせてあげるね」
れいむはとても澄んだ眼で私を見つめていた。
空き地をでてすぐのところで女性とすれ違う。制服からして近所の高校生だろうか?
「あのゆっくりはあなたのペット?」
女性は私に向けてそう言った。どうやられいむと遊んでいたのを見られていたらしい。
「飼っているわけではないのでペットではないですけど…れいむは私の友達です」
友達という言葉を聞くと女性は哀れむような、蔑むような目で私を見つめた。
「ゆっくりと人間は友達にはなれないのよ」
「そんなことはありません!れいむは私の友達です!」
女性の態度にむっとした私は女性を睨みながら答えた。
すると女性は今度は悲しい目をしながら私に言う。
「ゆっくりはね、とても記憶力が悪いの。
ゆっくりは生まれてくる時、親から生きるために必要なことや
大切な記憶を受け継ぐことができる。
それら受け継いだ記憶は一生忘れることは無いわ。
でも自分で経験した記憶を覚えることはできなくて
せいぜい3日くらいしか覚えておくことができないの」
『わ、私のせいじゃないわよ!あなたが私に逆らおうとするのが悪いのよ!』
翌日から1週間、私はれいむのところへいくことができなかった。
足を怪我してしまいうまく歩くことができなかったからだ。
放課後すぐにれいむのいる空き地へ向かう。
いきなりこなくなってれいむは怒っているだろうか?
もしかしたら心配で泣いているかもしれない。
自然と空き地に向かう足が速まる。
空き地に入ってすぐ、私はれいむの後姿を発見した。
「れいむ!」
私の言葉にれいむは振り向く。
「ゆっくりしていってね!」
ぴょんぴょんと跳ねながられいむは私に近づいてきた。
「れいむごめんね、しばらくこれなくて」
だがれいむは私の言葉に首をかしげる。
「ゆ?おねーさん何をいってるの?れいむはおねーさんことしらないよ」
背筋に冷たいものが走った。そして先週出会った女性の話を思い出す。
『でも自分で経験した記憶を覚えることはできなくて
せいぜい3日くらいしか覚えておくことができないの』
私も記憶力はあまり良いほうではない、でも大切な友達のことを忘れたりはしない。
「おねーさんはゆっくりできるひと?」
れいむは私を見つめながらそう言った。
とてもとても透き通った眼で私を見つめている…
いつも私を見つめていた時と同じだが、その時の私には
作り物の人形のような目に見えた。
「ゆ?なんでへんじをしてくれないの?」
ショックのあまり固まっている私に対し、れいむは一方的に話しかけてくる。
「ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ。ゆっくりしたいのならたべるものちょうだい!」
私はれいむを掴むと無言で地面に叩きつけた。
「ゆべっ!」
奇妙な声をあげて形がひしゃげる。
「これでも…思い出さない?」
「れ、れいむはゆっくりできないおねーさんなんかしらないよ!はやくきえてね!」
私は痛みのためかひくひくと痙攣しているれいむを拾うと
何度も何度も地面にたたきつけた。
「ゆぶ!なんでれいむに、ゆべっ!ひどいことす…ぶべっ!」
何度か繰り返し少し頭も冷めてきたので手を止めてやる。
「ご、ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛…でい゛ぶがわ゛る゛い゛ごどじだの゛な゛ら゛あ゛や゛ま゛り゛ま゛ぶ…
だがら゛ゆ゛る゛じでぐだざい゛い゛…」
どうやら完全に私のことを忘れてしまったらしい。忘れてしまったのならまた覚えさせれば良い。
今度は二度と忘れないようにしっかりと…!
私はれいむを家に連れて帰った。
れいむを教育するために使う道具を集め自分の部屋に戻った。
れいむは帰宅途中に買ったゆっくり飼育用透明ケースに入てあり、ぐぅぐぅといびきをかいている。
軽く頭を叩くとれいむは目を覚ました。
「ゆっ?ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ、ゆっくりしていってね!」
こいつもうさっきのことを忘れてやがる…私はれいむの口のやや下部に金属でできた道具を差し込む
「ぐげげごご…ふひーっ!ふひーっ!」
これはゆっくり虐待用の道具でゆっくりの声帯をつぶし喋れなくするものだ。
虐待家の中にもアパートやマンション暮らしの人もいるので
ゆっくりの悲鳴で回りに迷惑をかけないようにするためのものらしい。
両親にれいむのことが見つかるとめんどうなのでれいむには黙ってもらうことにした。
「ふひーっ!ふひーっ!」
れいむはがんばって喋ろうとするが空気が漏れる音がするだけで言葉は出ない。
私はとりあえずれいむの髪飾りを取り上げてやった。髪飾りの無いゆっくりは他のゆっくりから嫌われ攻撃されるらしい。
「ふひーっ!ふひーっ!」(ゆっ!それはれいむのかみかざりだよ、ゆっくりはやくかえしてね!)
れいむは私から髪飾りを取り返そうとぴょんぴょん跳ねる。
私はれいむを右手で押さえつけ動けなくし、髪飾りを持った左手をれいむの目の前にちらつかせる。
「返して欲しかったら自分で取れば?」
れいむは私の手から抜け出そうとするが人間の力にはかなわず抜け出すことができない。
飽きてきたのでライターを取り出すとれいむの髪飾りを燃やしてやった。
「ふひーっ!ふひーっ!」(でい゛ぶの゛がみ゛がざり゛があ゛あ゛あ゛!どぼじでぞん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛お゛お゛!)
これでれいむは野生に帰れなくなった。もう私の側でしか生きることはできないだろう。
ふとれいむの体が汚れていることに気づく。今まで野生で暮らしていたので風呂に入ったことは無いだろうし
泥や色々な汚れがついていてもおかしくない。私はれいむを洗ってあげることにした。
れいむをゆっくり飼育用透明ケース(小)に移してやり蓋をした。
ぎりぎりれいむが入る程度の大きさだったのでれいむは窮屈そうだ。
私は蓋の隙間から水を入れてやる。れいむのからだは徐々に水の中に沈んでいった。
「ふひーっ!ふひーっ!」(もうやめてよ!れいむおぼれちゃうよ!)
口のすぐ下まで水が溜まったところで水を入れるのをやめてやる。
私はれいむの入った箱を両手で持って円を描くようにぐるぐる回す。
洗濯機をイメージしてもらえばわかりやすいだろう。
「ぶげぎょぶれ!」(お゛、お゛ぼでち゛ゃ゛…う゛…よ゛…)
汚れも落ちたのでれいむを箱から出してやった。ちょっと皮がふやけているが生きているようだ。
だがさすがにダメージが大きいのか目を回して気絶している。
これ以上やると死にそうなので今日はこれくらいにしておこう。
「これからしっかり私のこと覚えさせてあげるからね…」
私はれいむを最初の飼育用ケース戻してやる。
これかられいむにすることを考えると背筋がゾクゾクしてきた。
数日後、私はまたあの空き地へ来ていた。待っている人は誰もいないのだがついここに来てしまう。
しばらくぼーっとしているとすぐ横かられいむの声が聞こえた。
「ゆゆっ!おねーさんこんにちは、ゆっくりしていってね!」
れいむは家にいるはず!それに喋れないようにしたのになんで!?
良く見るとそのれいむはまだ小さい赤ちゃんゆっくりだった。
「おねーさんとあうのはじめてだね。でもれいむはおねーしゃんのことしっているよ」
会ったこともないのになぜ?ふといつか聞いた言葉を思い出す。
『ゆっくりは生まれてくる時、親から生きるために必要なことや大切な記憶を受け継ぐことができる。』
私は自分の間違いに気づいた。私はれいむにとって大切な存在だったんだ。
だから赤ちゃんれいむに私の情報を移す事ができた。
れいむが私のことを忘れたのも新しい記憶を保持できないゆっくりだからしょうがないことなんだ。
私は泣いていた。彩ちゃんにいじめられても泣かなかったのに久しぶりに大声を出して泣いていた。
「ゆゆっ?おねーさんなんでないているの?れいむがともだちになってあげるからげんきだしちぇ」
私は赤れいむを連れて帰路に着いた。家についたられいむをうんと可愛がってあげよう、そう思って…
れいむの体がから金属の器具をはずしてやるとれいむは喋れるようになった。
「ゆっくりしていってね!」
れいむは久しぶりに喋れてうれしいのか嬉しそうに跳ね回る。私はれいむに赤れいむを見せた。
髪飾りがないので心配だったが赤れいむはちゃんとれいむを親だと認識したようだ。
「ゆゆっ!おかーしゃんひさしぶり!ゆっくりしていこうにぇ!」
嬉しそうにれいむにすりすりする赤れいむ。だがれいむは怪訝な表情をしている。
「ゆゆっ!おちびちゃんだれ?しょたいめんなのになれなれしくしないでね。
ここはれいむのゆっくりぷれいすなんだからはやくどこかいってよね!」
れいむは体当たりで子れいむを突き飛ばす
「ふえええ!おかーしゃんなんてことするのおおお!」
「…」
私は無言でれいむを掴むと窓かられいむを投げ捨てた。ゆ゛ぶえ゛え゛え゛え゛え゛!と汚い悲鳴を上げながら庭に落ちる。
「子れいむ、わたしがお母さん代わりにになってあげるからあんな薄情なお母さんのことは忘れようね」
それから子れいむは私の家で飼うことになった。今度はちゃんとれいむの分までやさしくしてあげている。
れいむはあれからどうなったのかわからない。ただれいむを捨てた翌日、庭のほうから
「かざりのないゆっくりはしねえええ!」
「い゛ぎや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!でい゛ぶの゛お゛め゛め゛があ゛あ゛あ゛!」
という叫び声が聞こえていたが気にせず学校へ向かった。
保存方法が間違っていたようなので3102を修正しました。
3日で忘れるとか大事な記憶を引き継ぐ~のくだりは話の都合上追加した俺設定ですがスルーしてください。
過去の作品
- ゆっくり転生(fuku3037.txt~fuku3039.txt)
- ゆっくりくえすと(fuku3068.txt)
最終更新:2022年05月18日 21:18