※ハコマニア再び。しゃべらせます。
【観察キット】
「今回もまぁ、悪くない出来だ」
ここは川のほとりの一軒家、俺こと虐待お兄さんの家である。
「予想できる限りのアクシデントへの対策も、大丈夫」
川のほとりにあるのは、水車による《ハコ》の動力確保のため。
「この日のために、れみりゃもしつけた」
「うー☆」
「よーし、いい子だ」
ほかの家から離れているのは、ゆっくりの悲鳴が近所迷惑にならないように。
「それじゃ、趣味の仕事といきましょうか」
「まりさをここからだしてね!」
「いまならゆるしてあげるよ!あとおいしいおかしをもってきてね!」
「もってきてね!」
「ゆっくりしていってね!」
捕獲用《ハコ》には、成体のれいむとまりさ、子が…多いな。
数えるのもおっくうだ。ざっと20はいるかいないかだろう。
まぁ数が多いのは、今回の《ハコ》にはいいのかもしれない。
「おぅお前ら」
調子のいいゆっくりに、威圧するように話しかける。
「おじさん!ゆっくりさせてね!」
「ゆっくりできるひと?」
「れいむ!このおじさんはゆっくりできないひとだよ!」
こうも数が多いとうるさくてしょうがない。悲鳴はいいが喧騒は嫌いだ。
俺は物陰で居眠りしていたれみりゃを呼ぶ。
「れみりゃー、おいでー」
「うー…?うー!」
俺の声と分かるや否や、いい速度で飛んでくる。
虐待が専門の俺に、しつけはかなり大変だった。
「れみりゃだー!」
「ゆっくりできないよ!」
「だずげでー!」
しっかり怯えてくれている。まず条件として充分。
「こっから出たいんだろ?今出してやるよ」
れみりゃを捕獲《ハコ》の上で飛び回らせつつ、蓋に手を掛ける。
「いやああああぁぁぁぁ!!!」
「ごわいいいいいぃぃぃぃ!!!」
「おじさん!ゆっくりやめてね!」
俺は《ハコ》に手をかけ、ゆっくりと持ち上げる。
さすがに20匹前後となるとそこそこ重い。《ハコ》の重さもきつい。
その《ハコ》の周りを、終始れみりゃが飛び回る。
「ごわいっ!ごわいよおおおぉぉぉ!」
「おがあざあああぁぁぁん!」
しかしまぁ本題はそこじゃない。今回の《ハコ》へと、ゆっくりたちを移す。
れみりゃを離し、蓋を開け、ドサドサと《ハコ》の中へと落とす。
「ゆぶっ!」
「びゅっ!」
「いたいよ!ゆっくりできないよ!」
「ゆっくりできないばかなおにいさんはどっかいってね!」
全員入ったところで、《ハコ》の蓋を閉め、数歩下がる。
今回の《ハコ》は、いわば観察用の《ハコ》だ。
壁一面を改造し、幅ゆっくり1匹強、深さと幅が壁一面の《ハコ》である。
《ハコ》には8割ほど、少し固めの土が盛られている。
部屋側に向いている《ハコ》には半透膜、こっちからのみ見える膜を張ってある。
そして今回のためにわざわざ飼いならしたれいみりゃ。
身の危険がなければ、あいつらは巣を作ろうとすら思わないだろう。
そう、「巣を作らせるための《ハコ》」だ。
れみりゃを手元に呼び戻す。
今ゆっくりたちには、壁と土と仲間達しか見えていない。
「こんなとこじゃゆっくりできないよ!ゆっくりすをすくろうね!」
「ゆっくりりょうかいしたよ!」
「みんなでゆっくりできるすをつくるよ!」
なんだ、見せるだけでよかったのか。なら飼いならさなくてもよかったな。
だがまぁ、ゆっくり相手への恐怖、ってのは大事だ。
しつけの甲斐あって、れみりゃは大根をかじりながらおとなしくしている。
もちろんゆっくりも食うぞ。
ゆっくり達は、巣づくりを開始したようだ。
一体顔面だけでどう巣穴を掘るのか気になっていたんだが…
土に混ざった石を加え、ザリザリと削っている。おぉ、意外に賢い。
親れいむ、まりさが率先して穴を掘り、子れいむまりさ達が土を外に出す。
土を体全体で押し出すようにしていて、それと同時に巣穴を固めている。
始まってそんなに立たずして、大本っぽい1本の巣穴が完成していた。
…意外と、いい生態系してるじゃねぇか。
まずはちょっかい程度。
巣穴のまわりに積まれている土を、軽く巣の中に払ってやる。
といっても、巣が壊滅しない程度にだ。まだ本気虐待タイムには早い。
「れみりゃ、頼む」
「うっうー☆」
れみりゃの鳴き声を聞いて怯えるゆっくり達。巣を作る手(?)が早まる。
れみりゃは巣の入り口に立ち、足で周りの土を蹴落とした。
始めは、ぱらぱらとこぼれる程度。
「ゆー?」
「たぶんやわらかいんだよ!もっとしっかりさせようね!」
「ゆっくりできるすをつくろうね!」
子供達は気にせず、土を上へ上へと追いやる。
れみりゃがいることを知っているので、外に出すのではないようだ。
巣の上のほうにある、ちょっとした空間めがけて登っている。
こぼれる程度の土が、小さな土砂崩れのレベルに発展する。
「ゆ”ー!つちがおちてきたよ!」
「ゆっくりにげるよ!」
土を押していたれいむ、まりさ達はあわてて下へ駆け下りる。
だが土に追いつかれ、コロコロと転がったり、半分土に埋まったりしていった。
「ぃゆ”っ!」
「だいじょうぶ!?ゆっくりしていってね!!」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
土もたいした量じゃないので、半分埋まった子もすぐに自力で抜け出した。
どういう反応を見せるか気になっていたのだが、そんなに面白くない。
「よくあることだよ!しっかりつちをおさえていってね!」
「あぶないとおもったらもどってきてね!」
「ゆっくりわかったよ!」
「すのためにがんばるよ!ゆっくりしていってね!」
…なるほど、自然にはよくあることか。
「ゆー!ゆっくりー!」
「ゆぅー!」
さっきのプチ土砂崩れに、空洞で土をもっていたれいむ達が埋もれていた。
少し頭を出す程度で、身動きは取れないらしい。
顔が上を向いているのはラッキーだろうか。だがまぁ、もたないだろう。
むしろもたせない。れみりゃ、頼んだ。
「うー☆うー☆」
泥んこ遊びが楽しくなったのか、指示があるやいなや調子に乗り出すれみりゃ。
まぁ、この程度なら計画に支障は出ない。好きにやらせてやろう。
れみりゃに、ゆっくりが生き埋めになった空洞の場所を教える。
ちょうど他の巣穴と軸の被っていない、いい空間だ。
「いいぞ、跳ねろ」
「うーっ!うーっ!」
ドンッ、ドンッ、と巣全体に振動が伝わる。
れみりゃの声と未知の衝撃に困惑する巣の中のゆっくり達。
子供達は一目散に親の元へ駆け寄り、一家固まって無事を祈っている。
やがて、振動が止んだ。
安心安全を確認したのち、ゆっくり一家は巣作りを再開する。
先ほどの空洞は、潰れてなくなっていた。
そこからゆっくりの声もしない。
「よーしよくやった、戻っておいで」「うぁー!」
「足拭けよ」「うー☆」
いいれみりゃだ。まったく、これ以降も頑張ってもらおう。
れみりゃの声がすっかりしなくなったのをいいことに、巣作りは熱を上げる。
数が多いせいか、子供が2,3いなくなったことにも気づかないらしい。
親失格だな。まぁ人里を襲う時点でアウトだがな。
穴を掘り、土を運び、壁を固め、それを延々繰り返す。
…日が暮れる頃には、立派な巣が出来上がっていた。
始めに親が掘った一本の穴を元に、派生するように小さな部屋がいくつか。
幅のせいで1箇所にまとまれないのか、部屋の数はだいぶ多い。
穴掘りをやめたあたり、ここらで完成なのだろう。
「かんせいしたよ!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
巣穴に響き渡る完成コール。わざわざありがたいこった。
「すもできたし、ごはんをさがしにいくよ!」
「おっきなこどもたちもてつだってね!」
「ゆっくりりょうかいしたよ!」
「いっぱいえさをあつめるよ!」
「いってらっしゃい!きをつけてね!」
「きをつけてね!」
餌か。直接的な虐待《ハコ》ばかりで考えてもなかった。
まぁ適当に餡子でも与えておけばいいだろうよ。
「れみりゃ、おやつ《バコ》もってきてくれ」
「うぅー☆」
とてとてと歩いて《ハコ》を取りにいくれみりゃ。気分らしい。
持ってきてもらった《ハコ》には、すでに絶命した子ゆっくり達。
虐待前に絶望を与えるため、あとは自分の甘味のために用意してあるものだ。
「数も多いからな…、適当に潰して投げてくれ」
「うぁ!」
「終わったら2つまで食べていいぞ」
「うー☆」
れみりゃはハコからい匹ずつ取り出すと、両手で押しつぶしていった。
変形する饅頭。そこに悲鳴はない。
れみりゃは潰しては巣の《ハコ》に投げを繰り返していった。
子供も多いし、この程度で充分だろう。
「よくやった。ほれ」
「うぁ!うっぅー☆」餡子で口を汚しながら笑う。「口拭けよ」「うー☆」
巣穴から出たゆっくり達は、その餡子の山を見て歓喜した。
「ゆっ!あまいのがいっぱいあるよ!ゆっくりできるね!」
「みんなではこんでゆっくりしようね!」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
潰しただけだから皮とか飾りとかも多少残っているんだが、気にならないようだ。
なかなか殺生なものである。
「毒でも混ぜとけばよかったか…。次はそうしよう」
観察と発見こそ、新たな虐待へのステップである。
ゆっくり達は食べないように餡子をくわえ、頭に載せ、巣へ戻っていった。
巣の中では、きゃいきゃいと食事を楽しむ姿がうかがえる。
キセルをふかし一服。れみりゃは煙たがって逃げてしまった。
さて、一通り観察は済んだ。ここからがお楽しみ虐待タイムである。
「巣潰しは、威力こそあるものの虐待としてはつまらなさすぎる」
れみりゃが潰した巣穴は、あたかもそうであったかのようになくなっている。
それに家族のゆっくりが気づいていない。いろいろと虐待としてはぬるい。
「水牢…か。土に大丈夫かね」
水牢、単純に水に浸ける虐待である。
ゆっくりすることが許されず、皮もふやける、虐待としてはシンプルなものだ。
だが今回は《ハコ》そのものではなく、巣である。
水を吸って崩れたりしなければいいのだが。
まぁそれも一興か。そういや大雨と変わらんな。
せっかくの虐待だ。一握りの「悪意」を。
ゆっくり達は全員巣の中。おk。
入り口となっている穴に、目の細かい金網を張る。脱出防止だ。
しっかりと土とその他で固定。軽く引っ張ってみるがそう動きはしない。
かまどのほうでは湯も沸いたようだ。準備は万全。
湯のみに煎茶、ティーカップにさました紅茶を入れて、優雅なティータイム。
「うぁー☆」「待て待て、最後に一仕事だ」「うー☆」
れみりゃを鳴かせながら飛び回らせ、外にれみりゃがいるのを教えてやる。
「ゆっ!れみりゃのなきごえがするよ!」
「すのなかならだいじょうぶだよ!ゆっくりしていってね!」
その安心を打ち砕く。これぞ虐待道。
巣の入り口の金網から、残ったお湯をちろちろと流しいれる。
「ゆぅ?」
子ゆっくりが異変に気づいたようだ。水が流れてきている。
「おかーさん!おみずがはいってきてるよ!」
「ゆっ!たぶんあめがふってきたんだね!いりぐちをふさぎにいくよ!」
「ゆっくりわかったよ!」
「れみりゃにきをつけてね!」
この程度の量ではゆっくり達につく頃には土に吸われ、熱も奪われているようだ。
親れいむと数匹の子ゆっくり達が、巣穴の入り口めがけて上がってくる。
ほどよい高さまで上がったところで、少し勢いよくお湯を流す。
「あぢゅっ!このあめあついよおかーさん!」
「ゆっくりできないよ!」
「ゆっ、あめがあついなんておかしいよ!みんなはうしろにいてね!」
先頭が子ゆっくりから親れいむに代わる。
れいむは穴の真下にたどり着くと、なにごとかと上を見上げた。
ここぞとばかりにお湯を流す。
「ゅあ”じゅっ!」
顔面クリーンヒット。煮えたぎるお湯はさぞかし辛かろう。
「ぅあ”っ、あづっ!」
熱さに苦しみながらも、子供達を危険に晒すまいと必死に耐える。
非情かと思ってたがそうでもないじゃないか。
追撃をかける。少し多め、軽く押し流す程度だ。
「ゆ”う”う”う”う”ぅぅぅぅっ!!」
目と口を閉じて、必死に子供達に浴びせまいと頑張っている。
だが、お湯の量はそんなもんじゃない。れいむが全身に浴びつつ、後ろへ流れる。
「あ”ぢゅい!」
「ごのあめあぢゅいよ!ゆっぐりでぎないよ!」
危険と分かるや否や、親を放置して一目散に巣の底まで逃げ出す子ゆっくり。
親れいむは気づいてか気づかずか、必死にお湯を耐え続けている。
お湯を浴びた顔面は真っ赤になっていた。赤くなるのか。
次のステップだ。一旦お湯を止める。
「ゆうううぅぅぅ…」
親れいむは土に顔をうずめている。きっと土が冷たいのだろう。
子ゆっくり達は巣の上で起きたことを報告している。
「おそらからあついあめがふってきたんだよ!」
「あめはあつくないよ!うそをつかないでね!ゆっくりできないよ!」
「うそじゃないよ!おかあさんがたいへんなんだよ!」
「ゆっ!?れいむが!?」
それを聞いた親まりさが一目散に巣穴の入り口めがけて駆け上がる。
「れいむ!れいむっ!」
「ゆ”ぅぅ、まりざ?」
「だいじょうぶ!?ゆっくりしていってね!」
「ゆっ…くりしてい…ってね」
返答できるレベルのやけどらしい。まぁその程度のお湯だしな。
特に何かできるわけでもなく、れいむをいたわるまりさ。
…お次はちょっときっついぜ。
お湯を、半分ほど残して残りを注ぐ。
「ゆ”う”う”う”ぅぅぅっ!!」
「あじゃああああぁぁぁぁ!!!」
親ゆっくりにたたきつけられる熱い濁流。
今度は防ぐとかせき止めるとかそんなちゃちな量じゃない。
量にして巣の半分を浸水させる量のお湯を、一気に注ぎきる。
当然、ゆっくり2匹でこの流れをせき止めることも出来ない。
「あじゅっ、あぶっ、むぅううぅぅぅぅ!!」
「ゆぶぶっ、ゆっぶ、ゆぅー!」
耐え難い熱と共に、親ゆっくりが巣の底へ流される。
ってか溺れてないかこいつら?溺死しないんじゃなかったっけ?
やがてお湯が巣の底、子ゆっくり達にまでたどり着く。
「ゆぅ?」
「なんかみずのおとがするよ!」
何かと思って巣の先を眺めていたら、突然泥水が流れ込んできた。
泥水の先頭には、親ゆっくりが2匹。
「おかーさん!おとーさん!」
「だいじょうぶ!?ゆっくりしていってね!」
「ゆ”っ、ここはあぶないよ!ゆっくりしないでにげてね!」
「ここじゃゆっくりであづっ!!!」
お湯が、親ゆっくりを飲み込み、子ゆっくりに襲い掛かる。
「あじゅううううぅぅぅぅ!!!」
「ゆ”っ!ゆ”ぅっ!」
「あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁ!!」
量の多いお湯はそう熱量を奪われない。
巣のそこまでアツアツをお届けってわけだ。
「あじゅいっ!あじゅいいいぃぃ!!」
「ゆっぐりでぎないいぃぃ!!」
悲鳴に包まれる巣。すでに動かないゆっくりも何匹かいるようだ。
子供じゃまだ弱い、ってか。虐待しがいがないな。
「みん…な!あわてないでゆっくりきいてね!」
お、親まりさ。れいむに比べれば軽症なだけあって、まだ動けるようだ。
「あついあめがこないところにすをつくるよ!ゆっくりてつだってね!」
「ゆゆっ!みんなでゆっくりしようね!」
「「「ゆっくりしていってね!!!あっつっ!!!」」」
熱さに絶え絶えになりながら、熱い湯を踏みしめながら、巣の上を目指す。
動かなくなったゆっくりたちは置いていったようだ。
まず高い位置の横穴に避難して、それから横穴を掘り進めるらしい。
なるほどこれなら下に湯がたまり、ゆっくり達の方には流れてこない。
親まりさの指示に従って、比較的元気な子ゆっくりたちが掘り進める。
「れいむ、だいじょうぶ?ゆっくりしていってね!」
「ゆっくり…していってね…」
れいむの火傷跡を舐めるまりさ。土が付いていようがおかまいなしだ。
巣を作るだけあってか、仲間愛は強いのだろうか。
初めのやつといい、湯に巻き込まれたやつといい、一体どっちなんだ。
巣穴がガンガン掘られていく。
横穴も、完成時の巣の半分ほどにまで大きくなっていた。
「これでゆっくりできるね!」
「あついあめもこわくないよ!」
怖くない。だとさ。それで済ませるお兄さんじゃないさ。
お湯も、再び沸きあがったようだし。
「う”ぁ!あづい!」「…やっぱ熱い紅茶はダメか」「う”ー」
再び沸いたお湯でお茶を淹れなおす。れみりゃは熱いのはダメらしい。
煎茶にせんべい、紅茶にクッキー、なんて万全な準備だろうか。
「れみりゃ、それじゃ頼んだぞ」
「ぅー…」
熱い紅茶が不満だったのか、しぶしぶ動き出す。
両手でしっかり鍋の取っ手を持ち、巣穴めがけて飛んでいく。
最後に限って、俺の湯量調整は必要ない。
完膚なきまでに、苦しませるだけ。
「いいか?」「うー」「元気出せ、砂糖1つやるから」「うー☆」
れみりゃの調子も出たところで、最後の仕上げを開始する。
「それじゃ、全部流し込め」
「うぁー☆」
早く砂糖が欲しいのか、おもいっきりぶちまけるれみりゃ。
まぁ巣にも入ってるし、大丈夫だろう。
ゆっくり家族の目の前に、滝のように落ちていくお湯。
「ここならあついあめはこないよ!ゆっくりできるね!」
「みんなでゆっくりしようね!」
今は、まだ来ないだろうよ。どんどんとお湯が巣へ流れ込んでいく。
当然、行き場を失ったお湯は水位をあげる。壁越しに熱気が伝わる。
「ねんのためにあなをふさぐよ!みんなてつだってね!」
「ゆっくりりょうかいしたよ!」
「だいじなすのためにがんばるよ!」
なんと、それをされては湯が届かない。それだけは防がねば。
…と思ったが、その心配はないようだ。
水位は上がるところまであがり、横穴へお湯が流れ出す。
入り口に積まれ始めた土ごと、お湯が横穴を侵略する。
「ゆぅっ、あめがはいってきあじゃっ!?」
「これじゃゆっくりできないよ!いそいであなをふさごうね!」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
だがもう遅い。餡子脳を悔やめ。
どんどんと、ゆっくりを押し流すほどにお湯が入ってくる。
「ゆー!?ゅあっづっ!!」
「あじゅいあじゅいあじゅいあじゅい!!」
湯はゆっくり達を半分浸けるほどまで侵食している。
お湯から逃げるように飛び跳ね、そのしぶきが仲間に飛び散る。
それを全員がやっているものだから、みんながみんな必死だった。
「あじゅーいー!?」
「ゆっぐりでぎないいぃぃ!!」
もうどうしていいのかわからず、ひたすら熱湯の餌食となるゆっくり達。
お湯はまだ流れている。そろそろ子ゆっくりが浸水するだろう。
「あぶっ、あじゅ、ばじゅい…!!」
「ゆっぐ、ゆぐ、ゆ”…ゆ”ぅ!」
「う”ぅ、ゆっぐぃじだがあづっ!!!」
やがて、巣全域が水没した。
キセルで一服。
「…終わったか」
れみりゃは物陰で角砂糖をかじっている。
ゆっくりの巣は、ものの見事に水没している。
あれだけ大量の湯を流し込んでも、巣が崩れることはない。
巣のあちこち、吹き溜まり的な場所に動かない子ゆっくりが転々としている。
みんなゆでだこのように真っ赤だ。表情も悪くない。
こういう景色を見ると、虐待した甲斐があるってもんだ。
せんべいを齧ろうとすると、わずかに巣の中で動きがあった。
「…お?」
見ると、子れいむが1匹、生きている。
必死に目を瞑り、体を真っ赤にしながらも、動いている。
するとそのゆっくり、なんとぷくーっと頬を膨らました。
「呼吸も出来ないのになぜ膨らませられる…」
つくづく理不尽な生き物だった。
その浮力に任せて、巣からの脱出を試みているようだ。
みるみるうちに子れいむは浮上していく。
壁に当たるたびに火傷が痛むらしく、口が開きそうになるのを耐えている。
そして子ゆっくりは、巣の入り口へとたどり着いた。
金網で封をした、その入り口に。
「ゅあ”ばっ!?」
当然、金網も湯を浴びているわけで、充分に熱い。
それに触れれば、普通に辛いだろう。
子れいむは金網に負け口を開き、巣の底へ沈んでいった。
「…これで、ほんとに終了かな」
観察《ハコ》での虐待は終了した。
成果としては…よくわからん生態系を見せ付けられた。
子を大事にしたと思いきや見捨て、
溺死したと思ったら浮いてきて、
正直、今回の観察結果をどう生かすべきか、まだ考え付かない。
とりあえず、今回の結果を他の村のお兄さん達に報告してみよう。
なにかいい案が浮かぶかもしれない。
片付けのことを考えながら、俺は一旦部屋を後にした。
【あとがき】
どもっす、タカアキです。
蟻の巣観察キット的なアレを思い浮かべてくれれば幸いです。
絵ヅラで思いついて、文に立ち上げたんだが、いまいち虐待がつまらない。
というわけでお兄さん方、なんか考えてくれ。
最終更新:2022年05月18日 21:19