森の中をゆっくりれいむの家族が飛び跳ねていきます。
「おかーしゃん、あしょこにおいしそーなたべものがみえるよ!」
「ゆっくりしていこっか!」
「おかーしゃんだいちゅき!」
枝から落ちた木の実をちびれいむが見つけ、それを家族に知らせます。
母れいむはその木の周りに実がいっぱい落ちていることを確認してそこでゆっくりすることにしました。
ちびれいむは木の周りの実を探して競争したり、協力したりしてむしゃむしゃと食べ始めました。
「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇー!」
「うっめ、これめちゃうめぇ!」
「あそこにもあるよ!おねーちゃん!」
「ここにもあるよ!」
「れいむのこどもたちはみんなゆっくりしてるね!」
ちびれいむのゆっくりとした雰囲気を感じ取り、親れいむも微笑みます。
親れいむも直ぐ近くに落ちていた実を食べます。
「うっめぇ!これめちゃうめぇ!」
森にれいむ達の話し声とむしゃむしゃと木の実を食べる音が響きます。
やがて、満足したちびゆっくりたちは瞼を上下に揺らします。
「ゆゆっ、ねみゅくなっちぇきちゃ!」
「ゆぅ~、もうちゃべれない~!」
「すやすや~!」
「ちびちゃんたちれいむのまわりにきてね!」
「ゆ~!」
親れいむの周りにちびれいむは集まり、体を寄せてゆっくりと眠り始めました。
「ゆふふ、れいむのこどもはねがおもかわいいよ!」
親れいむはちびれいむの寝顔を見てとても嬉しそうです。
ついつい、子守唄を歌ってしまいます。
「ゆ~っくり、ゆ~っくり、ねむりぇ~」
母れいむの歌の中でちびれいむはぐっすりと眠っています。
れいむ家族はとてもゆっくりとした時間を過ごしていました。
ガサゴソッ
「ゆゆっ!?」
突如、れいむたちから離れた場所で草を掻き分ける音がしました。
その音はとても小さな音でしたが、野生で生きている生き物にとっては大きすぎる音でした。
母れいむはその小さな音に気付きました。慌ててちびれいむを起こそうとします。
「ちびたちおきてね!ゆっくりできなくなるよ!」
「「「「ゆっぐり!?」」」」
親れいむのゆっくり出来なくなるという言葉に反応して、ちびれいむ達は飛び起きます。
「おかーしゃんどおちたの!?」
「しずかにしてね!いまからおかーさんのいうことをよくきいてね!」
「ゆっ!」
親れいむの真剣な表情にちびれいむたちも眠気を吹き飛ばして母れいむの言葉を待ちます。
母れいむは敵が現れる前にどうにか子供達が隠せないかと考えました。
周りには木の実と一緒に落ちたであろう落ち葉があります。
「ゆっ!」
「ゆー!」
母れいむは短く鳴いたかと思うと、落ち葉をかき集め始めました。
ちびれいむ達も親れいむの意図を感じ取り、親れいむと一緒の場所に落ち葉を集めます。
「ゆっゆっ!」
親れいむはある程度落ち葉を集めると今度は穴を掘ります。
ちびれいむの比較的大きい方は落ち葉集めから穴掘りに移りました。
やがてちびれいむが全部はいれるほどの窪みが掘れます。
「ゆっ!」
「ゆゆっ!」
ちびれいむはその窪みに入っていきます。
その間、親れいむは周囲の警戒を怠りません。
最初は小さな音も今では直ぐ近くに感じます。
「ゆっくりしないでね!」
「ゆゆ!」
遅いちびれいむを急かします。
ちびれいむは協力して窪みに入っていきました。
やがて、ちびれいむは全部中に入ります。
「おかーしゃん!」
「ゆっゆっ!」
ちびれいむが入ったことを確認すると親れいむはその上に落ち葉を掛けていきます。
すぐにその窪みは落ち葉ですっぽりと隠れてしまいました。
不自然に積もった状態でもなく、親れいむでなければ気付かないでしょう。
「ゆっくりがまんしてね!」
「ゆ~!」
親れいむはちびれいむの反応に満足すると音のするほうに向き直ります。
目には子を守るという決意の炎が燃えていました。
ガササッ
やがてれいむの向いた方向の草を掻き分け、一匹の野犬が現れました。
野犬は、親れいむと同じぐらいの大きさで、戦えば傷を負うのも必至でした。
「グルルルルウ!」
「ゆっくりしていってね!」
呻り声を上げる野犬に怯えることなく、親れいむは叫びます。
どちらも譲りません。
「グルルル!」
「ゆっくり!」
周りを回り始めた野犬に、親れいむはちびれいむを気付かれないように同じようにぐるぐる回り始めます。
お互いに決め手にかけるもの同士です。
「グルルル・・・ワンッ!」
「ゆゆゆゆ・・・ゆっくり!」
口を開け今にも噛み付いてきそうな野犬に、親れいむは体を大きく膨らませて対応します。
野犬は噛み付くのを止め、またぐるぐると回り始めました。
「おかーしゃん、がんばっちぇ!」
「しずかにしてね、きづかれちゃうよ・・・」
「ゆ~、ごめんなしゃい・・・」
ちびれいむは親ゆっくりと野犬の攻防を心配そうに見守ります。
本当は飛び出して助けたかったのですが、自分達では勝てないことは理解できます。
応援しか出来ないちびれいむたちは悔しさをかみ締め、早く終わって親れいむとゆっくりしたいと思っていました。
「ゆー!」
「ワンッ!ワンワン!」
親れいむと野犬の攻防は一進一退でした。
お互いに傷つくことはありませんでしたが、このままではただ時間が過ぎていくだけです。
そうなれば子供のいるれいむの方が不利でした。
「ゆぐぐぐぐぐ・・・」
親れいむは顔に出さないようにしながら必死に硬直を打破する方法を考えます。
しかし、野犬に注意の大部分を払っているれいむはなかなか良い方法が思いつきません。
「ぐぅううううう!」
「ゆー、はやくどっかにいってね!」
れいむは小さく飛び跳ねて威嚇します。
野犬はその度に後ろに下がりますが直ぐに戻ってきます。
「ゆうううううううう!」
このままでは他の野犬が来てしまいます。
れいむは絶望的な状況になりかけているのを感じていました。
ガサゴソ
「ゆ゙っ!?」
転機は突然やってきました。
野犬のやってきた方向とは逆の方向から音が近づいてきていました。
「ゆっ、ゆっくりしないでね!どこかへいってね!」
思わず音の方向に向かって親れいむは叫びます。
その隙を逃す野犬ではありませんでした。
「グルル・・・グガアアア!」
「ゆ゙ゆ゙っ!」
野犬は親れいむに向かって飛び掛ります。
噛み付こうとした野犬を間一髪避けたれいむは、野犬に向かって体当たりしました。
「ゆっくりしね!」
「ギュワン!」
野犬はれいむの体当たりで後ろに吹き飛ばされますが、直ぐに起き上がり親れいむに爪で切りつけます。
爪はれいむの皮を完全に切り裂けませんでしたが、れいむには着実に傷がついていきました。
「ゆ゙ー!」
「グルル!」
親れいむと野犬のぶつかり合いは続きます。
野犬には歯形や痣が、親れいむには牙や爪の痕が多くなってきます。
お互いに傷が分かるようになったころ、茂みから音の正体が現れました。
「「れいむ、たすけにきたよ!」」
「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!」
茂みから飛び出したのは親れいむと同じぐらいの大きさの二匹のれいむでした。
親れいむは先ほどの叫びを忘れ、現れた救世主を歓迎します。
「れいむ、いくよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
二匹のれいむは親れいむの横に飛び跳ねていきます。
これで1対3になりました。
しかし、野犬も簡単には引き下がれません。
何とかできないかとれいむ達を睨みます。
「ゆゆっ!おかーしゃんかてそうだね!」
「もうしゅぐゆっくちできるね!」
「もうしゅこちがみゃんするよ!」
ちびれいむ達は二匹のれいむによって親れいむが助かりそうなことと、ゆっくり出来そうことを素直に喜びます。
そして、思わず動きそうな体をひっしに我慢して、ことの成り行きを見守りました。
「「ゆ~!」」
二匹のれいむはれいむ種特有の攻撃を繰り出しました。
それは転がるです。
他のゆっくりは帽子を飾りにしているものが多く、飾りが外れるのを嫌がるゆっくりには転がるという行動が取れません。
しかし、れいむは確りとついたりぼんのおかげで、転がるという行動が可能でした。
二匹のれいむは親れいむの周りを転がり始めます。
そのスピードは速く、野犬は目で追うのに精一杯でした。
「グルルルルル・・・」
「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ!」
少しずつ、親れいむから野犬を離して行く二匹のれいむ。
野犬は悔しそうに下がっていきます。
そして、野犬が逃げ出す瞬間が来ました。
「ゆ゙っ!」
転がっていた一匹のれいむが落ち葉に隠された穴に引っかかり、大きく飛び跳ねました。
回転したまま飛び上がったれいむは野犬に体当たりをした結果となります。
「ギュワン!」
「ゆっ!きいてる!」
もう一匹のれいむも先ほどの穴で回転したままジャンプしました。
狙いはもちろん野犬です。
「キャウウウウウン・・・」
こうなっては野犬は逃げ出すしかありませんでした。
先ほど来た道を逆走して逃げていきます。
「「やったね!」」
「ゆゆっ!ありがとう!」
勝どきを上げる二匹のれいむに親れいむはお礼を言いました。
「たすかったよ!」
「こまったときはおたがいさまだよ!」
「そうだよ!おなじれいむどうしなかよくやろうね!」
「ゆ~、ありがとおおおおおおおお!」
三匹のれいむはお互い元気なことを確かめるように頬をすりすりと擦り合わせます。
親れいむの傷はそれほど深くなく、直ぐに回復して生活に支障は無さそうでした。
「「「ゆぅ~」」」
三匹はじゃれあうように跳ね回ります。
やがて、仲間となったれいむ達はそれぞれゆっくりするために別れることになりました。
「ゆ~、それじゃまたね!」
「また、どこかでゆっくりしようね!」
「こんどはもっとゆっくりしようね!」
二匹はやってきた方向に向かってぴょんぴょんと飛び跳ねていきました。
一匹は二匹が見えなくなるまでその場で見送りました。
「ゆっ!れいむのこどもたち!」
残った一匹のれいむは周りに散らばった木の葉を掻き分け始めました・・・
最終更新:2022年05月18日 21:27