一昔前に”アントクアリウム”という蟻の飼育セットが流行ったことがあった。
透明なアクリル製のケースに糖質含んだジェル状の地面が餌と水分を兼ねて
巣作りや日常を観察することができるものだ。
そして研究、開発したのが
この”ゆっくりクアリウム”
水族館の水槽並みに大きい4平方メートルの面積と大掛かりであるが
やはり成体ゆっくりには狭い
そこで、
”ゆっくりの成長を制限する剤”が地面の役割をするジェルに含まれており
- 成体でソフトボールサイズ
- 子ゆっくりで野球ボールサイズ
- 赤ゆっくりはプチトマトのまま正常に生まれる
また、ポリマー的な性質をもつこのジェルは
体積以上の栄養分を蓄積させているため
ソフトボールサイズの成体なら10匹程度の赤ゆっくりを植物型妊娠しても絶命しない計算だ。
そして、ジェルはアントクアリウムと違い
グミの様な弾力性があるため、透明なおうちを作る建材としても活用できる。
それでは、さっそく
ゆっくりクアリウムのテストといこう。
成功すれば水族館や動物園、メルヘンちっくな遊園地に、このゆっくりクアリウムは実用される。
『赤れいむと赤まりさ』
「「ゆっくちちていっちぇね!」」
加工場産の未刷り込みの赤ゆっくり、れいむ種とまりさ種だ。
個体差の少ない養殖物はモルモットとしてテスト実験に適している。
例え今回の実験が失敗したとしても次回には改良を行い、同一種で検証する事ができるのだ。
最終的には野生種(野良)を飼育し生態を白日の下にする事を目指している。
「ゆっ、おかーしゃんはどこ?」
「ゆゆん」
ゆっくりしていってね!と返してくれる親がいないため
一抹の不安をおぼえる赤ゆっくり
この反応は従来の箱庭飼育となんら変わりがない。
「ゆっくちさびちいよ・・・」
「みゃみゃはどこにいっちゃの・・・ゆゆーん」
2匹はすりすりと互いのほほを擦り付け合い始めた。
「ゆーん、すりすりきもちいいね」
「れいみゅのほっぺはあっちゃかくておかーしゃんみたい」
1匹では孤独から体調を崩し、実験経過を観察するために支障をきたす恐れがある
やはり、2匹にしたのは正解のようだ。
「ゆっくちおにゃかちゅいたよ」
「まりちゃもだよ、ゆっ!じめんさんからあまいにおいがするよ」
クアリウムの地面は糖質を含んだジェルで出来ている。
アントクアリウム同様にこのジェルが餌と水分を兼ねる。
「むーちゃむーちゃ」
「ぺーろぺーろ」
地面を舐め始める2匹。
「ゆっ!とってもゆっちできりゅよ!」
「ぺーろぺーろ、ちあわちぇー!」
舌先でジェルを舐めては口に運び、だんだんと地面に口をつけて吸い付くように食べる。
2匹は小一時間ほど、食事を続け
赤ちゃんが食べる量にしては明らかに過食。
地面にはトマトが1個すっぽり入るくらいの小穴が出来た。
アントクアトリウムの真骨頂は、蟻がジェルを食べたり地面に穴を空けることで巣穴を作り
透明なジェルが巣穴での生態を白日の下に晒してくれるところにある。
この、ゆっくりクアトリウムもまったく同じ目的を狙ってのもであったが、ここで問題が起きた。
「いっぱいたべたら、うんうんしちゃくなっちゃよ!」
まりさが「ゆふー」と恍惚の表情を浮かべながら、ピコピコとお尻を振り
その場で古い餡子を排出しようとしている。
「ゆっ、うんうんはきちゃないから、そのあなにしてね!」
そう言う、れいむも食べ過ぎたせいか便意を催し
まりさの次に穴へうんうんをするつもりだ。
「うんうんでりゅよ、ちゅっきりー!」
「れいむもでりゅよ、ちゅっきりー!」
これはいけない、蟻ならば小穴を徐々に掘り進み巣穴を作るはずが
食べた分だけ穴に古い餡子を排出しては、その穴が元通りに塞がってしまう。
そして、その場所のジェルは嫌って食べなくなるだろうから別の場所を掘り、またそこに餡子を埋める
これでは数日のうちに地表は餡子だらけになってしまうだろう。
「うんうんしちゃら、ねみゅきゅなってきたよ」
「おかーしゃんがかえってきゅるまでゆっくちねようね・・・ZZZ」
しめた、都合よくお昼寝をしてくれた2匹の赤ゆっくり。
その間にクアリウムの数箇所の地面にあらかじめ穴を作っておこう。
そうする事で自分たちでトイレ用の穴と巣穴用の穴に分類をしてくれるはずだ。
ちなみに、アントクアリウムでも蟻自身がなかなか地面を掘らないときは
人間が割り箸などで地面に穴を空ける。
完全に1から巣穴を作るというのは蟻にとってもまず経験にない事だし
野生のゆっくりでも木の根や洞窟、そういったあらかじめ窪みのある場所を選んで巣穴にするのだ。
”ゆっくりが巣穴やトイレ場所を作らない場合は寝てる間に掘ってあげましょう”
商品化したらマニュアルにそう注意書きを加えておこう。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっ、おかーしゃん?ゆっくちちていっちぇね!」
「ゆゆ・・ゆっくちちていっちぇね!」
クアリウムに付属の親ゆっくりボイス機能はリモコン操作で幾つかのパターンの音声を出すことが出来る。
「おかーしゃん、どこにゃの!」
「おかーしゃんとゆっくちちたいよ!」
「「ゆべっ!」」
ぴょんぴょんと跳ねて、ケースの端っこにぶつかる2匹。
こちらからは2匹の姿は丸見えだが、向こう側からはただの壁にしか見えない。
一応ストレスがたまらないように森の風景の絵を描いてあるが、そのせいで壁だとは認識できずに
ぶつかってしまったようだ。
親がいないという不安と、壁に顔をぶつけた痛みで2匹は「ゆあーん」と泣き出した。
「もう、おうちかえゆー!」
「おうちでおかーしゃんと、ゆっくちちゅるよ!」
2匹はクアリウムの壁沿いに、あっちへいったりこっちへいったりとうろちょろしている。
ここが実際に森の中なら、柔らかい皮を傷つけ蟻にたかられて、その日のうちにその生涯を閉じたことだろう。
不意に、まりさがフッと地面に沈む
「ゆっ!」
眠ってる間に掘っておいた竪穴だ。
自然界にそんなものがあれば、それは落とし穴だが柔らかいジェルはまりさの体を優しく受け止める。
「ゆゆ!ここはまりちゃのおうちだよ!」
すっぽりと身を隠せるその穴をまりさはゆっくり出来る場所と認識しおうち宣言をした。
「ゆっ、まりしゃだいじょうぶ?」
まりさが地面に沈むのを見たれいむは遅れて穴の中に飛び込んだ。
「むぎゅ」
上から潰されるまりさ。
竪穴は横幅も多少あり、2匹でもなんとかゆっくり出来そうなスペースがあった。しかし・・・。
「ゆっ!ここはゆっくりできそうだよ、れいみゅのおうちにするよ!」
この言葉にまりさは餡子の奥底からムズムズと不快感を感じ取り
跳び上がるとれいむに体当たりをしかけた。
「ここは、まりちゃのおうちなんだぜ!」
ぽよん!ぽよん!
「ゆぇえーん、いちゃいよぉぉぉお おかぁちゃぁあーん」
どちらもプチトマト程のサイズしかないため怪我をすることはないが
れいむは、その穴を飛び出して地表に跳んで逃げた。
なるほど、赤ゆっくりといえどお家に対する執着心は強く
お互いがお家宣言を行うと家族間であっても争うことになるのか
その様子を映像に収め”穴の中で目覚めさせる事と”とマニュアルに追記するためのメモをとる。
結局、れいむはまりさの巣穴から離れた場所の穴に入り
そこを自分のおうちとした。
餌は地面がすべてそうなので、これで争いが起きることはないだろう。
念のためオプション商品であるスライド板をクアリウムの中心部分に備え付ける
つまり、赤れいむと赤まりさがお互い出会わないでいいように壁を取り付けたのだ。
ある程度期間を空けてから、出会わせれば都合の悪いことは忘れてしまうゆっくりは
喧嘩をしたことを忘れて再びゆっくりできる。そういったコンセプトによるものだ。
「ゆっゆっ!かべをむーしゃむーしゃすると
おうちがおおきくなるんだぜ!」
まりさが巣穴作りを始めてくれた。
これがクアリウムの本来の目的であるためホッと胸をなでおろす。
巣穴のジェルを口に加えて外に吐き出す
これを繰り返すことで立派な巣になると同時に、巣穴の外側にもそのジェルを使い
たとえばゴミを埋める事等も出来るのだ。
しかし、ここで普通の生物ならありえないような行動をするのがゆっくり。
「うんうんでりゅよ!」
なんと、このまりさ
巣穴を拡張するために壁のジェルを外に運搬するのではなく
巣穴のジェルを食べて、巣の外へうんうんをしている。
すぐにやめさせたい所だが、今後改善をしていくために失敗点を明らかにするのは必要なことなので
しばらくはそのまま観察することにした。
一方、れいむのほうはまりさ程、懸命に巣穴作りに励んではいないが
普通に巣穴の壁から削り取ったジェルを巣穴の外まで運んで捨てている。
「ゆっこらせ!ゆっこらせ!」
きっと2匹が同居していれば、まりさもわざわざ食べてからうんうんにして外に捨てなくても
良い事に気づいてくれただろう。
いっそ、赤ゆっくりの飼育には必ず親ゆっくりを付けてくださいと追記しようかと考えていたら
再び思いもよらないことが起きた。
「まりちゃのおうちおおきくするよ!とんねるほるよ!
むーしゃむーしゃむしゃ!」
まりさの巣穴が、れいむの巣穴に開通したのだ。
スライド板は地表部分の移動を妨げるが、地中は自由に行き来できる。
「ゆっ、ここはれいむのおうちだよ!
まりしゃはかってにはいってこないでね!」
「ゆゆっ!ここはまりちゃのおうちだよ!れいみゅこそかってにはいってこないでね!」
これはいけない、また喧嘩が始まってしまうぞ。
ひとまず親ゆっくりボイスで気を反らそうとリモコンのスイッチを押す。
すると、クアリウムに小刻みな振動が始まった。
ブィィィーン
「ゆっ?ゆっ?」
「ゆゆゆ?」
ブィィィーン
しまった、ボイス機能のとなりにある振動ボタンを押してしまった。
ゆっくりの発情を促して繁殖させるための機能だ。
これだけ大きな機材となると、わざわざ網で1匹づつすくって交尾させるより効率が良いというアイデアで
設置した機能だ。
ともかく、このまま発情してしまうと赤ゆっくりは妊娠に必要な餡子が足りず黒ずんで死亡してしまう。
すぐに止めなければ。
ポチっとな。
ブィィィブブブブブゥイィィィーン
「「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」」
なお、振動は強力になり2匹を刺激する。
あれ?もう一回押せば止まるわけじゃないのか。
そして、とうとう発情した赤れいむが赤まりさにのしかかった。
「ゆ”ゆ”ゆ”れいみゅなんだかきもちよくなってきちゃっちゃよ!」
「ゆ”ゆ”やめちぇね!はなちてね!」
2匹は体中からネバネバとた粘液を放出しており、その顔は紅潮している。
ようやくリモコンで停止ボタンを押したものの、若い二匹はもうどうにも止まらなかった。
「「ずっぎりぃぃぃぃい!」」
まりさの帽子の隙間から細い茎が伸びて赤ゆっくと同じ大きさの実を2つ程つける。
この場合はまりさが黒ずんで枯れるんだろうなと諦めていたら、そうはならなかった。
「ゆゆゆ・・・あたまがむずむずしゅりゅよ」
「ゆっ!まりしゃのあたまにれいみゅのあかちゃんがついてるよ!」
ジェルを大量に食べてうんうんを外で放出する前にれいむの巣穴に開通したため
うんうん分の餡子が妊娠の方にまわったのだ。
このジェルにはゆっくりを成長させない成分が含まれているが、最小サイズの赤ゆっくりには変化がない。
だから、赤まりさは自分と同サイズの実を2つもつけて重みで動きづらそうだ。
「まりちゃのあちゃまがおもいよ!ゆっくりとっちぇねー!」
「ゆっ!だめだよ、れいみゅのあかちゃんがうまれりゅまでゆっくりしててね!
たべものはれいみゅがとってくるよ!」
赤ゆっくりから、ゆっくり一家の繁殖が出来ればそれはそれでこの商品の利点となる
このまま繁殖をさせてみよう。
野良をクアリウムに投下したり
アリス種をいれて、どこまで繁殖に耐えられるかとか
ゆっくり一家をまるごとスライドでさえぎってお隣にこさせて
そのうち「こんにちわ」と出会わせる
ゆっくり料理専門店にイケスの様にクアリウムを設置して
透明ジェルで巣穴でのゆっくりした一家の生活をお客さんにご存分に堪能してもらってから
「へい、赤れいむのからあげ一丁!」
なんて具合にヒョイと取り出したり
「ゆっくり一家のおうち蒸しはいりましたー!」
なんて、親ゆっくりの口に赤ゆっくりを詰め込んでそのまま蒸すなんてのも良いかもしれない。
金魚鉢サイズのミニクアリウムに赤ゆっくりを入れて販売すれば
虐待お兄さんにも愛でお兄さんにも売れそうだ。
なにしろ、餌も水もすべて地面部分のジェルで事足りる。
そうなれば水族館や遊園地に並べるよりもよっぽど研究資金がもらえそうだ。
つづく。
過去の作品
ゆっくり繁殖させるよ!
赤ちゃんを育てさせる
水上まりさのゆでだこ風味
ゆっくり贅沢三昧・前編
ゆっくり贅沢三昧・後編
まりさの皮を被ったアリス
肥料用まりさの一生
ゆっくっきんぐ ドナーツ編
可愛そうな赤ちゃんにゆっくり恵んでね
ゆっくりしなかった魔理沙と愛のないアリス
作者:まりさ大好きあき
最終更新:2022年05月18日 22:15