『ゆっくリズム』



「ゆっくりしていってね!」

ゆっくりと呼ばれる饅頭みたいな生き物が人間の男に近づき、にこにこ笑いながらゆっくりしていくことを強要してきた。
この人間にもゆっくりしてほしい、そんな気持ちから笑顔で今日もゆっくり流のあいさつを人間にする。
ちなみにこのゆっくりは、まりさ種と呼ばれるもので、黒い薄気味悪い帽子を被っていて、金色の長くて綺麗な髪をもつゆっくりである。

これまでに挨拶した人間はみんな「ゆっくりしていってね」と笑顔で挨拶を返してくれた。
だから、この人間も笑顔で挨拶を返してくれる。まりさはそんな人間達が大好きなのだ。

だけど今回の人間はゆっくりまりさの期待している行動とは全く別の行動をとったのだ。

男は、ひょいっとゆっくりまりさのサッカーボールくらいの大きさの顔を、頬のあたりを掴んで片手で持ち上がる

「ゆっ! ゆっくりやめてね」

驚いているゆっくりまりさを男は無視する。
持ち上げたゆっくりまりさを片方の腕で「ぽすっ」と口と顎の中間辺りを叩く。
人間でいえばこの辺がお腹になるのだろうか? 顔しかない生き物だからよくわからない… が、ここをお腹と仮定する。
出産する時のゆっくりは口と顎の中間辺りから子供を産むと聞くから、ここがお腹だとは思われる。

「ゆっくりやめてね」

少しぷくっと膨れた顔で怒るゆっくりまりさ。
力を全く入れずに叩いただけなのて平気らしい。しかし男は何回もゆっくりのお腹を叩いていく。

「たたくのはゆっくりやめてね!」

「ほんとにまりさおこるよ!」

「ゆっ! ゆぶっ… ゆぶっ!」」

いくら力を入れないパンチといってもそれを何回も入れられるとゆっくりにとっては効いてきたらしい。

「おぅおぅ、言うね言うねぇいっちょまえに! こぉのゆっくりが!」

どんどん殴る速度を速め力も入れていく。

「ゆぶぅ゛!! ゆぶぅ゛!!」

今度は地面に仰向けの状態でゆっくりまりさを下ろし、マウントポジションを取ると、両手で殴る。
小刻みにリズムを取りながら、さらに速く速く殴っていく。

「悪いのは、この口か? この口か?」

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

規則正しいリズムの音がゆっくりを殴りながら聞こえてくる。

「も゛う゛… や゛べでぐだざい… ぐぶょ!!」

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

まりさの言葉などには耳を貸さずに殴り続ける男。
そして仕上げに、思い切り強く平手を喰らわせる。

バシィィー!!

「ぶべあ゛ぁぁぁ゛!!」

いい音と声がした。そのまま5mくらい地面をぼよんぼよんとバウンドしながら飛んでいくゆっくりまりさ。
俯けで倒れたまま動かない。

男は倒れているゆっくりまりさに近づくと、ゆっくりまりさの帽子を取ってみる。
すると帽子を取られた事にはすぐに反応し、ずるずると起き上がった。

「や゛… やめてね… まりざのぼうじをかえしてね…」

ぼろぼろの顔で帽子を返せと言ってくる。
そんな言葉には耳をかさず、男は帽子を両手で持ち、力を入れてばりばりと真っ二つに破り捨てた。
これにはゆっくりまりさも大ショック! 大粒の涙を流し泣き始めた。

「ま゛ま゛りざのぼう゛じが゙あ゙あああああ!!!」

今度は帽子を失ったゆっくりまりさの長い髪をつかみ持ち上げる。

「ひ゛どい゛よ゛おじざん!! ぼうじを゛ぼうじ゛を゛がえ゛じで ごびゅ!!!」

ゆっくりまりさを地面にびたんと叩きつけ、再び両手でお腹を殴り始める。

「おぅおぅ言うね言うねぇ! こぉのゆっくりが!」

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

「お゛おじざん… やべでぇ!」

再びゆっくりを殴るリズムが始まった。

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

「ゆっくりの癖に調子くれて帽子なんか被りやがって…」

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

おまけに、ゆっくりの癖に綺麗な髪しちゃって」

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

「しかも髪の色は金髪… おしゃれさんだねぇ」

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

「ぼ… ぼぅ… ゅるじでぐだ… ざぃ」

か細い声でそう訴えかけるゆっくりまりさ。
男が我に返ると目や口から餡子が漏れ出し、潰れた饅頭に変形していた。いくら軽く殴っていたとはいえ殴りすぎたようだ。
だからといってやめる気配は一向になかったが。

バシィィー!!

もう一度、仕上げに本気の平手をお見舞いする。

「ゆびゅ゛う゛お゛え゛え゛え゛ぇぇぇ」

ものすごい奇声を上げ、ごろごろと転がっていくゆっくりまりさ。
そして、ピクピクと痙攣したまま動かない。

そんな事はお構いなしに再びゆっくりまりさの長い髪をぐいっと引っぱり持ち上がる。

「ゆ゛…」

殴られすぎてもはや何かを喋る気力さえないゆっくりまりさ。
ゆっくりまりさは思う。これだけ殴られた自分にまだ何をするのだろう?
でももうこれ以上は殴らないだろう、だからこのまま目をつぶってやりすごそう。
無抵抗の自分を殴るほどこの人間も酷くはないだろう。
そう思いながら目を閉じてやりすごそうとする。

「おぅおぅ言うね言うね! こぉのゆっくりが!」

その言葉で閉じようとしていた眼がぐわっと開く。

「ま゛! ま゛り゛ざなにもい゛っでな゛ぐべぁ!!」

タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪

もちろんゆっくりまりさは何も言っていない。男に対して最初から「ゆっくりしていってね!」しか言っていない
だけどその「ゆっくりしていってね!」が男の怒りにスイッチを入れてしまったのだ。

そして、このゆっくりまりさは日が暮れるまでリズム良く殴られ続け、フィニッシュには平手をお見舞いされるを繰り返された。
ギリギリで生きてはいるが元の形に戻るには時間がかかることだろう。


おわり





ゆっくりまりさは、ゆっくりの中でもいぢめたいNo1です。
人を見下したような表情、卑怯な性格、黒い帽子、長い金髪。
これだけ揃えばいじめたくなります。

でも、このお話に出てくるゆっくりまりさは良いゆっくりまりさです。
何もしてないのに可哀想ですね。


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最終更新:2022年05月19日 15:10