※一部俺設定あり。
※一見、罪のなさ気なゆっくりが被害に遭います。
【ゆっくりと大晦日の祭事】
私の村には毎年大晦日になると、ある方法によって翌年の兆候を占うという祭事がある。
それは、今年一年、大切に育ててきたゆっくりの家族を使用して占うものである。
このゆっくり達には、我々と同じ食事を与え、広々とした部屋で何不自由なく過ごさせている。
いわば、最高のゆっくりできる環境で育てているのだ。
──とある年の12月30日、朝。
チュンチュン…
「ゆっ!おちびちゃんたち、そろそろゆっくりおきようね!」
「ゆ…、ゆぅ?」
「まりしゃまだねみゅいよ…?」
「れいみゅも…」
眠気まなこの赤まりさ一匹と赤れいむ二匹
そんな子供たちに、片親である親れいむは優しくそして元気に挨拶をする。
「ゆっくりしていってね!!」
「ゆ?!おきゃーしゃん」「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」
子供たちは親れいむの おはよう の挨拶にすっかり目が覚めたようで、元気に応える。
「さ、おちびちゃんたち、おはようのすりすりしましょうね!」
「ゆゆー!?まりしゃしゅーりしゅーりしゅるよ!」
「ゆゆ!れいみゅも!」「れいみゅだってしゅーりしゅーりしちゃいよ!」
僕はそんな光景を、少しだけ開いている扉の隙間から覗き込むように微笑ましく見ていた。
コンコン!<ノック音>
「ゆゆ?!おにーさんだ!さ、おちびちゃんたちあいさつするよ!」
「おにーさん、ゆっくりしていってね!」
「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」」
僕はその挨拶に応え、朝ごはんを目の前に置いてやる
「ゆーっ!おにいさんありがとう!」
「「ゆゆーっ!あしゃごはんだにぇ!ゆっきゅりたべりゅよ!!」」
「「「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ〜!!!」」」
「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」
幸せそうに朝ごはんを食べるれいむ達を確認し、僕は明日の"準備"に戻ることにする。
僕は仕事があるからゆっくりしているようにと伝えると、
「ゆ!?ゆっくりりかいしたよ!!むーしゃむーしゃ!!」
と、ゆっくり達はすぐさま食事に戻る。
同様に、"準備"の合間に昼・夜のご飯の用意をしてやり、ゆっくり達が寝る時間になると、
彼女たちが幸せそうに眠りに落ちていく様子を見て、自分の複雑な感情を抑えつつ、また"準備"に戻った。
- このゆっくり達は暖房の利いた部屋の中で過ごしているため、冬籠りはしない。
- そして、食料も僕が運んでくるため、狩りに行くこともない。
- このゆっくり達はある理由により片親ではあるが、何不自由なく暮らせていた。
- とてもゆっくりとした生活が出来ており、とても幸せだった。
この日までは
──12月31日、大晦日。
コンコン!<ノック音>
「ゆ?!おにいさんだよ!さ、おちびちゃんたちあいさつしようね!」
「おにーさん!」
「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」」
今日もその挨拶に応え、朝ごはんを目の前に置いてやる。
「ゆゆー!おにいさんありがとう!」
「ゆ?!きょうはいつもよりごうせいだね!」
「ゆゆ?!ごうしぇい?ゆぅーっ!いちゅもよりしあわしぇだね!!」
「いただき…??? ゆっ?!」
ゆっくり達が朝ごはんを食べようとした瞬間に、僕はその動作を遮った。
「ゆゆ?!!どぼじでおじょぐじざぜでぐでだいどぉぉぉぉぉ!!?」
「ゆゆー!おにいざん、いじわりゅしにゃいで、ごはんちゃべちゃちぇちぇにぇ!!!」
「そーだよ!まりしゃはおなきゃすいたんだよ!?」
「ゆっきゅりはやく、ごはんたべしゃしぇてにぇ!!!!」
「ばきゃなにょ?しにゅにょ?!!」
罵詈雑言を浴びせ急かすゆっくり達に、僕は優しく諭してやる。
今日は大晦日という特別な日だから、体を綺麗にしてからご飯を食べようね。
体を綺麗にすれば、来年からはもっとゆっくりできるようになるよ。と
「ゆぅ…、ゆっくりりかいしたよ!はやくきれいきれいしてね!」
「「「ちちぇね!!!」」」
やや不満げな親れいむを持ち上げ、神酒を浸した布で丁寧に拭いていく。
「ゆ?なんだかゆっくりできないにおいだけど、とってもきもちいいよ!!」
それを見ていた赤ゆっくり達は、まりさも!れいむも!とねだってくる。
一通り拭き終わると、ゆっくり達に食事のGOサインを出してやる。
すると待ってましたとばかりに、飛びつくようにして食べ始める。
「「「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ〜!!!」」」
「むーしゃむしゃ、しあわせー!」
幸せそうに朝ごはんを食べるれいむ達を確認し、僕は今日の"準備"に備え部屋を出る。
「ゆぅ〜、にゃんだきゃれいみゅ ねみゅくなってきちゃよ…」
「ゆ…まりしゃもにゃんだきゃ ねむねむさんだよ…」
「れいみゅも…Zzz」
「ゆふふ!おちびちゃんたちはもうおひるねなの?とってもゆっくりして…いい…ゆっく…Zzz」
そうして、4匹はゆっくりと眠りに付いた。
ゆっくり用の睡眠導入剤を加えた食事を食べたゆっくり達は、
すーやすーやと寝息を立てて寝ている。
僕は少しだけ開いた扉の隙間から4匹が寝たことを確認し、そっと運び出す。
「ゆぅーん、ゆっきゅちちちぇっちぇね!」
「「ゆっくち!!」」
「ゆっくりしていってね!…ゆ?!」
ゆっくり達が目覚めた場所はいつもの部屋ではなかった。
そこはとある神社の一角。
ゆっくり達はそれぞれ個別の透明な箱に入れられており、
八卦を模した巨大な正八角形の盤には平面鏡を中心に、
坤の方角に「親れいむ」1匹、巽の方角に「赤まりさ」1匹、
離の方角に「赤れいむ」1匹、兌の方角に「赤れいむ」1匹と並べて置いてある。
「ゆゆ?!おにいさん、このはこせまいよ!ゆっくりできないよ?」
「おにーしゃん、ゆっくりしちぇないでここからだしてにぇ!!」
僕はその言葉を無視し、当代と呼ばれるこの神社の神主に、ある神具を渡す。
それは数百年続いてきたこの祭儀では無くてはならないもの。
しめ縄が付いた"横杵"である。
当代の指示に従い、赤まりさを白布の上に置き、しめ縄で縛り付け固定をする。
赤まりさは何が起きるのか理解しておらず、キョトンとした表情でこちらを見つめる。
「ゆゆ?!やめてあげてね!なんだかゆっくりできないきがするよ!!!
れいむのおちびちゃんを ゆっくりはやくはなしてあげてね!」
当代は今年一年の穢れを払い、来る年の安寧を願い、祝詞を唱える。
当代の振り上げた横杵は、弧を描くように赤まりさへ向け振り下ろされる。
「ゆ? ゆべぇっ!!!!!」
ドグチャッ!と放射状に飛び散る赤まりさだったあんこ
「おじびじゃあああああああああああんんんんn!!!どどどぼじでぞんなごどずるどぉおおおおおおおおお!!!」
「ゆわーん!!ゆっきゅりできにゃいぃぃぃぃっぃぃぃぃぃぃ!!」
「もうおうちかえりゅううううううううう!!」
私の村には毎年大晦日になると、ある方法によって翌年の兆候を占うという儀式がある。
それは、今年一年、大切に育ててきたゆっくりの家族を使用して占うものである。
このゆっくり達には、我々と同じ食事を与え、広々とした部屋で何不自由なく過ごさせている。
いわば、最高のゆっくりできる環境で育てているのだ。
この村の祭儀では、ゆっくりを潰した時に四散するあんこの状態によって、来る年の兆候を占う。
四散したあんこを見て当代は不安げな面持ちで語る。
この飛び散り方は、虫害と水害による作物の不作の暗示だ。
「?!」
騒然とする村びと集は、どうすれば不作を防ぐことができるのか、当代へ詰め寄る。
当代は暫く口をつぐんだ後、独り言のように何かを呟き始める。
〜〜弱く幼き命を水の神へ、大もとたる命を大地の神へ〜〜
「ごろずっ!ごろじでやる!!!ごごをだぜ!じじい!!ごろじでやるぅぅっぅぅぅ!!」
涙と涎とショックで吐いたあんこによって、ベトベトな状態で箱の中から体当たりをする親れいむ。
「ゆ…ゆ…ゆ…ゆ…」
「ゆっ…ゆっぐじっ…ゆっゆっ…ゆっぐじじだいよぉぉ…おかあしゃーん!!!ゆぐっ…」
一匹の赤れいむはショックであんこを大量に吐き、痙攣を起こしている。
もう一匹の赤れいむは泣きながら箱の隅を押して外に出ようとする。
僕は当代の指示により、痙攣している赤れいむが入っている箱に清水をゆっくりと注いで行く。
「ゆ…ゆぼっ…ごぼぼっ…ごぼぼぼ…ゆぼ…もっと… ゆっきゅ… …」
「おじびじゃあああああああああああああんんんん!!!」
親れいむの声は痙攣した赤れいむへは届かず、箱は黒く澱んで行った。
次に僕が親れいむを見た時には、今までの表情とは正反対に変わっていた。
「ゆぅぅ!やべでぐだざい!!おでがいじばずぅぅぅ!!!もうぜいだぐいいばぜんがら!ぼっどゆっぐりじばずがら!!!」
「どどど どぼじでごんなごとずるのぉぉぉぉぉ!でいぶだじ わるいごど じでないの"に"ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
当代はゆっくりと口を開いた。
お前たちこの村のゆっくりはな、大昔から我々の畑を襲い野菜を奪い、水田を襲い米をダメにして来た。
毎年のように追い払うが、次の年には何もなかったかのようにまた襲いに来る。
お前らゆっくりのせいで、この村は何度も飢饉にあい、多くの村びとを失ったんだ。
その報いにお前らゆっくりを神に捧げ、豊穣を安寧を祈っているんだよ。
「ゆゆぅ!!でも、でいぶだじはぞんなこどじでぇ… ?!」
親れいむの脳裏にフッと浮かんだ記憶の断片。
〜
〜〜
〜〜〜
『……〜ん』
『…しゃ〜ん』
『おかぁしゃ〜ん、ここのおやさいしゃんはとってもゆっくちしておいちいね!!』
『ゆふふ、おちびちゃんもいっぱいたべて、ゆっくりおおきくなってね!』
〜〜〜
〜〜
〜
「…ゆっ…」
また別の記憶の断片が浮かぶ。
〜
〜〜
〜〜〜
『ゆえ〜ん!!おかぁしゃんにひどいことじないでぇ〜〜〜!!!!』
『お、おじびじゃん…れいむのがわいい…おじびじゃん…どうか…ゆっぐり…し』
ドグチャッ!!!
〜〜〜
〜〜
〜
親れいむは、以前もこれと同じ光景を見ていたことを思い出した。
だが今回は違う。見ている視点が違った。
親れいむの豹変ぶりに、僕はゾクゾクッと電気が走ったように震えたが、キュッと顔を引き締め、
親れいむの箱へ、アリの巣から取り出した大量のアリをゆっくりと入れて行く。
無数のアリに覆われ、蝕まれて行く親れいむは悲しげな面持ちのまま、黒い塊へと変わって行き、大地へと還った。
一匹を潰し豊穣の神へ捧げ、一匹を水の神へ、一匹を大地の神へ捧げた。だがこの祭儀には続きがある。
それは、残した一匹をその儀式に立ち会わせ、一部始終を見せることにより、トラウマを植え付け、
その後、しばらくはトラウマで人間不信となるが、すぐにそれを忘れる。
そして翌年伴侶を与え、子供を産ませ、不自由のない環境で育てたあと、大晦日に親と子供を潰す。
一匹を残して。
そして、次の年もその次の年もそのまた次の年も…
村の人間の多くは、来る年の吉兆を願い、また旧年の厄落としの意味で参加しているが、
私のように、ゆっくり達のあの表情を、あの命乞いを、
そして全てを悟ったかのような 最後のあの顔を見るために参加しているものも少なくはない。
あの状態でのゆっくりはとても甘く、素晴らしく美味な饅頭となるだろう。
それを豊穣の神へ捧げることにより、来る年の祈りと変えるのだ。
この祭儀は来年も、再来年も、ゆっくりが絶滅しない限りずっと続いて行くだろう。
あとがき
初めて書きました。読みにくい・面白くない・虐待分が足りない等、
多々あると思いますが、読んで頂きありがとうございました。
今度書く機会があれば、みなさんの作品や批評を参考にさせて頂き、
よりよいSSを書けるよう、努力します。
このゆっくり達の犠牲によって、新年はみなさんが幸せで暮らせますように。
最終更新:2022年05月21日 22:45