100スレ記念2




「なあ、まりさ?」

まりさのつがいだったものを、娘だったものをぞんざいに巣の中に放り込む青年。
その作業の最中に、その後の生き残った子れいむを摘み上げる動作の最中にまりさに向かって囁く。

「君の子どもはもうれいむしかいない。この子を殺されたくなかったら近くの仲間の巣に案内してよ?」
「おかーさぁん・・・ゆっくりー」
「んー!んー!?」

しかし、彼が何をするのかを考えればそんな要求を呑めるはずがない。
たとえ青年の手の中で苦しむ可哀相な我が子のためであっても。
だから、まりさ動かない体を必死に左右に揺らして拒絶の意思を伝える。

「そうか。じゃあ、仲間を呼んでみんなでしらみ潰しに探すよ」
「んんーーっ!?」
「皆ゆっくりを見つけるのが得意な上に虐待が大好きな連中だ。そんなのが何人も集まったら・・・分かるよね?」

まりさはようやく彼の恐ろしさを理解した。
彼は仲間を、友達を容易く見つけることが出来る。ただ、しないだけ。
子どもを助けるために他のゆっくりを差し出す・・・その中で生まれる葛藤を、苦悩を愉しんでいるのだ。
それに、もし仲間を呼ばれたら冗談抜きに全滅させられてしまうかもしれない。
彼一人ならそのうち飽きて終るかもしれないが、仲間が来てしまったらどうなるか分からない。
最悪の場合、誰が一番多く殺せるかを競い始めたりしたら・・・。

「さあ、まりさ。君は賢い子だろ?」
「んんっ!?」

輪っかの上に逆さ向けにされているまりさを起こした青年は彼女の頭を優しく撫でる。
そうして、彼の脅迫に服従させられたまりさは彼女の巣から一番近い群れの仲間の巣へと跳ねて行った。

「やあ、ゆっくりしていってね」
「「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!」」

そこにいたのは2匹の若い成体ゆっくりだった。
1匹はゆっくりまりさで、もう1匹はゆっくりありす。
ありすはカチューシャとまりさより短い金髪が目を引く、外見の華やかさではトップレベルの種である。
中身はカスタードで、「とかいは」などの言葉を好み、何故かツンデレ傾向のあるゆっくりだ。
ほかにも性欲が強いなどの特性もあり、中にはれいぱーと呼ばれる気質を獲得するものもいる。
が、目の前にいるこのありすはそのような性質を帯びていないことが一目で把握できた。

「とてもゆっくりした赤ちゃんだね?」

何故なら、彼女の額には赤ゆっくりの生った一本の茎が生えていたからだ。
通常、れいぱーは母体になることを嫌うため、彼女にその気質があるならまりさが母体になるものである。
ちなみに茎に生っているのまりさ種が2匹とありす種が1匹。多産多死の茎生まれにしては数が少ないのは安全な場所で暮らしているせいだろう。
にんっしんっ中は巣の中で過ごす母体ゆっくりが外で日光浴していることからもこの森の平和さがうかがえる。

「まりさのあかちゃんはとってもゆっくりしてるよ、ゆっへん!」
「ありすたちのとかいはのあかちゃん、ゆっくりはやくうまれてね?♪」

そう言ってふんぞり返るまりさと鼻歌を歌うありす。
青年のポケットの中のれいむにも、彼女らと会う前に鞄に放り込まれたまりさにも気付いていないようだ。
若さと初めてのにんっしんっに浮かれているのだろう。青年がそこにいることの異常ささえも理解していない。

「よし、じゃあ元気な赤ちゃんが生まれるように手伝ってあげよう」

青年は地面に座り込むと、まりさとありすに角砂糖を与えた。

「ゆぅ?しろしろさんはゆっくりできるもの?」
「ああ、とても甘くてゆっくり出来るよ!」
「ゆゆっ!あまあまさんなんてとかいはだわ!」
「さあ、お食べ」
「「む?しゃむ?しゃ・・・し、しあわせー!」」

いまだかつて味わったことの無い甘さが2匹の口の中に広がり、とてもゆっくりした気持ちになった。
特にありすは“とかいは”思考の賜物なのか、人間の都会的な甘いものを食べられたことに歓喜の涙を流している。
その味に感動したまりさとありすはうるうると目を潤ませて、さらに角砂糖を催促。

「おにーさん、あまあまさんはとってもゆっくりできるよ!」
「と、とかいてきなあまあまさんがほしいななんて・・・おもってないんだからね!」

青年は2匹の態度から要求を察して更に4つほど角砂糖を取り出し、今度は遠くへと放り投げた。

「さ、まりさ」
「ゆぅ、なあにおにいさん?」
「取っておいで!可愛いありすに格好良い所を見せてあげるんだ」
「ゆっくりりかいしたよ!」

まりさはとてもゆっくりした足取りで角砂糖を探しに行った。
一方のありすは大好きなまりさが自分の為に甘いものを探しに行くという都会的なシチュエーションに酔っていた。

「まりさぁ・・・はやくあまあまさんでゆっくりしようね?」
「・・・行ったな。さて、と」

まりさの姿が完全に見えなくなったところで、青年は茎を生やしたありすと向かい合う。
そして、「ゆぅ?」と首をかしげるありすの頭と頬をおもむろに撫で始めた。

「ゆゆ?ん、いきなりさわるなんてとかいはじゃないわ!」
「いや、これは都会で流行っているマッサージだよ」
「ゆっ!そうなの?おにーさんはゆっくりしたとかいはなのね?」
「ああ、すごく都会派だ・・・ぞっ!」

都会派のマッサージと聞いて気をよくしたありすが頬を緩めた瞬間に思いっきり彼女の顔面を押さえつける。
顔面イコール全身なので顔面という表現が正確なのかは定かではないが。
彼女の頭頂部と左頬は青年の手によってかけられた圧力によってべこんとへっこんでいる。

「ゆぐぅ!い、いだいわ!やべでね!?」
「我慢しろ。これは元気な赤ちゃんを産むためのマッサージだ」
「ゆゆっ!?」

この言葉にありすは戦慄した。
青年によるとこのマッサージは都会派のマッサージらしい。
都会派であるということはその効果は本物であろう。
なおかつ、都会派であるのだからゆっくりしていないはずが無い。

「ご・・・ごのぐらい、ぜんぜんゆっぐぢでぎるわ・・・!」
「そうか。口から漏れると困るから念のため口は閉じててくれ」

ゆえに都会派を標榜すると同時にこれから三児の母になるありすのプライドを刺激した。
これに耐えられないなら都会派としても母としても失格である・・・そう言われて意るような気がしたのだ。
対する青年は彼女の強がりを聞くや否や、マッサージの名を借りた暴力の手を一層激しくした。

「ん゛っ!んー・・・!?んん゛!?」

右頬を、左頬を、頭頂部を、おでこを、後頭部を、人間で言うところのこめかみに当たる部分を。
青年はありすの全身をくまなく押して行った。赤ゆっくりの茎には一切手をつけずに。

「ゆ゛っ・・・ゆぅ、ゆっぐりぃー・・・」

いくら都会派だと言われた所で苦しいものは苦しいらしく、ありすはげっそりとした表情のまま白目を剥いていた。
何度も吐きそうになったのを飲み込んだのだろう。口内には甘ったるいカスタードの香りが立ち込めている。
しかし、グロッキー状態にあるのは彼女だけではなかった。

「ゆぅ・・・ゆっ?・・・」
「ゆぁ?・・・」
「ゆっ・・・ゆっ・・・」

弱々しい嗚咽を漏らすのはありすの茎に生っていた3匹の赤ゆっくり達。
こちらはありすとは対照的に過剰にぷくっと膨れており、食いすぎて苦しそうな雰囲気だった。
そう、青年のマッサージはありすの中のカスタードを茎を経由して赤ゆっくりに伝えるもの。

「「「ゅゅっ!?」」」

それによって過剰な栄養を得て、重みの増した赤ゆっくりは違和感を覚える。
頭の先がおぼつかないようなそんな変な感触。その感触の意味が理解できる彼女らは首をかしげるような仕草をした。
やがて、赤ゆっくり達だけに聞こえる何かが千切れてゆく音が聞こえ、彼女らは違和感の正体を知った。

「ゆ、ゆゆっ!ゆ?ん」

元気な鳴き声を上げながら一番根元にいた赤ありすが茎から離れる。
そして、ゆっくりと地面に着地して・・・餡子を撒き散らした。

「ゆびゅ!?」
「ゆっ?あ、ありずのあがぢゃああああああああああああん!?」
「ゆ゛っ・・・ゆっぐぢぃー・・・」

どうやら青年のマッサージのせいで体の柔らかさと自重のバランスが崩れてしまっていたらしい。
その上、他の種よりも中身がカスタードゆえ飛び散りやすいありす種である。
まだ致死量には達していないが、彼女の治癒力ではカスタード優先になり、底部の回復は遅れるだろう。
下手をすれ彼女は今後一切は寝ることも這いずることもかなわないかもしれない。

「ゆっ・・・ゆっくちぃー・・・ゆーんゆーん!」
「あ、ありすのあがぢゃん、ゆっくりー!ゆっくりしていってね!」
「ゆぅ・・・ゆっくち、していっぢぇね!」

母となったありすは涙を堪えて努めて笑顔を浮かべ、ゆっくりと彼女のそばに這いずって行く。
そして、母として初めてのす?りす?りをしようと赤ありすに頬を摺り寄せた。
底部に大きな穴が開いている、餡子よりも漏れやすいカスタードが中身の、皮がまだ未発達の赤ありすに。

「す?りす?・・・り?」
「しゅ?・・・・・・・・・」

母ありすに圧迫されて、赤ありすのカスタードが外へと流れ出した。それは間違いなく致死量に達している。
赤ありすは悲鳴も断末魔もあげる暇さえなく、静かに息絶えた。
茎にいるとき、頭の先から伝わってくる美味しい温もりは否応無しに生きる事の喜びを感じさせた。
きっとこの温かさに守られて、美味しいものを沢山むしゃむしゃして、いっぱいゆっくり出来るだろう。
カスタードごしに伝わってくる悲喜こもごもの母の思い出は彼女の人柄を感じさせるものだった。
優しい両親の下で育ち、平凡なゆっくりとして自立し、やがてまりさとであって恋仲になって・・・
カスタード越しに語られる平凡な、しかし唯一の幸福に聞き耳を立てながら、とかいはになろうと心に決めた。
しかし、中身を吐き出しきってしおれた小さな小さなカスタード饅頭に都会派な未来が訪れることは二度とない。

「ゆっ・・・あ、ありすの、あかぢゃん・・・?」

母になったばかりのありすでも産まれたばかりの我が子の死は容易く理解できた。
こんな小さな体で、これだけの量の中身を撒き散らしたのだ。死んでいないはずがない。
が、母ありすはそれが受け入れられないらしく、何度も何度も皮だけの赤ありすに頬擦りを繰り返す。

「おちびぢゃん、す?りず?りだよ!ほらとかいはのず?り、す?り・・・ゆ、っぐ・・・」

徐々に頬擦りに勢いが無くなり、頬に涙が伝い始める。
やがて頬擦りをやめて、幼子のように体裁も何もかも投げ捨てて泣き出した。

「ゆえええええん!ありずのあがぢゃんがあああああああ!?」
「おい、まだ2匹も赤ちゃんが残ってるんだぞ。お前が泣いていてどうする?」

青年のその一言でありすは僅かに落ち着きを取り戻す。
泣き叫ぶ声は少しずつ小さくなってゆき、やがてはすすり泣く程度のものになった。
それから、彼女は必死に笑顔を取り繕って、まだ茎に生っている2匹を見た。

「「ゆっ!ゆゆっ!」」
「ゆゆっ、ありすのあかちゃん!」

彼女達もまたもうすぐ生まれそうであることに気付いたありす。
口を使って土を掘り返し、小さな山を作るとそこに赤ゆっくりが落下できるように位置を調整する。
これならいくら皮の強度と重量が不釣合いな赤ゆっくりでも自重でつぶれることは無い。

「ゆゆ?・・・ゆっくちぃー!」
「ゆゆ?!ゆっくち!」
「ゆゆぅ・・・ありすのあかちゃん、ゆっくりしていってね!」
「「ゆっくちしていってね!」」

それからゆっくりと距離を詰めて頬擦りをする赤まりさ2匹と母ありす。

「す?りす?り・・・しあわせ?!」
「「しゅ?りしゅ?り・・・ゆっくちー!」」

とてもゆっくりした光景だ。3匹とも満面の笑みを浮かべ、この幸せが永久に続くことを信じて疑っていない。
ほんの数分で崩れ去ってしまう幸せだと言うのに。彼女達はその事を知る由もない。

「赤ちゃん達、ゆっくりしていってね」
「「ゆゆっ、ゆっくちしていってね!」」
「誕生祝いだ、これをお食べ」

青年は柔和に微笑みながら細かく砕いた角砂糖を赤まりさ2匹に与えた。
若い母ありすはそれを止める気配を見せない。どうやら最初に茎を与えねばならないことを知らないらしい。

「「むーちゃむーちゃ・・・ゆっくちぃー!」」
「さて、君たちにひとつお願いがあるんだ」
「ゆぅ?」「ゆっくちー?」

生まれて一番最初に食べ物をくれたのは青年だ。ゆえに彼女達は青年をもう1匹の母親くらいに認識している。
仮に母と認識していなくとも、お願いされたら断れない相手という認識はあるだろう。
彼女達のそんな無垢な信頼をいいように利用せんとする青年のお願いは・・・

「僕の言うことを真似して欲しい」
「「ゆっくちー!」」
「やってくれるか、ありがとう」

赤まりさ2匹が笑顔で頷いたのを肯定と受け取り、すぐにその言葉を紡ぎ出す。

「さあ、お食べなさい」
「「さあ、おたべなちゃいぃ?」」
「ゆっ・・・ゆゆゆっ!ありすのあかちゃ・・・!?」

赤まりさたちと同様に青年を信頼しており、なおかつ彼女らの可愛さに呆けていたありすが言葉の意味を理解した時にはもう手遅れ。
禁断の言葉を口にしてしまった2つの小さな小さな饅頭は笑顔のままぱかっと2つに割れて、動かなくなった。

「あ、あ・・・ありずのあがぢゃん・・・!」
「あ?あ、皆死んじゃった」

泣き崩れるありすをにやにやと笑いながら見下ろす青年。
その視線に気付いた彼女はきっと青年を睨みつけ、ぷくぅっと膨れた。

「おにーさんはゆっくりできないよ!ぷくぅぅぅぅぅ!」

涙を流しながらも吸えるだけの空気を吸って、彼を威嚇する。
しかし、人間はその程度で怯まない上に、ゆっくりよりもはるかに強い。
彼女がどんなに頑張ったところで彼をどうにかすることなど不可能。

「止めなかったのはお前。言い訳をするな、ゲス」
「ありすげすじゃないわ、ぷんぷん!」
「黙れ、ゲス」
「ゆぐっ!?」

問答無用の蹴りが青年をにらみつけるありすに向かって放たれた。
ありすは勢い良く宙を舞い、近くの木に叩きつけられると跳ね返って再び青年の足元へ。
ころんころんと足元まで戻ってきたありすを青年は再び蹴り飛ばした。

「ゆがっ!?・・・ゆぅ?、ゆぎっ!?・・・ゆぐぅ、ゆ゛っ!?」

何度も何度も蹴り飛ばされたありすは、やがて中身を吐き出し、傷口からカスタードを漏らした。
やがて、中身の大半を失ったありすは跳ね返るだけの弾力を失って、その場に崩れ落ちた。

「も゛・・・もっと、ゆっぐぢ・・・しだかっだよ・・・」
「ゆ・・・ゆゆっ!ありすうううううううう!?」

断末魔の後、永遠のゆっくりへと旅立っていったありすの傍に駆け寄るまりさ。
その口にくわえた帽子の中には先ほど青年が放り投げた角砂糖が入っていた。
きっと、つがいのありすや子ども達と一緒に食べるために草木をかき分けて必死に探したのだろう。
柔らかそうな皮のところどころにさっきは無かったきり傷がついている。

「おにーさん!どうしてこんなことするの!?」
「したいから、以上」
「ゆぅぅうううぅううう!おにーさんはゆっくりできないよ!」

そう言って、まりさは家族の敵を討つために猛然と突撃を仕掛ける。
が、当然人間に敵うはずもなく、カウンター気味に入った青年の蹴りが顔面にめり込む。
「ゆびゅ!?」と悲鳴を上げながら、先ほどありすがぶつかった木に激突し、餡子を吐き出した。

「ゆっ、ぐぅ・・・」
「先を急ぐから、もうお別れだ」

呻くまりさの頭上に跳躍した青年の安全靴をはいた大きな足が落ちてきた。
続く


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最終更新:2024年04月13日 17:50