水槽に、1匹のゆっくり霊夢が入っている。
ソフトボールサイズ、ようするに子供だ。
生後1か月。

「ゆっくりしていってね!!!」

俺の姿を見つけたのか、嬉しそうに跳ねて声を上げた。
とてもやかましい。

「黙れ!饅頭が!」

左手に握った定規でれいむの頬をペシペシはたく。

「ゆっくり!?ゆっくりっ!!ゆっくりしていってねっ!!!」

負けじと声を上げるれいむに、おれは更にはたく速度を上げた。
ぺしぺし。

「ゆっくりぃいい!!!ゆっくりしていってね!!!」

頬をアザだらけにしながら、それでもれいむは狭い水槽の中をピョンピョコ跳ね回る。

「おらどうした?ゆっくりやめてね、とか、ゆっくりできない、とか言ってみろや!」

右手に握ったハンマーをれいむの前に落とした。
ガンっと音を立てて水槽が揺れる。
れいむは顔を青くしながらガタガタと震え始めた。

「おらおら!なんとか言ってみやがれ!!」
「ゆ・・・ゆっくりじでいっでねぇえ・・・!」
「そうか。じゃあこれならどうだ」

取り出したのは、このれいむの親のれいむ。

「ゆ!ゆっくりしていってね!!」

それに気がついたれいむは嬉しそうに笑った。

「うるせーボケナス!死ねやこらぁっ!」

そのまま、親れいむに一言もしゃべらせることなく底部から真っ二つに引き裂いた。
水槽に散らばる小汚い餡子。

「ゆっぐりぃいいい!!!」


結局、そのれいむはゆっくりしていってね以外の言葉を発しなかった。
このれいむは俺が養殖したものだった。


5か月前、道端で楽しげに歌を歌っていたれいむとまりさの一家。
それを見て、あることを実験したくなった俺は、ちゃっちゃか親以外をブチ殺して2匹を誘拐した。

そのあることとは、ゆっくりの記憶遺伝の実験。
なんでも、あの饅頭共は実った赤ゆっくりに自身の餡子を送り、本能や簡単な記憶を継承する説があるとかないとか。

俺は、2匹を無理やり交尾させた。
生まれたのは植物型で、10匹ほど。
すぐにパートナーのまりさは潰して生ゴミにした。

生まれ落ちた10匹のうち、れいむ種1匹とまりさ種1匹、計2匹を水槽に移動する。
水槽といっても、2匹は別々の水槽に移動したので互いに姿は見えない。
水槽も、上部があいているとはいえ、サイドは黒い紙を張り付けてあるので全く外の様子はわからない。

俺は姿を見せないようにしながら、毎日潰したゆっくりの餡子を投げ込んだ。
もちろん、そいつらの兄弟や親の餡子だ。

栄養豊富な生活をしていたため、数週間でその赤ゆ2匹は成体に近くなった。

それから、俺は水槽から2匹を取り出してすり合わせて赤ちゃんを実らせた。
そして同じプロセスをなぞるのだ。


それらを延々と5か月繰り返した結果が、今目の前にいるれいむだ。
初代から数えて9代目のゆっくり霊夢。

代を重ねるごとに語彙が減り、外の記憶も薄れた。

今のこのれいむには、ゆっくりの本能「ゆっくりしていってね!!!」しか残されていない。
この実験結果に満足した俺は、原始ゆっくりともいえるれいむを叩き潰した。

「ゆっぐりじでいっでね・・ぇ・・・」

れいむは最期までそんなことを言っていた。
いったい、何に対してゆっくりしてほしかったのだろうか。


おわり。

作:ユユー

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最終更新:2022年04月17日 00:11