☆虐待成分薄いです
ある日、一人で町を歩いていたれみりゃは、とっても
ゆっくりした男の子に出会いました。
「とっても、えれ☆がんとなにんげんさんなんだどぉー。どうしたんだどぉー」
「学友に頼んで、都会を一度見てみたいと頼んだのですが、はぐれてしまって」
それに全身から漂う上品なオーラ。
紅魔館のおぜうさまであるれみりゃも、舌を巻くほどだ。自分の飼い主もそれなりに
エレガントだったが、レベルが違う。たとえるならば、王子様だ。
実はこのれみりゃは数日分のエサ代を与えられて、飼い主から捨てられたのだ。
「こーまかんのかり☆すま、れみりゃがいっしょにさがしてあげるどぉ~」
「はい、よろしくお願いします……」
「おにいさんはなんて、なまえなんだどぉ~」
「僕の名前は長いので。短く「誠くん」とお呼び下さい」
どれだけ長いのか?
れみりゃの頭には『すかーれっと』だの、『まーがとろいど』だのが思い浮かんだ。
「そーなのかだどぉ……じゃあおにいさんはれみりゃについてくるんだどぉ~」
そう言うとれみりゃと男の子は歩き出しました。
「ところで、おにいさんのおうちはどこだどぉ?」
「このすぐ近くに、東京の中心にあって、結構大きいのですよ」
「すごいどぉ~、こーまかんのちかくにおうちがあるなんて、」
「あの……、さきほどから気になっていたのですが、「こうまかん」とは何でしょうか?」
「こーまかんをしらないど? とーってもえれがんとなところなんだど、れみ☆りゃがあんない
してあげるどぉ~!」
「おねがいします」
「じゃあ、れっつ☆ご~だどぉ~」
そう言って、れみりゃが案内したのはメイド喫茶だった。
飼い主の趣味でよく連れて来られたのだ。れみりゃにはメイドが『さくや』に見えるので、
来ては”う~う~♪、さくやがいっぱいだどぉ~”と喜んでいた。
「お帰りなさいませ、おぜうさま!」
「クリームソーダみっつ~、れみりゃがふたつでおにいさんにひとつ~」
そう言うと、れみりゃとおにいさんは窓際のテーブルに腰掛けた。
「ところでおにいさん? どうしてこっちにこようとおもったんだど?」
ストローに口をつけてクリームソーダを一気に飲み干す。あっという間に1杯目のグラスが空になった。
「おにいさんみたいな、えれ☆がんとな、おう☆じ☆さまならいつでもこれるんだどぉ~、けらいをつれて~」
椅子の上に立ち上がって、のう☆さつだんすを踊る。おにいさんはどう反応すればいいのか、困惑気味だ。
よく踊る癖と飼い主のことを”けらい”と呼ぶ、この傲慢さがれみりゃが捨てられた理由だろう。
「僕は、いつもお稽古事なのですよ、その上いつも皆さんに見張られておりますから……」
「ひどいどぉ~」
王子さまが幸せとは限らない、確かにれみりゃの飼い主は金持ちではないがそこそこ幸せだった。
自由というのはそれほど重要なのか、そうれみりゃは2杯目を空にしつつそう思った。
「わかったどぉ~、ようやくおゆるしがでたのかど?」
「いえ、学友に頼んで、勝手に抜け出してきたのです」
「あぶないどぉ~、おとうさまやおかあさまがしんぱいするど! おにいさんのけらいも!」
「大丈夫です。お祖父様も学生のころよく抜け出したと聞いておりますから」
「うんうん、わかったど。だから、きょうはお☆ぜう☆さまといっしょにたのしむんだど!」
「ええ」
その後二人はゆっくりショップに寄ったり、ケーキ屋に寄ったりした。
れみりゃは、遠い星からやってきたような何も知らない男の子の保護者気取りで、何でもおごってあげた。
気づけば、飼い主から貰ったエサ代は遊興費に消えていたが、楽しかったので気にしていない。
しかしどういうことだろう?
さっきから気になったが町や店でたくさんの人の視線を感じた。
「きょうは、とってもたのしかったどぉ~」
「ええ、外の世界にはこんな楽しいことがあるのですね」
ファンファンファン
「うるさいど~、あのしろくろであかいぴかぴかのくるまはゆっくりできないど~……」
そういえば視線のことだけではない。
さっきから、れみりゃの周囲に黒い服を着た『おまわりさん』が配置されているような……
「な、なにがあったんだどぉ~。お☆ぜう☆さまはこわいどぉ~」
そう言って近くにいたおまわりさんに、れみりゃが近づいた。
おまわりさんが、れみりゃの顔を確認した瞬間――
「いたぞ! こいつだ!」
「お、おうじさまになんてものいいだどぉ~! れみりゃはこうまかんのおぜ――」
「誘拐犯を発見した! ただちに応援を求む!」
「ゆうーがいはんってなんだどぉおおおおおおお! れみりゃはおぜうざまだどおおおおおおお!
ざぁぁああああぐやああああああああああああ!」
すると一緒に楽しんだおにいさんが近くにいたおまわりさんに連れて行かれ、
何やら「お怪我はありませんか?」などとしきりに声をかけられている。
同時にれみりゃは数人のおまわりさんに囲まれて、逃げようと抵抗を試みたが、警棒で滅多打ちにされた。
服はボロボロになるまで打ちのめされ、肉まんの汁で汚れた。
顔は二倍ほどにはれ上がり、歯は硬質プラスチックの棒で全部へし折られた。
手足は動けないように、本来曲がらない方に折られ、さらに手錠をかけられた。
一週間後、とある大学生の部屋での話だ。
「全くゆっくりの考えることは分からんな。よりによって、あの方を誘拐するとは……」
「この国にも王様がいたんだ、俺は知らなかったよ」
「そもそも、饅頭ごときが『やんごとなき方々』に近づくことなど、言語道断だぜ」
「そういえば最近は、右翼団体が都会の野良ゆっくりを襲撃しているんだって?」
「ああ、おかげで町が住みやすくなったがな。自販機で飲み物買うたびに、よこせと言われないだけで
どれだけ楽になったことか」
「同意するよ」
後の世の人はこれを「秋れみ事件と呼ぶ」
終わり
誠くんは架空の『やんごとなきお方』です。。
最終更新:2009年03月14日 21:54