199X年、幻想郷は核の炎に包まれた!しかし人類と妖怪と
ゆっくりは死滅していなかった!
「ヒャッハー!おにいさん、ゆっくりしていってね!!!」
突然、目の前にゆっくりれいむの親子が現れた。
母親と思わしき大きなものが一体、バスケットボール大のものが一体、それにハンドボールサイズのちびゆっくりが一体の計三体だ。
「ここはれいむたちのおうちだよ!ゆっくりとおりたかったらたべものをおいていってね!」
「ゆっくりちょうだいね!」「おいていっちぇね!」
時代は変わっても、ゆっくりたちの図々しさは変わらない。
どうやら、ここから先は自分たちのテリトリーであるから通りたければ食べ物を寄越せということらしい。
「生憎だが私は今、食べ物を持ちあわせていない。」
「だったらここはとおせないよ!たべものもってないお兄さんはゆっくりあっちにいってね!!!」
「それは困る。……そうだな」
「ゆ?なにするのお兄さん?ゆっくりはなしてね!!」
「もっとゆっくりできる場所に案内してやろう。お前達、私の家に来なさい。食べ物も沢山ある。」
男は母ゆっくりをしっかりと捕まえながらそう言った。
「ゆっ!ゆっくりできるの?」「お兄さんの家でゆっくりしたいよ!」「ゆっくりさせちぇね!」
『ゆっくり』出来ると聴けば、たとえ、見ず知らずの人間の言葉であっても容易く跳びつく。
時代が変わってもゆっくりたちの頭の中は相変わらず何処までもスイートな餡子ブレインであった。
こんな調子でよくこの世紀末の世を生き延びてこられたものだと、内心苦笑した。
「お兄さん!どうしてれいむをうごけなくさせたの!ゆっくりさせてね!」
ベルトで手術台に固定された饅頭が騒ぎ立てる。
「少し俺の手伝いをしてもらうだけだ。終わったらすぐにゆっくりさせてやろう。」
「はやくお母さんをはなしてね!」「はなしちぇね!ゆっくしさせちぇね!!」
本当に耳障りな饅頭どもだ。すぐにでも叩き潰してやりたい衝動に駆られるが、グッと抑える。
それでは面白くない……いや、勿体無い。折角、手に入れた木人形(デク)なのだから。
「フ……心配するな、新しい秘孔の究明だ!成功したらおまえは今の10倍ゆっくりできる!!」
「ゆっ、ゆ゛ぐっ……」
目的の秘孔があると思われる位置を強く突くと、母ゆっくりは大人しくなった。
「んん~~~……」
俺は母ゆっくりが悶える様子を見守る。
「ゆ゛っ、ゆ゛ゆ゛っ、ゆ゛ぎゅ゛ぎゅ゛っ……」
母ゆっくりが小刻みに震え始めた。
「おかあさん!あとでいっしょにゆっくりしようね!!」「ゆっくりちようねっ!」
子ゆっくりたちも母が悶える姿を見守っている。フフ……お前達もすぐに実験台にしてやろう。
「ゆ゛っ!?ゆ゛ぐっぎゅ゛っ……ゆ゛ゆ゛ゆ゛っぐ……」
母ゆっくりの顔面が蠢き、変形し始める。今までのデータを元にするならば、これはあまり良い兆候ではない。
「お゛、お゛がぁ゛ざぁ゛ーん゛っ……」「どぉ゛ぢでごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛ーーーーっ……」
さすがに見て取れるほどの異常事態に気付いたのか、子ゆっくりたちはうろたえ泣き喚き始める。
「さて……どうしたものか……」
「み゛でな゛い゛でお゛がぁ゛ざん゛を゛だずげでぇ゛ーっ……!」「ゆ゛っぐり゛ざぜでぐれ゛な゛い゛お゛に゛い゛ざん゛は゛は゛や゛く゛じね゛ぇ゛!」
全く、自分勝手な饅頭どもだ。本当に、生きている価値の欠片も無い。だからこそ、何の躊躇いも無く木人形にできるというものだが。
「そうか、助けてほしいか。ならば治してやろう。俺は天才だ。俺に不可能はない!!」
「ゆ゛ぎゅ゛ぐべべべばばばばばばぁ゛ぁ゛ぁ゛っ……」
ぐねぐねと変形を続ける饅頭に手をつく。
「お前を治す秘孔は……これだ!」
ドスッ!
「ゆ゛ぎぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ……ゆ゛っぐり゛ゃ゛っ!」
ドボチャアッ!
「ん!?まちがったかな……」
後に残されたものは、餡子と破けた皮だけだった。
さっきまで悶え苦しみながらも、確かに生きていた母ゆっくりはもう、どこにも居なかった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーっ……!」「お゛がぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ざぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!!」
そして遺された子ゆっくりたちはさっきまでよりも、なお一層強く泣き叫ぶ。
「お前達にもすぐに秘孔の究明の手伝いをしてもらうぞ。」
母の命が尽きたところで、子ゆっくりたちの命が尽きるわけではない。
「フフ……おれの求める北斗虐待拳はまだ遠い!!」
男の実験は、まだ続く。
最終更新:2011年07月31日 16:18