まどか、私のまどか。たった一人の大切な友達。
貴女を救うためなら永遠の迷路に閉じ込められても構わない。

それなのに、どうして。

彼女の名は暁美ほむら。親友の鹿目まどかを滅びの運命から救うために
魔法少女となり、時を操る魔法を駆使して多岐に渡る時間軸を戦い抜いてきた少女。

彼女の果しなき戦いは、唐突に終焉を迎えた。
恐らくは最悪の形で。

「……あぁ……まどか……なんて姿に……。」

放心して地面に無気力に寝転ぶ彼女は目の前にそびえたつ巨大な建造物をただ茫然と眺めていた。
その容姿は雲を突き抜け遥か天空まで届く巨大な樹木。

否、これは建造物、ましてや樹木にすらあらず。

その巨大な物体は――「彼女」はれっきとした殺し合いの参加者の一人、鹿目まどかその人なのだ。
とはいえ、当然、もはや人間でも魔法少女でもない。
今の彼女は絶望という名の希望の終着点。
魔法少女のなれの果て、魔女である。
しかも最強と名高いワルプルギスの夜すら凌ぐ最凶最悪の魔女。

――――救済の魔女「クリームヒルト・グレートヒェン」。

「……ははっ。」

考えてみればいずれこうなることは目に見えていた。
私が過去に戻るたびにリセットされる世界。
それによってあの忌々しいインキュベーターが集めた魔法少女の感情エネルギーも
その度にリセットされるという不具合を奴らがそのまま放置しておく筈がない。

あの最初に集められたパーティー会場に白い小動物の姿が見えた。
この件は確実に彼らも絡んでいるのだろう。
連中がその気になればルールの裏を掻いている私を世界から隔離するのも容易いこと。
時間逆行能力は当たり前のように起動せず、完全に手詰まり。
結局自分は、ゲームマスターに操られる哀れな駒の一つに過ぎなかったのだ。

「……ごめんなさい……私はあなたを救えなかった……。」

もう終わりにしよう。
この無意味な私の戦いは今ここで終わりを告げるのだ。
そう覚悟をきめたほむらは支給された拳銃を口にくわえた。
確実な死を得るには脳幹を撃ちぬく必要がある。
これが一番確実な拳銃自殺の方法なのだ。
変わり果てたまどかを見つめながら引き金にかけた指に力をこめようとした。

その時であった。


「かぁぁぁぁぁ、けったいじゃのう。ひょっとしてこれも倒さにゃならんのかいな?」


誰かの声が少し離れた場所から聞こえ、思わず拳銃を口から離す。
それは、軍服を着た体格のいい中年の男だった。

(……誰?せっかくいい気分に浸って死ねるところだったのに…。)

男はクリームヒルトを見上げている。
その相貌は呆れつつも闘志の意思を捨ててはいない。

(……まさか立ち向かうつもり?馬鹿な。)

そう半ば鼻で笑いながら男を眺めていると。

「そんじゃあ、効くかどうかわからんがやってみようかのぉ!」

(……!!な!?)

男が振り上げた腕が灼熱を浴びた巨大な溶岩の塊に変形した。
火を焼き尽くすそれはまさしく火山。
この男も魔法少女や魔女の類だというのだろうか。

だとしても、倒せるはずがない。

今のまどかは自分が何度挑んでも勝てなかったワルプルギスの夜より強いのだ。

いくら異能とはいえ焼け石に水。

勝てるはずがない。

――――しかし。

なんなのだろう、この胸のもやもやは。

これは怪物だ。自我のないクリーチャーだ。

もうまどかなんかじゃない。

もうまどかは……。

まどかに…。


「まどかに、触れるなぁぁぁ!!」


ほむらは制限されていないもう一つの魔法、時間停止を発動させ、
男に向けてすべての弾丸を撃ち込んだ。
時間が動き出した時、寸前で止まっていた弾丸は男の全身に同時に命中し、文字通り蜂の巣にする。
しかし。

「……あぁ?」
「……な?」

それらは男に命中した瞬間蒸発して地面に液体として流れ出す。
彼の名はサカズキ。海軍大将「赤犬」。
マグマグの実を食べた火山人間である。
自然系の能力者であるこの男に通常の物理攻撃は通用しない。

「おい嬢ちゃん、なんで邪魔をする?」
「うるさい!お前になにが分かる!」

そうなのだ。自分でもなぜこのような行動をとったのか本当のところは理解が出来ない。
でも、あんな姿でもあれはまどかだったのだ。
いや、もはや過去に戻れない以上、今の私にとって唯一のまどか。
もはや理屈ではない本能として。
倒せるはずがないとはいえ、少しでも傷をつけられるのは我慢ならないのだ。

「ワシはあんまし気が長くないんじゃ。あんましとち狂ったことをしてるとお譲ちゃんも……
 ん?なんじゃ?」

サカズキが空を見上げた、その瞬間。
天空から降ってきた無数の触手が、サカズキに襲いかかった。

「……なに!?ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

触手はサカズキを包み隠すと抵抗するすべもなく地面ごとえぐり取り、
再び上昇した時、男が経っていた場所にはぽっかりと空いた穴のみが残された。

「………………。」

その、戦いですらない一方的な殺戮を、ほむらは唖然と見届けるしかなかった。

「………まどか………なんてことを………。」

魔女は自我を持たない。
それは只の偶然に過ぎなかったのだろう。

「…………ははっ…………。」

だが。

たとえ気まぐれだろうが、今、現在。

クリームヒルトは男のみを殺害し、自分を攻撃しなかった。

そのことがほむらの意識の改革を決定的なものにする。


「あはははははははははははははははははははははははは!!!!
 凄いっっっっっっ!!!!凄いわまどかっっっっっっ!!!!
 なんて強さなのっっっっっっ!!!なんて力なのっっっっっっ!!!!
 ふはははははははははははははははははははははははは!!!!
 見たか軍人っっっ!!!私のまどかは貴様ごときとは格が違うっっっ!!!!!」


両手をあげて祝福する。

どんな姿になってもこれはまどかなのだ。

この娘が、新しいまどかなのだ。

歪めた信念で己を奮い立たせ、絶望を狂った希望で塗りつぶす。

ゆらりと立ち上がり、少しだけ巨大な魔女に振り向いてほむらは呟いた。

「……ねぇ、まどか。このまま一緒に世界を滅ぼしちゃおっか?」

新しい夢を見つけた彼女にもはや迷いはない。

クリームヒルトを背に、悠然と歩きだした。


【E-5/1日目・深夜】

【暁美ほむら@魔法少女まどかマギカ】
【状態】 健康
【装備】 トカレフ(0/8)、魔法少女服
【持ち物】 ランダム支給品1~5、基本支給品一式
【思考】
基本: まどかが世界を滅ぼすのを見届ける
1:まどか(クリームヒルト)の邪魔をする者を排除する
【備考】
クリームヒルトの麓に落ちていた鹿目まどかのディバックを回収しました。



【鹿目まどか@魔法少女まどかマギカ】
【状態】 魔女化(クリームヒルト・グレートヒェン)
【装備】
【持ち物】
【思考】
基本:世界から不幸を取り除き、生きているものを楽園へ導く
1:美樹さやかと彼女の周囲1マップ分を除く場所に居る参加者を天空に創った結界へ放り込む
【備考】
※全方位へランダムに攻撃を仕掛けてきます。攻撃は現在は緩やかです。
※現在は深夜なので遠くからは目視しにくいですが日が登ればマップのどこへ居ても目視できるようになるでしょう。
※制限で弱体化してるため物理攻撃で倒せます。




「ぐぬうううう……なんちゅう化け物……!?」

ここは深い地下通路。
その下水に満身創痍のサカズキが突っ伏している。
そう、先ほどの攻撃を地面を溶かすことでなんとか逃げ延びたのだ。

「……少し、休むか。」


【E-5地下/1日目・深夜】

【サカズキ@ワンピース】
【状態】 疲労困憊(休憩中)
【装備】 海軍のジャケット
【持ち物】 ランダム支給品1~3、基本支給品一式
【思考】
基本: 主催を倒し生還する
1:もう一度クリームヒルトに挑もうか悩んでいる
2:ほむらを警戒
3:麦わらやエースの件はとりあえず保留

悪魔の笑い声 時系列順 帝王
悪魔の笑い声 投下順 帝王
GAME START 暁美ほむら 怪物攻略戦
GAME START 鹿目まどか 怪物攻略戦
GAME START サカズキ 未元物質は砕けない

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最終更新:2014年07月29日 22:30