「……はぁ……はぁ……。」

「……邪魔をするな……小僧!」

現在、範馬刃牙と対峙している南斗水鳥拳の使い手、レイは焦っていた。
自分はラオウに突かれた秘孔「新血愁」による死の期限を迎える前に、
何としても南斗六聖拳「妖星」のユダを倒さねばならないのだ。
こんな場所で殺し合いなどやっている場合ではない。
だからといって、いきなり見ず知らずの少年に襲い掛かったのは
いささか自棄になり過ぎではないかと反省する。

(まだ希望はある……!この会場にはトキがいる……!
 あの人に心霊台を突いてもらえばまだ間に合う筈……!」

だが再会するには既に火がついてしまっている
この格闘家の少年をなんとかやり過ごさねばならない。

「……すまない、突然斬りかかって悪かった。
 今更遅いかもしれんが、道を開けてくれないか?」

「はははっ。そうはいかないよ兄ちゃん。ここには親父がいるんだ。
 親父と闘えれば他はどうでも良かったんだけど、アンタは強い。
 範馬勇次郎と闘う前の練習台にはちょうどいいくらいにね。」

「そうか……ならば仕方がない。」

あきらめたレイは水鳥拳の構えを取る。
対峙した刃牙も構えを取り始める。

だが、何か様子がおかしかった。

「……なんだ、その動きは?中国の蟷螂拳?いや、まて!?」

蟷螂を模した形に拳を作った刃牙の真横の空間がぐにゃりと曲がり始めた。
そして、刃牙がパントマイムで蟷螂の真似をするたびにそれの形状がはっきりと
はっきりと見えてくる。

「見える……見えるぞ……!あれは……人間大の……カマキリ?」

―――リアルシャドー

思いこみの強さにより、痛みや傷までをも具現化してしまう、
シャドーボクシングの究極系。
刃牙はほぼ毎日のようにトレーニングとしてこれを行っており、
その格闘キャリアは若年ながら数百、数千試合にものぼっている。
その対戦相手はもはや人間に限らず、100kgになったカマキリや
ティラノサウルスなどをイメージすることも可能である。
その表現力は、実際の対戦において相手にもその存在をイメージさせるほどなのだ。

現に、レイには刃牙の隣に巨大なカマキリの姿がはっきりと見えていた。

「くっ……!落ち着け!これはただの妄想だ!幻覚に惑わされてはいけない!」

そう我に返ったレイは固く目を閉じた。
ただの妄想にすぎないならこれでなにも問題はない。

だが。

「な……なんだ!?この足音は?こちらにカマキリが近づいてくる!?
 馬鹿な!幻聴まで聴こえるとは!なんという高度な暗闘(イメージトレーニング)!」

そういってレイは両手で両耳を塞いだ。
ただの妄想にすぎないなら今度こそなにも問題はない。




ブシャッッーー!!!!




レイの肩に強烈な痛みが走り、目を開けると、
至近距離で巨大なカマキリがレイの肩の肉を喰いちぎっているのが見えた。


「…………………………。」

「………………ぐ………………!」

「具現化している!!!!!!??????」


範馬刃牙の極限まで磨き上げたリアルシャドーは、もはやその原型となった
シャドーボクシングの域をはるかに超え、魔法の境地に達していた。
そのイメージ力は自分の妄想を相手のデッドスポット(視覚の死角になる箇所)に落とし込み、
本来無いはずの物を共通認識として量子力学的に現実化するまでにいたっている。


―――人、それを妄想具現化能力者(ギガロマニアックス)と呼ぶ!



「くそぉ!!死んでたまるか!!喰らえ!!南斗究極奥義!!断己相殺拳!!」



◆ ◆ ◆

―――この映像を見た、妄想具現化能力者に詳しい蒼井セナ女史は後にこう語る

「……あ、今筋肉質な色男が光りながら跳んだ瞬間、カマキリに十字に切り裂かれましたね。」

「ちなみにこの現象を「リアルブート」と私たちは呼んでいます。」

「ええ、間違いありません。範馬刃牙は妄想具現化能力者(ギガロマニアックス)です。」

「無い物が有るように見えるだけに止まらず、最終的に本当は存在しないはずの物でも本物にする能力者。」

「しかしまさかディソードを手に入れずに格闘技を極めただけでこれができるようになるなんて……。」

「まさに『凄いね、人体☆』というやつですね。」

「あ、ちなみにディソードというのはギガロマニアックスたちが所持する「妄想の剣」でして。」

「そう、ちょうど貴方の後ろに立っている彼女が持っているような――。」






ぐしゃっ!!!






セナにインタビューしていたレポーターは、背後に立っていた小柄なツインテールの少女が振り下ろした
スノーボード型のディソードにより頭から真っ二つに両断され死亡した。

「やったーーー!ついにパロロワに初参戦なのらーーー☆」

「落ち着け!梢っ!ここは会場じゃない!今の私たちは回想みたいなものなんだ!」

「えー?こずぴぃも早く会場でドカバキグシャー!って
 参加者をブチ殺しまくりたいのらー☆」

「確かに!カオスヘッドはギャルゲロワ3rdが企画されるたびに
 毎回名前が挙がったりはするが未だに作品として参戦したことがない!
 しかし!だからといって!いきなり私達が飛び込むのは唐突過ぎる!」

「ぷー!セナしゃん頭が固いのらー☆」

「大丈夫だ!たとえ何があっても私は梢を見捨てたりなんかしない!」

「セナしゃん!」

がしっ!

二人は固く抱き合った。


◆ ◆ ◆

「あー?終わった?」

巨大カマキリがレイを捕食している間、暇だったのでアイアンマイケルを具現化して
トレーニングという名の一方的な暴力を働いていた刃牙はコキコキと首を鳴らした。

「親父のイメージも混ざっちまったから前出したやつより大分強いなお前。ん?」

カマキリが新しい獲物をみつけたかのようにこちらを見ている。

「ちぇっ。しょうがないな。」

そういって刃牙はまた新しい構えを取りだした。

自分以外の全てを見下す勇次郎と違い、「大自然」に対しては尊敬の念を持ち、
例え相手がゴキブリであってもその能力を高く評価する刃牙は、
その動物の能力に近づくためのイメージトレーニングを常日頃行っている。

そう、ゴキブリであっても。

「……脱力だ。液体のイメージ。……コンデンスミルクのような液体を。」

そうつぶやきながらだらりと全身の力を抜き、一瞬で、加速した。

―――ゴキブリダッシュ

ゴキブリの走りだした瞬間には既に最高速に達しているダッシュ力に目をつけた刃牙が
目をつけた刃牙が開発した加速法である。その瞬発力は時速270キロにも達する。




こうして、刃牙はその場から姿を消した。




【レイ@北斗の拳 死亡】



【A-4/1日目・早朝】
【範馬刃牙@グラップラー刃牙】
【状態】逃走中
【装備】
【持ち物】不明支給品2~6、基本支給品一式
【思考】
基本:範馬勇次郎を倒す
1:強者が集まるここでトレーニングすれば親父を超えられる!
2:シグナムの仇を討つ

【巨大カマキリ@グラップラー刃牙】
【状態】闘争本能剥き出し
【装備】
【持ち物】
【思考】
基本:食物連鎖の頂点に立つ
1:キシャァァァァァァァ!!!!

【備考】
※カオスヘッドは名作です。




人魚姫は泡になって 時系列順 人情
巨人討伐戦 投下順 人情
GAME START 範馬刃牙 師弟対決
GAME START レイ GAME OVER

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最終更新:2014年08月10日 23:00