リビングドール

リビングドール(LivingDoll)とは、同名の企業によって販売されている自律型愛玩人形である。
通常の人形と異なり、生命に限りなく近い機構を持つ。




概要

 リビングドール社(LivingDoll Inc.)は西暦*12026年に突然現れて、リビングドールの販売を始めた。主人からの命令と周囲の状況から自分で判断して行動し、上位モデルでは複雑な会話や家事もこなすことができる。
 AIを搭載した人型ロボットとみなすこともできるが、駆動原理や内部構造は完全に不明で、LD社は魔法で動くと公言している。"現代のロボット技術"でドールを再現するのは極めて困難とされ、リビングドールの販売はLD社の独占状態になっている。

 ドールは生物ではないから食事や排泄、あるいは代謝に伴う清掃の必要が無く、従来のペットに比べて手入れの手間がほとんどないが。動力源は後述の公式説明では"魔力"とされており、外部からの供給は必要ない。人間が取れるほぼ全ての行動に耐えることが可能。
 目的や容姿に応じて無数のモデルが用意されており、LD社の公式サイトからいつでも確認できる。ドールの外見は幼い少年少女から年配男女まで、体格も様々、さらにいわゆる獣人や魔人のようなモデルもある。ドールの知能に設定された性格も千差万別で、主人に従順なものの人気が高いが、高飛車や身勝手なのも地味な人気がある。

 価格は単純な下位モデルで数万円、最上位モデルでも数百万から数千万円程度であり、性能を考えると異常といえるほど安い。ドールの生産過程や素材などは完全に秘匿されており、企業としても不透明なこともあってLD社への不信感を持たせる原因となっている。
 ドールに人権が適用されないことを利用した売春のような商売も成り立っている。LD社はそのような用途を許可していない(保証外)が、人間に対して同じことをするのは違法であり、それらへの抑止効果もあるとして政府は黙認している。ドールは生物ではなくロボットに近いので人権や人の倫理観は適用されないとするのが一般論だが、知性を持つドールを乱雑に扱うべきではないとしてドールの人権を主張する団体もにわかに現れ始めている。



公式説明

 LD社はリビングドールについて以下のように説明している。
  • ドールは魔法で動きます。魔法の原動力となる魔力は、はじめはドールに蓄えられています。
  • ドールは魔力が尽きると死んでしまいます。死んだドールは取り扱い店にて回収も行っています。
  • ドールの魔力はドールの行動や思考で消費されますが、ドールの精神状態が良ければ自然に回復します。
  • ドールは物理的・精神的なストレス(外傷)によって著しく魔力を失い、そのぶん寿命も縮まります。
  • ドールを理想的な環境で飼った場合、耐用年数はおよそ100年となります。
  • ドールには「個性」があります。あなたとは気が合わないドールもいるかもしれません。
  • ドールと気が合わない場合、お買い求めのお店に返品するのもよいでしょう。全額返金は致しかねますのでご容赦ください。
  • ドールは食事を必要としません。あなたの愛がドールの糧です。ぜひ余すところなくかわいがってください。
これらは事実だが、比喩表現(特に魔法関連の語)なのか文字通りの意味なのかは依然として不明である。



販売形態

 リビングドールは主にペットショップで小売されている。卸値は高くないらしい。ドールは人型ペットとでもいうべき存在で、普及に伴って従来のペットの売上が落ち込むことを考慮したと言われ、ペットショップ業者からはおおむね好評である。ただし、送料などの関係で値段は高くなるが、LD社の公式サイトで直接通販も行っている。

 小売店ではドールは"休眠"状態で置かれている。たまに売り子としてドールが使われているが当然非売品である。購入する場合、まず代金を支払って所有権を受け取り、ドールの主人としての登録を行ったあとに、ドールを起動することで購入者が主人となる。返品する場合ドールは再び休眠状態にされるが、その際オーナーに関する記憶は全て失われるため、買戻しはできない。ドールはその場で起動して連れ帰ることもできるが、梱包して家まで持ち帰ったり郵送することもできる。
 小売店ごとに規模に応じて十数~数十種類のドールが展示されている。店によっては実物ではなく小型のフィギュアをサンプルとして展示している場合もある。その店にないモデルを買うことはもちろんできないが、頼めば取り寄せてくれる店もある。小さい店では休眠状態のドールを置くスペースが確保できないため、カタログを置いて取り寄せる販売形態を取っていることもある。

 身体能力や知能レベルに応じていくらかの品質ランクがある。最下位モデルでは簡単な会話と単純な動作しかできないが、最上位モデルでは人間と遜色ない、あるいはむしろより優れた動作を可能とする。いずれの場合も耐久性は非情に高く、人体では耐えられない高圧や衝撃を受けても完全には壊れない。損壊した箇所は放っておいても自然に治癒するが、そのぶん寿命は縮まる。同じ外見でも知能に応じて価格が変わるので、購入者は自分の財力を鑑みてランクを選択することになる。



モデル

ドールには無数のモデルが存在するが、大別して2種類のカテゴリが存在する。

オリジナル

 専属または外注のデザイナーによってドールのために新規にデザインされたモデル。歴史上の人物や神話上の存在をモチーフにしたものであってもデザインがオリジナルならオリジナルとして扱われる。レプリカとは逆にオリジナルモデルがフィクション作品のモデルとなったケースもある。
 だいたいのドールはこちらのタイプで、一部のモデルには妙に多くのファンがいてアイドルのように扱われていたりする。世の中には自分が好意を持った異性と似た外見のモデルをわざわざ探して購入する者もいる。

レプリカ

 コミックやアニメの登場人物、あるいは実在の人物を模したモデル。元ネタを踏襲したデザインという点でオリジナルとは区別される。当然ながら著作権や肖像権の問題があるため、権利者が許可した場合に限って制作される。著作権が切れたキャラクターや死後100年以上経過した人物などは無許可でレプリカにされることもある。
 "我々の世界"でいうキャラクターフィギュアの延長線としての扱いであり、いわゆるオタク層に絶大に受けている。ごくまれに元ネタの分からないキャラクターがレプリカとして売られており、都市伝説的な話もある。


最終更新:2015年07月16日 04:34

*1 「我々の世界」のそれとほぼ同一と見てよい。メタな言い方をするならフィクションの中の現代のこと。