≪像≫
【銘】 |
幸徳井佳乃(かでい よしの) |
【性】 |
女 |
【齢】 |
十七 |
【種】 |
人間 |
【職】 |
レイリスフィード学園高等部三年生 |
【躯】 |
身長百五十九/体重四十九 |
【人】 |
過去の経験から他人との肉体的接触を極端に忌避しており、特に初対面の人間には必ず警戒をもって接する。 他人とは常に一定の距離を置き、触られでもすると速攻で手が出る。その様子は、まるで警戒心の強い獣のようだ。 しかし最低限の礼儀は弁えており、こちらから他人に話しかけることは殆どないが、向こうから善意で近寄ってきた場合はそれなりに親しく話すよう心がけてはいる……ようだが、中々体がついてかない模様。 また、普段の口調こそ落ち着いているが、高名な家に生まれて周りに尽くされながら育った影響か、実はかなり高飛車な性格。プライドもかなり高く、挑発的な態度や上から目線な言動が多い。 自分の力にも大きな自信を持っており、普段のお嬢様じみた印象とは裏腹に喧嘩っ早くて戦闘好きな一面も。 若いながらも勝敗に関係なく相手の力に敬意を示す「武人」としての矜持も持っているため、もし彼女と仲良くなりたければ、まだるっこしい話し合いよりちゃっちゃと模擬戦でも仕掛けて「拳で語る」のが恐らく一番手っ取り早いだろう。
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≪姿≫
【白い肌とうっすら紅に染まった頬、短く切り揃えられた眉に枝垂れるように長い睫毛が特徴的な少女だ】
【やや長めの前髪、顎までで揃えられたもみ上げ、胸までの長さの後ろ髪と、そのすべてが一直線に揃えられた髪型】
【髪の色は漆で染めたような黒だが、よく見れば日に焼けてほんの少し赤紫色を差している】
【服装は黒いブレザーにチェック柄のプリーツスカート、赤いネクタイという学生服であり、どこかの女子高生であることが見て取れるだろう】
【黒い帯と黄色い帯紐で留めた、暗い紅色の布地に百合の花の刺繍の入った着物は、少ない装飾ながら見る者に雅やかな風情を与えるだろうか】
【もし彼女に近寄ったなら、そこに何か不思議な雰囲気を感じることが出来るかもしれない】
【ただそこ佇んでいるだけなのに、場の空気を塗り変える"神聖さ"のようなものが――――するりと、滲み出している。それはそんな印象か】
≪力≫
◆神気
神気とは、強い"聖"の属性を持つ神の力。
扱いとしては光属性の魔力と同じようなものだが、精神に作用するタイプの呪いや祟りに対しては耐性があり、力を防御に回せば効果軽減を行える。
ある程度集合させると硬度が発生し、これをぶつければ物理衝撃による攻撃が可能。
体表に纏わせて結界を作れば、鉄製の鎧程度の防御力も発揮される(防御中は神気を攻撃に使うことは出来ないが)。
この神気には、使う相手によって効果が変動する特性がある。
人間や動植物などの生物相手に使うと、治癒や身体機能活性化などの良い効果をもたらす。
治癒に能力をすべて割けばかなり傷の治りを早められるものの、安静状態と長い施術時間が前提なため、戦闘中には使用できない。
出来たとしてもせいぜい軽い止血と痛み止め程度。
逆に、『種族として闇の属性を持つ妖魔』に対しては浄化作用が発生。対象となるのは妖怪、吸血鬼、幽霊、ゾンビ(ミイラ)、悪魔など。
これらに神気をぶつけると当たった部位が場所が灼け、強い痛みと火傷のような追加ダメージが発生。
ただし、特定種族に対する完全優位性はないが、代わりに多くの種族に対して効くという特徴を持つのが神気である。
そのため、吸血鬼に対する太陽の光のような「一発喰らっただけで致命的」というまでの力はなく、効果はあくまでダメージの増加に留まる。
攻撃時の作用をまとめると、
生物相手なら『物理衝撃-治癒作用(痛覚軽減)』となりダメージが落ち、妖魔が相手なら『物理衝撃+浄化作用(激痛&火傷)』となってダメージ上昇、
といった感じ。例外として、サイボーグなどの機械生物には物理衝撃分のダメージしかない。
また、神気が特別な効果を発揮するのは「相手の肉体」だけであり、相手の「力」そのものに対しては単純に拮抗・反発する。
この「力」とは魔力や気などのことだが、例えその力の属性が闇や呪い、邪気だったとしても同様。優位性は発揮されず、ただ物量や威力の高いほうが勝つ。
攻撃成功時にダメージがプラスあるいはマイナスされるというだけで、敵の戦闘能力そのものに対して優位に立てるわけではない、ということである。
ただし、稀に存在する「呪いや闇そのものが自我を持った存在」に対しては、妖魔に使った場合と同じ浄化効果を発揮できる。
どうやら「自我があるか否か」がキーになっているらしく、こういったものは「力」ではなく幽霊や妖怪に近いカテゴリとして扱われるようだ。
最後にいくつか補足すると、混血の場合は妖魔でない血の割合だけ浄化作用が軽減。
獣人などの亜人、単に闇属性や呪いを扱えるというだけの人間(獣)なら浄化対象にはならず、治癒作用の方が発生する。
魔物や魔獣の場合も同様で、悪魔などの血が入っていたりしなければ、例えそれがどんな異形であっても治癒作用が働く。
◇身体能力
身体機能活性化の効果を持つ神気を十数年間にわたって使用していることで、佳乃の身体能力は常人を超えて強化されている。
あくまで副次的な効果であり、実際は常人を「若干」超えているという程度の出力でしかないものの、全体の性能が上がることである程度無理は利くようになっている。
――しかし、真に特筆すべきはそちらではなく、同じく神気の身体機能活性化効果によって得られる
もうひとつの力の方だろう。
その身体能力と合わさった薙刀使いとしての技量も中々のものだが、やはり若さ故か、達人級の腕前ではない。
≪技≫
◆白刃龍紋流
自身の「気」を練磨するとともに、それを通して「神気」の操作をより効果的に行うことを目的とした討魔の武術。
陰陽術と薙刀術が組み合わさった体系を取り、佳乃もまた陰陽術による神気の制御と薙刀による物理攻撃の二種類の攻撃を扱うことが出来る。
特に、この流派には
零~拾の数字になぞらえた十二の奥義が伝わっており、戦闘中はこれらを駆使して戦うことが多い。
この奥義はそれぞれ神気の使用方法のバリエーションとなっており、切れ味の強化から結界、式神の使役など、内容は非常に多岐にわたる。
基本的に
奥義の同時使用は出来ないが、組み合わせによっては相性がいいものがあり、二つの奥義を
〝襲(かさ)ねて打つ〟合体技も存在するようだ。
より詳しい沿革や奥義の性質などは
こちらのページへ。
◇白刃龍紋流・零の太刀――『零露』
神気の基本能力である「身体機能活性化」のさらに一歩先、「精神を活性化する」という効果をもたらすとされる、「零」の名を冠する白刃龍紋流原初の奥義。
その効果は「反射神経の強化」。奥義の発動によって常人を遥かに凌ぐ超反射能力を発現させられる。
これにより、敵の行動にいち早く反応して瞬時での対応が可能に。防御や回避における「初動」を大幅に早めることができる。
根本的に「反射」なので外部刺激を受けてからでしか発動せず、あまり攻撃の役には立たないが、それでも十分強力な奥義だといえるだろう。
しかし逆に、反射神経の加速によって「認識」から「行動」までの時間が速くなりすぎ、そこに「判断」を押し挟む余裕がないという欠点もある。
高速の攻撃か不意打ちの攻撃を受けるとこの現象は頻発し、冷静に考えれば動くべきでない時でも、考えるより先に勝手に体を動かしてしまう。
つまりは、フェイントを交えた攻撃にかなり引っかかりやすいということである。
それ故、本来であれば使いどころを弁えていくべきなのだが…………。
佳乃はとある事情でこの反射強化状態を自力で解除できないため、これらの欠点も常時むき出しの状態にある。
≪装≫
◆薙刀『地幻』
全長六尺(1.8m)程度の美麗な薙刀。
浅い反りと波打つ刃紋、散りばめられた金剛石の破片が輝く玉鋼製の刀身に、赤い縄による意匠と金箔で描かれた紋様を持つ柄で構成される。
柄に描かれた紋様と刀身の金剛石は陰陽術によるもので、これらを媒介にして神気の通りやすさを格段に上昇させている。
これによって拳銃程度ならものともしない強度を得ると同時、佳乃の神気操作をサポートする、いわば指揮棒のような役目を果たしている。
◆言符
神気を自らの気と混ぜ込んで墨に浸透させ、和紙へ文字と紋様して書き込むことで特殊な効果を持たせた符。平時は各種二枚ほど常備している。
符の発動方法はごく単純で、口元に人差し指と中指を合わせて持ってくるだけの簡単な印と掛け声をキーとして効果を発現する。
この掛け声は符ごとに異なり、現象を召喚するものと物体に干渉するものは「発(ハツ)」、固形物を召喚するものは「招(ショウ)」の掛け声が必要。
「火」や「雷」など、書かれている漢字によってその効果は様々だが、破壊されたり落書きされたりして書かれたものが意味を無くすと無力化してしまう。
紙自体は見た目も強度も単なる和紙に過ぎないが、磁力のような不可視の力を帯びており、材質に関わらず貼り付けることが可能である。
ただ、貼り付く力自体は一般的なマグネット程度で、魔力や気などの何らかの力が通っている場合などはうまく貼り付けられないことも。
ただし、術式としては簡易的な部類なのでそれほど強大な力は発揮できず、神気の効果の薄い人間や動物に対する補助用として使われることが多い。
その代わり、本来白刃龍紋流には五行属性の符の作成方法しか伝わっていなかったところを、本人の努力でオリジナルの符が多数開発されている。
種類も効果も多岐に渡り、非常に多くの場面で使っていける他、符自体に力を篭めておく形式なので
佳乃以外の人間にも使用可能である。
詳しい種類などは
こちらのページへ。
◇棒手裏剣
貼り付く力はあっても飛翔する力の無い言符を敵にぶつけるための、補助道具の補助道具。単体として使うより刀身に言符を巻きつけて使われることが多い。
スカート下の太股にホルスターが取り付けられており、平時はそこに左右十本ずつ程度保持している。
長さは15cmほど、太さは鉛筆より一回り大きい程度。重さも50g程度なのでそれほど威力は出ず、飛距離と投擲のし易さに重点が置かれている。
……ただ、今のところ本人の投擲技術は低く、あまり狙ったとおりには飛ばない。目下練習中。
≪概≫
――櫻の国の奥地に、辰羽(たつばね)山という霊山がある。
太古の昔、"聖"を司る龍神が空より出でてこの地で眠りについたとされている場所で、そこにある小さな村落「白座(しらくら)村」が佳乃の出身地。
辰羽山は神が発する膨大な力が満ちるパワースポットであると同時に、それを目当として妖魔の類がこぞって押し寄せる魔窟でもある。
かつて龍神と契約を結んだ者達の末裔である村民は、龍神より授かった聖なる力「神気」と共に、そういった妖魔から山を守る使命を代々受け継いできた。
その中でも直接龍神と契約した「白刃龍紋流」の開祖の直系である幸徳井家は、代々巫女・神官の家柄として村を治め、同時に妖怪狩りの主要戦力として第一線で活躍してきた歴史を持つ。
佳乃はその幸徳井家の第十三代目当主であり、同時に隔世遺伝によって、開祖に近い類い希な才能を持つ希代の巫女だった。
薙刀の腕も親譲り、神気を操る力は歴代でも一、二を争うほど。さらに、数世代ぶりに龍神の声を聞く力も持っていたとあって、彼女はたいそう重宝された。
……だが、十一歳の冬。佳乃はとある出来事がきっかけで家族や村民と決定的に破局し、家出同然に村を出た。それ以降、一度も村に戻ってはいない。
現在は、一緒に村を出た
幼馴染の祖母を頼って居候生活中。その祖母のツテと好意で、中学からは
レイリスフィード学園という学校に通わせてもらっている。
ただし、
家族との破局がきっかけで陥ったある種の対人恐怖症のせいで交友関係は非常に希薄。元々の高飛車で近寄りがたい雰囲気や、最近学園の教育方針に背いて
天下一武道会へ参加したこともあって、周囲からは学内でもトップクラスの
〝不良〟として扱われ、嫌悪と忌避、時々憧憬の対象になっているようだ。
だが私生活では、幼い頃から世話をされる側だったからか家事スキルが軒並み壊滅的、長年の田舎生活のせいで機械にも弱いなど、抜けた面も多い。
コミュニケーション能力が欠如しているのでバイトも出来ず、それでも自警団の依頼などを通じて学費や生活費はちょくちょく還元しているものの、普段の衣食住を全てまかなってくれている祖母にはやはり頭が上がらないらしい。
また、最近になって佳乃の中に時折〝別の人格〟が見られるようになった。詳しくは以下に記載。
≪関≫
【銘】 |
天限(てんげん) |
【性】 |
女(?) |
【齢】 |
数千年以上 |
【種】 |
〝龍神〟 |
【躯】 |
不明 |
【人】 |
佳乃に神気の力を与えている張本人であり、辰羽山に眠る龍神その人。司る属性は聖、つまりは癒しの神である。 人間には非常に好意的であり、世界や文化には大変な興味を示す。神として人を愛する想いも深く、特に佳乃の事は本当の娘のように可愛がっており、佳乃にとってももう一人の母親のような存在になっている。 長い間眠っていた上、たまに起きても辰羽山の祭壇から全く動かずにいたせいでかなりの世間知らずであり、箱入りのお嬢様のようなお茶目な性格をしているものの……同時に神としての厳粛な面も持ち合わせており、自身の持つ強大な力による影響を危惧してか人間世界への大きな干渉は決してしようとしない。 これは例え佳乃が窮地に陥ったとしても同じであり、余程の異常事態でない限りはただ黙って見ているだけである。 |
◆概要
佳乃に力を与えている龍神。本体はとうに力を失って眠りについており、巫女である佳乃の体を介してしか現世に顕現できない状態である。
力の欠損ゆえに不定期に眠りについてしまう不安定な存在であるが……
西方に強い力の目覚めを感じ取り、久方ぶりにはっきりと目が覚めたようだ。
現在は二重人格のような状態で佳乃の体に同居しており、たまに佳乃に頼んでは体を借りて現世を楽しんでいるらしい。
――――風の国にて佳乃と他数名の能力者たちが
ガルマ=ハド=ラジャルードと戦った際、彼の理を逸した力に反応して具現。
身内の恥は身内で拭う、ということなのだろう。白い呪刻をガルマの体に刻み付けて彼の力を束縛し、能力者たちが攻撃する隙を作った。
以降も、あの戦神が起こす事件に限っては人間に協力すると宣言している。
≪録≫
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二千十三年 二月 |
二月十八日
「……楽勝だったわね。たまたま体調が悪くて逃がしてしまったけれど、次は無いわ」
帰宅中、偶然にも妖魔の気配を察知。退治するためにモルド通りへ押し入り、 自称「超強ェ」悪魔と彼の従える魔物達と交戦。
神気の力によって優位に立つが、最終的には自身も手痛いしっぺ返しを貰って逃走を許す。力は正反対だが、意地っ張りで負けず嫌いなところはよく似ていた。
二月二十日
「あれだけの剣士とやり合えるなんて……楽しみね」
成績不振を理由に家族から大会出場を禁止され、ふてくされて近場の公園まで散歩に出かけると、そこで 櫛灘自斎と名乗る剣士と遭遇。
互いに相手の武人としての実力を見込み、力のぶつけ合いを望むも、自斎が大会を控えていたため戦闘には至らず。再戦の誓いを立てて別れた。
二月二十四日
「……次はいつ、からかいに……いえ、遊びに行ってあげましょうか」
またも家に居辛くなって部屋着のまま散歩に出たところ、郊外で寂れた教会を発見。鳴り響くアリアに惹かれて中に入ると、 カログリアとの衝撃的な出会いを果たす。
人間不信の佳乃にしてはかなり珍しいことに、初対面の相手に自身の過去の一部を話した。それはカログリアを立派な修道女と認めたからこその、懺悔だったのだろう。
あるいは、元巫女の彼女に対して修道女という同じような職だったから共感したとか、お人好しな上にどこか抜けているその性格が話し相手として いじめがいがある気楽だったとか、そういう理由もあっただろうか。
とにかく、カログリアに散々からかいを入れて家路につく。なんだかんだで話が長引いて帰宅が遅くなり、その後家族にこってり絞られた。
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二千十三年 三月 |
三月一日
「……目立つことぐらいわかってるわ。余計なお世話よ」
深夜に公園で瞑想修行を行っていたところ、神気の力に引かれて現れた エルフェスと出会う。
最初は警戒したものの、退魔の力を持つ銀色のナイフを見せてもらい、神気以外の"聖”の力に初めて触れる。
……が、佳乃がいつもの調子で挑発をふっかけ、同じ退魔の力を持つものとしてちょっとした意地の張り合いに発展。
最終的には武器自慢として『地幻』を取り出したところで場が収まり、佳乃もそれで冷静になって少しだけ反省した模様。
最後に名前を教えあって別れた。
三月三日
「"甘ちゃん"……か……」
いつもの公園で手作りのカカシを使った投擲練習を行おうとしていたところ、 ルシオ=ガーランドルフに話しかけられる。
軟派者のような態度でいて暗い現実を知っている彼からすると、佳乃は"甘ちゃん"だった。彼の言葉で、佳乃も自分が甘い世界で生きてきた子供だと痛感させられる。
それでも自分の強さを信じて正々堂々"甘ちゃん"を貫く信念を見せた佳乃を、ルシオは涙すら流して笑う。その涙の意味を、佳乃は感じ取れただろうか……。
彼が ある組織の一員であることは、ついぞ佳乃が知ることは無かった。
なお彼の前で行った投擲練習は 一回完璧に失敗してから見事成功し、 誤魔化す為に言符まで持ち出してカカシの首が飛ぶほどの威力を見せつけた。
三月五日
「……『日常の脅威』なんて、そんなものはもう全く気にしていないわ。……本当に。全然。一ミリも」
路地裏にて殺人犯と思しき男、 只野常日と遭遇。差し出された名刺により、彼がカノッサ機関員だと知る。
そのまま戦闘に発展するも、彼の使う「日常の脅威」という不可思議な能力に終始翻弄されっぱなしの状態に。
大ダメージを追った佳乃に止めを刺さんと、常日はその能力で「酔っ払いの運転する暴走車」を呼び込むが……。
そこで、常日の能力や戦い方にフラストレーションを溜めていた佳乃の怒りが爆発。目には目をとばかりに自身もやや小賢しい手に出る。
狭い路地裏に突っ込む暴走車を前に、言符と奥義を併用した罠で常日を地面に縛り付け、そのまま車に轢かせて自滅させた。
くしゃみから始まって、野球ボール、肉離れ、壁の崩落、極め付けに飲酒運転と、日常に潜む脅威を立て続けに喰らってその恐怖を存分に味わった佳乃。
『日常の脅威』は彼女の"反射"に深く刻まれ、本人の言葉とは裏腹に、今でもそういったものには思いっきり反応してしまうらしい……。
三月十日
「…………色々なことが、ありすぎたわね」
『地幻』の整備のために、しぶしぶながらかつて飛び出した故郷・櫻の国へ一時帰国していた佳乃。
その帰り道、偶然にも荒廃した寺院のような家屋を発見する。ただならぬ雰囲気に内部へ入って調べていると、裏手の崖で セシルと出会う。
寺院から鳴り響く不審な物音を調べるため、彼と共に奥座敷へ侵入。謎の木乃伊を使って攻撃してきた 書生風の男と、既に彼と戦っていたらしい 神鷹空人を発見。
そして同時に、自分達と同じく物音を聞きつけてやってきた 黒服姿の男、 リロード・ザ・マジシャンとも合流する。
……しかし彼らと言葉を交わす暇も無く、佳乃はそこで、一時とはいえ仲間と思っていたセシルの裏切りに合う。
彼がその無表情の裏に持っていた絶望と諦観に、かつて自分を裏切り放り捨てた家族の姿を重ねて――――佳乃は我を忘れるほどの激昂を見せる。
その激情でもってセシルを打ち据え、かつて感じた悲しみと怒りを彼にぶつけた佳乃だが、セシルの「お師匠サマ」らしき レイシーの登場によって戦闘は中断。
セシルとのぶつかり合いにわだかまりを残しつつも、その場に残されたリロードと空人と自己紹介がてら軽い会話を交わし、複雑な思いを抱えたまま帰宅した。
三月十六日
「後味の悪い…………幕引きだったわ」
生活費のために適当な依頼を探していると、櫻の国の湾岸地域にある周防海にて、カノッサ機関とも関連を持つ海賊「荒覇吐水軍」と戦う有志を集っていると知る。
複雑な思いを残してきた故郷の中で行われるというそれにしばらく悩んだが、結局気になって参戦することに。
自身と同じ薙刀使いの 小野小太郎を隊長とした櫻の国自警団・周防海支部と、雇われの外部戦力であるヴェンツェル傭兵団との合同戦線に加わる。
また、傭兵団団長の少女 ヴェンツェルの知り合いらしき謎の女性、 ウェル子とも共に戦うことになるのだが……。
佳乃は自身と同じ有志の エルフェス、 バンチョー・スズキと共にボートへ乗り込み、海賊の構成員でありカノッサ機関ナンバーズでもある三名と対峙する。
まず 不破雷道をバンチョーと小太郎と共に追い詰めるも、寸での所で「荒覇吐水軍」の頭領・ 荒覇吐播磨とその部下・ 千日紅ひゆと合流されてしまう。
こちらも先に彼らと交戦していたエルフェス・ウェル子と合流して戦闘を続行、窮地をウェル子に救われる危うい場面もありつつも、彼らを撃退することに成功した。
……だが、最後に明かされた この戦いの真実。敵に命を助けられたことを知った佳乃は、自身を救った"水先案内人"にやり切れない思いを抱くこととなった。
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二千十三年 四~六月 |
四月六日
「結局、散々振り回されたわね…………。やれやれよ、まったく」
櫻の国・咎送島の機密治安維持機関、 枯れ彼岸。 カエルレウム・ナーウィスの第二の標的となったそこに、佳乃は向かった。
情報科学棟内の施設、情報集積端末室の防衛を任された佳乃は、そこで流浪人のような男・ 吟醸と、先の事件で命を助けられた ウェル子と相対する。
居合の絶技を操る吟醸と佳乃が火花を散らしている最中、何故かその戦いに関知しようとしないウェル子。
彼女への複雑な執着を捨てきれない佳乃は、挑発するような言葉に激情を覚え、それに任せて彼女へ踊りかかるが…………。
防衛任務のことも忘れて個人の確執に拘った佳乃を、戦闘狂としての一面を持つ吟醸は「中途半端だ」と断ずる。
皮肉にも敵である筈の彼の言葉で正気に戻った佳乃は、ウェル子への執着を捨て、再び吟醸と相対することを選んだ。
結局吟醸との決着はお預けとなってしまったが、戦いに傾倒する彼が襲撃の鍵となるアイテムを放棄したことで、結果的に防衛任務には成功。
ウェル子への執着…………敵として刃を向けるべきなのか、それとも命を救われた礼をすべきなのか。彼女は"悪"なのか、"善"なのか。
そんな小さな尺度では動かぬ"水先案内人"に、一時でもそんな下らない迷いを抱いていたことは、佳乃の心の中に消えない形で残った。
四月十八日
「助けたのは私なのに、なんだか逆に借りが出来てしまった気がするわ…………」
下校中、偶然女性の悲鳴を聞きつけて路地裏に急行。婦女暴行を働く炎使いの暴漢に、思うさまお灸を据える。
そうして助けた少女は、不思議な裁縫箱を持つ糸使いの少女・ 神谷衣織だった。
他人を寄せ付けない自分とは正反対の、元気で明るい雰囲気を衣織。それに好感を覚えた佳乃は、彼女の好奇心に応えて自分のことを語る。
そして別れ際――――助けてくれたお礼として、美麗な紅色の浴衣を貰った。
その場で浴衣を作ってしまう衣織の裁縫技術に驚愕し、ついでに浴衣という至極自分好みのものを貰った嬉しさもあってか、佳乃は逆に戸惑ってしまう。
結局最後まで素直になれなかった佳乃だが、かろうじて「ありがとう」とだけは告げて。彼女なりのぶっきらぼうな思いは、衣織にもきっと伝わったのだろう。
五月六日
「ええっと、次のページはここを…………ああもう、また表紙に戻ったわ!壊れてるんじゃないの!?」
人を寄せ付けない性格が一部の同級生の不興を買って後を尾けられ、いつもの公園で複数人の不良男子に取り囲まれる佳乃。
ひとりひとりが固有の能力を持っている彼らに少し手を焼くが、最後には場数の差もあってか無傷で撃退。
と、その戦闘が呼び水となったか、古今東西さまざまな能力を研究しているという氷の国の大学生・ ピオネルスカヤが現れる。
戦闘後で気が立っていた佳乃ではあったが、好奇心を隠さないピオネルの様子に毒気を抜かれ、警戒を解く。
元々、自分のことを話す……というか自慢するのが嫌いではないこともあって、彼女に"神気"を操る自身の能力を伝えた。
代価として彼女の出身地である氷の国の話を聞き、別れ際に能力研究に関する多数の文献が入ったタブレットを受け取る。
見たことも聞いたことも無い異国の話は、佳乃の好奇心も大きく揺さぶったようだ。
……余談だが、機械に弱い佳乃が貰ったタブレット内の文献を読めるようになるまでには結構な時間を要した模様。
五月十八日
「…………もっと精進しないといけないわね」
廃教会に迷い込んだ佳乃は、そこで黒装束をまとった謎の男と出会う。彼の周囲には、人間の成れの果てらしきモノが大量に転がっていた。
その男を問い詰めると、男はそれらを生贄として死者を蘇生させるべく、佳乃の目の前で儀式を開始。
力づくにでも止めようとする佳乃だが、気絶させるために突き出した薙刀を無理やり掴まれ、男はそのまま自害してしまう。
彼の血でもって儀式は完成し――――現れたのは、自らを「死に遅れた存在」と自称する ハリードなる女性。
どんな邪悪なモノが現れるかと覚悟していただけに、女性の悪意の欠片もないあっけらかんとした態度に佳乃は毒気を抜かれる。
女性があまり自分のことを話したがらない上、自らの失態が元で目の前で人に死なれるというショックな出来事もあったため、
その場は一旦解散ということに。散っていった死者を弔ってから、沈痛な面持ちで帰宅した。
五月二十一日
「…………〝死ねない〟っていうのは、どういう気分なのかしらね…………」
以前 衣織にもらった和服を着て散歩していたところ、〝邪〟の気配を察知。街の郊外にある廃墟へ急行する。
しかしそこに居たのは異形や人外ではなく、悪魔を召喚し使役する玉藻一族の陰陽師・ 玉藻狂死郎だった。
初めて出会う退魔師としての同業者に大いに興味をそそられ、二人はそのまましばし話し込む。
不思議と息が合い、お互いの流派のことから抱えている事情まで、世間知らずの佳乃にとって貴重な交流となった。
…………かつて妖魔と人との溝に苦しんだ佳乃にとって、悪魔と人とを繋ぐ〝調停師〟だという彼の存在は、小さな救いとなっただろう。
最後に狂四郎から、“玉藻流退魔術・悪滅”の百ある術式の一つ『沖津鏡』の札を受け取り、こちらも代わりに〝木符〟を三枚譲り渡す。
退魔師の〝先輩〟として様々な意見をくれた彼との再会を願いながら、佳乃は帰路に就くのだった。
六月七日
「手強い相手だったけれど…………面白い子と、出会えたかもしれないわね」
六罪王リリアの友人を名乗るカノッサ機関所属の二人組が、突如水の国を襲撃する。
その場に居合わせた佳乃は、駆けつけた 八攫柊と共にケンタウロスの半魔・ キルフェ・ド・ゴールと戦闘。
キルフェは魔術を使って強固な鎧を纏った二足歩行の形態へと進化し、〝与えた衝撃を氷に変換する〟という強力な能力でこちらを苦しめる。
鎧を抜いて攻撃する手立てを持ってはいるが、リスクが大きい――――そんな佳乃に一撃を託し、柊は身を挺してキルフェの動きを止める。
最後に柊が入れた一太刀も後押しとなって、佳乃は見事キルフェへ〝神気〟の霊威を届かせることに成功。これを撃退した。
方や薙刀使いの退魔師、方や信念の刃を振り翳す剣士。苛烈に戦場を駆けた二人の少女は、今宵少しだけわかりあった。
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二千十三年 十~十一月 |
十月五日
「一回戦から、なかなかの強敵だったわ…………」
秋も深まるこの時期――――国中大いに賑わうは、来たる 第3回水の国天下一武道会。
前回、成績不振という馬鹿みたいな (みたいではなく実際に馬鹿)理由で出場を断念した苦い思いを胸に、ついに佳乃はその舞台に立つ。
その第一回戦、佳乃の対戦相手は土の魔術師 シーナ。ゴーレムを纏って戦う豪快な戦法に、佳乃も苦戦を強いられる。
しかし佳乃にとって、心躍る戦場での逆境など、かえって士気を引き上げる要因にしかならず。全力全開、全身全霊で挑み掛かった。
最終局面、決めの一撃を凌がれ絶体絶命のピンチに陥る佳乃だが、あくまで勝ちに拘る絡め手によってシーナの不意を突くことに成功。
薙刀使いとして、そして退魔師としての能力をすべて出し切り、ギリギリのところで見事勝利を掴み取った。
十月六日
「まったく、その歳で大層な夢ね。…………まあ、応援しないでも、ないけれど」
一回戦の余韻も残る第二回戦。佳乃の前に立ち塞がるは、 バニセイドという名の銃剣を携える〝大人〟。
銃剣という武器に注意を払う佳乃だが、しかしバニセイドの真の手はこちらの度肝を抜いてくる奇抜で多様な能力だった。
いくつもの能力を使い分ける戦法に翻弄され、『零露』の弱点すら晒してしまう佳乃だが、しかし今回は〝神気〟が良いように働いた。
〝神気〟の浄化効果が何らかの形で働いたか、能力を一時喪失したバニセイドへ、佳乃は機を逃さず渾身の一撃を叩き込む。
試合中に交わした問答――――〝子供〟である佳乃へ〝大人〟として放たれたバニセイドからの忠告は、佳乃の心の中へ深く染み渡って。
最後にバニセイドが語った「将来の夢」。それを佳乃が忘れることは、今日の勝利ともども、一生忘れることはないのだろう。
十月十八日
「悔しいわ。悔しい、けれど…………楽しかった、わね。とっても…………」
第三回戦の相手は、かつて廃墟で言葉を交わした男。退魔士としての先輩にあたる、 玉藻狂死郎との一騎打ちと相成った。
双剣を携える狂死郎と、薙刀を携える佳乃。玉藻流の奥義を振り翳す〝先輩〟と、白刃龍紋流の奥義を振り翳す〝後輩〟。
勝負は武人としての力と退魔士としての力のすべてを結集した、奥義と奥義をぶつけ合う激戦にもつれ込んで行く。
トラップやフェイントを駆使した老練な絡め手で挑んでくる狂死郎に、佳乃はかつてない苦戦を強いられるが、こちらも正々堂々の信条を武器に善戦。
そして勝負も窮まった最終局面、佳乃はかつて狂死郎自身から貰い受けた『沖津神』の術式を、最後の切り札として使用する。
限界ギリギリのダメージを負いながらも、それによって見事狂死郎の決め手を凌ぎ、勝利一歩手前というところまで追い詰めるも――――。
狂死郎の操る〝邪〟の多様性が、最後は佳乃の〝聖〟を上回った。渾身の一撃を回避された佳乃の体は限界を迎え、戦闘不能に。
刃を交え、狂死郎と言葉よりも深い語り合いを終えた佳乃は……負けはしたが、大きな〝温かさ〟を得ることが出来たのだった。
十一月二十二日
「別に気負うことなんて、無かったわね…………ふふっ」
得る物の多かった天下一武道会。しかしその代償に元々無かった居場所を更に無くしてしまい、佳乃は息の詰まる学園生活を送っていた。
それでへこたれるような可愛げのある性格ではないが、少しばかり疲れを感じた佳乃は、ふともう一度 カログリアの元へ行ってみようと思い立つ。
友達の所へ遊びに行くというだけの、何とも微笑ましい思い付きだったが…………人付き合いに慣れていない佳乃は、教会の扉を開ける直前で急に緊張し始めてしまい、久々に会う友人にどんな顔で会えばいいのか決めかねてうろうろと歩き回っていた。
西洋風の教会の前を和服で歩き回る、完全な不審者と化した佳乃。そこを、同じくカログリアの元を尋ねていたらしい 修道服の女性が見咎める。
事情を話して誤解は解けたが、聖職者とは思えない人を喰った性格の彼女に散々からかわれ、元々の短気な性格もあって佳乃は激怒。
その女性に襲い掛かる一歩手前まで行くものの、そこでカログリアが仲裁に入ったことで、ようやく事態は当初の目的へと立ち返ることとなった。
結果的に女性の相手をしたのが良い方向に働き、緊張もすっかりどこかへ吹き飛んだ佳乃は、その後自然にカログリアと話が出来たようだ。
二人はいかにも友達らしく、互いの近況や愚痴などをお互いに話し合って――――また気軽に会いに来ると珍しく笑って告げ、佳乃は帰宅した。
十一月三十日
「〝GIFT〟…………奴らは、一体どこまで…………?」
母校である レイリスフィード学園に GIFTの手が伸びている疑惑が浮上。それに関して、水の国自警団主導で極秘調査が行われる運びとなった。
その疑惑のひとつを直接発見した人間であることと、厄介事は厄介者にということで、学内有数の不良である佳乃が調査隊の案内役に抜擢される。
来たる調査日、佳乃は 三雲明音、 暁星蛍の二名と共に《部室棟》へと潜入し、内部の調査を行うのだが……。詳しくは こちら。
調査を通して佳乃が知ったのは、暗い現実と重たい謎のみ。しかし共に修羅場を潜った明音と蛍との出会いは、いつかその闇を打ち祓うための武器となるのだと、そう信じていい筈だ――――。
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二千十三年 十二月 ~ 二千十四年 二月 |
十二月一日
「…………黒歴史、だわ…………」
闇色の現状を知った、調査当日。学園祭の最終日に当たるこの日、佳乃は前日のことを引きずってすっかり気を抜いていたのだが……。
その隙を突かれ、佳乃はクラスメイトの女子に騙されて、着替え中に制服をドレスとすり替えられてしまう。
最初はイジメの類かと疑ったものの、クラスメイトが自分をミスコンに出場させようとしていることを知り、佳乃はたまらず逃走。
強制的に袖を通す羽目になったドレスを着たまま、追っ手から逃げ回っていたところ……偶然学園祭に来ていた 高野正和とぶつかってしまう。
その縁で一時行動を共にした二人は、学校生活の話やお互いの故郷である櫻の国の話を交わす。佳乃は不思議と、高野の言葉に聞き入ってしまった。
暫くして高野と別れた後、そうして会話に集中するあまり追っ手の事をすっかり失念してしまった佳乃は、十数名の女子生徒に包囲されて――――。
……その後、彼女が本当にミスコンに出たのか。そしてそこで、いかなる結果を残したのか。佳乃は決して、それについて語ろうとはしないのだった。
十二月二十七日
「……………………嫌な予感が、するわね」
櫻の国の一角、袈裟峠という場所にて〝橋姫〟なる妖怪が現れ、近隣の住民を脅かしているという。
それを聞きつけた佳乃は、故郷へ戻るのは気が引けたものの…………それ以上にその妖怪の事が気になり、依頼を受託することに。
同じく依頼を受けた 篝 香弥奈、 ライラ=フェルンストレーム、 天鬼ちゆり、 ベティー・ザ・ブラインドの四名と共に、佳乃は峠の屋敷へ踏み入る。
橋姫は佳乃が今まで戦ってきた中でも間違いなく最上位クラスの力を振るい、五体一という戦況を物ともせず佳乃たちを苦戦させるが…………。
先発隊として屋敷へ踏み入っていた フレデリック=シャリエール率いるゼン=カイマ第三騎士団が介入もあり、力の均衡は崩れる。本来の〝鬼〟の姿を見せ全力で襲い来る橋姫に対し、佳乃や仲間達もまた全力をぶつけて、最後は見事彼女を撤退に追い込んだ。
だが………… 長尾銀狼がフレデリックから身を挺して橋姫を庇い負傷、橋姫は何も告げることなく消えて。フレデリックの言葉は、あまりにも冷たい。
今回の事が果たして本当に正しい行いであったのか確かめるため、佳乃は後日 知り合い経由で ミドナに接触し、情報交換を行った。
…………彼女がまさかあんな性格とは思わず、相当酷い目にあったらしいが。
一月一日
「――――――………………」
一月一日、元旦――――この日は、幸徳井佳乃の十六歳の誕生日だった。
祝ってくれる友達も居ない佳乃は、今年もまた 今の家族と共に初詣に向かい、慎ましやかに誕生日を過ごす筈だったが…………。
初詣の帰り道、和装のまま夜道を散歩していたところ、かつてあの〝 枯れ彼岸〟にて戦った人斬り・ 吟醸と再会する。
ただ強者との戦いだけを追求する鬼の様な男と、まともに話など出来る筈もない。両者は再会を祝う代わり、互いの激しく刃をぶつけ合う。
単純な〝武〟なら向こうが上、しかし佳乃は薙刀のみならず〝神気〟も全力で振るうことで、彼の絶技にどうにか喰らい付いていく。
…………だが人殺しも厭わぬ修羅と、この期に及んで血を被ることを恐れる子供では、技量以前に精神的に分が悪すぎた。
果たしてこれは何の因果か。佳乃は他ならぬ誕生日の当日に〝人斬り〟という邪道を垣間見、吟醸の言葉をその心身に深く深く刻みつける結果となった。
二月二十六日
「また、遊びに行っても…………いい、わよね」
山奥の神社の境内にて、佳乃はかつて助けた 神谷衣織とその母、 神谷皐月と出会う。
ただ、運が良かったのか悪かったのか、その時の佳乃は――――つい最近目覚めたばかりの 天限に体を貸している状態であった。
奔放な振る舞いで親子を驚かせた天限だったが、異様な雰囲気を撒き散らす自分を見ても怯えない親子の親切に触れ、夕飯をご馳走になることに。
〝神〟として、そして佳乃の〝母〟として、天限は溜め込んでいたものを二人に打ち明け、佳乃をよろしく頼むと二人に頭を下げる。
その直後、一連の記憶を保ったまま佳乃本人の意識が目覚めて……戸惑いながらも、佳乃は衣織と皐月の心からの優しさを受け入れた。
人生初めての〝頼れる大人〟と大事な友達。二つの掛け替えのないものを、この日佳乃は同時に得ることとなった――――。
二月二十八日
「――――あの悪魔、一体……………」
この日、『不落陵墓リジル』にて六罪王 エインセル・〝アンバライト〟・ゼラズニイが起こしたテロの鎮圧任務に向かった佳乃。
そこで――――およそ一年ぶりに、因縁の相手である 邪禍と対峙。〝死の路〟と呼ばれる巨大な階段にて激闘が開始された。
自身の力のみならず、『雨雲と稲妻の潤蛙』というかつての雨神を使役して襲ってくる邪禍に、佳乃も今までに無い苦戦を強いられるが……。
ギリギリの接戦の末、佳乃の神気が邪禍を打倒。しかしそれでも完全に滅し切ることは出来ずに、自身が深手を負っていたこともあって逃走を許す。
……〝聖〟によって溶けゆく邪禍の体は、佳乃が今までに見たどの妖魔とも、決定的に何かが違っていて。その正体は、今だ知れず――――。
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二千十四年 三~五月 |
三月十三日
「…………汚い、連中だったわ」
兼ねてより不信感を募らせていたゼン=カイマの動向を探るべく、佳乃は グリース・イムリンパルス、 ゼリシュ・フェーブス( 瑚蝶)、 セリーナ・ザ・"キッド"らと共に依頼を受託し、 〝聖地巡礼〟を明日に控えたゼン=カイマ市中を探索する。
ゼリシュと共に大聖堂の中へ潜入した佳乃は、祭壇の真下に隠し扉を発見。その奥にあった牢屋で監禁されていた司教たちを無事発見する。
また同時、酷い拷問を受けていたらしい 長尾銀狼の姿も発見。我侭な司教たちに手を焼きつつも、銀狼も連れて市街へ脱出するのだった。
――――そうして依頼は達成したものの、調査全体の成果としては幾分不信感の募る結末であって。新たな戦乱の気配は、すぐそこまで迫っているようだった。
四月十四日
「………は、早いうちに処分したほうがよさそうね、成績表……」
いつものように レイリスフィード学園へ登校中、佳乃は 神谷衣織と再会。彼女は偶然、この学園の新入生として入学してきていたのだ。
初めて出来た〝後輩〟をまんざらでもなく迎え入れて、億劫だった学園までの長い坂道を、本当に珍しく誰かと一緒に登っていく佳乃。
自身が不良のレッテルを貼られて生徒達から疎まれており、大切な衣織にも被害が及ぶのではと危惧もする佳乃だったが……やはり、それも杞憂。
決してそんなことにならないよう、自分が責任を持って衣織を守る。衣織の明るい言葉と笑顔を前に、佳乃はそう固く決意する。
その後は校門前で生徒会の仕事をしていた 幼馴染と鉢合わせる場面もあったが、遅刻してはまずいと一旦別れることに。
――――校内随一の問題児が新入生と楽しそうに昼ご飯を食べていた、なんて噂が驚きと共に囁かれることになったのは、余談か。
五月五日
「天鬼、桔梗――――私が、止めないと」
櫻の国・封魔城にて、 天鬼桔梗が主導したと思しき九尾襲撃事件が発生する。
得意とする妖怪退治、そして以前より 幼馴染から天鬼桔梗のことを聞いていたこともあり、佳乃はこの依頼を受託する。
長尾銀狼、 シーナ、 エルフェスらの見知った顔と共闘し、佳乃も九尾と対峙。各々の尽力によって無事、九尾は倒されるものの……。
その後通された天守閣にて、一同は封魔城の姫である 琴音に桔梗が化けていたことを見破り、そこで全ての真相を知ることとなった。
桔梗の力は天限が佳乃の助けに入る程であり、誰も彼も傷一つ負わせられず。不気味な言葉を残して桔梗はその場を去っていく。
後日、病院のベッドで佳乃は誓う。例え恨まれたとしても、幼馴染がこれ以上危険な目に遭わないうちに……桔梗は自分が倒すと。
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カエルレウム・ナーウィスとの第二戦にて、参加報酬として入手。現在は未使用のまま家に保管してある。
効果の詳細は
こちらに。
暴漢から助けたお礼として、
神谷衣織が作ってくれたもの。
朱色と金色で描かれる山紅葉と銀杏の模様が各所に散りばめられた、浴衣でありながらまるで振袖のような一品。
余談だが、同年代女子からの純粋なプレゼントとしては人生初のもの。単純に和服が好きなこともあって、結構な頻度で袖を通しているようだ。
ピオネルスカヤから貰った、彼女が常用しているものより一回り小さな情報端末。若干古い型で、使わなくなったものらしい。
オフラインではあるがカメラや電子書籍の閲覧といった機能は現役で、ピオネルの趣味である能力関係の書籍データが何千冊と保存されている。
暇つぶしにはもってこいの一品。
しかしまともに操作できるようになるまで何十回と壁に投げつけそうになったとかなんとか。
玉藻狂死郎から譲り受けた、茶色の下地に、表と裏にそれぞれ異なる魔方陣のようなモノが描かれた符。
力を込めて名を叫ぶことでその言霊に反応して発動し、『玉藻流退魔術・悪滅』のうちの一つ『悪滅二拾壱式・沖津鏡を使用できる。
詳しい効果はご本人のページに。なお、使用後は符を回収することで何度でも再使用できる模様。
第三回水の国天下一武道会の第三回戦、
当の本人である狂死郎に対して使用。見事不意を打つも、勝利には一歩届かなかった。
橋姫が残していった。黒漆にすすきの柄を模した極めて上等な髪飾り。その美しさから、佳乃もかなり気に入っているようだ。
ただ普段から付けておくには高価すぎるし、何より変におめかしするのが気恥ずかしいらしく、主に和装などで着飾る際に好んで付けている模様。
特別な由来や能力などはないが、単純に物としての価値も高く、付喪神となる素質も秘めている。今後何かに化けることがある、かもしれない…………。
同じく橋姫が残していった…………というより、他ならぬ佳乃自身の手で斬り落とした、鬼と化した橋姫の右腕。
鬼の腕は櫻はおろか世界的にも貴重であり、値段をつけることは出来ない程。多大な魔力・妖力を秘めており、利用価値は非常に高い。
異形の武器にするか、はたまた鬼の力を抽出して使うか、あるいは自身の腕と付け替えるか。何にせよ、強大な力を得られる一品であるが…………。
現在は何にも使われておらず、誰にも見つからない場所に力の漏洩と防腐対策の陰陽術を施し、結界で厳重に封印してある。
どうやら本人はあちらの詳しい事情もわからぬまま右腕を斬り落としてしまった事への罪悪感が強いらしく、安易に利用するのは気が咎める様子。
そうでなくとも扱いの難しい一品だ、いつか本当に使うべき時が来るまで、佳乃の手で責任を持って管理されることだろう。
神谷衣織から受け取った手作りの手袋。決して単なる防寒具ではなく、佳乃にとっては大切な友誼の証である。
櫻の国・〝死酷ノ原〟における
天鬼桔梗との再戦時に報酬として手に入れた物品。
『封魔城』の宝物庫に眠っていた扇で、樹齢千年を優に超えた大樹から作り出された由来から、大きな〝聖〟の力を纏っている。
その大樹の根元には歴代の〝姫〟達が眠っており、今に伝わる姫達は幼き頃よりその大樹の下で妖怪を鎮める歌を学ぶという。
一つ一つに言霊が含まれており、妖怪のみならず霊といった類にも大きな効果を及ぼすことからその名が付けられた。
見た目は一般的な手扇より一回り大きいサイズの、長い年月をかけて黒に近い焦茶色に焼けた古木を骨とした古びた扇である。
元々戦闘で用いていたものであり、閉じた状態では打撃に使用可能。宿った〝聖〟の力に加え、例え刃を受けようとも壊れない丈夫さもある。
なお開いた状態では、扇ぐと名前の由来どおりの歌うような美しい音色が響くことはあれど、戦闘向けの特別な能力はなかったのだが……。
骨や蛇腹の部分に〝符〟を仕込んだり、紙の部分を特定の奥義で強化して斬撃に使用したりと、佳乃元来の力と合わせることで更なる使い道も期待できる。
ちなみに、多少大きめとはいえ十分自然に持ち運べるため、佳乃はサブウェポンとして常にこれを装備しているようだ。
同じく櫻の国・〝死酷ノ原〟における
天鬼桔梗との再戦時に報酬として手に入れた物品。
『封魔城』の主である
琴音と個人的に交流があったとされる教会の女が持ってきた物で、独特の文字や図で埋め尽くされた設計図らしきもの。
佳乃の持つ知識や術式では、
〝魔狼〟という文字意外は読み取ることが出来ず、恐らくその教会の者にしか理解出来ない一品なのだろう。
しばらく保管されていたが、後に
イリニ=ネメスィと出会った縁で教会を訪ねた際、別の武器と交換した。
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つままれストラップ風 |
「……なにつまんでるのよぶっ○すわよ」
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これまで - 回も私の事が……? そこのあなた、見ているなら答えなさい。何が目的?
最終更新:2015年04月24日 00:31