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お題 神経
開催期間 2005/04/04~2005/04/14
参加作品数 24
審査員 6人
本スレ 14の178-256
議論スレ 9の774-843


【チャンプ】

【準チャンプ】

作品一覧


No. タイトル 作者 点数
181 ナヲ - -
184 はなつづれ - 1
185-186 シリピア - 2
187 無神経 - -
188-191 神経 園川 9
192 失語 - -
193 神経衰弱 - 1
194-195 催眠 - 3
196 はじまりのうた 3
197-198 末梢サラリーマン - -
199 - -
201-203 世界がオワだなんて、そんな! Canopus -
204 儚く散ってゆく日々 - -
205-207 選択 ゼッケン 3
209,211-212 夢神経 ウノ 3
210,213-214 青のイマージュ MUJINA 3
215 カナシイソラ - -
216 かわいそうだからあんたを私は捨てれない - 2
221-222 海岸へ走る猫 リーフレイン 5
223-225 虚無 - -
226 痛覚神経 soft 5
227-228 交☆感日記 ヒゲルド 2
229-230 僕は一人。水平線で - -
231-232 幽霊が覚えてる 清掃局の者 3

【審査員】
  • 園川 ◆nWfXpQxHHM
  • 葉土 ◆Rain/1Ex.w
  • Canopus ◆DYj1h.j3e.
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY
  • ゼッケン ◆DgT0G2eW4I
  • ななほし ◆lYiSp4aok.

【採点レス】

239 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/12(火) 11:35:10 ID:WoAUkFfY
3点 「海岸へ走る猫」
2点 青のイマージュ
1点 はじまりのうた     

246 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w 投稿日:2005/04/13(水) 21:14:42 ID:1YfK0ynR
採点。
>>188-191 「神経」  3点
>>231-232 「幽霊が覚えてる」  2点
>>205-207 「選択」  1点
>>226 「はじまりのうた」 1点

247 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. 投稿日:2005/04/13(水) 23:04:16 ID:z2OMdFxz
3点
>>188-191 『神経』

2点
>>194-195 『催眠』

1点
>>184 『はなつづれ』

248 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY 投稿日:2005/04/13(水) 23:25:03 ID:9jZiJlaE
【3点】
 >226     痛覚神経
【2点】
 >185-186 シリビア
 >227-228 交☆感日記
 >221-222 海岸へ走る猫
 >205-207 選択
【1点】
 >188-191 神経
 >193 神経衰弱
 >194-195 催眠
 >209,211-212 夢神経
 >231-232 幽霊が覚えている

250 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I 投稿日:2005/04/14(木) 00:33:07 ID:Xl5uprb3
>188-191 :神経 に1点。

798 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/15(金) 11:48:20 ID:vWpKpql+
2点 >209 :夢神経1/3 :2005/04/10(日) 00:39:03 ID:jq2r9xlh
2点 >>216 :かわいそうだからあんたを私は捨てれない :
2点 >>226 :痛覚神経:2005/04/11(月) 17:53:14 ID:8CJw2XYM
1点 >>196 :はじまりのうた :2005/04/08(金) 06:46:42 ID:yJgfq5MF
1点 >>210 :青のイマージュ 1/2:2005/04/10(日) 00:39:14 ID:UIPYkJYL
1点 >>188 :神経 1/4:2005/04/06(水) 13:35:08 ID:OJU4Erzh


作品





ナヲ



その時
ソレは ぷつり と音をたてた



きりきり きりきり
ねじ上げられ

ぎりぎり ぎりぎり
テンションがかかり

きゅるきゅる きゅるきゅる
中心から細っていったソレは

いともたやすく
いとも軽やかに



その時
ソレは ぷつり と音をたてた


181 名前:ナヲ 投稿日:2005/04/04(月) 03:27:14 ID:+yTWQKDK


【コメント】

217 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/10(日) 19:30:27 ID:aTfoXG3v
>>181 ソレ
読者にどこを読ませたかったのか、作者に解説してもらいたいと思った。
無属性な文字列の印象とそれを成立させている叙述の過不足の無さには好感を持った。

775 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/12(火) 00:42:17 ID:TETQl2H4
>181 :ナヲ :2005/04/04(月) 03:27:14 ID:+yTWQKDK
  そのときソレは、といったところで、お題に寄りかかってしまったかなぁ??
どうでしょうか??

779 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w  [sage] 投稿日:2005/04/13(水) 10:10:40 ID:1YfK0ynR
>181 ソレ
題から考えて、ソレは「神経」だろなと思いました。
神経がぶち切れた瞬間。。
アキレス腱が切れたときみたいな描写でした。
とはいえ、この詩は対象を明記していないという推理の妙に
頼りすぎているんで、ちょっとあれだなあ。。。

787 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I  [sage] 投稿日:2005/04/14(木) 05:04:00 ID:KKxjl5L7
>181 ソレ
一時間弱での投稿かあ、早いなあ。でもその瞬発力が言葉に出てないと思う。
一発勝負のアスリートタイプなら、獲物に食らいつくその野蛮な瞬間を見せて欲しい。
生肉を持って来い、レンジでチンしたできあいのトレイではなく。


【得点】 0点





はなつづれ



すみれのはなのつるがわたしのあしさきから
たれはじめてそこからしずかにだいちにねをはり
みずをすいあげはじめたのははるがずるずるとなつに
ひっぱられていくようなべるべっとのなかで
ようやくこしをあげたわたしのせぼねからはあさがおのつるが
たれておりそれがわたしのせなかからくびへとはってさいごに
あたまのてっぺんではなをつける

ぼくのからだはようりょくたいでおおわれ
みどりいろになりしだいにこうごうせいをし
しぜんにとけこんでいく
ぼくはだいちのなかへともぐりこんでいく
ぼくのしんけいはときどきくわでえぐられ
のうさくきでほりおこされむざんにきられてしまうが
またふっかつする

ぼくはとてもこっけいだ




184 名前:はなつづれ 投稿日:2005/04/05(火) 09:07:18 ID:PxF9nfhI


【コメント】

217 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/10(日) 19:30:27 ID:aTfoXG3v
>>184 はなつづれ
5行目の、読者を煙に巻く文脈の展開が気持ち悪くて良かった。
平仮名の必然性が唯一感じられた箇所。でも他は何を書きたかったのか分らなかった。

234 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY 投稿日:2005/04/12(火) 01:30:49 ID:kzQXx8hV
>>184 はなつづれ
  第1連のつるのイメージは、けっこう幻想的でいいんじゃないか。「あけびのつる
がからまり」とかどうたらこたか、という詩を昔読んだ気がするのを、いま突然
思い出した。3~4行目あたりは、作者の真骨頂、というところだろう。
  第1連の「わたし」から、第2・3連の「ぼく」への一人称の変化は、人間が
植物に進化したことを示したいのだろう。こうした手法ではなく、文体や語調の
転換などで表現する描写力で勝負してもらいたかった、というのが正直な感想。
  ひら仮名表記の必然性はあまり感じられなかった。

247 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. 投稿日:2005/04/13(水) 23:04:16 ID:z2OMdFxz
1点
>>184 『はなつづれ』 1連めのことば運びは魅力的で、植物が成長していく
早回しの画像のイメージを堪能しました。滑らかな文章ですが、それだけに
「すみれのつる」は目立つミスでしょう。最後の「こっけい」も、ぼくには腑
に落ちなかった。

775 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/12(火) 00:42:17 ID:TETQl2H4
>184 :はなつづれ :2005/04/05(火) 09:07:18 ID:PxF9nfhI
  ぼくはとてもこっけいだ < シリアスなユーモワを感じた。

779 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w  [sage] 投稿日:2005/04/13(水) 10:10:40 ID:1YfK0ynR
>184 はなつづれ
(微妙なんだけども、すみれは蔓ではないような。。)
前半は朝顔が這い上がっていく一本の樹(ようやく腰をあげたという記述から、
どうも春になるまで地を這っていて、それから上へと伸びていく何か。)ーわたしーが主体。
後半は語り手が変わって、朝顔そのものーぼくーが主体。作者はどっちかってと
その寄生している朝顔に自分を重ね、神経系と根を重ねてあわせ、
その、なんというか徒労の多い労力(ぶちぶちと切られてしまうので)に自嘲を描いています。
読みながら、つい頭の中で漢字変換していました。たぶん平仮名でないほうが美しい。
平仮名であることで、なんとなく無色無個性な神経系がくもの巣を網を張るように伸びていく
不気味さみたいなものがかもし出されているんだけど、どうも、その効果は記述されている
内容の美しさによって逆に殺がれてしまっているような気がします。(特に前半)
前半主体と後半主体に分割した理由がいまひとつわかりにくい。両者は絡み合っているに
もかかわらず、気持ちの上では自閉してしまっているので、前半と後半が乖離してしまっていて惜しいです。

788 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I  [sage] 投稿日:2005/04/14(木) 05:05:07 ID:KKxjl5L7
>184 :はなつづれ
アルジャーノンに花束を の主人公の最後の手紙を思い出しました。
植物になる作者さんの最後の独白という雰囲気を演出するために全文ひらがなということでしょうか。
で、この作者さんが手に入れたのは安らぎではなくて、「こっけい」なほどに残酷な生命力。
それは「えぐられ」ても「きられて」も「またふっかつする」神経によって安らぎはもはやないわけですね。

「ぼくのしんけいはときどきくわでえぐられ 」とくるんですけど、これが唐突なんですよね。
一連目の「わたしのせぼね」からたれている「あさがおのつる」は脊髄から延長された神経のイメージだと思うんですが、
それなら「はなをつける」感覚(たぶん耽美な)を作者さんは味わったはず。そういうのも書いてあれば、
二連目の後半でのしんけいという言葉の登場も違和感がなかったんじゃないかと。

あと、一人称は私の場合も作中で変えるんですけど、あとにつづく文章や雰囲気で。
全体としての統一から見るとやっぱまずいような気もするし、でも、その瞬間においては
換えないとしっくり来ないしで、難しいですよね。難しくないですか?


【得点】 1点
  • Canopus ◆DYj1h.j3e.:1点





シリピア



  これまでの人生で、たぶん12回ぐらい、<本当にヒドイこと>を、僕は女性に、
したんじゃないかな、と、思うんだけど、これはその中でもいちばんヒドイことだっ
たんじゃないかな、と思う。

  中学生のときに、太った女の子が、前の席に座っていたのさ。
  よく笑う子で、ちびでおかっぱで、頭が良くて目がきれいで、明るくて人に優しくて、
あんまり美人じゃなかったけど僕はその子が好きだったんだな。僕らは仲良しで、いろん
な話をしたのさ。

  ある日、僕は画びょうを持っていて、なんとなく、面白いかなって思って、彼女の椅子
に置いてみたんだ。
  そしたら彼女は、まるで気がつかずに座ってしまって、僕はびっくりして大笑いしたのさ。
  彼女が振り返って不思議そうな顔をしたので、僕もちょっと不思議だったし、「立ってみ
てよ」と言ったんだよ。そしたら僕の画びょうは、ちゃんと車襞スカートの上から彼女のお
尻の左側に刺さっていて、僕がちょっとつっついたら、コロンと床に落ちたのさ。
  彼女はそれを見て「あれ?」って顔をして、その顔がゆっくり変わっていって、最後はちょっ
とさびしそうな笑顔になったんだよ。


  そのとき僕は、太った女の子のお尻は大体全部脂肪でできていて、そこには痛覚
を感じる神経の分布が少ないのかな、って思ったんだけど、本当はそうじゃないん
だろうな。
  本当は痛みってのは、神経とかじゃなくて心で感じるものなんだろうなって、
今は思う。



185-186 名前:シリピア 投稿日:2005/04/06(水) 00:26:33 ID:Ic1I2T0o


【コメント】

217 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/10(日) 19:30:27 ID:aTfoXG3v
>>185 シリピア
なんでもない散文に、
「痛みってのは、神経とかじゃなくて心で感じるものなんだろうな」
という、ありきたりな認識の転回。
生活語の中に一点「車襞スカート」や「痛覚を感じる神経の分布」
という、いかにもな語彙の転調。多分それだけの作品。

234 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY 投稿日:2005/04/12(火) 01:30:49 ID:kzQXx8hV
>>185-186 シリビア
  読んだあと、この詩のことがしばらく頭から離れなかった。好きな女の子をいじめる、
ってのはよくあることじゃないか。でも、ちょっと度が過ぎたみたいだね。
  第3連の「その笑顔がゆっくりと変わっていって、最後はさびしそうな笑顔になった」
というくだりが、最も印象的。簡潔だが的確に表現している。
  こんな内容は詩よりも散文、エッセーにして書いたほうがよい、というのは読後に
予想された批判だ。でも、否と思う。随筆にすると、どうしても説明的な文章でさらに
水増しされてしまって、印象が薄くなる。やはり、ギュッと濃縮したポエムジュース
として飲むほうが味わいが深くなるのではないか。それと、もうひとつ。簡単体、とで
も言うのだろうか。余分な装飾を排した明瞭な文体は(ここらあたりも、詩らしくない、
と論難が加えられそうなところ)、私好み。
  最後の2行は、グッと抑えて、書かないほうがよかったんじゃないの。書くにせよ、
画鋲に焦点を持っていくとか、安易に「心」を出さないでも、ほかに持っていきよう
があったはずだ。

248 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY 投稿日:2005/04/13(水) 23:25:03 ID:9jZiJlaE
【2点】
 >185-186 シリビア……これも立派に詩、と呼んでよろしい。
             何しろ山之口獏さんのような詩もあるんですから。

775 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/12(火) 00:42:17 ID:TETQl2H4
>185 :シリピア (1):2005/04/06(水) 00:26:33 ID:Ic1I2T0o
  お話の世界に引き込まれて読んでしまった。有りそうな話だ。でも、
  ありそうな話から飛び出してほしい。……読者のかってな期待が高まる。

780 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w  [sage] 投稿日:2005/04/13(水) 10:11:59 ID:1YfK0ynR
>185 シリピア
”あれって言う顔がゆっくり変わって最後はちょっとさびしそうな笑顔になった”
っていうのがいいなあ。この女の子が実に良い子だというのが良くわかるし、
その変化を見逃さなかった本人も良い子だねえ。
とはいえ、美しく育ったかもしんない恋は死んでしまったやもしれない。。(ご冥福を祈ります)
詩としてはここで終わってしまったほが良かった。

788 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I  [sage] 投稿日:2005/04/14(木) 05:05:07 ID:KKxjl5L7
>185-186 :シリピア
あの、これ傷害罪だと思います。んで、「痛みってのは、神経とかじゃなくて心で感じるものなんだろうな」
なんてノンキな感想を述べてるし。反省してないなー、作者さん(実際は知らんけど)。
おおらかな時代の思い出話として読ませてもらいました。


【得点】 2点
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY:2点





無神経



  ブローカ中枢に棲むキングコブラは
  0,1ミリの氷の中で串刺しになりながら
  シンケイサイボウの歌いやまない
  シワシワの脊髄を凝視していた

    脳から分泌された心地よいシナプスに
    生々しいメロディーを合わせてみれば
    ニューロンみたいな私の舌先から
    情報インパルスがニョロリと拡散し
    喉が焦げ、胸が焼け、手脚もポキリと取れてしまい、
    煙草の煙みたいなダルマよりもみみっちく

まるで右脳だけになった私のカラダは
ついには変態の キングコブラに食われてしまいました
が、少なくとも
キングコブラの悲しげな咆哮は
リクツダラケの空の下で、今も断続的に響いてます

   ああ…、なんて無神経なウナリ声なんだろう






187 名前:無神経 投稿日:2005/04/06(水) 03:52:19 ID:oA1Y9k+e


【コメント】

217 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/10(日) 19:30:27 ID:aTfoXG3v
>>187 無神経
特定の専門語彙のなかでの詩的戯れ。最初は興が乗らなかったが、
3連目辺りから「出まかせ語法」とでも言いたいようないい加減さに笑わせられた。
勢いを損なわない程度にもう少し描写を丁寧にするといいかもしれない。
今のままだと名詞に振り回されすぎて読者の頭にスッと入ってこないと思う。

775 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/12(火) 00:42:17 ID:TETQl2H4
>187 :無神経:2005/04/06(水) 03:52:19 ID:oA1Y9k+e
  ブローカー、キングコブラ、喉が焦げ、変態、リクツダラケ、無真剣な
オヤジタイプの人のコトかなぁ??? 理屈っぽいは若年のヒトかなぁ??

780 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w  [sage] 投稿日:2005/04/13(水) 10:11:59 ID:1YfK0ynR
>187 無神経
”シナプス”の使い方が変だもんで読み手が(???)と思っているうちに詩が終わってしまった。
”ニューロン”のイメージもしっくり合わない(涙。

788 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I  [sage] 投稿日:2005/04/14(木) 05:05:07 ID:KKxjl5L7
>187 :無神経
タイトルで損してるような気がします。「ブローカ中枢に棲むキングコブラ」はかっこいいんですけどね。
音楽を司る右脳を食べちゃったら、そりゃ「無神経なウナリ声」しか発せなくなるとは思うんですけど、
解剖学的な正解に結末を簡単に落としすぎのような気がします。そこに行き着くにしても、
なんかもう少し、こう、解剖実習からもうちょっと離れた展開が欲しかったような気がするんです。


【得点】 0点





神経



1 試作

巨大な高架を支える橋脚の柱石に
落ちている赤いライターを
右折車線の窓外に見る

  (あっちの崖でさ)
  (うん)
  (あの山の、海に突き出してる・・・)

下校する高校生 ベビーカーを推す女を
田舎の道で
フロントガラスの向こうに見る

  (一番大きい?)
  (そこらしいよ)
  (じゃあ、あれ嘘だったんだ)

ガード下のうらびれた公園の脇に落ちる階段
その真裏の支柱を背に車を停め
買ってきたハンバーガーを食べる

  (多分)
  (あたし海いきたいなー、家やだ)
  (あの崖のカーブ、海に突き出した・・・急な)

夕暮れの空に カーステレオが鳴る
ホルダーのシェイクに手をつける
空席のナビシートには目を遣らない

  (いこうよ)
  (海?) 
  (うん)

夜 山麓を川沿いに抜ける国道を走る
あの時と同じ景色
もう一度 海へ

  (行こうか)


川?
うん
川沿いなんだな

  (黎明の野に鬱勃する森の影
   遠景の稜線に朝陽が留まる
   静止した分暁の空)

暗いねぇ
夜の山だから
んー 

  (女は森へ その歩行に呼応し湧出する大理石が
   彼女の蹠を受け止める 歩揺する長い黒髪は
   その一揺れに束と落ちる)

やばい眠い、危ない
川がきれいだ       

  (女を追う 大理石の経路には
   瘢痕に蝕まれた肢体の残片が
   縷々と連なり重なっている)

見えるの?
ううん
ん?

  (ウッドソールと大理石の衝突に
   明滅する言葉らが、
   足元に散る肉塊を整複していく)

見えないけど
どっち
きれい

  (歩一歩と 致命的な歩み)


透明な色石の渥美の肌に 
とりどりの華辞が彫金される

  (ここはシルバーでなく
   イエローゴールドで)

削りだされていく浮文の肌に
恍惚と浅笑する女

  (ジルコニアを埋めて 半貴石がいい
   濁った石が好きなの)

肉体を失った言葉の幽霊が
逸遊する この際涯

  (虚辞の海風がまた私の肌を磨く
   この石も あの風も 一体誰の言葉なのだろう)

圏点を打たれた黒髪が号してる
シフォンの海 鉄の海畔 布と金属の海景

  (でも、どうしよう)



2 君へ

脳神経を一本に抽象化できたとして、
その縦断面を観察する。そんな詩を書きたかった。

この抽象的脳神経は精神総体の隠喩であり、
読み手は、言語化された知覚、記憶、夢などの精神現象を、
この作に於いては意識から無意識のベクトルへ下降していく。

妄執。

試行は続く。

いつか、あの女との海へのドライブを、
記憶の捏造によって再開する為に。
そして君と、
意識の上に偽造した世界で再会する為に。

そう思っている。


188-191 名前:神経 投稿日:2005/04/06(水) 13:35:08 ID:OJU4Erzh


【コメント】

233 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY 投稿日:2005/04/12(火) 00:44:16 ID:gwDpg/77
188-191 神経
  今回の投稿作品の中で一番の問題作から。最初は、どうということはない男女の会話に
じわじわと詩語が忍び寄る。そのスリルとサスペンスを描いた異色作。と言ったら、映画の
宣伝文句みたい。「1.試作」の男女のドライブは、「2.君へ」の自己解説で「記憶の捏造」
とあるから、実景ではなく、一本の神経経路を走査するバーチャルなツールと考えてよいのだろう。
「ミクロの決死圏」を連想した。作中、何回も登場する「崖」も「意識から無意識」へと転落
する位相とでもいうところか。
  ともかく、結露から言うと、「構成が凝り過ぎ」というのが率直な感想。この部分は、
ミステリーで言えば伏線にあたるところで、最後の詩的な種明かしにつながる、という
トリッキーな構想が、推理小説好きにはたまらないのかもしれない。でも、小説嫌いが高じて
詩版にきた私としては、それが冗漫に感じられてならなかった。
  そんな策を弄するより、もっと直球で勝負してくれ、と頼みたいところだ。
「透明な色石の渥美(?)の肌に/とりどりの華辞が彫金される」「削り出されていく
浮文(最初、間違えて「淫文」と読んでしまった。でも「淫文」のほうがいいかも)の
肌に/恍惚と浅笑する女」「虚辞の海風」など、剛速球をバンバン投げ込んでいるの
だから、増すます「全部直球で」とサインを出したくなる。
  それと、やっぱりもっと読者を信用しなくっちゃ。「2.君へ」の自己解説はないよ。
詩っつうのは、何も作者さんの意図が「正しい解釈」じゃないよ。読者に「誤読」する
自由を与えてくれ。もちろん、詩には「正しい解釈」などどこにも存在しない、という
前提の上で言っていることなんだけれど。

246 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w 投稿日:2005/04/13(水) 21:14:42 ID:1YfK0ynR
採点。
>>188-191 「神経」  3点
      不満もあるんだけれども、やっぱり技巧的な挑戦、幻想的な美、
      会話文のもたらす効果(耳元に聞こえてくる)という点でリードしてると思う。

247 名前:Canopus ◆DYj1h.j3e. 投稿日:2005/04/13(水) 23:04:16 ID:z2OMdFxz
3点
>>188-191 『神経』 対話と情景描写がネガ、ポジと、反転を繰り返し、舞
台を変えながら展開される、一風かわったアバンチュール。実はぼくは、
『2.君へ』は必要だと思っている。ただ、『2.』の冒頭の2連が、ごっそり要
らないんじゃないかな、と思う。いや、これは凄い詩です。タイトルは、もう
ちょっとステキにしたかった。

248 名前:MUJINA ◆iXws.WGCLY 投稿日:2005/04/13(水) 23:25:03 ID:9jZiJlaE
【1点】
 >188-191 神経……妖刀で言葉を切り出す二字熟語の魔術師。

250 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I 投稿日:2005/04/14(木) 00:33:07 ID:Xl5uprb3
>188-191 :神経 に1点。
実験した部分は自分への不器用な言い訳、こういう詩を書きたかったといいつつ、
技巧的な試みも女への未練に収束する。
理屈っぽい男の女々しさがさらに喪失の痛切さを物語る。
という私の共感を除いても、情景の構成は群を抜いてると思う。

257 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/16(土) 00:33:15 ID:EUvUl/Wj
神経を書きました。次回のお題は

「ドラマ」

でお願いします。期日は4/23午前0時まで。
審査期間は4/25午前0時までです。

775 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/12(火) 00:42:17 ID:TETQl2H4
>188 :神経 1/4:2005/04/06(水) 13:35:08 ID:OJU4Erzh
  出だし、「試作」が、引き込む好い一言。ちょと長すぎる……気もしないかなぁ?
  結節で「再開」と、言うのちょっと、がっかりした感じ……

781 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w  [sage] 投稿日:2005/04/13(水) 10:13:45 ID:1YfK0ynR
>188-192 神経
美しい。。。これは美しいです。入れ子細工のようになった2段構えの詩を、前段の入れ子を次段の地の文に
連携させることで、一本の流れを作り出している。

詩作 a で、現実描写の中に、( )に入った過去の追想が展開。
読者の現実を主人公の現実に重ね合わせた上で、共感世界へ誘う。
この現実部分の詩もなかなか見逃せない。”橋桁の柱石に落ちている赤いライター”

詩作b においては、追想の女性と幻想世界への旅が始まる。
今度は( )の中には象徴的詩文が入り、幻想性を一段高める。地の文には追想された幻想の女性。(詩作aの地の文)
単独の幻想詩としても価値がある( )内の詩文は、個人的に尊敬している吉岡実氏の
「サフラン」にも似て、研ぎ澄まされて美しい。( )内の幻想詩を取り出してみると、
森についた幻想の女は髪を束に落とすのを皮切りに、一歩づつ歩みを進めつつ、
その肢体をぐずぐずと落としてゆく。 ”瘢痕に蝕まれ””累々”と重なっていくその穢れた破片は
今度は言葉によって、美麗に石に刻みつけられていく。絢爛たる美が構築される。
(”渥美”は変換ミスですかいな?)幻想の女の満足げな笑いが耳にこびりついて離れない。
美麗かつ難解な単語を駆使した、毒のある豪華絢爛な美は作者の真骨頂だと思う。

(虚辞の海風・・・  からは、実は段が変わる。たぶんここからは
詩作c とでもして展開してもいいような気もした。( )の中は主人公の自省となる。地の文は
前段の幻想詩が記述されている。
幻想の美を展開したあとでその虚しさに言葉を失い、ここから何処へ行けばいいのかと途方にくれる
本人の姿が浮き彫りになっている。
個人的には、この部分はちと不満。詩作bの幻想詩が暴力的なぐらい美しいんだから、それに
拮抗する転落を用意して欲しい。“一体誰の言葉なのだろう”なんて疑問形で逃してしまわないでください。

MUJINAさんも書いていたけど。詩作2は邪魔。ただし、詩作1だけでは題からそれているとのそしりを
免れないのも確かであるので、
”脳神経を一本に抽象化できたとして、その縦断面を観察する”(題にするならもっとブラッシュアップ)
という題をつけときゃあ良かったんでない? 

782 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w  [sage] 投稿日:2005/04/13(水) 10:19:12 ID:1YfK0ynR
あ。。ミスってる
詩作bの地の文は、詩作aの( )内追想部分。に訂正。(書き間違い。。ごめなさあい)

787 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I  [sage] 投稿日:2005/04/14(木) 05:04:00 ID:KKxjl5L7
本スレ233、MUJINAさんの「誤読する自由」にびびんと勇気付けられたところです。
書いた詩を読ませたり、書かれた詩を読むその両方で。

具象情報であるデオキシリボ核酸も誤読する自由を残したからこそ、
つなげかたしだいで恐竜が鳥になるという手品を見せてくれたし、
抽象情報である言葉もつなげかたしだいでは日記が詩になるという手品を見せてくれるかもしれませんね。

生命を土台に知性というものが誕生するならば、それはまず、
生命の永遠なる不完全性に耐える気力を備えていなければならない

というわけで、
みなさんも不完全な読み手に耐えてくださいよ、不完全感想文誤読込み発射。

789 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I  [sage] 投稿日:2005/04/14(木) 05:05:43 ID:KKxjl5L7
>188-191 :神経
う、泣けた。最後で。思い出ってつらいです。
うしろの種明かしに見せかけた部分は、失ったものを断ち切れない女々しさが理屈で言い訳しつつも抑えきれずに爆発してて、痛切。
未練を理屈っぽさでしか紛らわせ得ない男の不器用さがたまらん。純粋で切ない思いをさらに浮かび上がらせている。いま、
なんでもないようなことが幸せだったと思う~ なんでもない夜の事 2度とは戻れない夜~と熱唱したい気分。

会話音声をかぶせつつ淡々とした情景描写、そこで、
「ガード下のうらびれた公園の脇に落ちる階段
  その真裏の支柱を背に車を停め
  買ってきたハンバーガーを食べる」
という味気ない風景からちょっと画面を引いたら、
「空席のナビシートには目を遣らない」
で、もうすっかりしびれちゃって。

こむずかしい単語を使う理屈っぽい男というのも計算された演出なんじゃろうか。
すべてが創作だったら、すごすぎるよー。

なので、タイトルにも神経つかってください。

798 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/15(金) 11:48:20 ID:vWpKpql+
1点 >>188 :神経 1/4:2005/04/06(水) 13:35:08 ID:OJU4Erzh
  なんか、架空の橋(嬌)脚の間に釣れ照ってくれる? オチはちょっと不満かなぁ

807 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM  [sage] 投稿日:2005/04/16(土) 19:09:07 ID:0GlB9prJ
書き手として今回の感想を。

Canopusさんの言うようにすればMUJINAさんや葉土さん、
ななほしさんの批判をかわしつつゼッケンさんの読みを引き出せたでしょうね。
結局後半の冒頭2連のインパクトが強すぎたと言うことだと思います。
確かに、出発としては葉土さんの言うように、こじつける為だったんですけども。

語り手は「試作」を解説しましたが、「神経」は園川が解説するまでもなく、
構造としてはゼッケンさんの読まれた通りで、つまり男の姿を前景化させたかったんですね。
僕が壊してしまった意図をゼッケンさんが共感の力で復元してくれたようで、
不思議な気持ちとありがたさを感じました。
他の審査員の方もよく読んでもらったようで、ありがとうございます
ちなみに、以前投稿した「隠喩の実在」という作品も同じような構造で書かれています。

今回やっと一通りのものが、推敲不足でかなりいい加減な部分もありますが、
(特に「ジルコニア」という石について完全に勘違いしてました)書けて、良かったです。


【得点】 9点(チャンプ作品)
  • 葉土 ◆Rain/1Ex.w:3点
  • Canopus ◆DYj1h.j3e.:3点
  • MUJINA ◆iXws.WGCLY:1点
  • ゼッケン ◆DgT0G2eW4I:1点
  • ななほし ◆lYiSp4aok.:1点





失語



いつも脳みその中身が
ミルクよりも白濁している
常に眠くて誰にも会いたくない
脳神経が未発達で
シナプスのつながりが悪いからきっと
人とウマく話すことができないんだ
情報が頭の中で錯綜して迷子になる
この人と合う話題が思いつけない
結果沈黙でへらへら笑うだけ
昨日のことが思い出せない
どうせいいことはないからいいんだけど
お気に入りのテディベアがないのは
きっと昨日何かしたからだった気がする
覚えてないけど


192 名前:失語 投稿日:2005/04/06(水) 16:28:44 ID:v9pKB220


【コメント】

217 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/10(日) 19:30:27 ID:aTfoXG3v
>>192 失語
「脳神経」や「シナプス」という語の使用に無理を感じた。
作品内部に必然性がない。「情報」や「錯綜」も、この作品の平易な語調には不似合いだと思った。
でも、最後の3行は、他者ばかりか自己からも自閉していく主人公の輪郭をきちっと捉えてとてもいいと思う。
きゅんときた。

239 名前:園川 ◆nWfXpQxHHM 投稿日:2005/04/12(火) 11:35:10 ID:WoAUkFfY
その他にいいと思った作品として、>>192 失語>>199 音 >>205-207 選択 >>226 痛覚神経 を挙げておきます。

775 名前:ななほし ◆lYiSp4aok.  [] 投稿日:2005/04/12(火) 00:42:17 ID:TETQl2H4
>192 :失語 :2005/04/06(水) 16:28:44 ID:v9pKB220
  失語の原因はあきらめか?? デディベァが呼びかけてるのか?

780 名前:葉土 ◆Rain/1Ex.w  [sage] 投稿日:2005/04/13(水) 10:11:59 ID:1YfK0ynR
>192 失語
失語症ってなあ、大脳皮質の一部が損傷していて、言語と言語の示すイメージがくっつかないらしいです。
その損傷の程度がいろいろあって、①自発的な言葉が出てこない(本を音読したりはできる。)②自発的な
思考そのものにもイメージと言葉が合致しない。(誤って認識がなされる)③言葉そのもんがない。
おおまかにこの3段階に分かれていて、①の場合はまあ、リンクを新たに張りなおしていくことで、かなり回復可能。
②の場合でも現象と認識をひとつづつ確認していくことで、回復していくらしいですね。
記述されている症状は、不安神経症に近いみたいで、これは大脳皮質の損傷ではなくて、神経内分泌物質の異常。
不安感が大きいため、正常な伝達が阻害されてしまう状態。薬物によってかなり好転します。
脳が萎縮していく場合もあって、(小脳萎縮症みたいなやつ)これが併発すると記憶障害とかも起こります。
なんてことを考えていました。読みながら。

789 名前:ゼッケン ◆DgT0G2eW4I  [sage] 投稿日:2005/04/14(木) 05:05:43 ID:KKxjl5L7
>192 :失語
書いてる時間が多いと、話し言葉がうまく出ないってことないですか? 私ごとですが。
話せないので書く、覚えられないので創る。と、でも、まあ、孤独ではあります。
向こう岸で時間を共有しつつ楽しそうに話している人たちがうらやましいです。

833 名前:わに ◆Wani6uvhK.  [sage] 投稿日:2005/04/18(月) 13:53:13 ID:ItsOmvDU
一言お礼だけさせてください
前回失語を書きました。評をくれた皆様ありがとうございます。


【得点】 0点




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最終更新:2006年11月08日 00:07