ブルギニオン寮所属NPC

 エリンディルの詳細な地図を作成した"造世師"ブルギニオンの名を冠した寮。幽霊の噂など暗い雰囲気が付きまとい、実際どこか物静かな様子の寮だという。


ダバラン・テレミナス

種族:ドラゴネット(メディオン) 性別:男性 メインクラス:ソーサラー サブクラス:フォーキャスター
年齢:19歳 所属学部:法学部 サブ学部:使徒学部(探索) 所属部:選挙管理員会 登場話:第一話第二話第三話第六話第七話第九話第十一話第十二話
 ブルギニオン寮プリフェクト。
 とある辺境の竜人民族出身の青年であり、彼のいた地域では限りある資源の奪い合いから争いが絶えず、彼もまた幼き日々よりその中にいた。もう何十年もの間繰り返されてきたその争いを終わらせるための力になることを誓った彼は、エルクレスト・カレッジでその能力を身につけようと考え入学するが、その身には戦士としての才能を宿しておらず、フォーキャスターとしての道を歩む事になった。
 そうして知力を生かし、勉学に学園生活にと励んだ結果か、風紀委員会の委員長(マルティン・カナール)とは無二の友人になったのを初め、周囲からは大きく信頼をえて、ついにブルギニオンのプリフェクトにまでなる。だが、自身に戦うための力がない、ということは彼の中でコンプレックスになっており、戦術士としての勉強に精を出していながらも、いつも心のどこかでそんな自分を情けなく思っているようだ。
 第一話で、戦士としての素質を見るためにミトに武器を構えさせたところ、彼女の中に彼の想像以上の素質があることを感じ、内心うらやましさのようなものを感じると同時に、深く認めることとなる。最終試験ではマナシエに担ぎ出され解説のようなことをやらされることとなったが、初めはしぶっていたものの、やり始めると意外と堂に入った解説役を演じていた。そういう性分なのかもしれない。
 第二話では、まだ学部を決めていない状態であるシャルリシア寮の面々にオリエンテーションをすべく集まった中の一人であったが、そこで自分が戦士としての素養を認めた相手であったはずの、ミトのあまりのかわりように驚かされることになった。だが、結局本人のやりたいと思うことをやるのが一番であると考えたらしく、今ではそんな彼女の事も認めているようだ。また、その後ミルカが呼び出されたプリフェクトの会合にも登場しており、彼女のプリフェクト参入を全面的に認めた。
 第三話では、シリルによってプリフェクト達が呼び出されていることをミルカに伝えに現れたが、それと同時に、シリルの呼び出しということはあまりいい予感がしない、ということも口にしていた。そして案の定というべきか、シリルが一種のトンデモ企画を始動しようとしていることを聞かされることになったのだが、内容はともかく、それにかけるシリルの思いは本物であると感じた事によって、彼もまた協力することを認めたのだった。
 第六話では、シャルリシア寮の歓待パーティーを個人としても、そしてプリフェクトとしても祝うべく登場。祝いの言葉を述べた後早々に去ってしまったチーフに対して、彼が今忙しいらしいなどととりなしつつも、自身もまた、シャルリシア寮が創設されてよかったと感じていることと、その後主にミト、ミルカ、ジャックといった面々に対して、これからもその力を役立ててほしい、と要望するのであった(ミトとジャックには、若干不安そうな要素も見せていたが)
 さらに、シャルリシア寮の面々が学園七不思議の謎を追っている時にも、ミルカに情報を求められる形で再登場し、自身の知りうる情報を話すのであった。しかし、シャルリシア寮での美術品作成に関しては、プリフェクトである自分が関わることはできないと断っている。
 第七話では最近なかなか寝付けなくなってきたといい、快眠に導くお香でもないかと園芸部までやってきて、それを待つ間ミトと会話をしていた。内容はミトが持っていた戦士の技術を、今のミトが捨てたことに関してであったが、それに対して全くの不安を見せないミトの様子に、彼はまた何かを考えていたようだった。そしてお香をデュフェールから受け取って去っていくダバランは、何か悩みを抱えているのかもしれないと彼らは察し、ミリティスはそれが、彼自身が望む才能と自身にある才能のギャップによるものなのではないかと推論したが、未だ真偽は不明である。
 その後、キャンプ実習に際し、ブルギニオン寮班として参加し再登場した。最初に学生たちのルネス内自由行動をとりまとめてみせると頷く、秘湯の権利騒ぎの時に冷静に教師を呼んでくる、レイスの件が失踪騒ぎになりかけた時、キャンプ場管理人への事情説明へ走るとさすがプリフェクトらしい行動を多く行っていたが、各種レクリエーションについてはそこまで競争心を持っていなかったようで、寮生達と共に黙々と堅実に参加していたようだ。
 ちなみに、レイスが森の中に消えた時、当初は彼はレイスの捜索を行うつもりだったようだが、オルランド寮のメンバーをはじめとした捜索要因が充実しているのを見て、管理人への事情説明のため単独行動していたのだといい、少し遅く現れていた。
 第九話では近くを通りかかったジャックに対し、聞きたいことがあると言って呼び止め、まずジャックは優れた戦士としての力を持つ人間であるということをなぜか言った後、その上で、「力の弱い指導者と言う存在をどう思うか」ということをジャックに聞いた。彼が聞きたいことというのはつまり、自身でなら打ち倒すしうるような相手でも、ジャックはその相手を指導者として認めることができるのか、ということであったようだが、少なくとも今の自分の寮のプリフェクト、ミルカのことはジャックも内心認めてはいるためか、そのこと自体は指導者としての問題ではまいと答えられた。その後に彼がさらにジャックに聞いた、「指導者として必要なものは何か」という問いかけには、明確な答えをジャックから得ることはできなかったが、彼はその上でジャックの答えをもらえたことを感謝しつつ、その場を去っていくのであった。
 どうやら結局、まだ何かを悩んではいるようだ。その答えを出すため、彼は自分が認める相手からの言葉を聞きたがっているのかもしれない。
 そして第十一話では続いてミルカに何か聞きたがっていたところを見せ、まず、風紀委員の新入りであるマゼットにマルティンが風紀委員室を案内しようとしていたところに遭遇する形で登場し、そこから会話する中で、一同の中にいたミルカと話させてほしいと切りだし、二人にさせてもらった後、ミルカに対して近々のシャルリシア寮生が行ってきたと思われる功績を讃えた上で、そのような一団のリーダーが自分であることに不安を覚えたことはないかということについて質問していた。
 そして、ミルカから最終的に返された「自分は皆を信頼している」という答えを聞き、周囲の仲間達が間違ったことはしない存在だと信じられるから、ミルカは不安を感じていないのだと彼は解釈すると、そんなミルカを見習いたいと言いつつ、自分もブルギニオン寮の生徒達を喜ばせるためさしあたってはエルクレスト祭の準備に全力を注ごうと思うと言いつつ去って行ったのだった。
 ……が、その後アルゼオの元へ現れ、エルクレスト祭に注力しているシャルリシア寮生達に迷惑はかけたくないと言いつつも、最終的にはアルゼオの「それでも、シャルリシア寮生達は知らせてほしいと思うに違いない」という言葉に納得したことで、アルゼオと共にシャルリシア寮へとやってくる形で再登場しており、この時は彼だけが最近感じているという「謎の違和感」についてを語るのだった。その違和感とは、窓、水、自身の影などに時折普通ではないものが移った、あるいはそこにいたような気がするというもので、根拠はないがそれが不安に感じているということであったのだが、シャルリシア寮生の一部も同じような現象を最近気にしたことがあるということで、ことは彼一人の不安ではなくなってしまう。
 自分以外にもそれを感じていた人物がいて、しかもそれがなぜか全員シャルリシア寮生であったということは更なる謎を呼ぶ要素ではあったが、そこから結論を見出すには彼ら全員の知識を寄せ合っても到底難しいことであり、結局具体的な結論が出ることはなかった。しかし、自身同様、そういった現象に警戒してもらいたい、また万一の時には力を貸してほしいという願いをシャルリシア寮生達が快く了解したことで、彼はかなり安心した表情を見せていた。さらに、クレハからは「抱え込みすぎるな」とお前が言……もとい彼の現状を理解した励ましを受けており、シャルリシア寮生達を頼れることにより感謝の意を表していた。
 ……その後、結局エルクレスト祭の行事がほぼすべて終了するまで学内に特に何も起こることはなかったのだが、彼の周りの「違和感」はむしろ頻度を増していたらしく、それをアルゼオに相談している姿が見られた。……しかし、それでも、何かがわかるわけではないかった……
 なお、彼の言う「違和感」は実はこの第十一話時点で彼とシャルリシア寮生6人全ての周りで何度か起こっていた現象であったが、咄嗟に運命を操る歌を詠唱することの技術に精通したミトと、基本的な察知能力の高いクレハとレシィ、そしてフォーキャスターというクラス故非常に察知能力の高い彼は比較的それに気づきやすかったのだと思われる。
 ……そしてその後、不吉な違和感に続いて突如現れた謎の「穴」の出現から始まった事件が、彼とシャルリシア寮生に宿命を歩ませる事態となったのであるが……事の顛末は第十二話を参照。

 彼はかねてより、ずっと「力」を欲してきた。
 彼の生まれ育った村は、力のない存在を認めなかった。生まれた場所のために身を尽くしたいという願いすら、力のなさを理由に跳ね除けられた。
 そして誰も、彼が力を得ることを望まなかった。それをあきらめていた。そのことが彼にとってずっと、苦痛の記憶だったのだ。
 アルゼオとの出会いにより、力ではなく徳や知で人を導いていくことを知った彼は、他の人間から見れば、アルゼオの後を継ぐにふさわしい戦術師であり、プリフェクトであるように見えた。だが、心の奥底の苦しみは、それを受けた記憶は、決してその姿を消したわけではなかった。
 かつてキャンプ実習にて密かに魔族に襲われたことにより、彼はそれを発見されてしまった。そして、その記憶をずっと刺激され続けてしまった。アルゼオからへの恩義と、人々の期待に答える心に厚い彼は長い間悪魔のささやきに抵抗し続けてはいたのだが、ついには今なお自身の弱さがくすぶっていることを他人へと話せなかったため、ずっと一人で耐え続けるを得ず、それゆえについには、意志を悪魔へ手放してしまったのだ。
 しかし、彼はシャルリシア寮生との戦いの間、自身では力を得たことによりその弱さを振り切ったと言っておきながら、自身の目の前に立つ者達が次々と悪魔の力を否定し、己の心と信念を持って戦い抜く人々の姿に動揺し、ついにはその動きを鈍くしていた。……なぜなら、その強さこそ、自分が本当に得たかったものだったからだ。
 一度悪魔に心を売った代償は重く、彼は未だにアルゼオともども、目を覚ませずにいる。しかし、もしもう一度目が覚めたなら。
 あの戦いの中、圧倒的な敵の強さにもかかわらず、誘惑にも絶望にも負けず、勝つための道を信じて戦い続ける人の強さに真に気づけていたのなら、もう、心の弱さに折れることもないかもしれない。
 ……今はただ、全てが良い形で終わることを願うのみだ。

アルゼオ・ヴェルダース

種族:ヒューリン 性別:男性 メインクラス:ソーサラー サブクラス:フォーキャスター
年齢:22歳 所属学部:法学部 サブ学部:錬金術学部 所属部:なし(帰宅部) 登場話:第一話第二話第四話第六話第八話第九話第十一話第十二話第十四話(回想&手紙)、第十五話(回想)
 エルクレスト・カレッジのカリキュラムを受けきって、来年に卒業を残すのみとなっている青年。実はかつてのブルギニオン寮プリフェクトであり、学内においてはそれ以上の影響力を持つほどの男であったのだが、どういうわけか急にプリフェクトの役目を後任(ダバラン)に譲り渡したのを初め、あらゆる学内活動の任を降り、参加しないようになってしまった。
 すでに卒業後の就職先も決まっており、取るべき単位もない彼は、まるで隠遁した老人のように構えて、学内の自室で自身が卒業したあとのこの学園の事を考え、物思いに耽っている。といわれているが、彼の胸のうちを知るものは少ない。
 だが、シャルリシア寮創設というエルクレスト・カレッジ始まって以来の試みを聞いてから、彼はそれに強く興味を持ったという。実際に第一話でその試験が始まった時は、まるで迎え入れるかのような態度で4人を待ち、そして現れたレシィに、エルクレスト・カレッジのこれからを彼らが良くしていくという希望を自身が持っていることを、自身で彼らのために集めたという幾ばくの署名と共に告げるのだった。
 ジャックとは彼がブルギニオン寮生であったころからの付き合いがあり、不良然とした態度ゆえ、教員をはじめさまざまなところから目をつけられやすいジャックのことを時には表立って、時には影ながらサポートすることによって、ジャックのことが大きな問題にはならないよう手を回しているようだ。なぜ彼がジャックにそこまでするのか、ということについて、彼は「ジャックはエルクレスト・カレッジをよりよくしていくための力になってくれる人材だからだ」と答える。素行がお世辞にもいいとは言えないジャックが、どうこの学園をよくしていくというのか周囲の人物は全く理解できない事だったが、彼はそれでもジャックを信じているようで、シャルリシア寮への移動推薦までもを行なったのである。
 第二話では、ジャックにシャルリシア寮への移動を認めさせたほか、ジャックが眷属の花探しの途中でエンジェの部屋に入らなければならない時、学内では不良として名が通っている自身が、女生徒の部屋にそのまま入るのは問題があるのではないかと考えたことで、その中継に入ってもらうために自室を訪れられた。アルゼオはそんなジャックに対して一度冗談っぽく笑顔を向けた後、快く了承してエンジェとの中継役を勤めた後、さらなる支援として、学内の宝物庫から「護りの指輪」を取り出してきて彼に渡したのだった。
 第四話の冒頭において、「赤い服の」マリーに取り憑かれていたジャックの容態を案じて医務室に来ており、ジャックが無事らしいとわかると、安心した表情を浮かべていた。
 第六話においては、その物語前に、ジャックに「指導の名人」といわれる男がエルクレストにやってきており、その教えを受けられれば、ジャックに何か新しい道が開けるのではないかと進言し、ジャックを行動させている。そして、ジャックがその指導も受け終えて、新たな戦術を見出したあと開催されたのシャルリシア寮歓待パーティーにおいて、予想通りというべきか、周りとあまり触れ合わずに端の方に一人でいるジャックへ声をかけ、彼とシャルリシア寮に乾杯を上げた。また、その中で結局、その「指導の名人」といわれる男が何者で、例えば弟子をとるなどといった目的もなさそうに、なぜ世界中を回っているのかということをジャックと話し合う。そしてジャックから、ディアロと名乗ったその男の体には「Ⅻ」の文字が刻まれていたことを知ると、もしそのような力を持つエクスマキナが他にも存在するということであるとするなら、それこそなんのために、その者たちは存在しているのだろうかという疑念を口にしたのであった。
 また、その後は学園七不思議の謎を追い求めるジャックに訪れられる形で再登場し、自身の知りうる情報を語り、また美術品の作成強力にも、ジャックの頼みということで快く引き受けていた。
 第八話では道行くレシィを見つけて、彼を呼び止めて話をしていた。内容はレシィに最近いいことがあったのではないかということと、レシィの素性(邪神の祝福)がシャルリシア寮の他のメンバーにも知られたことが、何か変化をもたらしたかという問いであったが、前者はレシィにとっては確かにその通り(第七話参照)であり、後者については、みんな変わりなく接してくれていると確かに答えられたレシィの姿を見て、彼は満足げにうなずき、シャルリシア寮生同士の絆の強さと大切さを語ったのだった。
 その時の会話については、彼はただ、「全員の力を一丸とし、学園をよりよくしてほしい」という形でまとめ、それ以外に言ったことについてはそこまで重要ではない、とレシィに聞かせた彼だったが、そういった割には、去っていくレシィを見つめる彼の視線は、何かを心配していそうなものであり、彼がレシィ達に話せない何かを抱えているのではないかと思わせるのであった。
 第九話では第十話Bへの導入部において、メギアムにまつわる話を聞かされ、ミトクレハと共に、危険がありうると知りながらエルーランへと向かう決意をしたジャックに、書置きを託された形で登場した。それを読み終えた彼は、ジャックの運命とでもいうべきものに思いをはせたようで、彼が今エルーランに行くということは、彼が自身の家と今一度向き合うことになるであろうということを予測し、それでもなお、それが今ジャックのするべきことなのだと一人語っていた。どうやら、彼も何かを知っている、もしくは感付いているようである。
 第十一話では、あまり人付き合いの多くないジャックのために、自身はある用事のため動けないとしながら、シャルリシア寮へエルクレスト祭準備のため加勢させる人員について何名かを用意してくれるという形で登場したが、それについて礼を述べるジャックを制した後、先のエルーランの一件の中、アルマー家と接触したのではないかと聞き、その結果ジャックがアルマー家を……母親をどのように思うようになったかと聞いた。ジャックが事の顛末を説明した上で、総評としてあえて「今は分からない」と発言したのを聞いた彼は、今ジャックがそう考えたことを支持したいと言うのだった。過去にあれだけの確執を抱え、今なお消えない傷跡を残したジャックとアルマー家の……母親との関係。その上で、ジャックは「今後」について考えていく選択肢を選んだ。そのことが、彼にとってはジャックに必要な一歩であったと考えていたらしい。
 さらに彼は、ジャックがエンザを嫌う理由についても質問したのだが、「性格として合わないのと、何か隠していることがあるような気がしてしまう」というジャックの答えには、それについてまるで何かを知っているようでありながらも、自分からそれを語ることはできないがと言いつつ、ただ、「人の考えに間違いはないが、知らずにいるということはある」ということと、「エンザ先生は誰よりもシャルリシア寮生達のことを案じていることを信じてあげてほしい」ということを伝え、一応その場ではジャックを頷かせたのだった。また、そこでジャックが退室する間際、「自分の方で応援は用意したが、真に頼れるのは互いに信頼し合える者達のはず」という意味深な言葉を投げかけ、ジャックはその後、ジャックから言い出さずともジャックのことを信頼してやってきた。デアスをはじめとした数名の生徒達に協力を申し込まれることとなり、どうやらアルゼオはこのことまで予感していらしいのだった。
 その後、ダバランに彼の周りに起こっているという謎の「違和感」の相談をされる形で再登場する。どうやら、ジャックに対し「自分はやるべきことがある」と答えていたのはその関連であったらしい。そもそもダバランからの主観でしかないその事柄に対し、ダバランを深く信頼している彼はそれでも気にかけ、独自に調査していたようではあったが、そもそもダバランだけに見えているという現象を調べるというのはまるで雲をつかむようなことである。また、時間をかけたことでダバラン以外にその現象の目撃者がいないことを確認していた彼は、万が一の時のためにシャルリシア寮生達に協力を取り付けることを提案し、そして実際にダバランと共にシャルリシア寮を訪れ、それを成している。
 かつて敏腕プリフェクトとして多くの人を使ってきた経験からか、クレハやダバランなど自分の問題や他人の問題まで自身の中に抱え込んでしまう人間が多い中、彼は自身が信頼できると考えた相手に関しては頼ることをいとわないようで、特にシャルリシア寮に関しては「学園の不安事に関して知らされず、頼られずにいる方が彼らは失望するに違いない」と確信しているという意識すら持っていた。しかし、そこまでシャルリシア寮生達を信頼している一方、自ら「まだエンザ先生が話していないなら自分からは語れない」とジャックに言ったことなど、何かしらシャルリシア寮生達が知らない何かを知っているらしい態度は何度か見せている。特に、「ダバランとシャルリシア寮生達だけに見えているらしいものがある」と聞いたときには珍しくその顔を驚愕に染めており、またその事をエンザに伝えた際は、エンザも同様に驚愕していたのである。……しかし、それらに一体何の意味があるのかは、まだ誰も知ることではない。
 結局エルクレスト祭の終焉近くまで何事もなかったとはいえ、その現象自体はむしろ頻度を増しているというダバランの報告と疑問を受けつつ、今は引き続き報告してもらうしかないという彼の胸中は、穏やかではなかった。
 そして、その「違和感」の事件は、さらにダバランたちが謎の「穴」を発見してしまうことで、さらなる展開を見せることとなったのだが……事の顛末は第十二話参照。

 学園内においては、生徒先生関わらず信用される立場にあり、ダバラン、マルティン、ジャックといった多くの者達を導いた実績もある彼は、シャルリシア寮の創設、及びそれにともない計7人の少年少女をシャルリシア寮に集め、彼女らの内に潜む「心の魔」への抵抗のため、学内で人々との絆を育むというエンザ主導の計画を、生徒という立場にあるものの中では唯一あらかじめ聞かされていた存在であった。
 自分自らブルギニオン寮を任せたということもあったため、ダバランがシャルリシア寮へ移るという計画にだけは、ブルギニオン寮に残りたいというダバランの願いを指示する形で崩してしまったものの、誰もが自身の意思で健やかに育てる世を願う彼にとって、その計画はもはや自分の本位ともいえることであり、そこにダバランやジャックといった自分が目をかけ、将来を期待する人物が関わっているともなれば、それはなおのことであり、シャルリシア寮生のことを深く気にかけ、多くの面で支持をしていたのであるが、人の心を乗っ取ってしまうという「心の魔」が、もし本当に誰かの心を乗っ取ってしまった時の奥の手として、彼はあるマジックアイテムを調達していた。それが、シャルリシア寮生及び特別教導実践部との戦いにおいて疲弊したダバランを取り押さえた際に使用したあの石であったようで、その結果ダバランとアルゼオは今共に意識不明となってしまっているわけなのだが……
 第十四話では、彼がかつてレシィに、もしフォーキャスターとしての術を学びたいという事があれば、自分が教えようとかつて語っていたことがきっかけで、レシィは今、自身の新たな力としてフォーキャスターの術を覚えることを選択し、そのための糧になる物を求めてアルゼオの部屋へとやってくる展開があった。だが、そんなレシィに発見されることをまるで待っていたかのように、フォーキャスターについては全く素人となるレシィにわかりやすいよう、手引書としての兵法書に、さらに解説や要点要約のメモを加えたものが部屋には残されており、メモの筆跡や内容からしても、それはアルゼオのものに間違いなく。彼がレシィがいつかその術を必要としたときのために、あらかじめ準備をしてくれていたことをレシィは知った。そしてそれが、今は傍にいることのできなくなってしまった彼からの激励のように思えただろうレシィは、非情に熱心にそれを読み込み、そこから特別教導実践部救出に向かうわずかな時間の間で、フォーキャスターとしての基礎を身に付けるに至ったのだった。
 また、特別教導実践部の救出を終え、いよいよアヴァロンに向かおうとしているシャルリシア寮生達の元へ送られた、マルティンが彼の部屋から発見したものだという手紙の中にも、彼の意思は残されていたようだった。その内容はたとえどんな時でも、自分を、エンザを、みんなを信じることが希望へつながるという事を強調し、そしてそれをシャルリシア寮生達が「信じて」くれることを願うというものであったが、手紙は正式なものとしてではなく、便箋そのままといった状態で残されていたものであったため、彼が伝えようとした言葉がそれだけであったのか、あるいは何かそれを手紙に残すことをためらう理由があったのかということは定かではなかった。しかし、それを目にしたマルティンはシャルリシア寮生を信じて今は待つ決意、そして未来に希望があることを信じる決意を更に固めたのである。
 続く第十五話においては、アヴァロンのモルガン・ル・フェイの口により、シャルリシア寮が設立されるよりも前に、彼がアヴァロンに訪れ、心の魔への対抗策を知るべくエーエルに会おうとしていたことがあるという事実が明かになった。結局、対面を望まなかったエーエルと直接出会うことはなかったが、その時にその代わりとばかりに押し付けられたのが、ダバラン封印の際に使用した道具であったらしい。ただ純粋に、心の魔と言う理不尽な脅威にさらされることになった後輩たちのことを憂い、そのための行動を惜しまず、アヴァロンにまで到着していた彼の心と行動にどのような価値があったのか。それは、シャルリシア寮生達が示していけることであろう……

ウィン・ガスタ

種族:ヒューリン 性別:女性 メインクラス:メイジ サブクラス:サモナー
年齢:14歳 所属学部:魔法学部(精霊) サブ学部:魔法学部(召喚) 所属部:精霊研究部 登場話:第二話第七話
NPCステータス
 風の精霊に好かれる素養のあるという少女。少し臆病だが、根はとても明るく、優しい性格である。元々は地方のとある部族の出身だといい、そこでは若くして部族の巫女のような役職についていたというが、風の魔法のことをもっと学びたいという彼女の事を部族全員が理解してあげた事で、エリンディルにおいて魔法を学ぶ事に右に出るものなしとされるエルクレスト・カレッジにやってきた経緯があるようである。
 精霊研究部に所属しており、そのメンバーの中でも特にエリアとは所属寮が同じという事もあってか大の仲良しで、ほぼいつも一緒にいるといっていい。優しいが臆病なため行動力に欠ける彼女を、静かだがしたたかなエリアがサポートする、いいコンビであるようだ。
 ちなみに、先述した部族の巫女としての特徴ゆえか、風の属性を持つ生物と意思疎通を図ることにかけては驚くべき素質があるようだが、敵意を持った相手に同調する事が苦手なので、あまり戦闘の役には立たないようだ。なお、ファミリアは小さい竜のような形をしている生物で、彼女は「プチ」と呼んでいる。
 第一話にて、1限目のブルギニオン寮に彼女とエリアがいるという情報を4人は得たが、会いに行くことはなかった。
 第二話ではエリア、ライナと一緒に、精霊研究部の部室に咲いていた眷属の花を観察していた。
 第七話では精霊研究部の一員としてキャンプ実習に参加しており、その中でもいつもどおり、仲良しのエリアとよくつるんで、各種作業やレクリエーションに携わっていたようである。だが部をそのまま班とした彼女達はもちろん6人で共同作業をすることも多く、少女5人に囲まれてキャンプをすることとなったダルクには男性陣からの非難(というかやっかみ)が集中し、恋の座談会においてそれは爆発することになるのだった。

エリア・アオイ

種族:ヒューリン 性別:女性 メインクラス:メイジ サブクラス:サモナー
年齢:14歳 所属学部:魔法学部(精霊) サブ学部:魔法学部(召喚) 所属部:精霊研究部 登場話:第二話第七話
NPCステータス
 水の精霊に好かれる素養のあるという少女。あまり騒がないため全体的に落ち着いた印象を与えるが、根は割と活発というか、行動的な性格をしている。サモナーとしての術を学び始めた時に得た、自身のファミリアである何やらワニのような頭部に人間の体がついたような生物に「ギゴ」と名をつけ、普通の召喚士がファミリアにする以上に可愛がっているらしい。最近、自身に水の魔術師としての実力が備わっていくのにつれてギゴもまた成長していっているらしいということに気づき、将来どんな姿になるのか楽しみにしているという。
 精霊研究部に所属しており、そのメンバーの中でも特にウィンとは所属寮が同じという事もあってか大の仲良しで、ほぼいつも一緒にいるといっていい。社交的だがもの静かな彼女の印象を、臆病だが明るいウィンが緩和する、いいコンビであるようだ。
 第一話にて、1限目のブルギノン寮に彼女とウィンがいるという情報を4人は得たが、会いに行くことはなかった。
 第二話ではウィン、ライナと一緒に、精霊研究部の部室に咲いていた眷属の花を観察していた。
 第七話では精霊研究部の一員としてキャンプ実習に参加しており、やはりその中でもウィンと特に行動を共にして、彼女に色々ひっぱられていたようだが、なんだかんだで楽しんでいたようである。なお、ダルクのことは別にどうと思っているわけでもないのだが、マイナス印象でもないため、恋の座談会において彼の評価について発言するきっかけがあった際、彼が男子から非難の言葉に串刺しにされる要因を作っていたのであった。

エンジェ・ウィラン

種族:ドラゴネット(アンスロック) 性別:女性 メインクラス:プリースト サブクラス:プリーチャー
年齢:17歳 所属学部:神学部 サブ学部:使徒学部(探索) 所属部:特別教導実践部 登場話:第二話第三話第六話第七話第十一話第十二話第十四話第十五話第十六話
 彼女もまた多くのプリーチャーと同じく、自らにはセフィロスに授けられた使命があるとしている。彼女の場合はそれは自らの力を人々の役に立てる事であると感じ、故郷で活動していたようだが、誰からも必要とされるような強い人間に成長するためにはエルクレスト・カレッジに来るべきだというエンザの勧めに乗り、学園に入学してきた。
 アンスロックの例に漏れず、彼女もまた軽い予知能力的なものを持っているようで、丁寧で慈愛にあふれた性格ながら、言動やたたずまいからはどこか別世界のもののような神秘的感覚を与える。また、同じ部活の仲間であるフェイエンとは特に仲がいいようで、学内ではよく、彼女と一緒にいるところが見られる。
 第一話にて、3限目のオルランド寮に彼女とフェイエンがいるという情報を4人は得たが、会いに行くことはなかった。
 第二話では寮内の自室に眷属の花が咲いてしまっており、また自身の予知能力によって、その花が何かしら邪悪なものにつながっているという予感を感じてはいったものの、結局のところそのことはあまり気にかけていなかったようで、特に騒がずいつもどおりの生活をおくっていた。その後、ジャックが、中継役のアルゼオと一緒に自室を訪れた時は、求められるままに花を差し出し、また、ジャックにその花は危険なものと繋がっているかもしれないとアドバイスするのだった。
 ちなみに、学内(特にブルギニオン寮内)では結構名前が通った存在であるジャックだが、あまり表立った場所には出ない性格ゆえか、彼女はジャックのことを知らなかったようだ。
 第三話では、ハナに連れられた仲間の一員として登場した。彼女はハートフルアンブレラについてはほぼ全く興味を持っていなかったものの、必死な様子のハナに助けを求められ、その力となることを了解したのである。そのような経緯であるので、パーティのリーダーはハナということになってはいたのだが、実際の所一同をまとめ、ダンジョン棟の部屋を突破するため、中心となって尽力していたのは彼女である事をここに記しておこう。また、シャルリシア寮の面々との直接対決で敗北し、さらにハナがリャナンシーの言葉からまるで逃げるように去ってしまったあとも、ひとまずこの場を去ることを一番に提案し、残った4人をまとめて引き上げていった。
 第六話では、シャルリシア寮の歓待パーティーに出席しており、同じ「特別教導実践部」の部員であるイッシー、フェイエンと共にシャルリシア寮のところへやってきた。そしてイッシーがミトに、フェイエンがレシィにグラスを持たせていたのを見て、自分はジャックをその相手に選び、乾杯をあげたのであった。
 第七話では、特別教導実践部としてキャンプ実習に参加しており、いつもどおりフェイエンを押さえつつ、各種活動に参加していた。恋の座談会にも参加し、その場を盛り上げる一員となっていたがなんだかテンションがあがってきてしまったフェイエンが即興でコンサートを開き始めると、さすがに頭を抱えたが、生徒たちには存外好評であったのと、主催であるフィシルがそんなフェイエンの姿も彼女なりの愛の語り方だと認めたことによって、止めることはしなかった。
 第十一話ではシャルリシア寮生のエルクレスト祭準備に際し、自身を除く特別教導実践部の3名を主戦力として送るというチーフの言葉に賛同し、途中でたまたま一緒になったサーニャナタフと共にジャックのところへやってきて、その未来予知の能力を使ってかデアスにそのままでは凶兆が見える(ゴーレムにこだわったり変に気負ったりすると失敗する)と警告もしつつ、エルクレスト祭の準備を手伝うことを柔らかに申し出ていたのだった。
 その後の手伝いでは大いに働いていたのはもちろんだが、彼女が手伝いをしていた時にたまたま事故があり、それにミルカと彼女がいち早く気づいたことで、大きな被害を防いだりするなどの功績を残していた。
 第十二話の開始される頃に、彼女の予知能力は大きな危険がシャルリシア寮生に迫っていることを伝えており、その警告を元にチーフが調べたところ、シャルリシア寮生達がダバランに注意を促されたことに始まる、謎の「影」にまつわる事件についてに特別教導実践部の4名が感付くことになった。そこで、彼女を含めた4人は闘技大会予行の開催前の挨拶と、その件について何か協力したいとシャルリシア寮生達のところにやってきてており、その件を警戒していたシャルリシア寮生から詳しく話を聞くことができるも、その段階では結局、特に手伝えるようなことは解明できなかったため、その場ではそのまま別れることとなる。
 しかし、自身らも闘技大会予行でシャルリシア寮生同様華々しい戦果を挙げたのち、その後シャルリシア寮生がアルゼオ救出のために学園内に生まれた謎の「穴」に乗り込んでいった際に、なぜかシャルリシア寮生とダバランにしか見えぬはずだったその「穴」を、他の特別教導部の3人ともども知覚できるということがわかったのである。その時彼女は、自らの予知能力がその穴に入ること自体に危険なことは恐らくないであろうと告げられていることを3人に伝え、一同のシャルリシア寮生を追って中へ侵入する決意を更に固めさせたのだった。
 そして、その穴の中でシャルリシア寮生達と共に、豹変したダバランに立ち向かうことになったのだが、プリーストでありながら、大きな威力を持つ、彼女の光の竜をかたどった魔法は、ダバランの策略により設置された像の破壊に貢献した他、癒しの魔法ももはや倒れる寸前だったミトを再度立ち上がらせ、そして、自身に刃を向ける相手、ダバランに対して、力に溺れる者は破滅に導かれるということを説くだけでなく、自分達ブルギニオン寮の生徒に尽くしてくれたダバランを、なんとしても救うと宣言してみせ、ダバランの心を揺さぶることにも結果的に貢献していた。
 ダバランとアルゼオが共に倒れ、「穴」より帰還してからは、エルヴィラに連れられるシャルリシア寮生達を見届けつつ、自身のいるべきところに帰ったはずのだが、  第十三話においてはなぜか、あれほどシャルリシア寮生達の安否を気遣っていたにもかかわらず、シャルリシア寮生達が帰還したところに集まった生徒たちの中に、彼と他の3人、特別教導実践部が全員不在であった。そしてその後も一向に発見できず、おそらくちょうどその前くらいから特別教導部4名もまた行方不明となってしまっていたということが発覚し、多くの生徒が彼らを探す事態となった。
 第十四話では、かくしてその穴の中にいた彼女らと、それに合流したシャルリシア寮生の、異世界の存在との戦いが繰り広げられることとなった。事の詳細は第十四話を参照。
 それもまたその予知能力ゆえか、近頃のシャルリシア寮生の……そして、エンザの将来にかねてより不安を感じ始めていたという彼女は、多くのことを考えるようになっていた。シャルリシア寮生に取りつく、「心の魔」の正体について、姿を消したシャルリシア寮生と、それを追ったエンザの安否について、そして……シャルリシア寮生も自分達も「異世界の因子」を持ち、そしてそんな自分達がそれぞれエンザによって今の環境に導かれたということについて。
 異世界の存在により、他の3人と引き離されてもなお、彼女はそうやって人々の、そして自分の未来に立ちこめる暗雲についてを考えており、また、おそらくシャルリシア寮生の身に今降りかかっていることも、決して良きことではないのだろうという、もはや確信のような予感もあり、その心は決して晴れやかなものではなかった。……しかし、合流した他の特別教導実践部のメンバーと共に、シャルリシア寮生達が自分を助けるためにやってきてくれたことを確認したその時、彼女は悟る。シャルリシア寮生達が、そのような暗雲や苦難に負けずと、自身の意思を奮い立たせて、自身のすべきことを選択している存在であることを。
 そしてそれと同時に、エンジェは気づきなおすことがあった。未来を予知する能力を持った自身にとっても、未来とは常に光と闇、それを可能性として併せ持つものであり、それが最終的にどちらになるかは、その未来に向かって歩んでいく人の努力に他ならないのだと。
 「VR」を得たことで別世界の自身となる存在の記憶や情報も得た彼女は、その時悩みも迷いもなく、今自分達を脅かす敵と戦う決意をすることができた。それが自分の未来を選択する努力であり、そしてこの場にいる人全てが、それを支え、共に歩んでくれることを知っていたからだ。異世界の中では彼女の心の中に根ざすセフィロスのお告げも聞こえることはないが、彼女は決して、導きを求めなければ道を探せない人間ではないのだ。そして、その迷いなき心かな放たれる氷の障壁のような防護魔術と、光の竜を呼び出したかのような攻撃魔術は、彼女の信じた味方を護り、そして彼女の信じた敵を討ち倒す力に、確かに変わっていた。
 ……しかし、異世界の存在との戦いを終えたあと、エルヴィラを通じてシャルリシア寮生がどのような状態であったのかを知らされた彼女達であったが、彼女はその中で、エンザはシャルリシア寮生を逃がすために足止めをし、行方不明となっていることを聞かされた際、あまりにも強い負の予感を感じてしまったらしい。彼女はその場でそれを口に出すことこそしなかったようだが、その時顔がこわばったことを、チーフには見逃されていなかったようである……

シズナ・ミナモリ

種族:ヒューリン 性別:女性 メインクラス:パラディン サブクラス:カンナギ
年齢:16歳 所属学部:神学部 サブ学部:使徒学部(戦闘) 所属部:保険委員会 登場話:第一話第三話第六話第九話第十一話第十二話第十三話第十六話
NPCステータス
 東方に伝わる秘術を用い、神力を操るという少女。かなり冷めた性格をしており、基本的に物事に楽しそうに接したりする事はなく、もし彼女の笑顔を見たら世界は破滅するのではないかとまで学内で噂されるほどである。しかし、意外な優しさを持っているらしく、困った人に対しては何も言わず助力したり、問題を解決したりしてくれるらしい。ただし、なぜか自分も同族でありながらヒューリンだけは助けてくれないこともあるので、不思議がられてもいる。
 第一話ミルカに署名を求められるも、そんな彼女に「人の子の平穏のためにその身を捧げる覚悟があるか」という意味深な言葉を投げかける。それを受けたミルカは、自分は誰かのため、などということのためだけに生きているわけではないし、そういうふうに生きるつもりもないということをシズナにつげると、彼女はミルカに完全に興味を失ったかのように、その場を去ってしまうのだった。
 この時のことは彼女にとって未だに大きな意味を持っているようで、第三話においてはミルカは信頼に足るような人物ではないのではないか、とレシィに質問するも、彼がミルカに全幅の信頼を寄せている答えをした時には、それが気に入らない様子を見せていた。また、自分(レシィ)とシズナもまた仲間じゃないかといわれると、口では気持ちは嬉しいといいながらも、まるで拒絶するように去ってしまうのだった。
 その後、ハートフルアンブレラ争奪戦、最後の番人の間においてハナの仲間の一員として再登場。どうやらハナに戦闘で役立つ仲間を探していると頼まれたらしいが、彼女はこれを快く引き受けているという。そうしてシャルリシア寮の面々との戦闘に入ると、明らかにミルカに対して過剰な敵意を向けてきており、それは自身が倒れ、パーティの敗北が決定した後もなお途絶える事はなかった。しかし、戦闘は終わったのだからもうよせというナタフのとりなしもあってか、最終的には敗北した事を認め、他の仲間と同じようにダンジョン棟を去った。
 第六話では、シャルリシア寮の歓待パーティーに、保健委員会委員長のマリーと共に現れている。しかし、それでいて特に誰と話そうともしていなかったところを、レシィと会話していたマリーに呼び寄せられ、こういう時には言うべき言葉があるだろう、ということで、少しためらないながらも、彼女はレシィに祝いの言葉を述べたのであった。しかし、その一方でシャルリシア寮全体にもその言葉を投げかけるべきなのではないかと言われた際には、ミルカの方に視線をやり、それを嫌悪したような態度で拒否していた。マリーいわく、「変なところにこだわる」とのこと。
 第九話では、ナタフと何やら言い争っていた直後レシィのそばを通りかかったのだが、彼女はレシィの姿を発見すると、彼女はセイが起こしたミルカへの事件(第七話参照)をなぜかしっていたらしく、それ以降、ミルカがどのようにセイを恐れているかということを聞いたのだが、彼女の予想に反し、ミルカはセイを怒ったり恐れたりはしておらず、むしろさらにその力になる努力をしているということを聞かされ、驚きを見せていた。そして、レシィからのミルカへの信頼がいまだ相当に強いものであることもまた感じ取った彼女であったが、また険しい顔つきに戻ると、もう話すことはないとその場を後にしようとした。ただ、彼女の尋常でない様子に思わずレシィが制止をかけるも、そうしたレシィを腕の一振りで大きく吹き飛ばすといったことをしており、彼女の中に底知れない力がある予感をレシィと、そしてゴースト故に壁の中から様子をうかがっていたウィルテールに与え、去って行ったのであった。
 その後、セイの元へと向かうミルカに道中で出くわす形で再登場し、彼女はミルカを呼び止め、なぜミルカがまだセイのところへ行くのか、行ってどうするつもりかということを聞くのであったが、その答えに明確に、セイの力になりたいということを返された彼女は、その後もう一度、彼女とミルカが最初に会った時以来となる質問、「人の子の平穏のために、その身を掲げる覚悟があるか」と言う言葉を投げかけた。そして、それに対しミルカは、自分を必要としてくれる相手になら、そうすることもできると答え直し、それは彼女に大きなショックを与えたようであった。
 彼女はミルカに語るのではなく、自分だけ呟くような様子で、なぜあのように答えた人間が、ここまで他人のためを思って行動できるのだと戸惑っていたようだったが、それを悟らせる暇をミルカに与えぬまま、もう行け、とその歩みを止めたのだった。
 しかし、また走っていくミルカを見送る彼女の目は、憤りのようなものに満ちており、その両手には強く拳が握られていたのである。彼女にミルカに抱く気持ちは、今掃討に複雑な状態にあると思われる。
 また、この時なぜ彼女がセイの元へ向かっていたのか、と言うことは定かではないが、ミルカとの会話時に相手は瘴気に操られたものだ、と発言していたこと、そしてそのセイのいる場所の近くに、ナタフがまるで先回りするかのように待っていたことを考えると、あまり穏やかな状況ではなかった可能性もある。
 第十一話でも登場しており、保健委員会の活動中にやってきて、レシィにシャルリシア寮のエルクレスト祭準備を手伝うことを宣言し始めたフェイエンメンファの話の流れで、マリーより彼女も手伝うべきなのではないかと言われる。そしてそれを了承するも、なぜかミルカとは会わせないで、という条件を付けたし、その説明をすることなく去ってしまう。その不可思議さは後にレシィと会話したウィルテールが改めて疑問にあげるほどであったが、彼女が多くを語ろうとせず、またほとんど心を開こうとしていないことからやはり推測も難しい状況だ。
 ちなみに、彼女に配慮してシャルリシア寮生側は彼女をミルカと極力会わせないという約束を守ったため、彼女はしっかりとエルクレスト祭の準備を手伝っていたようである。
 続く第十二話では聖戦士ならではの攻守ともに高いレベルで安定した能力を買われ、闘技大会予行のメンバーに選ばれるが、やはり彼女の意見を配慮し、組んだシャルリシア寮生はジャックラピスの二人であった。そして彼女を含めた各員の活躍があり、見事勝利を得ることに成功したのであったが、戦闘後の控室にて、彼女はなぜかジャックとラピスの二人だけに「あなたは人の子のためにその身をささげる覚悟があるか」ということを聞き、しかもそれに答えた二人を、まるで見限るかのようなことを言うのだった。
  そしてリュミルの行動により、シャルリシア寮生達がバウラスの力を得た転送石で飛ばされてしまった後、そのリュミルがエルクレストを脱出しようとしていた際の会話、及び、シャルリシア寮生達が飛ばされた先の建物で発見した名簿のような石板によって、彼とシズナがリュミルの、ひいてはバウラスの仲間であることが発覚する。どうやら、彼女たちはヒューリンをどういう意味でか特別視しているらしく、かつてすでに同じことを聞いたミルカを除き、ジャックとラピスにだけ彼女が質問したのはそういう理由であるらしい。ちなみに、今まで二人にその質問をしなかった理由は、シズナにとってラピスもジャックも、自分同様自身やその周りの者にとらわれることなく、世界のために命を賭すことができる人物なのではないかと思えていたからというのだが……
 そして続く第十三話で、彼らの正体が「炎の使徒」というヒューリンにかつて下された神の使命に殉じようとする集団であることの仔細がナタフの口から判明し、彼女は人の身にまとわりつくあらゆる「欲」を神の使命で超越し、全てを人の世の平穏に捧げるべきだという思考を持っており、それゆえに、それに縛られている一般社会を憎んでいるということがわかる。そして彼女はその想いを叫びつつ、ナタフとの舌戦、そしてシャルリシア寮生達との戦いを繰り広げることになったが……事の顛末は第十三話を参照。

 彼女の生まれた家は、東方にある名家であり、彼女は幼き頃より神話と、神に仕える存在としてのありようを聞き、そしてそれを理想として育っていた。しかし、彼女が成長したある時、魔族との大きな戦いに徴兵されることを、家族や街のためにと拒否する父母の見てしまう。しかし、彼女は常日頃より自分へ神の愛と教えを説いていた者から、その言葉の裏切りとなる行為をされたと感じ、怒りと失望を持ってその事実を人々に伝えた。
 だが、当家の娘である彼女の言葉を聞いても、街の人間はそれを断罪するどころか、怒ることすらしなかった。彼らはその理由を様々に、様々な表情で語ったが、それらを受けた彼女の結論は一つ。「人は自分のため、自分達のためなら、それより多くの人が傷つこうと見ないふりをするのだ」ということであり、彼女はやがてその理由を人の「欲」にあると断じ、それを嫌うようになっていった。
 そんな彼女が掲げた、「世界のためになら人は全てを捨てる覚悟をしなければいけない」という思いは強いものである。
 だけど、本当は彼女とて知っていた。そんな人間になることなど、当の彼女ですらできることではない。現に、彼女はずっと、自身の思いに縛られ続けていた。そしてそれだけではなく、他の道……自分や自分の周りの人を大切にし、そのことを自身の力と変えて行動していくことが、真に救いを世界に広めていく道なのではないか……という可能性を思い浮かべてしまう自分自身に、ずっと悩んでもいた。その回数はエルクレスト・カレッジにいるにつれ、シャルリシア寮生の活動を見るにつれ多くなる。
 だからこそ、何度も何度も言葉に出して、彼女は今の世界を否定しようとしていた。心の中で、相手の言い分を認めてしまいそうになる自分がいたから。
 しかし、言葉も出し尽くし、力もぶつけ合って素の自分をさらした今、彼女の考えは、変わろうとしている。
 自分たちのことを大切にする人間は、人の笑顔を作っていくことができる。
 誰かを助けたいという願いが、無機質ではなく確かに自分の意思によるものだから、その誰かに伝わっていく。
 そうすることで、人々が助け合う世界は、少しずつ広がっていく。その可能性を、シャルリシア寮生に認めたから。
 ……いや、本当は前から、シャルリシア寮生にそれを認めていた。彼女が本当に今認めたのは、誰もがそうしていけるという可能性なのだ。……もちろん、シズナ自身も。
 長くにわたって自分の行動理念を形成してきた考えを捨てようとするのは簡単なことではない。彼女は今もまだ、自身が変化を選んでしまったことに怯え、悩んでいる。
 だが、ミルカの言う通り、今はそれでいいのだろう。
 悩んでいくということもまた、新たな自分に進んでいくためのことだということさえ、忘れなければ。
 ……ちなみに、レシィも指摘していた通り、世界を憎んでいるといいつつも保健委員会で活動していたことには矛盾があると言える。それについて、本人は「人を救う者としての務めは果たすため」としていたのだが、その実そこで活動してきたこと自体が、彼女に新たな世界の価値観を生ませていた側面があったのには違いないようだ。

ネフィ

種族:サハギン(ヒューリンと偽っていた) 性別:女性 メインクラス:ウィザード サブクラス:セージ
年齢:19歳 所属学部:法学部 サブ学部:神学部 所属部:図書委員会(委員長) 登場話:第五話第六話第九話第十一話第十三話第十四話
 第五話で登場した、ラピス属する図書委員会の委員長。
 ラピスと久しぶりに再会したファムガイブが図書館内でわいわいと話しているのに怒ったロージーをとりなしつつ一堂の前に現れ、彼女もまた、ラピスが留学でずいぶんと変わったこと(主に眼鏡)に驚き、また彼女の帰還を祝福した。
 モデルのようなスマート体系に、流れるようなブロンド、温和な人柄、そして豊富な知識と温かな対話力を持つことで、ロージーからも一目置かれる存在であり、生徒にとってもルキアノス寮のミリティス以上のパーフェクト美人として学内では評判が高いが、一方で授業中や委員会活動中以外での彼女の姿を見たという例はあまり聞かされておらず、その私生活は謎のヴェールに包まれているといっていい(そんな神秘さが人気を集めることもあるようだが)。
 第五話では先述の登場をした他、エルクレスト・カレッジ正門でふんぞり返るドゥーラを、ラピス、ファムと一緒に遠目で眺めていた際、その豊富な知識でドゥーラが「サハギン」という種族であることと、サハギンが人間に友好的な種族であることの説明を二人に行ったが、その通説で紹介するには問題あるドゥーラの態度を眺め、困ったような表情をせざるを得ないのだった。
 第六話ではラピスと共に蔵書整理をしていたところ、仰々しく現れ騒ぎ立てるドゥーラの応対をすることとなる。その中で彼女は普段の温和さとは遠いドゥーラに対する嫌悪感のようなものをラピスに垣間見せたが、すぐにドゥーラへの対応をラピスにお願いし、その場を離れてしまった。また、その後図書委員会の委員であるラピスを祝うため、シャルリシア寮歓待パーティーに他の委員と共に現れ、委員会メンバー内での乾杯の音頭をとる、学園七不思議の謎を追うラピスに訪れられ、その情報を与える、などといった形で登場していた。
 第九話ではまずラピスに、サハギンと言う種族が概してどういう種族かということを説き、その上で、ドゥーラがそれに当てはまらぬほど横暴で自分勝手であると酷評する登場をした。だが、そんなドゥーラがラピスの言葉には影響を受けているようで、自分が孤立してしまっている現状について非を考え始めてはいるようだとし、その上で、ラピスにドゥーラの力になってもらうことはできるだろうかと、お願いをかけていた。
 そしてその後、ドゥーラが再度セイを糾弾し、今度は皆を信じている、信じていたいというセイの言葉に強いショックを受けて打ちひしがれた彼を、学園の正門前で迎える形で再登場した。そこで彼女はドゥーラのことを散々にこきおろし、それではドゥーラの父の教えは届かなくて当然と切り捨てるような態度を見せた上、まるでドゥーラの父を知るかのような口ぶりに、なら全てを教えてくれと懇願するドゥーラの願いも完全に却下し、ただドゥーラに口惜しさとやるせなさと憤りを植え付けてその場を去って行った。
 その後のロージーとの会話からすると、どうやらラピスの行為を無駄にせぬべく、自分は関しないと決めていたはずのドゥーラの件に手を出すことにした、ということだったようで、まずは今のドゥーラが至らぬ存在であることを徹底的に植え付けたらしい。また、もしドゥーラが更正し、サハギンとして恥じぬ存在になれるようであれば、その時は何やら考えていることがあるということをロージーに告げ、ロージーに何かを感付かせて驚かせていた。
 すべてが終わり、瘴気の堕落像を打ち倒して、ドゥーラが「強い心」を得るために他者との支え合いが必要であることを理解した状態で戻ってくると、ドゥーラたちまたも彼女が門の前で出迎えていた。彼女は会話の中で、ドゥーラが自身の考えを改め、他者と強調する大切さをちゃんと考えられるようになったことを確認すると、それを成し遂げる力となったラピス達に感謝を述べつつ、ドゥーラ自身への非礼を詫びると言い、彼を認めるという発言をした。
 だが、それよりも、彼女自身の正体がなんなのか、というドゥーラの問いに、彼女はついにその正体を露わにした。まばゆい光が彼女の姿を包むと、そこには一人のサハギンがおり、今までのネフィの姿は、サハギンが一般的ではなかった時代に、人間を敵視するギルマンなどと混同されてしまうなどの混乱を避けるべく、あえて彼女がヒューリンに姿を変化させたものであるということを明かしたのである(なお、学園の認可を得ている)。
 彼女は実はアースランに居住していたことがあり、そこから学問のため降りてきていたのだが、そこでドゥーラの父とは知り合いであり、余裕があれば面倒を見てくれないかと任されていた。しかし、実際にやってきたドゥーラのあまりの横暴さにその気も失せていたが、ラピス達とかかわるに連れて少しずつでも思いを改める兆しを見せていたドゥーラを見て、ついに自身も助力することにしたのだ、と事象を明かしたが、彼女の正体を一番聞きたがっていたはずのドゥーラまでもが、ヒューリンの美女がまさにギョ人と言わんばかりのサハギンボディに変貌したことに驚きの言葉以外を失っていたのであった。
 ちなみに、彼女がサハギンであることが発覚したことで学内の一部分では大きな騒動が生まれたとされており、存在自体が噂であるはずの彼女のファンクラブはさすがにその数を大幅に減らしたとされているが、「だがそれでも、むしろそれがいい!」というさらに一部の学生による結束は大幅に強化され、ファンクラブ自体は今もなお存続してるとかしてないとか……
 第十一話ではエルクレスト祭でシャルリシア寮が出し物として作る巨大迷路の作戦会議として、図書館に集まったラピス、ガイブレイスに加わって、ラピスが人を救い、その結果生まれた思いがあることに改めて感心しつつ、自身は図書委員長としての業務があるのであまり手伝えないが、是非全員で力を合わせていいものを作ってほしい、というようなことを言った。
 ……のだが、この時は当たり前のようにサハギンとしての正体を明かした姿で同席しており、その姿でレイスを諭そうとしたことで軽い反感を受けたり、そんなレイスの態度をガイブが糾弾しようとするも、今なお眼前に存在するその魚体が放つショックの残滓で口ごもってしまうなど、いるだけで周囲に影響を与えていた。また、さらにドゥーラがそんな一団の中に入れてほしいとやってきたため、そこは人2:魚2:妖精1というカオスな空間となっており、いやがおうにも人目を引いていたことは想像に難くない。
 第十三話では、犠牲を払い、様々な苦難を受けて帰還したシャルリシア寮生達を心配して、また現状の確認がしたくて集まる生徒たちの一人としてシャルリシア寮を訪れており、そして様々なことを語らいあう中で、シャルリシア寮生達の中に魔族が存在するという衝撃の事実を知る。
 自身がサハギンであったということすら上回る驚異の情報に、彼女もまた少なからずショックを受けてはいたが、その一方で、事の顛末を自分達へ語ってくれたミルカ達に感心し、その前途を祈る気持ちも大いにあった。だから彼女は今、そんなシャルリシア寮生達へと自分同様、多くの生徒達が「願い」をかけているのだろうと信じ、彼女達を送り出そうと考えるのだった。
 また、第十四話では、突然行方不明になった特別教導実践部を探すために学内を動いていた人物の一人として登場しており、特別教導実践部4人の帰還の際には、急に現れたとしか言いようのない一同に不審な気持ちを持ってはいたものの、今はそれを気にするべきではないと考えたようで、同じ寮の生徒であるエンジェをはじめとした人びとの帰還を喜んだのだった。

マルティン・カナール

種族:ヒューリン 性別:男性 メインクラス:パラディン サブクラス:フォーキャスター
年齢:19歳 所属学部:法学部 サブ学部:神学部 所属部:風紀委員会(委員長) 登場話:第一話第二話第三話第六話第十一話第十三話第十四話
 アリアンロッド半公式NPC(エルクレスト・カレッジ学園ガイドで、風紀委員会の委員長であることだけが分かる人物)。
 エルクレスト・カレッジ内ではある意味有名な風紀委員長で、連日、服装や規則を乱している生徒がいないかどうかに目を光らせている。普段は理知的な態度を崩さないのだが、興奮すると一気呵成にまくしたてるようになるため、これもある意味ではやっかいな人物。ダバランとはもう長い付き合いであり、アルゼオの後任としてダバランがプリフェクトになったのも、彼の強い推薦があったゆえだという。
 第一話ミルカと対面したが、すでにダバランが彼女たちのことを認めていることを知っていた彼は、ダバランが認めた人達であれば不服は無いとして、無条件で署名を送る。またその際のミルカのいでたちに確かな知性を感じたことや、風起委員会の活動について話しあったこともあり、彼女には是非風紀委員会に来て欲しいという気持ちを持っているようだ。その後、ミルカが風起委員会を自身の委員会活動に選択してくれたので、彼にとっては願ったり適ったりと言ったところだろう。
 第二話では多数の生徒が授業を受けている時間に、たまたま暇があった彼は学内の見回りをしていたのだが、そこで授業をサボって学内を散策しているジャックを発見し、説教にかかる。しかし、授業よりも大切な事を今はしているというジャックの態度にらちがあかないと考えた彼は、ジャックの「今の事情を知っているリィーナに聞いてみろ」という言葉にのり、リィーナのところまでジャックと共に移動して、どちらの言い分が正しいのかを判断してもらう行動に出た……のだが、結果としてはリィーナに自身に免じて今回はジャックを許して欲しい、と答えられてしまったことで、しぶしぶジャックを解放することになっている。だが、これが以前から風起委員会として問題視してはいた存在であるジャックに対して、彼が明確な敵対心のようなものを抱くきっかけにもなったのである。
 第三話では、ミルカを助手として引き連れつつも、恋人同士とはいえ公の場でそう言った行為に及ぶのは全く破廉恥であるとして熱弁をふるっていたが、「でも恋は素晴らしいものですよ」とミルカにいわれると憤慨を収めてミルカの考え方に理解を示そうとする態度が見られ、彼にとってミルカの存在が非常に大きなものであることがここからも伺えた。なお、ハートフルアンブレラ争奪戦が開催される事が彼の琴線に触れるのではないかとミルカに心配されていたのだが、ダバラン達からのとりなしなどもあったようで、若干釈然としないながらも認めてはいたらしい。
 第六話では、シャルリシア寮歓待パーティーに出席し、やはりというかミルカのところまで来てそのことを祝い、乾杯をあげていた。しかしミルカについてはいつも通り非常に好意的な言葉を贈る一方で、ジャックに対しては相変わらずの態度を窘めようとしていたが、場が祝いの席ということで、さすがにおさめたようである。その後は、学園七不思議の謎を求めるミルカによって訪れられており、ミルカは何でも聞いてくれとばかりの歓迎を受けたのであった。
 第十一話ではミルカとの交流によって風紀委員会入りすることとなったマゼットを歓迎し、そのマゼットが内心引くほどに熱をもって風紀委員会について説明していた。その後マゼットに風紀委員室を案内すべく、ミルカも入れて3人でそこを目指していたが、途中でダバランに出会うとその足を中断して(というか若干本来の目的を忘れながら)最近のダバランのことを心配する発言をしていた。
 そこではダバランの希望によりミルカと二人だけで話したいと言われたことによって、彼はマゼットと共に先に風紀委員室に向かったのだが、ダバランとの会話を終えてやってきたミルカに対しては、「話せなければいいが」と前置きしつつも真っ先に何を話していたのかと尋ねていた。どうやら、それほどまでにダバランのことを気にかけていたようだが、その理由は彼は親友として、近頃のダバランの様子に何か違和感というか、このまま放っておいてはいけないような何かを感じていたかららしい。しかし、そんなダバランが自分ではなく、ミトやジャック、ミルカといったシャルリシア寮生達へ何度か相談をもちかけていることも知っていた彼は、ダバランが今抱えている何かを解消するためにはシャルリシア寮生達の力が必要なのではないかと考えたようで、ミルカに自身の親友、ダバランの力となってほしいと願うのだった。
 その後シャルロッテに絡まれたあとのミルカのところへ、マゼット共にやってくる形で再登場し、シャルロッテが巨大迷路のデモンストレーションを行うということを聞くと、シャルロッテは実力は相応にあるため、難しくしないと突破されてしまうかもしれないというようなことを言うのだったが、「突破されてこそのアトラクションである」というミルカの意見を聞くと改めてミルカのことを評価したようで、自分は風紀委員会の仕事のためあまり手伝えないだろうが、是非頑張っていいアトラクションを作ってほしいと激励するのだった。……が、彼にとってはシャルリシア寮生の生徒はミルカとレシィ以外は問題児扱いらしく、それらの生徒の手綱をしっかり握ってほしいという言葉には、ミルカは苦笑で返すほかなかった。
 第十三話ではエルヴィラアルフレッドから話を聞いた後、シャルリシア寮に他のメンバーより早く戻っていたミルカ、レシィ、ジャックのところに先んじて現れており、彼にとって仲の深い間柄のアルゼオとダバランの意識が戻る気配がないこと、シャルリシア寮生の周りから始まった事件が、今や学内全体へ不穏な雰囲気を広めてしまっているということの不安を訴えた。そこでレシィやジャックには不安になっても始まらない、と諭されたのだが、誰が何をすることもできない状況でそう言われても無理な話であると反発してしまう。
 だが、最終的にはミルカからの「自分達が希望といわれている」という言葉によって、シャルリシア寮生を信頼することで不安を乗り切ろうとする決意が生まれたようであった。……といよりも、そもそも彼はこの状況を何とかできるものがいるとするなら、シャルリシア寮生しかいないと内心思っていたからこそそこに来たわけであり、むしろ、その言葉を聞くためにやってきていたのだといっていいかもしれない。そして、去り際にはミルカ、レシィのみならず、ある種犬猿の仲であったはずのジャックにも期待を言葉にしたのであった。……彼はジャックを不良生徒として嫌ってはいるものの、ジャックがいざという時頼りになる人間であることは知ってはおり、その点は内心認めているのだ。
 第十四話では上記のやり取りの末、ジャック達に言われた通り今の自分にできることを精一杯行おうと決心していたようであり、その中で、アルゼオとダバランの今の状態について、何か情報を得ることはできないものかと、まずブルギニオン寮のアルゼオの部屋で捜索を行っていたらしい。その結果、彼の目的にそうようなものは見つけられなかったものの、引き出しの中に便箋そのままでむき出しになった手紙を発見し、その内容がシャルリシア寮生への、希望を失わないための激励の言葉であることを知って、それを届けに出発前のシャルリシア寮生達のところへ現れていた。
 その手紙は、シャルリシア寮生達にとってはいわば、エンザからの言葉をアルゼオからもう一度念を押されるようなものであったが、自身が深く信頼し尊敬する人間であったアルゼオの言葉にも、シャルリシア寮生達を信頼することが希望につながるとあったことは、彼にとってさらに恐怖や不安を和らげる要素となっていたようであり、自分達はこの学園で待っているという事を、シャルリシア寮生へ強く語ったのだった。

部長(マグナムジャガー)

種族:ヴァーナ(アウリル)※怪人 性別:女性 メインクラス:エクスプローラー サブクラス:ファランクス
年齢:年齢不詳 所属学部:不明 サブ学部:不明 所属部:陸上部(部長) 登場話:第二話第三話第四話第五話第六話第七話第八話第九話第十話B第十一話第十二話第十三話第十四話第十六話
NPCステータス
 陸上部……というか運動場に行くと高確率で出会えるという、全身鎧の少女。正確には少女だという情報すら、かつてその鎧の奥の顔を一瞬だけ眺めたというアーゼスによってそういわれているということと、声がそうっぽいというだけなので、実の所ほぼ全てが不明である。分かっているのは非常に可憐な声ながら、非常にドスが効いた矛盾しているとしか言いようのない言動をする事と、身に纏った鎧に魔力を走らせる事で、自身のあらゆる能力を強化するというファランクスのクラススキルを身につけているらしいということくらい。実は中身の少女(暫定)は時々この鎧を脱いで、何食わぬ顔で学園内を闊歩し、授業にも参加しているからこそ正体不明なのだという噂があるが、あくまで噂。なお、一応本人がブルギニオン寮の所属だと主張しているため、この欄に加えられている。
 第二話では「美人の部長がいる」というアーゼスの言葉に乗せられて陸上部に入部したクレハに強烈なインパクトを叩き込んでいった。だが、アーゼス曰く彼女は初見の割にはクレハを気に入っているらしく、実際運動場で偶然クレハと出合った際には、彼が持っている俊足のブーツを「なっちゃいない」と一喝し、その性能を底上げしてくれた。ちなみに、この時使ったのはファランクスの鎧に魔力を込める技術の応用らしいが……本当にそうなのかはやはり不明なのである。
 第三話では全力でトラックを走るクレハをまるで轢き殺そうとしているかのような勢いで追い上げるという、トレーニングというより拷問に近い方法でクレハを鍛え上げていたが、彼女にとってはこれで手ぬるい方であるといい、次の日にはさらに10週を追加するという、もはや死刑宣告にすら近くなった言葉をクレハに投げつけるのだった。合掌。
 第四話においてはなんと、その正体という秘密にクレハが迫ることとなった。尾行の結果、その鎧の中に本当に華奢なヴァーナの少女の体が隠れているらしいということを目撃したクレハであったのだが、仮面の騎士の妨害により一瞬クレハが目を離している間には、もういなくなっていた。しかし、その直前の瞬間、クレハは彼女が何やら男の大人のような形の人形を手にしていたのを確認していたのだが、それは果たして……?
 ちなみに、その後クレハが部活に出ると、運動場には規格外サイズの巨大なローラーがおかれており、彼女は一言だけ「引け」とクレハにつげた。その日の拷も……もといトレーニングは、クレハのトラウマ級にハードなものとなったという……
 第五話においてもその流れはなくなっておらず、むしろさらに重くなったのではないかというローラーをトレーニング後のクレハに引かせ、それを遥か彼方(クレハからしたら点くらいにしか見えない距離)から監視し、クレハが音を上げそうになると重厚な鎧の音を立てて少しずつ、だが確実に迫ってくるという、ラピスをして「クレハさんは心を病んでいるのではないか」と思わせたほどにクレハを追い詰める地獄の拷も……もといトレーニングをクレハに強いていた。しかし、そんなクレハにアーゼスが助けに入ったのを見て、彼女は一瞬何かを考えたように立ち止まるのだったが、結局、それを咎める事はなかった。その時、彼女が何に気づいていたのかは……あえて、語るべきことではないかもしれない。
 第六話では、シャルリシア寮歓待パーティーにてクレハのところに祝いにやってきた陸上部の面々を、もはやおなじみの重い足音で一気に震え上がらせて登場し、さらにやたらと騒いでいたアーゼスに更なるハードトレーニングプランの追加をもちかけていた。しかし、そうした緊張の中で、彼女はそう固くなるなと言い、そしてクレハの功績をたたえ、祝いの言葉を述べた。これによってその場の空気が柔らかなものになり始めたが、しかし先ほどアーゼスに伝えていたプランなるものは、彼の誘導によりクレハへその矛先を変えられていたらしく、明日の朝それを確認しておくようにという地獄の宣告を残していくのであった。
 その後、学園七不思議の謎を追い求めるクレハに訪れられる形で再登場し、意外にも(?)快く、美術品の作成支援も含めてそれを引き受けるのであった。
 第七話では、キャンプ実習に参加こそしていなかったが、覗きという不埒な話題に湧くクレハとアーゼスにまるで釘を刺すようにその姿を……というか足音を響かせてきた。効果は覿面であり、その場では彼らの行動を大人しくさせることができていたものの、彼らの無駄に熱い情熱は消されていたわけではなく、結局彼らは形は違えど、その企みを決行に移したのであった。……が、そのことは当たり前のように第八話時点では彼女の耳に届いており、部員の堕落を嘆いた彼女は「性根を叩き直す」としてさらなる新しい拷も……もといトレーニングを彼ら二人に執行し、すでに(特にクレハは)いろいろとダメージを受けていた二人をぼろ雑巾のような姿に変えて、ある意味とどめを刺したのだった。
 ちなみにその直前。彼女はクレハに対し、仮面の騎士の正体を無理に探るのはよせ、と忠告をしていた。その後がその後なのでそういわれたことがクレハの頭の中に残っているのかはなんともいえないかもしれないが、彼女がなぜそのことについて触れたのかは謎である。しかし、彼女は仮面の騎士については、「わかる時が来ればいずれわかる」と述べたことからも、他の生徒よりも何かを知っているようではある。
 第九話では第十話Bへの導入部において登場し、以前(第四話参照)の際にクレハがその姿を垣間見た朱色の髪を持つ、小柄で可憐な狼族の少女がメディと会話をし、少女がもう戻ってこれないかもしれない場所に行こうとしており、そして自分がいなくなっても、残された者のことは信頼でき、うまくやるだろうというようなことを言っていた。なお、鎧を着こんだ姿としての部長は、クレハにいつも以上のトレーニングをさせた後、自分が戻ってこれない旅に出るかもしれないから、代わりにクレハが部長をやらないかなどと言ったことをもちかけており、さらにこの後メディの意味深なクレハへの台詞の合致からすると、その少女が本当に部長の正体である可能性は高いか。
 この一連のことからすると、どうやら部長は実はエルーランの王子であったというハルー達に対して少なからぬ関わり合いがあり、その救援に行ってしまったということらしい。そのかかわりと言うのが果たしてどういうことであったのかは、その時はまだ判明しないのだった。
 そして、第十話Bにおいてはシナリオのメインパーソンとして活躍した結果、やはりその少女が部長であったことが判明したほか、更にその正体はネオ・ダイナストカバルからエルクレストカレッジ支部へ派遣されていた諜報員である豹怪人、「マグナムジャガー」であるという驚きの事実が明かされることとなった。また、ハルー……もといメギアム達のことを放っておけず協力する中で、クレハとの語らいもあり自分にも帰りを待つ人間と場所が存在することを知った彼女が、より希望を抱いてこれから生きていこうとするようになる姿が見られることになったのである。詳細は第十話Bを参照。
 彼女はそれまで、自分に感傷を抱いてくれる相手など存在しないと考えていたし、それでいいと考えていた。何故なら、自分はネオ・ダイナストカバルの怪人であり、今いるエルクレスト・カレッジの部長という立場は偽りのもので、いつか組織や大首領のため、自身の身を散らす日が来るだろうと思っていたから。
 しかし、メギアム達の決意と事情を知るうちに、例え自分一人が手を貸したところでその命を散らすだけかもしれない、と思いつつも、自分の内に生まれた、その願いをかなえる手助けをしたい、という感覚に従って動いたことが、彼女に誰かのためを思って行動することと、それによって自身を満たす充足感の価値を教え、そして、自分がメギアム達のためそうしたように、クレハが自分を助けるために危険を顧みずエルーランへやってきてくれたことが、彼女に自分が存在することを本心で願ってくれている人たちの存在を教えた。この2つが、彼女の人生観を大きく変えたのだ。
 確かに自分の死に場所は、今自分の周りにいる人々と同じようなものではないかもしれない。だが、そんな自分でも、誰かの力になれた時嬉しいと思える。そして、そんな自分に、それでも一緒にいてほしいと、突然姿を消してほしくないと思ってくれていた人々がいたのだ。そう感じられた時、彼女は今まで、そしてこれからも自身がいるエルクレスト・カレッジという空間が、鮮やかに色づいたかのような感覚を感じていた。自分が生きていることは誰かに価値を生んであげられることであり、自分が帰ることは誰かに安心を与えてあげられることである。それがわかった今、自分が何者だろうと、居場所がどこだろうと、自分は一人でい続けなくてもいいことに彼女は気づいたのだ。
 これから彼女は自分の意思で、他者の命を、そして自らの命を大切にするだろう。そうすることの価値を、知ったから。
 ……ところで、あれだけのことをしていた(という自覚自体はあったらしい)クレハはじめ陸上部の面々も彼女がそこにいることに安心を覚えていたということは彼女の中で大きな驚きだったようで、実際そのように感じていた陸上部部員たちですらそれがなぜかうまくは言葉にできないほどなのだが、つまるところ、彼女はただ厳しいだけでなく、要所要所で部員それぞれのことを見、そして面倒を見ようとするところを彼等もまた知っていたから、というのが理由のようだ。……ただ、それを知ったところで訓練(部長談)は優しくなるどころかむしろ厳しくなっていたというのが、彼女らしいというか……彼女と陸上部の間で結ばれた絆が不滅であることを願いたい。

 第十一話では陸上部の休憩中(誤りにあらず)にエルクレスト祭の出し物についての話をしていた際、陸上部の出し物にユーモアがたらないことを口にしたアーゼスの隣に突然現れ、彼の身体反応のリミッターを一瞬外させたが、特に怒ったりするわけではなく、むしろ陸上部の出し物にユーモアがたらないということについて少し考えてみようと言い出し、マナシエからずいぶんキャラが変わってしまったのではないかと怪しまれていた。そして、その後シャルリシア寮生達のエルクレスト祭準備を手伝おうという話の流れになると、彼女もまた協力を約束してくれたのだが、会話の中で不埒な気配を漂わせたアーゼスを天高く吹き飛ばし、さらにクレハのの傍に自身が与えたはずのファミリアがいない(大きく力を発揮しなければいけない状況以外では負担になるので置いてきた疑い)ことについて言及したことで大いにクレハの肝を冷やさせ、その後にクレハが気づいた謎の違和感すら、その時の彼女の余波かもしれないと思わせるほどなのであった。
 ……ちなみに、当のエルクレスト祭準備ではその優れた行動力や一段上の察知能力などで大いに貢献していたが、結局陸上部自体の出し物はどうなったのかというと、陸上部のトレーニングと体感してもらうという方向性になったらしい。そのおかげで特別な準備は多くなく、彼女は存分にシャルリシア寮に手を貸すことができたわけだが、エルクレスト祭当日のグラウンドの阿鼻叫喚ぶりが普段の比でなかったのは言うまでもない。また、第十二話でもシャルリシア寮生達のパーティーの一員として選抜されてミルカクレハとのチームを組み、やはりというべきか勝利に導いていた。その後は、アルゼオがさらわれたという案件に、本当にシャルリシア寮生達以外は手助けもできないのかと探りに行く生徒の一段の中に彼女も混ざってやってきてはいたのだが、彼女はクレハの様子から、確かにそのことに関して自分達ができることはないのであろうことはすでに悟っていたらしく、どちらかといえば、謎の空間へと向かうクレハへ言葉を送り、見送るためにやってきていたようでもあった。
 第十三話でもまた、犠牲を払い、様々な苦難を受けて帰還したシャルリシア寮生達を心配して、また現状の確認がしたくて集まる生徒たちの一人としてシャルリシア寮を訪れており、そして様々なことを語らいあう中で、シャルリシア寮生達の中に魔族が存在するという衝撃の事実を知る。
 しかし、自身がすでに人間ではない彼女にとって、そのようなことがシャルリシア寮生のすることを疑ったり恐れたりするようなことにつながるはずもない。それらの話の後、彼女から発せられた言葉は、クレハへの「帰ってこい」という言葉のみだ。自分ですら、この場所を帰るところと決めているのだから、と。
 第十四話でも登場し、かつてエンザが、シャルリシア寮生達の力が自身を上回った証の品として与えたナイフを扱おうとするも、丸で武器に振り回されるかのように、何故かそれをうまく扱えずにいるクレハの元へと現れ、クレハがそのナイフを扱うための力とするため、ファランクスの技法を教えるのだった。
 ……この時、いや、あるいは昨日のシャルリシア寮生達との語らいの時点ですでに、彼女はエンザの状態が、ただ帰ってこれていない、というようなことではないのだろうということに気づいていたようである。少なくとも、クレハがナイフに振り回されていることを自覚しつつも、それがエンザから託されたものであることに必要以上に執心し、きちんと本来の動きで動けていないように彼女には見えており、そしてそこまでクレハの心をかき乱す理由は、エンザの現状が、最悪の事態に陥ってしまっているからであることすら予想できたのだ。
 しかし、彼女はそこであえてそれを指摘することはなかった。その事実を確かめたくなかったかといえばウソにはなる。だが、それをこの場で語ることが、この先のため、少しでも強くなろうとしている今のクレハにとって大きな負担になってしまう可能性は高いと思えたし、今のクレハに必要なものは、心の高ぶりのせいで自身に備えうる「技」をおろそかにしてしまっていることであるはずだったからだ。
 そうして彼女の指導通り、クレハは身に纏った防具へ力をこもらせ、自身の力をさらに増幅させる技を身に付けることができ、自身の動きや力を意識した行動は、そのナイフの使い方を再度クレハの体へ教え込ませてくれる働きがあった。そして確かにその術をマスターしたクレハを見て、彼女は自分がクレハに教えられることはもはや多くないのではないかと思っていたが、今この時、その力を成長させるための助けになれてよかったと、珍しく笑う(鎧は脱いでないが)のだった。

 ちなみに、怪人故とでもいうのか彼女の身に付けた数々の技は、とてもではないが通常のファランクスの技法の域を超越しており、特に彼女が使う鎧の重量とそれに纏わせたスピードを武器に突撃する時のその威力と、そして、相対するもの全てを委縮させるかのような尋常ならざる迫力は、クレハをはじめとした優秀な能力を持つ人間であっても1体1ではほぼ勝ち目が見込めないほどの能力を、鎧を着た状態の彼女に与えており、第十二話での異色PT戦でも、ゴブリンやトロウル、ヴァンパイアなどそろい踏みの妖魔たちを豪快に蹴散らしてその実力を見せつけていた。しかし、それほどの能力を持つ彼女であっても複数の手練れを相手に完璧に制圧しうることは難しいため、敵の戦力がこちらより圧倒的に多いと思われるエルーランの作戦においてはその死をも覚悟していたらしい。
 なお、クレハやシャルリシア寮生達に対してもその正体をすでに明かしている彼女だが、学内では相変わらず「部長」で通すつもりらしい。ネオ・ダイナストカバルの構成員が学内に潜り込まされているということはどうやら秘密にしなければならないようなので、致し方ないのだろうが。

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最終更新:2016年09月25日 14:28