アリアンロッド・トラスト第三話「恋に惑う心」
今回予告
恋。それは人にとって永久の課題である。
恋の形は様々であり、淡くその気持ちを抱いているだけの者から、寝ても覚めてもその想いが胸から離れない、という者まで存在する。そうした想いが強ければ強いほど、人は強くもなれるし、一方で愚鈍になってしまったりするのだから難しい。
人の恋心とは、本来操ることがままならないものである。だがしかし、それ故に人は、恋心を成就するための小さなきっかけにすら頼ろうとするのかもしれない。そんな人の気持ちが巻き起こす今回の「事件」。シャルリシア寮の面々は、果たしてどのような道を導き出せるのであろうか?
アリアンロッド・トラスト第三話「恋に惑う心」
愛ゆえの戦いが、君達を待つ!
登場人物
その他大勢
セッション内容
初の依頼(
第二話参照)を見事達成させたシャルリシア寮。だが、それ以来学園内ではこれといって目立った問題は起こっておらず、いたって平和な日々が過ぎていくのであった。
だが、その一件ゆえに深まった絆も存在しており、園芸部の部室では
ミリティスは自らの命の恩人となった
ミトを、ほぼ毎日大量の菓子とハーブティーでもてなしていた。そしてミトがそれを食べながら、自分を迎えに来る王子さまがもし白馬を持っていなくても大丈夫なようにと、最近ハクバ(という名前のラクダ)を買ったのだという話をし、ツッコミ役不在のまま談笑していると、そこに奉献活動部の
メディ、
サーニャ、
ハルーが訪れてきた。何でも、この度奉献活動部が学内倉庫の掃除及び整理をすることになったらしく、そのために必要な人足として、以前倉庫を手早く整理していたというミトに手伝いを頼みに来たのだという(
第二話中、ミトは倉庫に咲いていた眷属の花を手に入れるために倉庫の片づけを行なっていた)。困っている人がいれば救うのが自身の王女としての勤めであると言うミトはそれに承諾し、その3人と共に倉庫の片付けに再度向かうのだった。
そうして倉庫内で作業を始めた奉献活動部の三人+ミトだったが、まるで他者抜きで話し合える場所を探していたかのようなタイミングで、サーニャはミトに「あなたはエルーラン王国の王族につながりのある者だというが、それについて詳しく知りたい」というのだった。だが、結局の所自分が王族であると信じこんでいるだけで、明確な根拠や証拠はないミトの話ではサーニャは要領をえなかったらしく、「いずれにせよ、そのような可能性のあるあなたがエルーラン王国で育つ事がなかったのはむしろ幸せであったのかもしれない」と言ったのだが、サーニャの後方に控えて一人倉庫整理をしていたはずのハルーが、珍しく声をあげ、何かが上から落ちてくると警告する。それに気づいたミトが素早く反応しサーニャをかばうが、落ちてきたのは何やら古びた傘であり、ミトはそれを軽々と受け止める事ができた。この傘が一体なんであるのか、一同の中にそれを知るものはいなかったが、錬金術学部であるメディによると、何やらマジックアイテム的なものであるという。ミトは試しにサーニャにその傘を開かせてみたり、マシンリムというアルケミストの技術を身に宿している存在である
ジャックに話を聞きにいったりとしたが、サーニャが開いてもいつもどおりハルーがサーニャに擦り寄るだけで、ジャックには知るわけがないと突き放されてしまったため、いよいよ持ってその正体は不明であった。結局、あとで
フィーネにでも聞けばいいという結論が出て、4人はその傘をひとまず保管し、作業を続けるのであった。
それより数日後の運動場。そこには普通の人間からすれば十分驚異的なスピードでトラックを駆け抜ける
クレハの姿があった。だが、彼の後ろからは全身鎧の
部長がそんなクレハを一笑に付すかのようなスピードで迫ってきており、モタモタとしていると轢き殺す、という部長の冗談に聞こえない脅しを受け、クレハは陸上部に入ればかわいこちゃんが寄ってくるって話は一体なんだったんだ、と不平をこぼしつつとにかく走るのだった。
とにもかくにもそんな一日の部活動を追え、疲労困憊といった風のクレハと、それをまるでからかっているかのような
アーゼスが会話をしていると、そこに有角のドゥアン、
サイオウがクレハを訪ねてきた。何でも、
シャルロッテに恋心を持ちながらも、それを成就させようとする行動がことごとく上手くいかないことに焦りを募らせた彼は、女性の扱いに長けているというクレハにアドバイスをしてもらえないかと思ってやってきたらしい。クレハはそんなサイオウの悩み解決に協力することを快く決め、(内容はともかく)早速数々のアドバイスをサイオウに送る。そんなクレハの器に感服したサイオウは、もっと詳しく話を聞くため、よければシャルリシア寮の談話室で聞かせてくれないかと頼み、クレハもそれを了解するのだった。
そのころ、
レシィは医務室で保険委員会の仕事に精を出していた。だが、その仕事途中、同じ保険委員会のメンバーである
シズナに声をかけられ、「そんなに熱心にやるほど、保険委員会の活動が好きなのか」と聞かれる。レシィはそれに「こういうことは学園のためになることだと思うから好きだ」というように答えると、シズナはじっとレシィを見た後、今度は「でもあなた達の寮のプリフェクトの
ミルカは、そういう人間ではないのではないか、そんなミルカを、あなたは信じられるのか」と聞いてくる。レシィはそれに対して、「ミルカさんは仲間だから信じられる」と断言したのだが、シズナはそれが気に入らないような素振りをしている。そんなシズナを見て、レシィはシズナもまた、自分の仲間だと思っていると彼女に伝えるのだが、シズナはそんなレシィを少し冷めた目で見ると、「その思いは嬉しいけれど、自分に仲間は必要ない」と言って、もうレシィと話をしようとはしなかった。
その後、委員会活動を終えてシャルリシア寮に戻ろうとするレシィであったが、今までレシィを観察し、待ち受けていたらしい
ハナに呼び止められる。そしてハナもまた、保険委員会の活動のような事が好きなのかとレシィに問いかけてきたのだが、彼女の場合は、それがレシィに宿っていた「邪神の祝福」の意思が、周囲を欺くためにやっていることなのではないかという疑いを持つ問いかけなのであった。しかし、それに答えるレシィの態度に、本当はそんな疑いを持つほうがおかしいことであると分かってはいるのだと、ハナはレシィに告げた。しかしハナは、レシィの瞳を見るたび、レシィがいつか邪神の祝福の力に目覚めてしまうのではないかと、そうなったら、レシィは殺されてしまうのではないかと不安になるのだ、と意味深な発言をしたのだが、その直後、まるでそれへの言及を避けるように態度を変えたハナは、もうこんな監視するような真似はしないと言って、次は自分が恋焦がれる
エンザ先生の授業なのだと走り去っていってしまうのだった。
その一方で、ミルカもまた、彼女の属する風紀委員会の活動中であった。彼女のその日の仕事は、委員長である
マルティンの補佐であったのだが、ある恋人同士の生徒達の(彼にとって)過剰なスキンシップをとっている場に居合わせてしまった事によって、「そんな破廉恥な行為を人前で行なうなど!」と煙を上げるマルティンの相手をするはめになってしまっていた。だが、そんな最中、ミルカを探していたという
ダバランが二人の所にやってくる。何でも、アウデンリート寮プリフェクトの
シリルがプリフェクト全員を集めての話があるのだという。そういうことならとマルティンの許可も得たミルカはその召集に応じ、ダバランとミルカは以前も集まった学生会館へと向かうのだった。
二人がその一室に着くと、シリルはようやく全員揃ったと話をし始める。彼はまず傘を一つ取り出すと、これが先日奉献活動部によって倉庫の中から発見された(もちろん、本話中のミトのシーンのことである)ことと、そしてこれが、この傘をさして中に入った異性同士は両思いになれるといわれる効果を持つ、エルクレスト・カレッジ伝説の魔法具「ハートフルアンブレラ」であることを各員に告げるのだった。そしてそれだけではなく、シリルは人の恋の心を成就される力を持つこのアイテムを欲するものは学園内には多いはずであるとして、これをイベントに使わない手は無いと考えたらしく、その争奪戦をエルクレスト・カレッジの生徒たちで行なわせる事を企画しているのだといった。彼が各プリフェクトを集めたのは、その開催の手続きにおいて、告知と参加者の管理を寮ごとにお願いしたいからなのだという。その場において、恋について熱く語るシリルの思惑について賛同しているものはあまり多くは無かったのだが、主な進行や用意は全てシリルが中心になって進めるという事で、その程度の協力であれば、とミルカを含めたプリフェクト達は彼に協力することを決め、かくしてエルクレスト・カレッジ開催、ハートフルアンブレラ争奪戦企画は始動したのだった。
シリルから話を聞き終えたミルカがシャルリシア寮に戻ってくると、その談話室ではクレハがサイオウの相談に乗っている最中であった。あまりにクレハに言われるがまま鵜呑みにしてしまっているサイオウを見かねたミルカはその中に入り、クレハのアドバイスではシャルロッテさん相手だと駄目だと思うといった感じでしばらく口論をしていたが、その中でそういえばついさっき、ハートフルアンブレラの争奪戦を今度やるらしい、という話があったのだということを伝える。それと同時に、異性同士が両思いになれるというハートフルアンブレラの効力を使って恋を成就させようなんてする輩は、シャルロッテさんは嫌いだといっていたという話もサイオウはミルカから聞いたのだが、現状では多少頑張ったところでシャルロッテには相手にされないだろうとミルカとクレハから同時に言われてしまったこと、例え傘そのものは使わなかったとしても、恋を象徴するアイテムを自身が勝ち取るという事自体が、自分の想いの強さのアピールになるのではないかと考えた(取り繕ったともいう)事などがあり、サイオウはその争奪戦に参加する事を決意した。そして、シャルリシア寮にその手伝いをしてはもらえないだろうかと頼み、ミルカはそれが依頼ならと了解したのだった。
だが、そうと決まれば修行だと息巻いてサイオウが出て行った直後、嵐のような勢いで、ハナが今度のハートフルアンブレラ争奪戦、シャルリシア寮のメンバーは自分とパーティを組めとやってきた。しかし、さっきサイオウからそういった依頼を受けてしまったという話を聞いたハナは、まさか、シャルリシア寮の女性陣(ミルカとミト)も自分と同じようにエンザを狙っているのではないかと勝手に考え初め、それならシャルリシア寮のメンバーよりももっと強いパーティをそろえてやると捨て台詞を残し、猛然と去ってしまった。
そしてまた日にちはすぎ、次の日がハートフルアンブレラ争奪戦の当日にまで迫った夜。シャルリシア寮の自室で寝ていたはずのジャックが、突如何かに操られるかのようにして起き上がり、シャルリシア寮の外に出て行ってしまう。そうして出て行ったジャックはブルギニオン寮の近くまでやってくると、そこで立ち止まった。その傍らには、赤い服を身につけた少女のゴーストがうっすらと見え、彼女はつぶやく。
「恋って一体、何なのかしら?」
次の日、いよいよこれから争奪戦に向かうべく、シャルリシア寮を訪れたサイオウだったが、そこでジャックがいないことに一同は気づく。どこにいったのか、と彼らがジャックを探して学内を探索すると、ミルカ、クレハ、レシィの3人はブルギニオン寮の近くでジャックを発見する。彼を見つけられたことに安堵し、その傍に近寄る3人だったが、ジャックはどういうことか模造刀を抜き、突如一同に切りかかる。それにいち早く反応したクレハがその攻撃に対応しようとするが、それよりもさらに早く一筋の剣閃がジャックと3人の間を薙ぎ、ジャックの攻撃を受け止めていた。奇襲を受け止められたジャックは、明らかに今までのジャックの能力を超えた動きでその場から立ち去ってしまい、後には3人と、ジャックの攻撃を受け止めた謎の人物が残された。その人物は声と体つきからするとどうやら女性であるらしく、片手に長剣を持ち、何やら仮面のようなものをつけていた。彼女(
仮面の騎士)は自身の素性を明かすことはなかったが、今のジャックがブルギニオン寮に出没すると言われていたゴースト、
「赤い服の」マリーに操られている状態であることと、赤い服のマリーは恋について興味を持っており、今回はハートフルアンブレラに興味を惹かれ、それに近づくための手段としてジャックの体を利用し、争奪戦に参加すると同時にそれを邪魔する者の排除をしようとしているのだろうと3人に告げると、現れた時と同じように唐突に去ってしまった。その後、離れていたミト、サイオウの2人とも合流した一行は、とにかく今はハートフルアンブレラを目指すしかないと、急いで争奪戦の開催場所、ダンジョン棟へと向かった。
その入り口で受付をしていた
ミアによって、やはりジャック(とマリー)がすでにダンジョン棟に入っていたことを知ったシャルリシア寮一行は、自分たちの受付も済ませてダンジョン棟へと入っていく。今回用意された会場は部屋と部屋とが複雑につながりあった迷路のような構造になっており、そこでの目的……「その中のどこかの部屋にいる『恋の番人』4人の認め印をもらい、その上で『最後の恋の番人』がいるという、フロア中央の部屋にたどり着く」ということをいち早く達成するため、5人は受付時に渡された地図と、新たな部屋に入るごとにもらえる『情報ポイント』による情報の入手を駆使して部屋を突破していくのだった。
途中、恋に飢えたウォーリア軍団、恋は神聖なものなアコライト軍団、恋の魔法使いになりたいメイジ軍団、恋心を盗み取りたいシーフ軍団といった数々のライバルに遭遇し、戦闘になったものの、5人はそれを次々に撃破し、全ての恋の番人(
フィシル、
グゼー、
ウィルテール、
ファム)に認め印をもらった上で、最後の恋の番人の部屋に到着することに成功した。
その部屋にいたのは恋を操るといわれる妖精、「
リャナンシー」であり、彼女は自身が最後の恋の番人であり、この先にハートフルアンブレラはあると5人に伝えた。早速その先に行こうとする一行だったが、そこにいかにも急いでやってきたという感じの新たな5人組が乱入してくる。それは、ハナとその仲間として争奪戦に参加していた、
フェイエン、
エンジェ、
ナタフ、
シズナからなる5人組であった。どうやら、彼女たちもまた「恋の番人」達にであった上でここまでくることができたようだ。ハナはハートフルアンブレラは自分が手にするのだと主張し、シャルリシア寮一行たちにとっては半ばなし崩し的に戦闘に突入してしまう。
まず、クレハが素早い動きでハナ達の足止めに回り、そこにレシィの支援を受けたミルカがいち早く自身の魔法を打ち込もうとするが、そこにレシィ以上の効果でエンジェがフェイエンを支援したことにより、先に魔法を打ち込まれることを許してしまう。これにより大きな被害を受けた一行だが、お返しとばかりに今度こそミルカの魔法が炸裂し、それにミトの支援がついたこともあって、自力でそれを回避したハナとフェイエン、そして何故かナタフにかばわれたシズナ以外の二人、ナタフとエンジェは一撃で戦闘不能におちいる。
そこからはミルカとフェイエンという、お互いのパーティのメイジが魔法を撃ちあう展開になり、ついにミトとサイオウが倒れたが、シズナは本来ミルカを狙っていたものの、目前のクレハの足止めを受けて彼を突破する事ができずに終わり、フェイエンもやがて倒れる事になった。最後に愛竜オピオンを駆りながら、戦場を自在に駆ける能力を持つハナが必死に攻撃を回避しミルカを狙う事で、ついにミルカをも戦闘不能に追い込んだのだが、幾度も繰り返されたクレハの追撃にあえなく沈み、その戦闘はシャルリシア寮の勝利となった。
戦闘終了後、各々の思いはありながらも、敗北した事には納得しているハナ以外の4人であったが、ハナはそれでも、ハートフルアンブレラは自分が手に入れるべきだという主張をやめなかった。だが、まるでそれを見かねたかのようにリャナンシーが前に出ると、彼女はハナがエンザに抱いている気持ちは恋ではないと唐突に指摘する。いきなり意味のわからないことを言うなと憤慨するハナであったが、リャナンシーが彼女の様子にかまうことなく、ハナが恋心だと考えている感情には、ある恐れや隠し事が顕在しているのだと言い放つ。そのような恋は本物の恋ではなく、それを恋とするためにはそうしたものとも向き合い、乗り越えていかなければならないのだ、と。ハナはそれを聞いてもなお憤り、反論をしようとしたのだが、ついに言葉が出なくなってしまい、まるで逃げるようにその場から走り去ってしまった。それを呆然としながらも眺めていた、彼女の仲間であった他の4人は、ハナが去ってしまい、ましてや負けた以上この争奪戦に参加する意味はないと判断し、ハートフルアンブレラをシャルリシア寮の面々に譲るといって部屋を出て行くのだった。
そうして、今度こそハートフルアンブレラが手に入るという状態になったシャルリシア寮一行であったが、そこでリャナンシーが、実は今よりも前に、すでに片腕が機械でできた男を操っている、赤い服のゴーストを通しているのだと言い出す。なんでも、全ての番人に会う前にジャック(マリー)はここを訪れていたのだが、マリーが恋を知らないまま死んだ事が原因で、ゴーストしてなおこの世に存在し、そして今、恋の力を持ったハートフルアンブレラを求めているのだという境遇を知ったリャナンシーはそんな彼女には同情したらしく、自身の本来の役目を二の次にしてしまい、彼女をすでにハートフルアンブレラのところへ通してしまっているのだという。だが、それ以降部屋の中からハートフルアンブレラが持ち出された様子もないため、今行けばまだハートフルアンブレラはあるのかもしれない、と無責任ながら5人に伝えるのだった。
とにかく、まだ中にハートフルアンブレラもジャックもいるらしい、と知った一行は、マリーの抵抗があることも考え、入念に回復を済ませてからその部屋の中へと押し入る。そこには確かにハートフルアンブレラと、それを調べているマリーがいた。彼女は部屋の中に入ってきた5人を見ると、自分は恋を知るため、この傘の力でこの男(ジャック)と恋人になろうとしているのだと言った。そのため自身とジャックでハートフルアンブレラの効力を受けようとしているのだが、いっこうに効果が出ていないらしいという。とにかく、その邪魔をするならば容赦はしないと、彼女の闇の魔法と、そして彼女の魔力によって強化された状態のジャックが5人に襲い掛かってくる。その攻撃力は相当のものだったが、あらかじめマリーとの決戦を予感していた一行は自身に残された切り札となる力を次々に解放して対抗し、強大な力となったミルカの魔法と、ミトの作り出した聖水によって光の力を得たクレハのナイフが次々とマリーの幽体をとらえたことで、ついにマリーからは抵抗の力が奪われ、ジャックはそれによってその場に倒れ付し、ただ気を失っている状態になった。そして、マリーはもはや勝ち目なし、と考えたのか、壁の向こうへと逃げていったのだった。
マリーを退けた事で、今度こそ本当に、シャルリシア一行はハートフルアンブレラを手に入れることに成功した。そして、そのことを誰よりも望んでいたサイオウは、歓喜を持ってその傘を手にする。……だが、そうしていたのも最初だけで、サイオウはその傘を眺めるにつれ、次第にまるで思い悩むような表情になっていく。そして、ついに口を開いた。
「こうしてこの傘を手に入れることができたが……実は、ずっと思っていたことがある。そもそも、何故この傘は倉庫の中に放置されていたのだろうか?」
と。サイオウはその理由を、「かつてこの傘を持っていた者は、道具によってもたらされる恋に、やはりむなしさを感じたのだろうか」と考えた。そして4人はサイオウのその言葉におおむね同感の意を表し、また、ミトからは「せめて自分に傷を負わせる事が出来るくらいの男にならなければ白馬の王子様にはなれない」という言葉を受け、それを実際に体感させられた事で背を押された形になったサイオウは、やはり自分とシャルロッテの間にハートフルアンブレラを介在させるのはまだ早いのだと理解し、ハートフルアンブレラをあえて自分の手元から放す決断をするのだった。
とはいえ、せっかく学園に戻ってきたハートフルアンブレラが、また埃を被り誰も知らないようなところへ隠れてしまうのはしのびないと考えたサイオウは、ハートフルアンブレラをシャルリシア寮に預けたいと言った。それを直接話されたクレハは、彼の本心かどうかはともかく、これを使えば可愛い女の子といちゃいちゃできると喜んでいたようだが結局の所、クレハの所有物というより、寮の共有物として保管しておく形になったようである。
そして、一同はハートフルアンブレラと、今はまだ気を失った状態のジャックを抱え、ダンジョン棟をあとにした。こうして、エルクレスト・カレッジ開催、ハートフルアンブレラ争奪戦は決着を見たのである。
なお、そうしてシャルリシア寮に現在保管され、飾られているハートフルアンブレラは実はよく似せられた偽者であり、一応、本物が悪用されないように、一番人となりに安心が持てるという理由でレシィが保管しているという話もある。
PC達がこのシナリオで出会ったキャラクターまとめ
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最終更新:2012年10月18日 21:25