木の根元に作られた巣の中で、ゆっくりの子供達が遊んでいる。
4匹居るれいむはゆーゆーと音程を無視した歌を歌い、
2匹居るまりさはそう広くない巣の中でぐるぐると追いかけっこをしている。

前を跳ねるまりさが息を上げて速度を落とすと、追いかけて来たまりさが後頭部にのしかかる。
逃げようとする動きと押さえつけようとする動きが、次第にすりすりへと変わって行き
じきに満足したまりさ達は走り混んだ疲れからぽてっと座ると、空腹を訴え始めた。

「ゆぅ、おなかちゅいたよ!」
「ごはんたべちゃい!」

子供達はまだ赤ちゃんゆっくりより少し大きいくらいのサイズで、
体内に栄養を多く溜め込んで置くことが出来ない。
加減を知らず遊びたいだけ遊んだまりさ達の体力は、
既に放っておけば命にかかわる所まで消費されていた。

「ゆゆ…でもごはんがにゃいよ?」
「おかあしゃんがごはんをとってくりゅよ、がまんしちぇね」
「がみゃんできにゃいよ! ゆあ゛ぁぁぁぁん!」

体力を温存しようとせずに騒がしく泣き出すまりさに、つられてれいむ達の目にも涙がこみ上げてくる。
この巣には食料の備蓄が無く、小さい子供は外に生える草の存在を教えられていない上
危ないので巣から出ないよう親から強く言われている。
何の打開策も持たない子供達は、ただ泣くことしか出来ない。

子供達の泣き声の合唱が巣の外にも漏れて聞こえ始めると、程なくして1匹のゆっくりが飛び込んできた。

「ゆっ! ゆっくりかえってきたよ! ゆっくりなきやんでね!」
「ゆうっ! おかあしゃんおかえりなしゃい!」

「ゆあぁぁん! おにゃかしゅいたよ!」
「ゆっくりごはんたべさしぇてにぇ!」
「ゆ! ゆっくりたべてね!」

帰ってきたゆっくりを見るなり子供達は泣き止み、すぐにごはんの催促を始める。
催促を受けた母親、成体のゆっくりれいむが膨らんだ頬からゆべぇ、と食料を吐き出すと
子供達が群がり見る見るうちに平らげていく。

「がつがつ、むっちゃむっちゃ! がつがつ、むっちゃむっちゃ!」
「ゆっ! まりしゃばっかりじゅるいよ! れーみゅのぶんものこしちぇね!」
「「むっちゃむっちゃ、むっちゃむっちゃ!」」

走り回って体力を消費していたまりさ達は一心不乱にがつがつと食い漁り、
取り分がなくなっては困るとれいむ達も競うように掻き込む。
まりさ種と比べ狩りが得意ではなく、物を運ぶ手段も口に含むしかないれいむが持ち帰った食料は
6匹の子供に食べさせるにはまったく足りていなかった。

「ゆゆっ、もっとたべちゃいよ! ごはんちょいだいね!」
「おかーしゃんごはんちょうだい!」
「じぇんじぇんたりにゃいよ!」

「ゆっ、す、すぐとってくるからゆっくりまっててね!」

次々と不満を漏らす子供達に、親れいむはまた狩りに出かけて食料を取ってくると伝え
全然ゆっくりすること無く巣から飛び出して行く。



この家族は片親だった。数日前巣にやって来た人間が親まりさを連れ去ってしまい、
それまで親まりさが担当していた食料集めを親れいむがしなくてはいけなくなった。

その結果、親れいむが狩りに出ている間に子供達を見る者がいなくなると、
体力の温存を考えられない子供達は疲れきるまで遊び、
親が残していた備蓄を2日もせずに食い尽くしてしまう。
親れいむは巣と狩場を1日に何往復もし、夜が来たら泥のように眠る生活を続けていたのだった。



親れいむが再び狩りに出かけ、残された子供達が少しだけ回復した体力を
また遊びで消耗しようとし始めた時、巣の入り口の偽装ががさがさと外され
人間がぬっと顔を覗かせた。

「ゆゆっ?」
「やあ、ゆっくりしていってね」
「「ゆっくりしていっちぇね!」」

子供達が本能からの挨拶を返すと、人間は入り口の前に
ゆっくりの入った透明な箱を移動させ子供達に見せる。

「ゆゆっ! おとーしゃん!?」
「ゆっ! ゆっくりあいたかったよ!」

箱の中に入っていたのはこの家族の父親役であるゆっくりまりさだった。
この箱を持ってきたのは数日前に親まりさをさらって行った人間なのだが、
その時巣の奥に隠れていた子供達は人間の姿も見ておらず、声すらも覚えていない。

「それじゃあお父さんを中に入れるよ」
「あぶないからゆっくりはなれてね!」
「「ゆゆっ」」

人間が箱を巣の中に押し込み、まりさの顔が巣の外側を向くように回転させると、
箱を巣の中の壁に少し寄せて手を離した。箱に轢かれないよう離れていた子供達も、
箱が止まったと見るやわらわらと集まり親まりさとの再会に顔を輝かせる。

「ゆっ! おうちにかえしてくれてありがとう!」
「「ありがちょう!」」
「ああ、良かったな」

親まりさが人間にお礼を言うと、子供達も揃ってお礼を言ってくる。
ほほえましい光景に人間が満足げに微笑んでいると、
1匹の子れいむが箱に入ったままの親まりさに疑問の声を上げた。

「ゆ? にゃんでおとうしゃん、そこからでちぇこにゃいの?」
「ゆゆっ?」

「ゆ、まりしゃおとーしゃんとすりすりしちゃいよ!」
「だ、だめだよ、すりすりはしたいけど、はこからでたらゆっくりできないよ」

スキンシップを望む子まりさからの要求に、箱から出ることを即座に拒む親まりさ。
ゆっくりから見ても異常な姿に、子供達の間に動揺が広がる。

「ゆっ? …でもおとうしゃん、うごきにくそうだよ?」
「だいじょうぶだよ、このはこのなかはすごくゆっくりできるよ」
「ゆゆっ?」

親まりさの入っている箱は前後の幅と高さに若干の余裕があるが、
左右の幅が成体ゆっくりの幅よりも若干短い。
親まりさは左右の壁から挟まれて若干変形し、中での方向転換すら
出来なさそうであるが、それでもゆっくり出来ると言う。

ゆっくり出来ると言う言葉に、子供達は目をキラキラさせながら箱の回りを跳ねて
入り口を探すが、四方の壁に子ゆっくりが入れるような穴は無い。
親まりさの背面の壁に蝶番と取っ手があり、引けば開くようになっているが
子ゆっくりの高さでは取っ手を掴む事が出来ず、また使い方もわからないようだ。

「おとーしゃんばっかりじゅるいよ、まりしゃもゆっくりしたいよ!」
「れーみゅもゆっくちちたい! にゃかにいれてにぇ!」
「ゆゆっ、このはこのなかはまりさでいっぱいだよ!」

子供達が揃って、ぷくっと頬を膨らませた所で、
ずっと様子を眺めていた人間がここぞとばかりに声を掛ける。

「ゆっくり出来る箱に入りたいのかな? 箱ならいっぱいあるよ」
「ゆっ! はこしゃんちょうだいね」
「まりしゃもほしいよ!」
「よし、それじゃ入れてあげるから、ゆっくり並んでね」
「ゆっきゅりならぶよ!」

並ぶよ!と言いながら我先にと一気に跳ねてくる子供達をひょいひょいと摘み上げると、
天井の板が無い子ゆっくりサイズの箱に次々と入れて行く。
この箱は親まりさの物とは違い、背面に蝶番で開くドアが無いが
前後、左右共に若干の余裕がある広さで方向転換くらいなら可能である。

「ゆゆっ、ひんやりしちぇきもちいいよ」
「ゆっきゅりできりゅね!」

6匹の子供達全員を箱に入れると、開いた天井にぴったりなサイズの透明な板を乗せて行き、
手のひらでしっかりとはめ込み蓋をして巣の中に戻してやる。

全員を横一列に並べて、親まりさと同じように巣の外側を前面にしてあげると、
最初はひんやりとした壁に頬をつけて楽しんでいた子供達も圧迫感を訴え始めた。
広さに若干の余裕があるとは言え、飛び跳ねれば天井に頭をぶつける程度には狭いのだ。

「ゆゆ、せまいよ、おしょとにだしてにぇ!」
「ゆっくりできにゃいよ!」

「そう言ってるがまりさ、箱の外に出たいか?」
「ゆっ! でたくないよ、はこのなかのほうがゆっくりできるよ!」
「「ゆゆっ!?」」

自分達の箱よりも窮屈そうで、左右の壁に若干潰されているのに
平然とゆっくり出来ると言い放つ親まりさに、驚きの声を上げる子供達。

「お父さんはこんなにゆっくり出来てるのに、これくらいでゆっくり出来ないなんて
 君達はゆっくり出来ないゆっくりなのかな?」
「ゆゆ、そ、そんにゃことにゃいよ!」
「れーみゅはゆっくりちてるよ!」

「そうだよ、はこのなかはとってもゆっくりできるよ、ゆっくりりかいしてね」
「ゆ、ゆっくりできりゅ…?」
「ゆっくりりかいしゅるよ…」

子供達は人間と親まりさ両方から否定されて困惑してしまう。

「いやー、まりさは本当にゆっくりしてるね」
「ゆっ、このなかでゆっくりできないなんておかしいよ!」
「本当に素晴らしいゆっくりだ、ゆっくりゆっくり」

「ゆっ! まりしゃもゆっくりしてりゅよ!」
「れーみゅだってゆっきゅりしちぇるもん」

目の前で繰り広げられる、箱の中はゆっくり出来ると言う胡散臭い会話に
子供達もゆっくり出来ると思い込んで行く。
その様子を見た人間は、「それじゃ、ゆっくりしてってね!」と言い残すと
そそくさと立ち去って行った。

突然の行動に後に残された子供達は呆然とするが、親まりさが目を細めて
ゆっくりしているのを見ると、自分達もゆっくりして母親の帰りを待つ事にした。




この親まりさが箱の中でゆっくり出来ているのは、数日前に連れ去られた
人間の家での生活に起因している。

家族の元に返せと喚くまりさを連れ帰るや否や、背面にドアの開いた透明な箱に押し込むと、
まりさは窮屈な箱の中でずりずりと後退し、背中でドアを押し開けて箱から出ようとする。

「ゆぐぐ…ひどいよ! ゆっくりあやまっべぇっ!!?」

まりさが箱の外に出たら、木製のパドルで頬を叩く。
薄く平べったい板状のパドルは、叩いた力が広く分散する為皮も破れず
致命傷にはならないが、大きな打撃音と皮の表面に残る痛みがまりさに恐怖を植えつける。

「ゆびゅ、やめべっ、やめでべぇっ!」

パアンパアンと数回頬を叩いてから箱の中に押し込んでやると、
しばらくはパドルを恐れて箱の中で震えているが、まりさの視界に入らない位置に移動すると
「そろーり、そろーり」と声を上げながら脱出を試みる。

そうして箱から出る度にパドルで頬を叩いては箱に押し戻し続けると、
箱の外ではゆっくり出来ない、と言うトラウマがまりさの餡子に刻み込まれる。
それと同時に、箱の中ならゆっくり出来る、と言う記憶も植えつけてやる。

箱の前面の下側、まりさの口の前には横にスライド出来る小さな窓があり、
内側にだけ取っ手が付いている。舌を使って窓を開ければご飯が食べられる事を教え、
実際にくず野菜を与えてやる事で、野生では味わえない食事にまりさは涙する。

「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!!」

箱の外に出れば痛い板で叩かれる、と言う恐怖とのギャップから、
おいしい食事を食べられる箱の中がゆっくりぷれいすであると、まりさの餡子に強く印象付けられた。

元居た巣では備蓄した食糧が無くなり、親れいむが餌集めに奔走している間、
まりさは安全な箱の中でゆっくりした生活を満喫していたのである。




「ゆっくりおかえりなさい!」
「「ゆっくりおかえりなしゃい!」」
「ど、どうなってるの…?」

くたくたになりながら餌集めから帰ってきたれいむは、目の前の状況に困惑していた。
元々いい加減だった入り口の偽装は取り外され、巣の中では居なくなったはずのまりさと、
6匹の子供達が1列に並んで皆一様に透明な箱に入っている。

「ゆ! まりさ、どうしたの!?」
「ゆっくりかえってきたよ!」

「ゆゆ! どうしてみんな、はこにはいってるの!?」
「ゆっくりできるからいれてもらったんだよ!」
「「ゆっくりしちぇるよ!」」
「ゆ、ゆううっ!?」

一番端の箱に入っている親まりさに跳ね寄り、何があったのか聞くが
ゆっくりに正確な説明を求めても、まずまともな返事は返って来ない。
つがいのまりさが帰って来たことは嬉しいが、あまりにも異常な事態は
親れいむの限りなく狭い理解の範疇を大きく逸脱していた。

「ゆゆっ、まりしゃおなかがしゅいたよ」
「ゆっきゅりごはんちょうだいね!」
「ゆ! まりさもごはんがほしいよ!」

満足のいく食事を取れていなかった子供達は、母親が持ち帰った食事の催促を始め、
親まりさもなんとなくで一緒に食事を求める。
母れいむも狩りに出た目的を思い出し、その場にゆべぇ、と餌を吐き出すと
子供達は餌に飛びつこうと跳ねるが揃って天井に頭をぶつけてしまう。

「ゆびぇっ! でりゃれにゃいよぉぉ!?」
「どうちたらいいのぉぉぉ!?」

「ゆっ! だいじょうぶだよ!」

親まりさの上げた声に子供達がそちらを見ると、まりさは箱の前面にずりずりと近づき
板の下方にある小さな取っ手に舌を引っ掛け、食事用の窓をスライドさせて開ける。

「こうすればごはんをたべられるよ、ゆっくりあけてね!」
「ゆっ、ゆっくりりかいしちゃよ!」

見れば子供達の箱の前面にも、親まりさの箱と同様に小さな窓があり、
内側に付いた取っ手で開けられるようになっていた。
親まりさは子供達が窓を開けたのを確認すると、

「ゆ! れいむ、ゆっくりごはんをもってきてね!」

と親れいむに声を掛ける。れいむも状況を理解しそれぞれの箱の窓の前に食事を運びだした。
食事用の窓が開くとは言え、箱自体を動かせない為近くまで食事を運ばないと食べられないのだ。

「「むっちゃ、むっちゃ、ちあわちぇ!」」
「むーしゃ、むーしゃ…」

子供達は遊んで体力を消耗する前に箱に詰められた為それなりに満足し、
親まりさもくず野菜と比べると味は落ちるがそこまで空腹でもなかった為、
眉をひそめながらも苦情は言わない。
人間の家での生活で、餌を持ってくる相手に苦情を言うと
お仕置きをされると理解していたからである。

親れいむは子供達が問題なく食事を取れる事に少し安心し、また親まりさの帰還に胸を撫で下ろした。
狩りの上手なまりさが帰って来たので、後は箱から出せば前の生活に戻れる。
箱が絶対に開かない可能性など、れいむの餡子には浮かんで来なかった。

「ゆっ、まりさがかえってきてよかったよ」
「ゆ、まりさもかえってこれてうれしいよ!」

「それじゃ、つぎからはまりさがかりにいってね!」
「ゆゆっ!? はこのそとはゆっくりできないよ!」
「なにいってるの? ゆっくりしないではこからでてね!」

連日の狩りの疲れからストレスの溜まっていたれいむは、理解出来ないことを言い出す
親まりさにぷくぅと頬を膨らませ、出口が無いかと箱の回りを調べ出す。

広くは無い巣穴に一列に並んでいる為、箱と箱の間には成体が通り抜けられる程の幅がなく、
親まりさの箱の隣に居た子れいむの箱を押しのけながら親れいむは後ろに回り込んだ。

「ゆゆうっ!? お、おかーしゃんにゃにしゅるの…?」
「ゆ゛…ゆ゛え゛えぇぇぇぇん」

「うるさいよ! ゆっくりだまっててね!!」
「「ゆ゛っっ!?」」
「れ、れいむ、ゆっくりおちついてね?」

箱ごと押しのけられた子れいむは大きな揺れに怯え、
他の子供達も親れいむが発する険悪ムードに耐え切れず泣き出すが、
ストレスの溜まっていた親れいむは強く怒鳴りつけてしまう。

「ゆっ、はやくでてきてね!」
「ゆゆっ、あけないでね! ゆっくりできないよ!」

親まりさの箱の背面にドアを見つけた親れいむが、取っ手に舌を絡めてドアを開けると
背中に空気の流れを感じたまりさは落ち着けない様子で怯えだす。
一向に出てこようとしないまりさの様子にれいむは痺れを切らせ、
まりさの長い髪に噛み付いて引っ張り出した。

「ゆ゛っ、ぐり、ででぎで、ねっ!?」
「やめでぇぇぇ! いだいのやだぁぁぁぁぁ!」

木の板で叩かれる恐怖が蘇った親まりさは、ただでさえ狭い左右の壁に
突っ張るように体を変形させ、箱から引っ張り出されないよう抵抗する。

「いだい! いだい! ひっぱらないでねぇぇ!?」
「いだいなら、ででぎでねぇっ!?」

親まりさも親れいむも、どちらも全く引かず力比べを続けていると、
まりさの頭部がめりめりと音を立てはじめる。

「ゆ゛っ!? や゛めでね? や゛め゛ぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」
「ゆべっ! ゆゆ…ま、まりざぁぁ!?」

引っ張られる力に耐え切られずに、親まりさの後頭部がびりっと音を立てて裂けると、
急に抵抗が無くなった為親れいむは後ろに勢い良く倒れる。
痛がりながら起き上がった親れいむが見たものは、まりさの後頭部に出来た大きな裂け目と
そこからぼとぼととこぼれる餡子であった。
子供達も絶句し、目と口を一杯に広げてぶるぶると震えている。

「ど、どぼ、じ、で…」
「まっ、まりざ、まりざ!」

裂け目から勢い良く餡子を漏らし、まりさは痙攣しながらぱくぱくと口を開閉させる。
親れいむは慌ててまりさに近寄るものの、おろおろするばかりで何も出来ないまま、
まりさは動かなくなってしまった。
一部始終を見ていた子供達も、目の前で繰り広げられた親同士のゆっくり殺しに
盛大に泣き出してしまう。

「おとーしゃぁぁぁぁん!」
「ゆ゛あ゛ぁぁぁぁん!!」
「おきゃあしゃんのばきゃぁぁぁぁぁ!」
「おかーしゃんにゃんておかーしゃんじゃないよぉぉぉ!」

「ゆ……ゆ……」

自分でつがいのまりさを殺してしまったれいむは、辛い狩りから開放される喜びから一気に突き落とされ、
子供からの罵倒に反論することも出来ず、白目を向いて気を失う。
散々泣いた子供達も次第に泣き疲れて眠り、騒がしかった巣からは寝息だけが聞こえるようになった。



数日が経過したが、巣の中は散々なものだった。
一際大きな箱には後頭部の裂けたまりさの死体が放置されており、
6匹居る子供は全て、ほとんど空間に余裕の無い箱に閉じ込められている。

「ゆっくりいってくるよ」
「……」

既に偽装が外しっぱなしになっている入り口から、親れいむがとぼとぼと出て行く。
子供達は目の前で親まりさを殺した親れいむに一切口を効いてくれなくなり、
代わりにじっとりと恨みのこもった視線を返して来るのみである。
食事だけは窓を開けてもくもくと平らげるが、しあわせー!の一言も無い。

元々母性の強いれいむは、パートナーを失った上で子供まで捨てることが出来ず、
前以上に疲れを感じる狩りの連続に体力だけでなく、希望もすり減らして行く。

幸い子供達は無駄に体力を消耗する遊びすらも出来ない為、
狩りが上手ではないれいむでも食糧難に陥る事は無くなったが、
順調に成長して行く子供達の体は、もう狭い箱の中で余裕が無くなっている。

このままでは子供達がゆっくり出来なくなる。
餡子の中に何か恐ろしい考えがよぎるが、ゆっくりの頭では
どのようにして子供がゆっくり出来なくなるのか具体的な想像が出来ず、
れいむは餡子内に広がる焦りを払うようにぶるぶるっと震える。

「ゆ…ゆっくりかえるよ!」

頬に食料を溜めたれいむは、何かに追われるように家路を急ぐのだった。


おわり。



  • その他の作品。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年04月15日 23:10