「......」
漏瑚は考える。
この戦いの勝利とはなにか。
森嶋帆高を殺すこと?違う。それだけでは駄目だ。
呪い(われら)が願いを叶え力を手に入れる。それこそが勝利だ。
敗北の条件は二つある。一つは、この場に呼ばれた呪いが全滅すること。
もう一つは、森嶋帆高が鳥居を潜ること。
「...さて」
漏瑚は宿儺の指を手に入れてからすぐにEー1に向かった。
探すことかれこれ一時間ほどだろうか。
いま、彼の眼前には例の鳥居がある。
森嶋帆高が潜れば全てが終わるあの鳥居が。
天野陽菜はやはりおらず、漏瑚も自身が潜ってみたものの、やはりなにも変化は起きず。
どうやらこの鳥居は、帆高が潜ることで初めて意味を為すものらしい。
(ならば―――この鳥居が無くなればどうなる?)
帆高がゴールすればゲームが終わるというなら、ゴールそのものを無くせばどうなるか。
単純に考えるならば、帆高の脱出方法が無くなりゲームの完遂はほぼ確実なものになる。
だが、果たしてあの主催の老婆がそれを想定していないだろうか。
それを、これから確かめる。
漏瑚はクン、と右の人差し指と中指を揃えて下から上に向けて突き上げる。
すると、鳥居の立つ根元に球根のような膨らみが現れ灼熱を吐き出した。
だが無傷。
煙が晴れれば、そこには鳥居が変わらぬ姿でそびえ立っている。
「これは効かんか」
次いで、鳥居に直接触れ、掌から灼熱を発する。
「...これも効かんか」
やはり無傷。依然、鳥居は焦げ跡すらなくそこに立っている。
(五条悟の『無限』とは違う。この鳥居に呪力は纏われてはおらん。だが確かに触れているのに一切傷がつけられん)
やはりというべきか、神子柴は鳥居を破壊されそうになった時の対処はしていたらしい。
ならば最後の実験だ。
(鳥居が壊せぬというなら...このビルはどうだ?)
例え鳥居が残っていたとしても、ビルという足場が無ければ鳥居に辿り着くのは困難だ。
これが成功すればゲームは一気に有利へと傾く。
漏瑚は床に手を着けて灼熱を発射する。が、本来ならば貫通するはずだったソレは床に弾かれ空へと散った。
(なるほど、ビルも壊すのは不可能、か)
15本の指を取り込んだ宿儺とて、呪力も無しにこの攻撃をまともに受ければ多少なりとも傷はつく。
それがこの有様であるなら、もうそういうものだと割り切るべきだろう。
恐らく、神子柴は自分たちの知らない術をもってしてビルと鳥居を強化しているのだと。
奴はそこまでしてこのゲームを完遂させたいらしい。
「まあいい。最初から思い通りに進むとは思っておらん」
なにはともあれ、こうして鳥居の場所と硬度を知れただけでも充分だ。
後は、この鳥居で待ち伏せし、真人が帆高を殺すのを待てば―――
『寄り合いで自らの価値を測るから皆矮小になっていく』
『オマエは焼き尽くすべきだったのだ。打算も計画もなく手あたり次第』
『理想を掴み取る"飢え"。オマエにはそれが足りていなかった』
ふと、今わの際にかけられた言葉が脳裏に過った。
「...難しいものだな、"変わる"というのは」
あの時の宿儺の言葉はきっと正しいのだろう。
なにがなんでも己の手で理想に達する。そんな、形はどうであれ、"人"が持つ邁進する力。
漏瑚には未だにそれがない。気が付けば、呪いが勝利を収めることを優先してしまっている。
「慣れていかんとな」
願いを叶える権利を手に入れられるのは、『制限時間が過ぎた後、終了後一時間内に主催本部へと集った先着五名』だ。
この制限時間とは文字通りのタイムアップと帆高の死亡の両方を意味しているはずだ。
ここで待ち伏せし、仮に帆高を殺せたところで、ここから本部を探し出しお題を達成するのは厳しいものがある。
ならば、ここに留まっていても仕方あるまい。
「軸がぶれようと一貫性がなかろうと偽りなく欲求のままに行動する、か」
ふと、真人の言葉を思い出し、そういえばこの状況は五条悟を封印した時と似ているな、と思いにふけり、かつての自分であれば動かなかっただろうなと思いつつ、漏瑚はビルを降りていった。
【E-1/黎明/一日目】
※E-1にあるビルは全て鳥居のある廃ビルに酷似した廃ビルです。その為、ビルの外見だけでは鳥居のあるビルかどうか判別し辛くなっています。
※鳥居のあるビルと鳥居は破壊不可能になっています。
【漏瑚@呪術廻戦】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~3、宿儺の指@呪術廻戦
[思考・状況]
基本方針:どんな手を使ってでも理想を手にする
1:帆高を探し出し殺して、戦場を願いを叶えるステージに移行させる。
2:見敵必殺(サーチアンドデストロイ)。とはいえ真人と争い殺すつもりはない。
※参戦時期は死亡後
最終更新:2021年08月23日 19:10