佐倉杏子。彼女はかつては人間だった。
教会の牧師のもとで産まれ、優しい両親と妹を家族に持ったれっきとした人間だった。
そんな彼女が人間を辞めたのは、教義に無いことを唱えた父が、本部から破門されたのがキッカケだった。

世の中の幸せのために。

そんな想いで説いた説法は否定され、非難され、罵倒され続けてきた。
当然、そんな有り様となった以上、今まで教会へと足を運んできた信者はパッタリと姿を消し、本部から破門されれば一家郎党銭無し生活へと放逐されてしまった。
一刻も早く金が入らなければ飢え死んでしまう。そんなことよりも、杏子は、父の話を誰も聞いてもくれない現実を悲しんだ。
別に全てを肯定しろと言っている訳じゃない。ただ、ほんの少しだけ耳を傾けてくれればそれでよかったのだ。

そんな折に囁いたのは、キュゥべえという摩訶不思議な動物だった。

彼は言った。きみの願いを叶える代わりに魔法少女になってほしい、と。

杏子は契約した。
父の為に。家族の為に。みんなの幸せのために。

そして、杏子は人知れず魔女と戦う魔法少女になった。

魔女。
それは、世界に災厄をもたらす遣い。
彼らとの戦いは人知れず、誰からも褒められることはなかった。
それでも構わなかった。
それで人々の、家族の平和が守られればそれ以上に嬉しいことはないと思っていた。

一人の『正義の味方』に出会うまでは。

正義の味方の名前は巴マミ。
隣町に住み、杏子よりも前から活動している魔法少女だった。
戦う彼女の姿は、優雅で、華麗で、なにより強かった。
そんな彼女の姿に惚れ込んだとでもいうべきだろうか。
人々の為に戦う彼女の信念とは波長が合い、互いの仲が深まるのも時間がかからなかった。

そして、杏子はマミの弟子になった。



杏子はマミを師と仰ぎ、共に手を携え戦うことで、飛躍的に実力を伸ばしていった。
彼女とのコンビはまさに強力の一言。
互いの実力はさながら、堅い信頼で結ばれた連携は、大概の魔女にひけをとらず、伝説の魔女ですら敵ではないとさえ思えるほどだった。

優しい家族。
優しく強い師匠。
裏に表と彼らに支えられた魔法少女の生活は、これまでにないほど充実した。

そんな幸せの絶頂にも終わりが訪れる。

それはほんの些細な失敗からだった。
教会に現れた魔女を退治する場面を父に見られてしまった。
杏子は仕方なく全てを話した。
自分の戦う理由も、そのために叶えた願いも。

それが、全ての崩壊の始まりだった。

ほどなくして、杏子の父は壊れてしまった。
酒に溺れ、家族に暴力を振るい、人外の力を手に入れた娘を魔女と罵る。
そんな絵に書いたような廃人と化してしまった。
世の中を変えることなどなにもできない己の無力さ、娘の魂を悪魔に売らせてしまった自責の念、娘の願いで惑わされる人々への懺悔、壊れた理由は挙げればキリがないほど複雑で多い。
妹や母が杏子を責めなかったのは唯一の救いだったのかもしれない。

けれど、そんな脆くなった家庭など壊れるのはあっというまで。

杏子が家へと戻った時、父は家族を道ずれに無理心中をしていた。
その選択をした父にどんな想いがあったかはわからないが、結果として杏子は取り残されてしまった。


当然、そんな状況に陥った彼女がかつてのように無邪気に夢見る正義の味方でいられるはずもない。

兼ねてより使えた幻惑の魔法は、自らの願いを潜在意識で拒絶してしまったために封印され。
こんな、人を破滅に向かわせるしかできない奴にも優しくしてくれるマミの姿は、どこか拒否したくなるほど眩しすぎて。
だから杏子は彼女と別れることにした。

自分の為だけに力を使う。そんな信念を掲げ、一方的に彼女から離れていった。

そして二人の魔法少女の道は違えた。

一人は名も知らぬ大勢の他者のために戦う光り輝く正義の道へ。
一人は己の利益のためだけに戦うドス黒く利己的な道へ。


そんな彼女たちの末路は。

末路は...


...




一人の少女が、森を、街をひた走る。
当てもなく。これといった思慮もなく。ただただ愚直に走り続けている。
少女の名は佐倉杏子。嵌められた首輪は、この会場内で『怪物』とされる"赤"。

彼女は、白井黒子に助けられその借りを素直に帰してしまった事実に複雑な想いを抱いていた。

いま思い返してもその気持ちは変わらず。あれではまるで―――

「ああ、クソッ」

つい舌打ちをついてしまう。
それで気分が晴れることはないが、せずにはいられないのだ。

ふと、デイバックからポロリと中身が毀れかける。
杏子は咄嗟にそれをデイバックに仕舞い込むものの、それを見て苦い表情を浮かべる。
彼女の支給品のひとつは、何の変哲もないホッケーマスク。
それを見た者には、かのスプラッター映画の怪人、ジェイソンを連想させるだろう。

「......」

その仮面を見つめながら思う。
特別映画に詳しくは無い杏子でも、ジェイソンがどんな怪人かは大まかには知っている。
武器を片手に人間を殺傷する鬼人。それがジェイソンの一般的イメージだ。
彼が何故人を殺すのか。そんなことまでは知らないが、殺人鬼の面が配られたのは主催からの皮肉だろうか。
まるで、人を不幸にするだけのお前にはおあつらえ向きだと。そんな意図を込められているようにさえ思えてしまう。

「...くだらねえ」

なにをセンチになっているのか。
今さら善人ヅラするつもりはないし、他者からなんと言われようともどうでもいい。
自分は自分のために力を使うだけだ。
ホッケーマスクをデイバックにしまい、再びその足を進める。



闇雲に走り続けてどれほど経っただろうか。
やがて辿りついたのは、荒れに荒れた廃墟だった。
建物の至るところに穴が空き、罅が入り、崩れ落ちている。
派手にやったものだと呆れと感心を同時に抱かせるほど凄惨だ。

この破壊を刻んだ者達―――こんなことを一人でやるはずもない―――はまだいるのだろうか。
だとしたら、早く離れるべきだろうか。

そんな杏子の耳に留まるものがひとつ。


―――――♪

「歌...?」

まるでガラスのように透き通るような声。聞こえてきた歌からは、そんな印象を抱かせた。

この殺し合いという場でなんと暢気なことだろう。
底抜けに能天気なバカか、それとも獲物を誘っている狩人か。
なんにせよ、この破壊をもたらした者であれば、姿だけでも確認しておくのも悪くは無い。

杏子は、気配を殺しつつ歌の出所を探ることにした。


「―――――♪」

建物の陰から伺い、薄く差し込む朝日に照らされた声の主の横顔を確認する。
声の主は女だった。
緑と白を基調とした服に身を包み、尖った耳と美貌が特徴的だ。


見るからに隙だらけだ。脅しをかけるにせよ少しでも参加者を減らすために殺すにせよ、いまは絶好のチャンスにも思える。
だが、杏子は動けなかった。
彼女の佇む巨大なクレーターが嫌でも警戒心を抱かせる。それもあるかもしれない。
だが、それ以上に彼女の歌が気になってしまう。


「...もしもこの花に心があるなら寂しさも癒えるでしょうか」

思わず歌詞を口ずさんでしまった口元を慌てて塞ぐ。
気付かれていないだろうか。
チラリと女へ視線を向けるも、こちらに反応した様子はなく歌を続けている。
間抜けだ。緊張感が無さすぎる。
だが、彼女の歌は嫌でも杏子の心に染み込んでくるのだ。
それは彼女の声のせいなのか。それともどこかの誰かにも通じる歌詞のせいなのか、そこまでは自分でもハッキリとしていないが。

やがて歌が終わり、女はふぅ、と一息をつく。

「御清聴感謝します」

彼女はゆっくりと立ち上がり、杏子の隠れる建物へと目を向ける。

(なんだ、バレてたのか)

戦略的には、未知数の相手から逃げるのは決して間違いではない。
しかし、魔女のような言葉の発せない怪物ならいざ知らず、言葉を交わせる相手にこのまま逃げるのは癪だ。
観念した杏子は、素直に女の前に姿を現した。

パチ、パチ、パチ、と一定の感覚をおいた拍手を送る。
半分は純粋な称賛を、もう半分は少しばかりの嘲笑を込めて。
その意図を知ってか知らずか。女の笑顔は一向に崩れなかった。

「いい歌だったよ。こんなところじゃ場違いにもほどがあるけどな」
「身体を休めるにあたり、暇を持て余していたのでつい。ですが、お蔭であなたという収穫がありました」
「ハッ」

女の言葉を鼻で笑い、杏子の視線に敵意が宿る。


(なるほど。あの歌で獲物を引き付けて狩るつもりだったわけだ)

なんて命知らずだろう、とは思わなかった。
この荒れ果てた街を創り上げたのはおそらく彼女だ。
本人でなければ、下手人を警戒する必要があるため、ああも暢気に釣り針を垂らすような真似はできない。
単なる奢りや油断ではなく、相応の自負と自信があり、それに偽りはないと察せる。

身体を休めていると言っていたが、この女に手傷を負わせ、この廃墟を作り上げるのに貢献したのだ。相手もそうとうなものだろう。

だからといって、杏子が怖気づくことはない。
杏子とて魔法少女のベテランだ。己の強さには相応の自信があるし、容易く負けると思えるほど謙虚ではない。
なにより、女は自分と同じ『赤首輪』。
彼女を斃せば一足先にバトルロワイアルから脱出ができる。
ならば、狙わない理由はないだろう。

突きつけられる槍を前にしても女の笑みは変わらず、そこからは微塵も恐怖や緊張を感じ取ることはできない。
変わらぬ歩調で、杏子との距離を詰めてくる。

「戦うのは構いませんが、その前にひとつお話をよろしいでしょうか」

好戦的な態度とは裏腹に女が持ちかけたのは対話。
当然、杏子がそんなものをあっさりと信じられるはずもなく。
もしかしたら他に協力者が潜み狙っているのではないか、キョロキョロと目線だけで確認する。

その視界の端で杏子は捉えた。

女が最初に座っていた付近で、何者かが横たわっていることに。

その制服に見覚えがあることに。

気が付けば杏子は足を進めていた。

女との距離が縮まるのも、言葉を交わすことなく通り過ぎるのも構わず。

ただ、考えるよりも早く『確認しなくては』と身体が動いていた。

横たわる者へ辿りつくまで、時間にすればほんの数十秒だが、杏子にとっては永遠に辿りついて欲しくないとも思える時間だった。
だが、何者からの邪魔もなく辿りつき。

杏子は見てしまった。

横たわっていたのは、かつて敬愛した師、巴マミであったこと。
彼女の頭部と首が泣き別れていたこと。
正義の味方の末路としては、あまりにも惨たらしい顔でこちらを見つめていたこと。

「なあ―――こいつは、死んでるのか?」

思わず零れ出たのは、悲しみの涙ではなく、憤怒の激情でもなく。

そんな、見ればわかるような間抜けな問いかけだった。




「26人ですか」

黒球の報酬である、赤首輪の数を書かれた紙を見て呟く。
思ったよりも多い。
参加者の半分もあれば、報酬によって脱出する参加者もそれなりに出てしまうのではないか。
果たして自分は何人の赤首輪の参加者と闘争を愉しめるだろうか。
出来れば他の赤首輪の参加者も第一に弱者の排除からとりかかってもらいたいものだが。

そんなことをぼんやりと考えつつ、身体を休めていたクラムベリーの耳に届いたのは、何者かの足音。
その足取りから素人ではないことはわかったが、それ以外は実際に見ない事にはわからない。
そこで彼女は、魔法で音を操り歌を届けることによって、相手の出方を窺った。
歌を聞き、もしも離れるならその程度の弱者であり用もない。
もしも恰好の獲物だとこちらを狙うなら最低限の実力は有しているはず。
その結果として現れたのが、赤首輪の参加者、佐倉杏子だ。

マミの死体を見て問いかけてきた杏子の様子から、クラムベリーは彼女の事情を察する。

(巴マミの知り合いでしたか)

かねてよりの試験の時から、他の魔法少女の素性や本来の姿について一切探ろうとしない彼女から見ても杏子の態度はわかりやすかった。
巴マミの死体を見てショックを受け動揺している。
自分やマミの首輪同様、赤首輪を嵌められていることから、十中八九魔法少女だろう。

(さて、どう答えたものでしょうか)

クラムベリーは考える。

普段なら、彼女を殺したのは自分だと挑発を交えて闘争に臨んだだろう。
だが、このバトルロワイアルでは赤首輪の参加者は後回しにすると決めている。
巴マミとの戦い同様、余計な横やりを入れられてはたまらないからだ。



なにより、ここでそう言葉にだせば、自分が巴マミに勝利を収めたことになってしまう。
確かに、彼女の命を絶ったのは自分だ。だが、あんなものは勝利とは言えない。
魔法少女としての彼女は、裏切られた時点で死んでいた。
例え嘘でも、あんなものを彼女との決着の形にはしたくなかった。

「そうですね。イチから話しましょうか」

結局、彼女は嘘偽りなく事の顛末を話すことにした。

巴マミと佐山流美と出会ったこと。
自分が流美を殺そうとしたことによりマミと交戦したこと。
戦いが熱を帯びてきた折に、マミが裏切られたこと。
マミが怪物になってしまったため、その命を絶ったこと。

杏子は、クラムベリーの告白に意外にも口を出さず静かに耳を傾けていた。

(もしも彼女も巴マミと同等の実力者であれば、楽しみは後にとっておきたいですが...)

杏子が自分の方針に賛同してくれるのが一番手っ取り早い。
しかし、巴マミのように正義を謳い、若しくは敵討ちだと憤り立ち向かってくるならそれはそれ。
その時は全力を持って楽しむつもりだ。

「私はこれより赤首輪以外の参加者を狩ってまわります。赤首輪の参加者との戦いはその後です。あなたはどうしますか?」

さて、杏子の返答は如何なるものか。




目の前の女は全部語ってくれた。
あいつが人間を護るために戦ってたこと。
護っていた筈の人間に裏切られたこと。
最後に魔女になって殺されたこと。


正直、予想外なことではなかった。
あたし自身、そうなる可能性が高いと考えていたから、あのジャッジメントと名乗った女を拒否し続けてきたからだ。

...普通なら、魔法少女が魔女になるなんて聞かされたらもっとショックを受けてた筈だ。
でも、なんでかな。
いまはもう、そんなのはどうでもいいことと思えるくらい動揺や感傷は覚えなかった。

たぶん、あいつのせいだ。
ホントは戦いたくなんかねえくせに、誰かを護るために戦い続けて。
周りがいくら忠告しても、自分の利益にならない使い魔退治を馬鹿みたいに続けてきて。
なにが嬉しかったのか、魔法少女候補生の一般人を連れまわして隙を突かれて死んで。
生き返ったと思ったら性懲りもなく護るために戦って。
結局、ソイツに裏切られて、それでも最期までソイツを守ろうとしちまって、悔しそうな顔をして死んじまったあいつのせいだ。

カメラがあったら写真に収めて見せてやりたいね。これ以上、あいつが絶望することなんてあるのかよってさ。

だからかな。あいつが死んだのが悲しいんじゃなくて、悔しいと思っちまうのは。

多分、あいつがまともに戦って、ちゃんと負けていればもう少しマシな顔で死ねたのだろう。
そうすれば、あたしも涙の一つも流してやることが出来ただろう。

でも、現実は違う。

あいつが護ろうとした奴は、己の保身のためにあいつを切り捨てた。あいつのこれまでの全てを否定しやがった。

泣くことなんかよりも先に、得体のしれない苛立ちが湧いてきちまう。

「...ありがとな」

だからだろう。あいつを殺した張本人に、お礼を言っちまったのは。



「何故礼を?」
「あいつ、馬鹿だからさ。もし魔女のまま生き延びて他の人間を殺しでもしたら、きっと死ぬほど悔んでた。そうなる前に、あんたが殺してくれた礼さ」

そうだ。あいつは結局、人間を見捨てられなかった。
本心で望んでいようとなかろうと、あいつは最期まで正義の味方であろうとしたんだ。

あいつを殺した女は、キョトンとした様子で目を瞬かせる。
まあ、当然だろう。あいつがああ見えて、あたしと道を別っても生き方を変えなかった程の頑固ものだってことは知る由もないんだから。

「...なあ、あんた、名前は?」
「森の音楽家クラムベリーです。クラムベリーと呼んで下さい」

このソウルジェムの中の魂がぐつぐつと煮えたぎる感覚を覚える現象。
さっきは得体のしれない苛立ちといったが、訂正する。

あたしが苛立ってるのは、人間に対してだ。

いつもそうだ。

親父が少し教義と違うことを説いただけで異端者扱いして弾きだし。
聞かないだけならまだしも無意味に罵倒し水をかけ。
奴らが心の隙間を突かれて魔女に操られた所為で全てが狂い。

...肉親ですら、少し人から外れた力を使っただけで、悪魔に魂を捧げただの人間を生贄に捧げただのとレッテルを張り勝手に壊れていって。

あげくの果てには、護ろうとしてくれた奴を切り捨て己だけ助かろうとする。

あたしの敵は魔女なんかじゃなく、いつだって人間だ。

親父の言葉を盲信してたかつてのあたしは、皆が幸せになれるようにと願っていた。
けど、現実を見れば考えなんていくらでも変わる。

なんであいつらのために戦わなくちゃいけない。
なんであたし達を苦しめる奴らの幸福を守らなくちゃいけない。

あいつらはなにもしてくれない。
それどころか、正義の味方であろうとすることさえ許さない。
声高々に正義を名乗るのが許されるのは、人間だけだ。

「クラムベリー。あんた、赤首輪以外を狩るって言ってたよな」

だったらもう答えは決まってる。
あいつらが、あたし達を否定するのなら、都合のいい道具としか考えないなら。

あたしはあんたらの言いなりにはならない。
マミみたいに裏切られることもしない。

正義も悪もどうだっていい。

「手伝ってやるよ、人間狩り」

人間(おまえら)全員、あたしの敵だ。




クラムベリーは思わずきょとんとした表情で杏子を見る。
予想外の答え―――いや、予想はしていた筈なのだ。
そもそもその答えを聞くために勧誘したのだから、この返答は望み通りのものだ。

「...意外でした。まさかこうも迷いなく受け入れてくれるとは」
「裏切るつもりなら、いつかは殺し合うこと前提では話さないだろ」
「そういう意味ではないのですが...」

巴マミの死でショックを受けるほど親しい仲なら、彼女と似たような信念を持っているものだと思っていた。
絶対に弱者を見捨てない、百歩譲って答えを出すのにもっと時間を要するかと思っていた。
だが、杏子はさして迷う素振りもなくクラムベリーの方針に賛同した。
果たしてそんな彼女は本当に強いのか。甚だ疑問が残る。

「失礼します」

それを試すために、クラムベリーは不意打ち気味に掌底を放つ。
勿論、殺気は込めている。これをまともに受けて再起不能になるのならその程度であり、組む必要などない。
杏子の顔目掛けて放たれた掌底は、しかし首を捻り躱され、代わりに槍を喉元に突きつけられる。
槍の先端をクラムベリーが人差し指と中指で挟み止めれば、二人の顔は互いの鼻先が掠り合いそうなほどに接近した。

「合格です。試すような真似をして申し訳ありませんでした」
「構わないよ。あたしがあんたの立場ならたぶんそうしてた」

二人は互いに戦闘態勢を解き、互いの武器を下ろす。

彼女の強さに問題は無い。
だが、巴マミと親しき仲にありながら、彼女とは真逆の道を行こうとしている。
何故か。考えられる理由はひとつだろう。

「巴マミの敵討ち、でしょうか」

クラムベリーの問いに、杏子は一旦間を置き答える。

「別に。敵討ちがどうとかはどうでもいい」

その答えに少し驚き、しかし続く答えにクラムベリーは納得し笑みを浮かべた。

「ただ少し、気に入らないことがあっただけさ」


【C-6/一日目/早朝】
※巴マミの死体が首が切断された状態で放置されています。

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1、鮫島精二のホッケーマスク@彼岸島
[思考・行動]
基本方針:生き残る。そのためには殺人も厭わない。
0:どんな手段を使ってでも生き残る。
1:クラムベリーと協定し『人間』を狩る。共に行動するかは状況によって考える。
2:鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらを探すつもりはない。


※TVアニメ7話近辺の参戦。魔法少女の魂がソウルジェムにあることは認識済み。
※魔法少女の魔女化を知りましたが精神的には影響はありません。


【森の音楽家クラムベリー@魔法少女育成計画】
[状態]疲労(中~大)、全身及び腹部にダメージ(中~大) 、出血(中)、両掌に水膨れ、静かな怒り
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~2 巴マミの赤首輪(使用済み)
[行動方針]
基本方針:赤い首輪持ち以外を一人残らず殺す。
0:赤い首輪持ち以外を一人残らず殺す。
1:杏子と組む。共に行動するかは状況によって考える。
2:一応赤い首輪持ちとの交戦は控える。が、状況によっては容赦なく交戦する。
3:ハードゴア・アリスは惜しかったか…
4:巴マミの顔を忘れない。
5:佐山流美は見つけ次第殺す。



Breaking The Habit 佐倉杏子 人間なんて
Magia Record -真魔法少女大戦- (1) 森の音楽家クラムベリー
最終更新:2018年12月03日 18:24