あにまん民のオリキャラ同士をAIの力を借りて戦わせるスレ @ ウィキ
《桜 VS 天忠明(あまのただあき)》
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aioricharabattle
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《桜 VS 天忠明(あまのただあき)》
風もなく、雲もなく、ただ空と大地が広がるだけの場所に、二つの存在が対峙する。
「お会いできて、光栄ですわ。」
鈴を転がすような声が、大地に染み込むように響いた。
黒き浴衣をたなびかせ、桜は優雅に扇子を広げる。その所作一つが、まるで踊りのようであった。
赤い瞳が柔らかく細められ、その微笑には深淵のような闇と甘やかさが混ざり合っている。
対するは、陰陽師・天忠明。
白装束をまとい、額には薄く汗が滲んでいるが、その双眸は一点の曇りもなく、目の前の異形を見据えていた。
「名乗ろう。俺は天忠明。貴様のような存在は、ここで止めねばならぬ。」
「まぁ、怖いお言葉。……でも嬉しいですわ、そんな真剣な眼差しで見つめられるなんて。」
ヒュゥゥゥゥ——
桜の扇子がひらりと揺れると同時に、大気に微細な振動が走った。
それは決して自然の風などではない。気配を持ち、意志すら感じさせる風。
ヒュウウウウウ……
低く唸るような風が、大地を撫でる。草一本すら生えぬ平原に、目に見えぬ波が走る。
空の青がわずかにねじれ、地平線が霞んで揺らぐ。
空の青がわずかにねじれ、地平線が霞んで揺らぐ。
「戒——封鎖。」
忠明の手が閃き、札が天へと掲げられる。
パシュッ!
札が淡く輝き始め、数式のような光の文字が空中に現れ、それが空間を縫うようにして拡がっていく。
封印の結界が生まれ、桜の術式領域を直接抑え込むようにして展開される。
封印の結界が生まれ、桜の術式領域を直接抑え込むようにして展開される。
しかし——
「ふふっ、面白いわ。では……どうか、お楽しみくださいな。」
バシュンッ!!
まるで時空をすり抜けるように、桜の姿が一瞬で掻き消える。
「っ——!」
忠明の全神経が一点に研ぎ澄まされる。
(上か——!)
ゴッ!!
突如として背後から振るわれた扇子の一閃。
だが、忠明は咄嗟に反転し、左手に展開された札で角度を変え、扇子の一撃を流す。
その軌道は滑らかで、計算された紙一重の回避であった。
「戒——火封陣!」
ゴウッ!
忠明の足元から走る紅の符。
瞬間、彼の前方に魔法陣が展開され、そこから凄まじい火柱が爆ぜるように噴き上がった。
瞬間、彼の前方に魔法陣が展開され、そこから凄まじい火柱が爆ぜるように噴き上がった。
熱風が周囲を飲み込み、焦げた空気が一瞬、視界を歪めた。
だが——
桜の姿は、炎と煙の向こうにすら見当たらなかった。
「幻影か……?」
忠明が警戒の眼差しを強めたその刹那、
「ふふっ、惜しいですわね。」
艶やかな声が、背後からではなく、足元から響いた。
ザザッ!!
忠明が跳躍しようとした瞬間、足元に浮かび上がる魔法陣。漆黒と紫が絡み合い、禍々しい光を放ちながら回転を始める。
——ドゥウウウン!!
地鳴りにも似た轟音と共に、黒紫の魔力柱が天を貫いた。
炸裂する衝撃波。忠明の身体は空中に吹き飛び、護りの結界が辛うじて直撃を免れさせたものの、全身を焼くような痛みが奔る。
「くっ……戒——癒結!」
叫ぶようにして札を切ると、淡い緑の光が彼の傷口を包み込んでいく。
皮膚が再生し、呼吸がわずかに整った頃には、桜の気配が再び宙に溶けていた。
(物理は通じない。魔術の質も桁違い。だが……まだ“律”がある。俺自身が創った、唯一無二の術。)
忠明は静かに目を閉じ、両の手を組む。指が絡み、複雑な印を紡ぎ出す。
「我が手にて、新たなる戒律を刻む……律・呪環封陣。」
その声に応じて、空間が震えた。目には見えぬ軌跡を描いて、無数の符号が空中を走る。
渦巻く光の環が彼の周囲に幾重にも形成され、詠唱と共に術が胎動する。
符号と印、それらが織りなす文様は、ただの術式ではない。忠明自身が構築した、魔に対抗するための理そのものだった。
桜が一歩、彼に近づく。
「何か考えているのですね。ええ、いいですよ、待ちますわ。」
扇子で口元を隠したまま、微笑む桜。
その足取りは軽やかで、舞うような気配さえ含んでいる。術式が完成する。
バチィィッ!!
忠明の手のひらから奔る光は、雷鳴のような音を伴って宙を裂いた。
幾何学的な紋が幾重にも重なり合い、彼の周囲に巨大な結界が形を成していく。
「“呪環封陣”——お前の魔を、ここで無力化する!」
ズズゥゥゥゥン!!
地面が軋み、空間がねじれる。周囲の風が逆流し、空気そのものが異音を発するように鳴った。光の鎖が地平を縫うように走り、桜の足元を囲い込む。
桜の魔力が震え、彼女の身体の周囲に張り巡らされた気の層が一枚、また一枚と剥がれていくように感じられた。
桜の魔力が震え、彼女の身体の周囲に張り巡らされた気の層が一枚、また一枚と剥がれていくように感じられた。
しかし——
「んふふ……甘い、甘いですわね。」
その声音は、まるで春風のように優しく、だが底知れぬ凍てつきを秘めていた。
彼女が広げた扇子から、ふわりと赤黒い蝶が一羽、そしてまた一羽と舞い出す。それはすぐさま群れとなり、空を埋め尽くすように増殖していった。
「“妖葬・曼珠沙華”。」
蝶の群れが光の結界に触れた瞬間、それはまるで飢えた獣のように、結界に喰らいついた。
羽音が振動となって響き、呪環の紋様がひとつ、またひとつと崩れ去っていく。
羽音が振動となって響き、呪環の紋様がひとつ、またひとつと崩れ去っていく。
「さぁ、全てを喰らいつくしなさいな。」
赤黒い蝶の群れは旋回しながら結界の内部へと侵入し、魔力の律を食い破りながら破壊を進めた。その様は、まさに妖しくも美しい死の舞踏であった。
「くっ…!?」
忠明は全神経を呪環の補強に集中させ、光の鎖を幾重にも交差させて結界の再構築を図った。
蝶の群れが結界の網目に喰らいつくたび、光の律動が脈打ち、彼の体内から魔力が流出していくのを感じる。
蝶の群れが結界の網目に喰らいつくたび、光の律動が脈打ち、彼の体内から魔力が流出していくのを感じる。
だが、それでも彼は止めなかった。止められなかった。
(もう少し……もう一層重ねれば……!)
しかしその瞬間、彼の意識の網の目から一筋の影がこぼれ落ちる。——桜だ。
「私のことも忘れてもらっては困りますわ。」
囁くような声音が響いた次の刹那。
ドシュウウゥンッ!!
空が割れる音とともに、目視すら困難な斬撃が虚空を奔った。
赤黒い残光が一瞬、空間を裂き、時間の流れさえ置き去りにする。
桜の扇子が翻る。それは舞のような優美な軌跡を描きながらも、寸分の狂いもない殺意の軌道。
忠明の胸元に、鋭い衝撃とともに凍てつくような痛みが炸裂した。
斬撃は衣を裂き、皮膚を穿ち、肉を断ち、骨すらも貫く。内側を通り抜けた一閃の冷気が、彼の心臓に至るまでを凍てつかせる。
「ぐっ……あああっ!!」
声が漏れたときには、彼の身体はもう空中を舞っていた。吹き飛ばされたその肉体は、地面を転がり、土をえぐって止まる。
轟音とともに煙と砂埃が巻き上がり、辺りは一瞬の静寂に包まれた。
「終わりですわ。」
淡く微笑みながら、桜は静かに扇子を畳む。
その足取りはまるで風のようにしなやかで、重力さえも拒むかのように揺らぎ一つなかった。
忠明は地を這いながら、必死に立ち上がろうとする。
だが、膝は崩れ、腕は自身の重みにさえ耐えられない。
魔力の流出と激痛が意識を曇らせていく。
「……無念。」
その一言に、桜は扇子を唇に当てながら、まるで慈母のように柔らかく微笑む。
「いい戦いでしたわよ。あなたのような意志ある者が増えれば、きっと世界も少しずつ変わっていくのでしょうね。」
そして、彼の額へとそっと扇子の先を添える。
「おやすみなさいませ、天忠明さん。」
スゥッ……
空気が揺らぎ、忠明の意識が闇へと沈む。
「勝者——桜。」