アマネオ

再臨(2019年)

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amaneo

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 八月八日。夏の朝、リリジョン101の信者たちはマハカメリア宮を夢に見ていた。教祖は光を放つクリオネじみた姿で語りかけた。
「お待たせ。帰ってきました。私、マハカメリア宮は見事に『星の落とし子』となることができました」

 頭が裂けて翼に展開し、両翼の間から触手がうごめいた。まるでメドゥーサのようだった。
「おいで、ここにおいで、みんなでおいで、私が包んで、私が守ってあげる。私のこどもたち」

 目を覚ました蓮田ヒカリは、かねてから準備していた計画を発動させた。信者たち全員で「星の落とし子」に会いに行く。既に兵器担当の城戸と「星の落とし子」研究担当のアマーニが教団を去っていた。ヒカリはその日を思い出すだに、理由がよくわからない。
「マハカメリア宮が夢に出てこないからだ」

 二人が言っていた。
「それは必要ないと見なされたのよ」

 ヒカリは見下げた目をした。
「自分の夢じゃ、カメちゃんは助けてって言ってた。マハカメリア宮なんかじゃなく、カメちゃんが」

 ヒカリにはよくわからなかった。それが決別の瞬間だった。

 蓮田ヒカリは信者たちと共に渡船に乗った。全ての船を動員しても余った信者は海辺に、またはへそ池の縁に立った。それから全員で身体に重りをつけ、一斉に身投げした。深海に潜む「星の落とし子」に会い、ヒトラシキを経てやがて自身もマハカメリア宮の子になるために。

 海辺からは深海に辿りつけるはずもなかったが、いてもたってもいられず全員が身投げした。

 へそ池にいた信者だけは岩本たちに止められうまくいかなかった。
青から黒へと変わっていく海に沈みながら、信者たちは見た。深淵から幾本もの触手が巻きつき巻きつかれ、花開くように彼らを迎えてくれるのを。

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