076

Wave Live! ◆H3I.PBF5M.



白み始めた荒野を駆ける影が五つ。
男が二人、少女が三人。どの表情も一様に暗い。
誰も、何も話さない。彼らはつい先ほどまで苛烈な戦闘の渦中にいたため、のしかかる疲労は無視できない。
しかしそれ以上に、その内の一人が放つ陰鬱とした空気が、誰かの発言を言外に封じていたためだった。

「……追ってきてねえ、な。もう走らなくてもいいだろ」

殿を務めていた青年、帝都の治安を護る特殊警察イェーガーズの一員であるウェイブが後方を確認し、言う。
修羅場慣れしているウェイブ、そして白井黒子ロイ・マスタングと違い、ここには高坂穂乃果小泉花陽の二人の民間人がいる。
自分の足で走ってきたウェイブらと違い、二人は形態変化させた“魔獣?化”ヘカトンケイル――通称コロに乗っていた。
そのため息が上がっているはずもないのだが、陰惨極まる戦闘を潜り抜けたからか顔色は蒼白い。
ウェイブは彼女たちを安心させるため、あえて沈黙を破る決断をした。
エンヴィー、そしてキンブリーといった敵対者たちも、決して軽くはない疲労を負っているはずだ。
そこへ黒子たちを襲撃してきた男。こちらも味方だったはずの鳥を失い、単純に見れば戦力は半減しているはず。
両者ともこの状況で即座に追撃してくることはないだろうと、願望の入り混じった状況判断。
潰し合ってくれているのが最良の展開だが、それはまさに神のみぞ知るというところか。

「穂乃果、それに花陽。怪我はないか?」
「あ……はい。私はもう大丈夫……です」

ペット・ショップによって凍らされた花陽の腕は、既にマスタングによって処置されている。
感覚も戻ってきており、特に後遺症もない。
しかし花陽はそれを喜ぶ気にはなれなかった。隣にいる穂乃果が、先ほどからじっと唇を噛んでいることに気付いているからだ。
マスタングもその様子に気付いていたが、ウェイブの傷を応急処置することを優先して敢えて声はかけなかった。

「穂乃果、お前は」
「ワンちゃんは? ねえウェイブさん、ワンちゃんはどこ?」

彼らは五人。本来であればここにいるべき一人と一匹が、足りない。
一人、天城雪子はあの場で黒焦げの死体となっているのを全員が目撃している。それが誰の仕業かも。
一匹、イギーはウェイブだけがその最期の瞬間を見た。クロメと同じく“死者行軍”八房の餌食となった光景を。
コロに乗って走っている間、穂乃果はじっと目を凝らして周囲を観察した。
あの小さな犬はどこにもいない。ウェイブが歯を食い縛って走っている。
それだけで、理解してしまった。

「ワンちゃんだけじゃない。雪子ちゃんだって、さっきまでいたのにもういない。なんで? ねえ、なんで!?」
「穂、乃果……」

穂乃果は決してウェイブを責めているわけではない。しかしその言葉は刃となってウェイブの胸に刺さる。
決して慣れたくはないが、ウェイブは軍人だった過去に戦友を失う痛みを経験している。
ついさっきまでにこやかだった顔が、もう二度と笑わなくなる。その辛さを知っている。だからこそ、何とか耐えられる。
しかし穂乃果と花陽は違う。もしかしたら、青ざめた顔をしている黒子もそうかもしれない。
穂乃果を宥めようと口を開きかけた黒子をウェイブが制する。
誰に向けたものでもないとしても、それを受け止められるのはこの場でウェイブしかいない。
年齢的には一番幼い黒子、ましてやマスタングにその役目を押し付けることはできなかった。
深く息を吸い込み、腹に力を入れる。涙を浮かべた穂乃果の眼を真っ直ぐに見返す。

「すまねえ、俺のせいだ。俺がもっと強かったらあいつは……ああ、くそっ。
 何度も助けられたのに、俺はあいつの名前も知らねえってのか……!」

犬ころ、と言いかけて止める。あの犬にだって名前があったはずだ。飼い主か、あるいは犬同士の間で呼ばれる、あの犬だけの名前が。
それすらも知らないまま、逝かせてしまった。穂乃果の悲しみを受け止めると決意したはずなのに、揺らぐ。
ウェイブにとっても、イギーの死は決して小さなものではないのだ。
固く握り閉めた拳から血が滴る。

「っ……。そ、それに、雪子ちゃんをこ、ころ……殺したのって、マスタングさんなんでしょ!?」

ウェイブが何も言えなくなって、穂乃果は後悔するように唇を震わせた。
しかし次に吐き出された言葉はマスタングへの糾弾。イギーの死に匹敵するほどの、決して無視できない事実だ。

「……そうだ。私の過失だ。私が、天城雪子を殺した。この手で」

沈んでいたマスタングが穂乃果の言葉に反応して顔を上げた。
生気の感じられないその眼は、マスタングが相応に精神的なダメージを背負っていると容易に推察できるものだ。
しかしマスタングに対して猜疑心を持っている穂乃果からすれば、感情のない冷徹な殺人者としか思えなかった。

「なんでっ……なんであそこまでする必要があったの!? エンヴィーって人のときと同じだった!
 あんなに何度も焼かれなかったら、もしあなたがもっと手加減してたら、雪子ちゃんは助かったかもしれないのに!」
「……ああする必要があった。エンヴィーに対しては。
 私にやりすぎと言ったな、ウェイブ。違うんだ……あれでもまだ足りない」
「足りないだと? あれでか」

穂乃果から目を逸らし、マスタングが細々と反論する――穂乃果ではなく、ウェイブに向けて。

「ホムンクルスは、常人なら死ぬダメージを受けても瞬時に再生する。
 それは奴らが生きているのではなく、賢者の石という物質から力を汲み上げて肉体を再構成するためだ。
 首を刎ねようが五体を粉々にしようが、賢者の石さえ無事なら奴らは何度でも元通りに復活する」
「なんですの、それ……それだけのエネルギーが存在するはずは」
「何かを得るには相応の代価が必要になる。それが錬金術の基本原則たる、等価交換。
 それを無視できるのが賢者の石であり、その力で存在するのがホムンクルスだ」
「だからお前は、あんだけ執拗にエンヴィーを焼いたってことか……」
「広川という男の言葉を信用するなら、この首輪を爆破すれば奴も死ぬはずだが……あれだけの焔を叩き込んでも首輪は無事だった。
 禁止エリアに踏み込ませる以外の外的作用では、首輪を起爆させることは不可能なのだろう。あるいは姿形を自在に変化させられるエンヴィー専用の特別な首輪かもしれんが」

故に、エンヴィーあるいはエンヴィーと目される者に対して、一切の手加減は許されない。
常に最大火力で徹底的に灼き尽くすしか、その脅威を根絶する手段はない。
言葉を切ったマスタングに対し、誰も、何も言えなかった。
理がないわけではない。結果的に雪子を誤って殺してしまったとはいえ、あの状況でのマスタングの行動は、決して間違ってはいなかった。

「でも……死んだのは、エンヴィーじゃなくて雪子ちゃんなんだよ」

しかし同時に。
マスタングがもっと冷静に事態を見極め、焔の威力を調節していれば、雪子は死ななかったかもしれない。それもまた事実。
であるならば、後はその判断を理解できるかどうか。
ウェイブと黒子は、戦う力を持たない一般人を守るという役職から理解できる。
花陽は短い間ながらマスタングとともに行動しその人柄を知っているため、理解とまではいかずとも納得することができた。
しかし穂乃果はどちらでもない。さらにイギーを失い、精神的に不安定でもある。
いくら論理的に正しかろうと、実際に殺人を犯したという事実の前には到底、理解も納得も不可能だ。

「雪子ちゃんが死ぬ必要なんてなかった。きっともっと、やりたいこととか叶えたい夢とかいっぱいあったはずなのに!
 それを全部、全部奪ったのは、マスタングさんなんだよ!」
「……返す言葉もない。すべて、私の責任だ」
「穂乃果、落ち着けよ。いまマスタングを責めたってどうにもならないだろ」

穂乃果はマスタングを受け入れられない。
それは仕方ない。常識的に考えれば、ある程度理解を示しているウェイブの方がおかしいのだから。
しかし、この状態が長く続くのも良くない。離脱できたとはいえここはまだ戦場に近い。
今のところ追ってくる気配はないが、あまり長居すればやがてまた鉢合わせるだろう。

「ひとまずどこか、安全な場所に行こう。そうだな、イェーガーズ本部なんてどうだ?
 あそこならきっと隊長とセリューも目指してるはずだから合流できる」
「そうですわね、まずは身体を休めませんと。DIOの館……は近づきます。私もイェーガーズ本部を目指すのに賛成ですわ」

空気を切り替えるべくウェイブが次なる目的地を提案、黒子が同意した。
マスタングと花陽も頷く。誰もが疲れきっており、それ以上の言い合いを内心避けたかったからでもある。
ウェイブは穂乃果に目をやる。その視線から逃げるように目を逸らされるが、反対はされなかった。

「よし、じゃあ穂乃果、またコロをでかくして」
『誰かいないかにゃあ。返事をしてほしいにゃあ』

くれ、とウェイブの言葉の末尾がかき消された。
響き渡ったのは、どこか棒読みな口調の少女の声。
周囲を見回しても人影はない。どこか遠くから、声だけが届いているのだ。

『皆、聞こえてたら返事をしてほしいにゃ。私はここだにゃ』
「この、声……!」
「これはさっきと同じ……拡声器、ですの?」

声の割れ具合から、ついさっき聞いた助けを呼ぶ声と同様の方法で呼びかけているのだと黒子は判断する。
誰かがまた襲われているのかと緊張を張り詰めた一行の中、穂乃果と花陽だけは違う反応を見せていた。

「花陽ちゃん、この声って……!」
「うん、間違いない! これ、凛ちゃんの声だよ!」

先ほどとは一点、花が咲いたような笑顔を見せる二人の少女。
この声の主は二人の知り合いなのかと、ウェイブが気を抜いたように頬をほころばせる。

「どこから呼んでるんだろう? 早く迎えに行ってあげないと!」
「……いや、待て。この声が本当に君らの友人だとは限らない」

降って湧いた朗報に湧く少女たちを、しかしマスタングが止めた。
花陽と手を取り合って喜んでいた穂乃果が、目を見開いてマスタングを見る。

「どういう、ことですか?」
「わかっているだろう。この声の主がエンヴィーかもしれないということだ」

言われ、ウェイブもその可能性に気づいた。姿を自由に変えられるなら、声もまた同様なのではないかと。
思い返してみると、さきほど会ったクロメの声はまさにクロメそのものだった。
クロメが生きている内に出会っていたのか、あるいは姿を真似ると声も勝手に同じになるのか、それはわからないが。

「奴は我々の情報が記載されている名簿を所有している。当然、君らの友人の声を出せば君らが釣れるということも理解しているだろう」
「だから……何です? 凛ちゃんが呼んでるのに無視しろってことですか?」
「いいや、本人の可能性も否定出来ない。だから全員ではなく、私が行く。そう言っている」

声だけでは本物かエンヴィーの化けた偽者か、確率は半々。
そして本物であればいいが、エンヴィーだった場合。再び戦いになるのは確実だ。穂乃果と花陽がいれば、また彼女らを守るために気を回さざるをえない。
それを防ぐため、マスタングは自分とウェイブがまず確認に向かう。離脱に向いた能力のある黒子は二人の護衛に残す。
ウェイブを連れて行くのは前衛を任せるためと、自分自身の暴走を防ぐストッパーのため。
冷静に現在の状況を考えればそれがベストであったし、そう続けようとした。

「何ですか、それ……それでまた、雪子ちゃんのときみたいに、凛ちゃんまで殺すつもりなんですか!?」

だがマスタングの説明の前に、穂乃果が暴発した。
言い方が悪かったのもあるだろう。しかしそれ以上に今の穂乃果は、マスタングへの信頼がゼロに近い。
一度落ち着いた穂乃果の精神は、ここに来てまた噴き出してしまった。

「あんなに何度も何度も、雪子ちゃんは苦しんだっていうのに、あなたはまた!」
「待て、私は同じ過ちをする気はない。今度こそ必ず」
「そんなの、信用できるわけない! あなたの言うことなんて、信じられるわけないよ!」
「ほ、穂乃果ちゃん、落ち着いて!」
「花陽ちゃん、行こう! 私たちで凛ちゃんを助けに行くんだ!」

ウェイブはコロを穂乃果に預けていた。
先ほどの戦いではウェイブが使って鳥を食わせたものの、帝具とは本来、使い手が定具に対して抱く第一印象がその適性に直結する。
セリューという本来の使い手を知るウェイブでは、どうしてもコロに新しいイメージを抱けない。
故にセリューを知らず、また戦闘能力のない穂乃果の自衛手段、また足になることもあって、コロは穂乃果のものになった。
それが災いした。穂乃果は花陽の手を取ってコロを巨大化させ、見上げるマスタングを置き去りにして走り出す。
声の響いてくる方角。すなわち、先ほど逃げてきた戦場の方向へ。

「ッ、待て!」
「馬鹿野郎、穂乃果たちを殺す気か!」

とっさに両掌を叩き合わせたマスタングに仰天し、ウェイブが後ろから跳びかかって止める。
その動作が焔を生む準備段階と知っていたからだ。

「離せウェイブ! 焔ではない!」

マスタングがウェイブを叱責する。
事実として、マスタングはそのとき、焔ではなく土を錬成してコロの足を絡め取ろうとしていた。
しかしウェイブは、マスタングに何ができて何ができないのか、全てを知っているわけではない。
焔で穂乃果たちを止めようとしたと勘違いしても無理はなかった。
経緯はどうあれ、結果としてマスタングの錬金術は中断させられ、機を逸した。
男たちの見ている前で、穂乃果と花陽を乗せたコロが走り出す――寸前。

「はい、ストップ。ちょっと落ち着きなさいな」

忽然と姿を消した黒子がコロの頭上、穂乃果と花陽の背後に現れた。
二人を掴み、再度のテレポート。三人の少女が地面に降り立つ。命令者を失ったコロが待機状態に戻る。

「ご友人の元へ急ぎたい気持ちは理解しますの。でも、ここでバラバラになるのは決して得策ではありませんわ」

黒子が小さくなったコロをバッグに押し込む。
移動手段を奪われた穂乃果が食って掛かろうとするが、黒子はその眼前にすっと手を掲げて制する。

「何も見捨てる、あるいは行くなと言っているわけではありませんわ。単独行動は危険だと申し上げているのです。
 マスタングさんも、少し言葉が足りないのではありませんか?」
「ああ……その通りだ。参ったな、君が一番年少なのに一番冷静なようだ」

ウェイブともみ合ったままのマスタングが苦笑する。黒子は冷静さを欠いたマスタングよりよほど客観的に周囲を見ていたのだ。
もちろん彼女もウェイブと同じく、マスタングが焔を放つのかと一瞬驚きはした。
しかしウェイブがマスタングを止めるだろうと信じ、自分は穂乃果の方を担当した。

「……私としても、この呼びかけが罠であるかどうか判断はできかねます。
 しかし、真に助けを求める声であるかもしれないという可能性がある以上、見過ごすこともできません」
「じゃあ、行ってみるしかねーな。今度は全員で、よ」
「おい待てウェイブ、それでは……!」
「危険なのもわかるけどよ、お前だけじゃこの声の娘が穂乃果たちの知り合いかどうか、ちゃんと判断できねーだろ?」

ウェイブが黒子に続く。
マスタングとしては、ウェイブと二人だけで行くのが最善だった。無用な危険に少女たちを巻き込むこともない。
しかし、マスタングたちだけでは本物か偽物かの区別をすることは困難ではある。

「だが、彼女たちを危険に晒すことになる」
「……それはどうしようもねえ。だが、この島ではどこにいたって危険なことに変わりはねえんだ。
 だったら近くにいて守る方が、まだ俺は安心できる。お前はどうだ?」
「む、しかしな」
「あっ……あの!」

そのとき、花陽が手を挙げた。またもマスタングに噛み付こうとした穂乃果の口を塞ぎつつ。

「私も、凛ちゃんを迎えに行きたい……です。もし本当に凛ちゃんだったら、私と穂乃果ちゃんが見たら絶対にわかります。
 だから、あの、その……連れて行ってください!」
「うううむううががもが!」

よほど強く押さえているのか言葉になっていないが、穂乃果の言いたいことも花陽と同じなのは間違いない、とウェイブは思う。
少女たちは自分よりも友人の身を案じている。それは、マスタングが彼女たちを心配するのとどう違うというのか。
二人を守らなければいけないのは確かだ。しかしそれは、彼女たちがウェイブやマスタングよりも下の立場だから、ということにはならない。
彼女たちが望み、またそうするに足るだけの理由があるのなら、その意志は尊重されるべきだ。

「マスタングよ。俺たちが守ればいいんだよ。今度こそ、絶対にな」
「……ウェイブ。しかし」

マスタングは未だ納得していない。
どうすればこの堅物を説得できるか……ガシガシと頭を掻き、息を吐いて踵を返したウェイブの視界に。
遠方から砂を蹴立てて走ってくる、巨大な影が飛び込んできた。

「……敵だッ!」

弛緩した空気を吹き飛ばすように一喝して、腰に佩いていた剣を抜く。
あれは誰だとか、穂乃果の仲間がどうとか、そういった余計な考えは吹き飛んでいた。
見た瞬間にわかった。あれは敵だ。対話の余地のない、純粋なまでの敵意の塊。
戦士としての本能が告げている。あれとは殺すか殺されるか、それ以外の関係にはなりようがない、と。

「あの男は……追ってきたんですの!?」
「じゃああいつが、鳥と一緒に襲ってきたっていう奴か!」
「ええ、気をつけてくださいまし。かなり強めに攻撃したのですが、びくともしませんでした。痛みを感じる様子すら」
「見た目は人間でも中身は違うってことか……!」
「下がっていろ、みんな!」

瞬く前に近づいてくる男に向かい、マスタングが両手を叩き合わせる。
これだけの距離があるなら錬成の隙など無視できる。無警告、かつ全力の一撃。
穂乃果が何度も責め立てた、容赦無い焔の洗礼。しかしそれを咎める者は誰もいなかった。
一度襲われた経緯もあるが、それだけではない。誰もがその姿を一目見た瞬間に本能的に理解していたのだ。
あれは、禍々しいモノだ、と。
大地を舐めるように奔る焔の波が男の影を呑み込んだ。

「やったか!?」
「いや……跳んでやがるッ! 黒子、二人を頼む!」

ウェイブがマスタングの首根っこを掴み、強引に引っ張って後退させる。
直後、空から一直線に降ってきた刃が、一瞬前までマスタングの頭があった位置に突き刺さった。

「何だ、こいつは……!」

着地した男のシルエットが、変わっていた。
数秒前までは確かに人の形をしていたはずだが、今の男は両足がひどく肥大していて、本来足首から踵にあたる部分が異常に長くなっている。
まるで関節を一つ増やしたような、跳躍に適した構造に。あの両足でマスタングの焔を飛び越したのだと、眼にしてようやく理解する。

「大火力をただぶちまける。雑な攻撃だ。回避は難しくない」
「何だ……何なんだ、てめえは!?」
「後藤だ」

ウェイブの誰何に、意外なことに男――後藤は律儀に答えた。ただし、刃に変化させた右腕とともに。
黒の剣エリュシデータで受ける。鳴り響いたのは金属音。
身体の一部を変化させたものであるくせに、相当な業物である黒剣と打ち合っても押し負けはしない。
気合を込めて後藤の刃を弾く。追撃しようとした後藤だが、瞬時に手を合わせたマスタングの焔が迫ったことで後方へジャンプ、仕切り直した。
ウェイブは一合の切り結びで直感した。こいつは強敵だと。
少なく見積もっても特級の危険種に匹敵――あるいは超級にまで届くかもしれない。
人外という意味では先程のエンヴィーもそうだ。しかしこの後藤には、エンヴィーには見られた驕りや遊びが一切ない。
精確に、確実に、敵を倒す。目標に向かって一直線に進む強固な意思を感じる。
それこそ万全の状態のウェイブでも、勝てるかどうかは未知数だ。そう思わせる凄みが、この後藤にはあった。

「グランシャリオさえあれば……なんて、言ってられねーな。今ある全部でやるしかねえ……!」

そして脅威を強く認識したウェイブの背後で、穂乃果と花陽の表情は驚愕に染まっていた。
今しがた後藤という男が発した声が、さっき聞いたばかりの星空凛の声そのものだったからだ。

「あ、あなた、その声は……?」
「……? ああ、そうだったな。戻すのを忘れていた」

穂乃果の呟きが聞こえたか、後藤が喉に手をやる。
筋肉が不気味に蠕動し、僅かな呼気が漏れる。

「……これで元通りだ」
「声真似かよ、くそっ!」
「お前たちと同じ衣服を着た人間を見た。あの人間の声を聞けば、足を止めるだろうと考えた。結果は、予測通りだったな」

後藤がバッグから拡声器を覗かせ、ウェイブは思わず舌打ちした。
先ほどの声は後藤の罠であり、自分たちはそれにまんまと引っかかって追いつかれてしまったのだ。

「どうして、どうしてあなたが凛ちゃんの声を出せるの!?」
「寄生生物は声帯を操作できる。一度聞いた人間の声を真似ることなど造作もない」
「凛ちゃんと会ったの!? どこで!?」
「質問が多いな」
「答えてよ!」
「ここから北、C-5エリアだ。今はもうそこにはいないがな」

またも律儀に、後藤は穂乃果の質問に答えた。別に隠す理由もないとでも言うように。
しかしウェイブは気が気ではなかった。いつ後藤が穂乃果にあの刃を放つか、それを自分が防げるのか、そればかり考えていたからだ。

「C-5……行こう、花陽ちゃん!」
「行かせると思うか? お前たちは中々歯応えがある。ここで俺と戦え」

当然、後藤は親切心から教えてくれたわけではない。
余計なことはどうでもいい、ただ戦いたい。それだけを思考し、また他者にも強要する。
相対した経験のない、しかしそれでも本能が叫ぶ。こいつはこれ以上なく危険な、即刻倒すべき悪なのだと。
汗で湿った掌が滑らないように気をつけながら、ウェイブは後藤の一挙手一投足を見逃さないよう凝視する。

「黒子。穂乃果と花陽を連れて逃げろ。こいつは俺とマスタングで狩る」
「何を言ってるんですの、私も!」
「わからねえのか!? こいつはヤバい……今度ばかりは、穂乃果たちを守りながら戦ってる余裕はねえ!
 それに、お前の攻撃は効かなかったんだろ。多分、俺の剣でも同じだ。だったらこの場であいつを何とかできるのは、マスタングしかいない」

しかしマスタング一人では、接近戦に対応できない。だからこそ、ウェイブが残ってマスタングの前衛を務める。
これが唯一にして最善の方法だ。黒子がいたところで大した援護はできない。しかし黒子は離脱、撤退に向いた能力がある。
穂乃果や花陽が殺されればその時点でこちらの敗北だ。戦力的にではなく、精神的に。
ならば黒子を二人の護衛に当て、男たちが残って戦う。それ以外にない。

「行け、穂乃果。友達が本当にC-5にいるかはわからねえが、少なくとも今ここでお前ができることは何もねえ」
「ウェイブさん、私もコロちゃんを使えば」
「駄目だ! お前はセリューじゃない。コロを使えたって、それで『戦える』わけじゃねえんだ!」
「で、でもそれじゃウェイブさんがまた危ない目に……!」
「いいんだよ、それで。人々を守るのが軍人の、特殊警察イェーガーズの任務だ。それが俺の仕事なんだよ。
 心配すんなって。俺とマスタングだけなら、あんな奴すぐに片付けて合流できっからよ」

ウェイブが穂乃果に笑いかける。この戦いの勝算がかなり低いということは、とても口にできなかった。
エリュシデータにも匹敵する硬度の刃。黒子の攻撃を防いだという事実から、おそらく全身の肌もそれくらい硬くなると推察できる。
それでもマスタングの焔ならば通じるだろう。しかし問題は、あの強烈な反応速度の速さだ。
先ほどマスタングの焔を回避したとき、後藤は明らかに焔が生まれる前から回避動作に入っていた。
手を合わせるというモーションが必要な分、マスタングの攻撃は読みやすい。
だからといって、遠距離からそれを織り込んだ回避、そして攻撃に繋げるというのは尋常ではない。
先ほどのエンヴィーたちとの戦いに一枚噛んでいたのなら、マスタングの能力を大方把握していてもおかしくはない。
つまり後藤は、マスタングだけが自分に致命傷を負わせられるのだと知っている。
マスタングを守ろうとするならば、ウェイブはかなりの無茶を強いられる。そして、ウェイブは後藤と違って耐久力がない。
帝具のない生身の状態では、急所に一撃貰えばそれだけで死ぬだろう。
ウェイブが倒れればマスタングも程なく後を追うことになる。それまでに後藤に警戒されている焔を叩き込めるのかどうか。
後藤を睨みつつ、頭の中で幾通りもの予想を組み立て、破棄し、また新たなパターンを探る。どうすれば勝てるのか、どうすれば切り抜けられるのか。

「悪いなマスタング、嫌とは言わせねえぜ。ここは俺と命を張ってもらう」
「君と二人で奴とデートか。色気のない話だ」
「ははっ、違えねえ」

ザッ、とマスタングがウェイブの後ろに陣取る。いつでも焔を放って援護できる位置。
とにもかくにもまずは穂乃果たちを逃がす隙を作らなければ。
あの跳躍を見せられては、ただ逃げるだけでは足りない。何としても一撃与えて、追撃のできない状態に持ち込まなければ。
マスタングが両手を合わせる。生まれる業火、戦端を開く兆し。

「またそれか。芸がないな」

跳躍でそれをかわそうとした後藤だが、その視線がマスタングのそれと激突。
後藤は上空に逃れようとした体勢から急遽後方へと進路を変更。全力で跳躍した。
果たしてその判断は正しかった。一度目の業火が襲い来た後、音高く指が弾かれ間髪入れず二発目の爆炎が追ってきたからだ。
身動きの取れない上空で受ければ一瞬で蒸発していただろう。
人間たちからかなりの距離を取った、いや取らされてしまう。

「よし……ウェイブ、道を作る! 私が合図したら斬り込め!」
「応よ!」

ひとまず後藤を追い払うことに成功したマスタングは、続けて両手を打ち合わせた。そして、硬く握り込む。
手合わせの音を次の攻撃の準備と信じているウェイブは振り向きもしない。
その後頭部を、マスタングは固めた拳で思い切り殴りつけた。

「……っ」
「マスタングさん!? 何をしたのですか!」

後藤に向けて気を張っていたウェイブには、まったく予期しない方向からの痛打。それは容易くウェイブの意識を刈り取った。
マスタングは音もなく崩折れたウェイブを担ぎ上げ、剣も回収してバッグに突っ込んだ。

「黒子、ウェイブも連れて行け。ここは私だけで十分だ」
「何を言っているのです! 一人であいつに勝てるわけないでしょう!」
「そうだな。それは、一人でも二人でも、いや全員でも同じだ。我々は消耗しているが、あいつはおそらく万全だろう。
 これはな黒子、誰があいつを倒すという戦いではない。誰があいつを足止めするかと、そういう戦いなのだ」
「だからあなたが残るとおっしゃるのですか?」
「君に同じことは無理だろう。君では奴の防御を突破できんし、穂乃果と花陽を連れて逃げるという役目もある。
 そしてウェイブは、こいつはこんなところで死なせていい人間ではない。こいつはきっと、我々のように殺し合いに抵抗する者たちの大きな希望になる。
 ならば消去法で、残るのは私というわけだよ」

敗れた即席発火布を付け替えて、マスタングは一人戦場へと歩み出す。
その背中はひどく朧気だ。焔の熱気だけではない。あれでは、まるで。

「お待ちなさいマスタングさん! あなた……死ぬつもりですの?」
「私とて自殺願望などないさ。なに、やるだけやったら私も逃げる。それは一人の方が都合がいいのだよ」

マスタングは振り向かず、あえて軽い口調で突き放すように言った。
しかし言葉に込められた覚悟は揺るぎない。死地を見定めた男の言葉だった。

「行くんだ花陽。怖がらせてしまって済まなかった。君が友人と再会できることを願っている」
「ま……マスタングさん!」
「そして穂乃果」

びくり、と声をかけられた穂乃果が震える。
マスタングがこんなことを言い出したのは、死ぬとわかっていてそうしようとしているのは。
穂乃果に糾弾されたことが、原因の一つではないかと。そう考えていたからだった。

「あ……あの、私、そんなつもりじゃ……」
「別に君のせいではないから、気に病むことはない。これが最善なのだ。君にとっても、私にとっても」
「で、でも!」
「君の言うとおりだ。私は人殺しだ。ああ……だからこそ、ああいう化け物の相手は私がするのが相応しい。
 生きろ、穂乃果。最期にせめて、君らを守れたという救いを、私にくれ」

それは断固たる、決別の言葉だった。
揺らめく焔の向こうで、体勢を整えた後藤が動く。
もう、時間はない。

「行け、黒子! 君は戦えない者を守るのだろう! だったらここで、守るべきものを見誤るな!」
「……っ、皆さんを安全な場所まで送り届けたらすぐに戻ります! それまで、どうか……!」

マスタングの背後から、人の気配が消える。白井黒子のテレポート能力。
仮に後藤が遠距離にいる人間を追跡する手段を持っていたとして、それが離れていくのであればいずれ捕捉はできなくなるはずだ。
あとは、彼らが安全な場所に離脱するまで、後藤を押し留めなければならない。

「……残ったのはお前だけか」
「すまんね、むさ苦しい男が歓迎役で」
「構わん。俺の狙いもお前だ。さあ、全力で俺を打ち砕いてみせろ」
やがて現れた後藤に向かい合い、ロイ・マスタングは意識を細く針のように集中させていく。
おそらくは人生最強の敵。
かつて渡り合ったホムンクルス、“最強の矛”ラストや“最強の眼”ブラッドレイに勝るとも劣らない、人のカタチをした絶望。

「だが……焼けば死ぬ。“お父様”ほどではない」

ならば勝ってみせよう。
後に続く仲間たちのために、己と引き替えにしてでもこの脅威を灼き尽くしてみせよう。
それが“焔の錬金術師”ロイ・マスタングが己に課した、贖罪の証。

「鋼の、後は頼んだぞ……!」

何処とも知れぬ場所にいるだろう戦友に託す。どうせ奴も、誰かの為に戦っているのだろう。
ならば、ここで退いて笑われる無様を晒すわけにはいかない。
不退転の決意と共に、マスタングの両掌が高らかに打ち鳴らされた。


  ◆


「ウェイブ、まだ寝てる? そろそろ起きないと任務に遅れるよ」

……なんだ、クロメか。もうそんな時間か?

「遅れたら、きっと隊長がすごく嬉しそうにお仕置きするかも」

うおおおお! それは嫌だ! 起きる、今すぐ起きる!
……あれ? なんかおかしくないか?

「何が?」

いや、何がって。
任務? 任務って何だっけ。

「またナイトレイドが出たんだって。昨日も二人被害者が出た。今日の任務は、標的の一人と推測される人物の護衛」

ああそっか、ナイトレイドか。あいつらは、俺たちの敵だもんな。
……敵? ナイトレイド……?
んん、そうだったか? ナイトレイドが、俺の敵だったか?

「何言ってるのウェイブ。まさかナイトレイドに共感してるの? それはいくらなんでも、イェーガーズだからって許されることじゃないよ」

いや違うんだ、そういう意味じゃない!
ついさっきまで、ナイトレイドじゃない別の奴らと戦ってたような……そんな気がして……。

「なにそれ。夢でも見た?」

夢……そうかもしれない。
そうだな、夢に決まってるよな。お前が、死んだ……なんて。

「変なウェイブ。あっ、もうみんな集まってる。隊長、セリュー、ボルスさん、ラン。みんないるよ」

みんな……そうだ、俺の、仲間……。
俺はイェーガーズで、帝都の治安を乱す輩を狩る……それが俺の……。

「さあ、ウェイブ。行こう? あなたの、私たちのいるべきところへ」

俺の、いるべきところ……。
…………。
そっか。
夢を、見たんだな。

「いつまで寝ぼけてるの。ほら早く。隊長の顔がどんどん笑顔になってくよ」

悪いな、クロメ。
俺は、お前と一緒には行けない。

「何言ってるの? 任務放棄は重罪だよ?」

だから、だよ。
俺は、俺のやるべきことを放り出して、そっちに行くわけにはいかないんだ。

「やるべきことって何? ナイトレイドを狩ること以上に大事な用事があるの?」

ああ……仲間が、戦ってるんだ。
なのに俺一人だけ、ここでこうして……楽になることは、できない。

「私と一緒にいてくれないの?」

……ああ。
俺はまだ、生きてる。
そしてクロメ……お前はもう、死んだ。
俺はまだ、お前のところに行くことは、できない。

「……どうして? その仲間って、私より大事な人なの?」

そうじゃねえ、どっちが大事とかじゃねえんだ。
俺は生きてる。なら俺は、この命がある限り、戦い続けなくちゃならねえ。
生きて、戦って、治安を乱す悪を狩る。それが軍人として、イェーガーズとして、今ここにいる俺が進む唯一の道なんだ。

「私のこと……忘れるの?」

忘れねえ! 忘れられるわけがねえ!
何で、なんで死んじまったんだよクロメ! 俺が近くにいたんだぞ!
何で俺は間に合わなかったんだ! 何でお前が八房の死体人形になんかなっちまったんだよ!
それじゃあべこべじゃねえか……。

「なんだ。私、八房で死んだんだ。じゃあずっと、ウェイブと一緒にいられるんだね」

違う! お前は死んだんだ! 死んだら、もう一緒にいることなんてできねえ!
八房の力で動けたって、それはお前じゃねえんだ!

「ウェイブは、私と一緒にいられるから、私と一緒に行かないんじゃないの?」

違う……。
俺は……戦いに行くんだ。
お前を殺した奴を、お前を弄ぶ奴を狩りに。
そして、仲間を殺そうとする奴を狩りに。
そこにはもう、お前はいないんだ。

「私がいなくてもウェイブは大丈夫なの? 嫌じゃないの?」

大丈夫じゃない、嫌に決まってるだろ……。
でも、でもよ。
だからってここで逃げるような俺をお前に見られるのは、もっと嫌なんだよ。

「どうして?」

俺は、お前の見てる前では、強い俺でいたいんだ……。
逃げたくないんだ。お前に、弱いって思われたくないんだ。
……俺、行くよ。
俺が誇れる俺でいるために。
お前の隣にいて恥ずかしくない、俺になるために。

「ウェイブ……」

だから……さよならだ、クロメ。

「そっか。うん、そうだね……ウェイブは、そうでないとね」

許して、くれるか?

「いいよ。そっちには隊長もセリューもいるからね。ウェイブは一人じゃないよ」

ああ、そうだな。
それに、他にもいるんだ。会ったばかりだけど、何ならイェーガーズにスカウトしたいような奴らがさ。
あいつらと一緒なら、俺は……戦える。

「うん……わかった。じゃあ私は、ここで待ってる」

待ってる?

「今は無理でも、いつか。いつかまた、会えるよね?」

ああ。約束する。
いつになるかわからねえけど、また必ず……会える。
そのとき胸を張れるように、俺、頑張ってみるからさ。

「ふふっ。ウェイブ、最後に一つだけ……」

クロメ?

「ウェイブは強いよ。私が保証する」

……ありがとよ。
その言葉だけで俺は、何とだって戦える……!

「行ってらっしゃい、ウェイブ」

ああ!
行ってくる、クロメ!


  ◆


「どうしよう花陽ちゃん、私のせいだ、私の……」
「違うよ穂乃果ちゃん、穂乃果ちゃんのせいじゃない!」
「でも、私がマスタングさんを追い詰めたから……!」

ウェイブの意識を覚醒させたのは、言い争う少女の声だった。
ずきりと後頭部が痛む。痛むのは生きている証だ。
ならば何故、俺は生きている? ウェイブは自問する。後藤の攻撃を食らったのなら、こうして生きているはずがない――

「っ、なんだ、何がどうなった!?」
「ウェイブさん……っ」
「穂乃果……!?」

ウェイブの眼に飛び込んできたのは、泣きじゃくる穂乃果だ。花陽も眼に涙を湛えている。
首を巡らす。穂乃果がいる。花陽がいる。黒子もいる。コロもいる。マスタングだけがいない。

「……そういうことかよ。くそっ、あの野郎」

コロを止めさせ、地面に降りる。
自分を含めて四人もの人間を繰り返しテレポートさせたため、黒子の消耗は特に激しい。

「黒子、俺はどれくらい気絶してたんだ?」
「ほんの二、三分というところですの。ウェイブさん、状況はあなたの考えているとおりですわ。マスタングさんは一人であの場に残られました」
「だろうな。ちっ、カッコつけやがる。素直に俺も残せばいいのによ」
「ですが、あの状況では」
「わかってる。俺がいても状況は大して変わらなかっただろうさ。でも……変わるかもしれない。いいや、変えてみせるさ」
「今から戻るつもりですの?」
「黒子、お前は穂乃果たちを頼む。俺はマスタングを助けに」
「ダメッ!」

突然、穂乃果に遮られる。ウェイブは目を瞬かせた。
ややあって、穂乃果はウェイブが危険を冒してマスタングを助けに行くことが不満なのかと理解する。

「穂乃果、よく聞いてくれ。確かにマスタングは雪子を殺しちまった、だけど……」
「そうじゃない! そうじゃないよ! マスタングさんが残ったのは私のせいなの! 私がひどいこと言ったから!
 なのにウェイブさんまで危ない目に遭わせるなんて、そんなの!」
「穂乃果……」

ウェイブは己の思い違いを恥じた。穂乃果はウェイブだけでなく、マスタングの身も案じてくれている。
やはり根は優しい少女なのだ。捨て石となったマスタングの命を、他人事と割り切れないほどに。

「……そうだな。そうだよな。仲間って、そういうもんだよな」
「ウェイブさん?」
「でも穂乃果、やっぱり俺は行くよ。一人で戦ってるあいつを放ってはおけない。
 後藤が追ってきてないってことは、まだ持ち堪えてるってことだ。だったら」
「私も行く!」

またもウェイブの言葉にかぶせるように、穂乃果が叫ぶ。
しかしそれは誰の予想にもない言葉だ。

「ほ、穂乃果ちゃん!?」
「おい穂乃果、厳しいこと言うがお前が行っても役には立たねえ。戦うのは俺がやるから、お前たちは」
「守られてばっかり、逃されてばっかりで、 誰かが私を守ろうとしてくれるのに、私は何もできない……そんなの、私、もう嫌なの!」
「だからって、お前に何が」

できるんだ、と言おうとしたウェイブの前に、穂乃果は背負っていたバッグをずいと差し出した。

「これ、ワンちゃんのバッグ。私が代わりに持ってたの」

開けろ、ということらしい。バッグを受け取ったウェイブが中を覗き込む。
『それ』を手に取る。ご丁寧に説明書きが付属していた。
一読したウェイブの顔色が変わる。

「おい、これ……!」
「それがあれば、私だって戦える。そうでしょ?」

絶望的だと思っていた戦いに、一筋の光明が指した。
これならば――

「だから、私も!」
「わかった、穂乃果。みんなで行こう」
「ウェイブさん!?」
「聞いてくれ、黒子。もしかしたら、勝てるかもしれない。
 いいや……勝つ。勝って、勝手なことしたマスタングの野郎をぶん殴ってやろうぜ」

穂乃果から渡されたイギーのバッグを背負い、マスタングは拳を掌に打ち付け気合を入れた。
あの憎たらしい顔に、今は感謝の感情しか表せそうにない。

「なあ、犬ころ。
 お前の名前も俺は知らねえが、それでもこれはお前がくれた希望だと思うことにする。
 だから、見てろよ。俺たちは必ず勝って、そんでお前の仇も取る! 見てろよ……!」

ヒヒッ。
あの笑い声が聞こえたような気がした。


  ◆


「……終わりだな」

後藤の前には、血溜まりの中に倒れ込んだマスタングの姿があった。
マスタングが仲間を逃して五分も経っていない。
否、単身で後藤を数分も押し留めたことこそを賞賛するべきか。

「勝手に、終わらせてくれるな。私はまだ生きているぞ」

地面に手をつき、震えながらもマスタングが身を起こす。
後藤はそれを阻むでもなく見下ろしていた。

「あのウェイブという男がいれば、まだ勝算はあったはずだ。何故お前だけが残った?」
「さあな……私もよくわからん。こういうのは私のキャラではないはずなのだが」
「やはり人間は理解し難いな」
「当たり前だ、人間だって人間を完全に理解しているわけではないのだぞ……お前のような化け物にわかられてたまるか」

言いながら、最後の発火布で火を点ける。
狙いは後藤……ではない。

「ぐぅっ」

噛み殺してもなお抑えられない声。焔は、マスタングの右腕を焼いた。
肘から下を切断された、右腕の傷口を。
分かたれた腕は、後藤が伸ばした刃の先に突き刺されている。

「俺に痛覚はないが、それでもそれは相当な痛みを伴うと推察する。ショック死しても不思議ではないが」
「あいにく……経験が……ある。二度目なら……耐え、られる」

意識も絶え絶えながら、眼だけは屈さず後藤を睨みつけて。
失血死することだけは防いだマスタングだが、戦闘続行が不可能なことは明白だった。

「まさか、私が、鋼のと同じ……隻腕になるとは、な。ロックベル嬢に、機械鎧を、用意してもらわねば……」
「掌を打ち合わせることももうできまい。ここからまだ何か打つ手を残しているか?」
「ふふ……残念ながら、ない。発火布も、使いきって、しまったしな」
「それでもお前の眼は死んではいない……工夫か。まだ何か仕掛けてくるか」

後藤が軽くバックステップし、マスタングから距離を取る。
仮にマスタングが何かしでかそうとしても、余裕を持って対応できる距離を。

「お前は中々手強かった。だが万全の状態ではなかったな。動作の一つ一つにぎこちなさが目立った」
「よく、観察しているな……そして油断もしない、か」
「寄生生物とて無敵ではない。お前という障害を排除できたのは大きな前進だ」

後藤は切り落としたマスタングの前腕部をためつすがめつし、検分している。
何かやるならどうぞやってみろ、そういうように。

「……やはり、ただの人間の腕だな。変わった様子もない。なのにあの焔か……」

一口かじって確かめてみても変哲のない人体そのもの。
勝利者である後藤はマスタングに勝ちはしたものの、異能の正体を理解するまでには至らない。

「まあいい。打つ手が無いのならこれで終わりだ」
「ああ……くそ。こんなことなら、私も煙草を吸っておくんだった。そうすれば、ライターを持ち込めただろうにな」

ぶつぶつと呟くマスタングに興味を失くし、後藤は刃と化した腕を振り下ろす。
しかしマスタングの首を落とす寸前、かすかな風切り音が後藤の耳を掠めた。

「――させるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

空、と後藤が気付いたときには既に硬質化した両腕を頭上へと掲げている。
直後、後藤の足が地面にわずかに沈み込むほどの衝撃が来た。
突如中空に現れ後藤に攻撃を仕掛けたのはのは、マスタングが逃がしたはずのウェイブに間違いない。
黒子の能力で察知の難しい上空に移動し、奇襲を仕掛けてきたのだった。

「ウェイブ……!?」
「生きてるな、マスタング!」

振り下ろした黒剣と後藤の刃を支点にして、ウェイブは空中で体勢を制御。鋭い蹴りを後藤の頭へ叩き込む。
ダメージはほとんどない。が、ウェイブは反動で飛び退り、マスタングの元へと着地した。

「バカな、何故来た! 私が何のために残ったと思っている!」
「くそっ、その怪我じゃさすがに殴れねえな。まあいい、後でしこたまぶん殴ってやっから覚悟しとけよマスタング」
「ふざけるな! 早く逃げろウェイブ、ここは私が」
「るせえッ! てめえこそふざけた真似してんじゃねえぞ!」

吐き出す怒声は後藤ではなくマスタングへ。
つい数分前にもこうやって背中にマスタングを庇っていたはずなのに、あまりにも状況が変わってしまった。
しかしそれでも、ウェイブの眼に絶望はない。

「俺も人のこと言えた義理はねえんだけどな。命を捨てて誰かを救う……そんなカッコいいことが、お前に許されると思ってんじゃねえぞ」
「何……?」
「俺たちは出会ったばかりで、俺はお前のことなんてほとんど知らねえ。お前も俺のことは知らねえだろう。
 それでもたった一つ、俺とお前が共有するものがある……それだけは確信してる。マスタング、そいつが何かわかるか?」

後藤から視線を切らず、ウェイブは背後のマスタングへと言葉を投げる。
向かい合っているのは後藤でも、ウェイブがいま戦っている相手はマスタングだ。

「共有するもの、だと?」
「そうさ。勘違いでお前とやりあって、話して、そんでさっきの雪子って娘を殺しちまったときのお前を見て……。
 俺の中にあるものが、お前の中にもある。それがはっきりとわかったんだ」
「何だというのだ。こんな、どうしようもなく愚かな私がお前と同じものを持っている? そんなはずは」
「ある! それは、お前が今も身につけてるその軍服が、証明してるはずだぜ」

マスタングは血と汗と泥に塗れた己の軍服を見下ろした。
ロイ・マスタングという個人を端的に表すには十分な、それは明確なシンボルだ。

「マスタング、お前軍人なんだろ。俺と同じな。まあ俺の場合、途中でイェーガーズに移籍したわけだけど……そこはどうでもいい。
 お前、何のために軍人になったんだ?」
「何のために……それは……」
「お前はどうだかしらねえが、俺はこうだ。俺は、誰かを守りたかった。帝国には悪人以外にも人を喰うような危険種がうようよしてる。
 家族とかダチとか故郷とか、おれはそういうのひっくるめて守りたいから軍人になった。お前は違うのか?」

ウェイブの問いに対し、マスタングの脳裏に浮かんだのは盟友であるマース・ヒューズの顔だった。
あのイシュヴァールの戦いで、友に語った密かな夢。
功績を挙げ、出世し、いずれ軍のトップになって、この国を変える――その根幹は。
ウェイブと同じ。力なき人を守りたい、そういう想いがあったからではないのか。

「軍人ってのはよ、逃げちゃいけねえんだ。命令に従うってのも大事だがよ、俺たちは守るべき誰かのために力を持つことを許されたんだ。
 お前の錬金術、俺の剣術や体術、それに帝具……そういう全部、自分じゃない誰かのために使う。そのために鍛えてきたものじゃないのかよ」
「それは……」
「だからよ、マスタング。俺たちに、簡単に死を選ぶ権利なんてねえぞ。
 俺たちは戦って戦って……死にかけたって何度でも立ち上がって、戦い続けなきゃいけねえんだ!
 くたばってる暇なんかねえッ! 立て、マスタングッ!」

自分より十は若い若造の青臭い言葉が、今はなんと――胸に響くことか。
一度は消えた瞳の中の火が、再度燃え上がっていくのを感じる。
マスタングは歯を食い縛り、ゆっくりと立ち上がった。

「言ってくれるな、青二才め……そうまで言われたら、くすぶっているわけにもいかん、な……!」
「へっ。世話焼かせんなよな」

後藤はマスタングが復活する様子を、邪魔するでもなく見届けた。
まだやる気というなら後藤に拒む理由はない。

「しかし、どうする? その男はもう立っているのがやっとだ。お前一人で俺の相手をするのか?」
「そうさ。さっきは情けないことにビビっちまったが……今度は違う。俺はもう逃げないぜ。
 俺の本気を……この魔剣・エリュシデータの奥の手ってやつを見せてやる」
「奥の手か、楽しみだ」

相変わらず戦いを楽しむようなことを言うが、後藤の佇まいに隙はない。

「おい、どうするのだウェイブ。私はもう焔は出せんぞ……」
「任せとけよ……ほら、来たぞ!」

と、ウェイブが指し示す方向から迫ってくる巨大な影。
巨大化させたコロだ。そしてその上には、穂乃果と花陽が乗っている。

「コロちゃん、行けー!」
「い、行けー!」

顔を真っ赤にして叫ぶ穂乃果と花陽を見て、マスタングは卒倒しかけた。あの二人まで連れてきて、一体どうしようというのか。
しかしそれを問おうとした相手のウェイブは、既に剣を抜いて後藤に突進している。
ええいやむを得ん――と、マスタングは隠し持っていた最後の発火布を取り出し、片手で苦労しながらも装着した。

「自爆用に取っておいたものを、こんな形で使うことになるとは……!」
「おおおぉぉぉぉらあああああっ!」

ウェイブが気合一閃、重い斬撃を後藤に放つ。後藤が片腕を硬質化させ防御。
動きの止まった一瞬を狙って、その背後を取るように回り込んできたコロが、躍りかかる。
後藤はウェイブの剣に硬度を落とした刃を鞭のように絡め、力任せに引っ張る。

「おおおっ!?」
「ウェイブさん!」

コロが攻撃を中断し、ウェイブを受け止める。
そのすぐ前に後藤が迫る。マスタングが焔を放てば、確実に巻き込む位置に。

「工夫が足りなかったな」

言い捨て、ウェイブもろとも二人の少女を貫こうとした後藤。
その眼前から、コロの巨大な影が忽然と消え失せた。

「マスタング!」
「承知している……!」

声は、背後から。一瞬にして位置を変えた人間たち。ウェイブが叫ぶ。
マスタングは間髪入れず、全力で焔を放った。

ウェイブの攻撃。コロの突進、そして消失。これに対応するために二手、行動を消費している。
後藤は一旦仕切りなおすため、脚部を変化させ高く跳躍した。マスタングの片腕はもはやなく、素早い追撃は望めない。
そう判断した後藤を、人間たちは上回る。

「チェックメイト、ですの」

後藤と全く同じ位置に現れた最後の人間。
白井黒子という女が、手に持った石を後藤へと向けている。
足場のない空中ではこれ以上の方向転換はできない。
しかしこの人間の攻撃力ではさしたるダメージは負わないと、後藤は既に知っている。
ゆえに防御より攻撃を優先し、刃を伸ばしたところで。

「転移! 『アインクラッド』ですの!」

高らかに叫んだ黒子の手元の石が光り、それが消えて、瞬時に後藤の胸元へと現れて……それで、終わった。
後藤の姿は、影も形もなくなっていた。
イギーに支給されたもの、それは転移結晶(テレポートクリスタル)。
手に持って場所を指定することで、一人だけ任意の場所に移動することができるアイテム。
本来であれば使用者一人しか移動できないアイテムを、転移能力者である黒子が用いることによって、一発限りの強制テレポート弾としたのだった。

「……終わった、のか?」
「……終わった、な」

後に残ったのは、満足気なウェイブたちと呆然とするマスタングのみ。
そのマスタングに穂乃果が駆け寄っていく。

「マスタングさん、その腕……!」
「ああ、これか……いや、安いものだ。我々みなが生き残った代償としたらな」

息を呑んだ穂乃果の肩を、ウェイブが叩いた。
マスタングの腕は強引ながら止血がされている。いますぐどうこうなるものではない。とりあえず、危機は脱したのだ。
マスタングの切り落とされた腕はとりあえず回収しておいた。
と言って、接合する目処など立たないのだが、そういった技術や道具を有している人物がいないとも言い切れない。
放っておけばいずれ壊死して腐っていくだけだ。少しでも可能性があるなら切り捨てるわけにもいかない。
マスタングが残った左腕と血で苦労して錬成陣を描く。近くの川の水分を凍結させ、ブロック大の氷で右腕を冷凍保存した。

「マスタング、歩けるか? とにかくどこか、休める場所へ行くぞ」
「ああ、肩を貸してくれ。さすがに動きづらい」
「お安い御用だ……穂乃果」
「は、はいっ」
「時間はたっぷりある。マスタングを許すにしても許さないにしても、まずこいつと向かい合ってみてくれないか。
 こいつが悪人じゃないってのは、お前だってわかってんだろ」

ウェイブに言われ、穂乃果はじっと、マスタングを見つめる。
マスタングは何も言わない。選ぶ権利は向こうにあると思っているから。
やがて、穂乃果は頷いた。

「……わかった。うん、まずはちゃんと話してみてから、だよね」
「穂乃果ちゃん!」

わだかまりは未だ消えていないが、それでも希望を繋ぐことができた。
それがこの戦いの報酬なのだと、ウェイブは黒子と顔を見合わせ笑う。
痛みはあれど、生まれたものも確かにある。

「クロメ。こいつらが俺の仲間だ。悪くないだろ?」

マスタングにも聞こえないほどの小さな声で、ウェイブは呟いた。
こいつらとなら、前を向いて歩いていける。そう思える。
だから、このときのウェイブはまだ、思いもしなかった。


絶望を告げる鐘の音が、もうすぐ響き渡ることに。




【B-6/1日目/早朝】

【高坂穂乃果@ラブライブ!】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大)、不安、マスタングに対する恐怖(やや薄れた)
[装備]:練習着
[道具]:基本支給品、鏡@現実、イギーのデイパック(不明支給品0~2)
     幻想御手入りの音楽プレーヤー@とある科学の超電磁砲、コーヒー味のチューインガム(1枚)@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[思考・行動]
基本方針:μ'sのメンバーを探す。
0:マスタングと話してみる。
1:C-5に立ち寄って凛(星空の方)を探す。
2:音ノ木坂学院へ向かう。
3:花陽と一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期は少なくともμ'sが9人揃ってからです。
※イギーを「ただの犬」だと思っていましたが認識が変わってきています。
※イギーの名前を知らず、「ワンちゃん」と呼んでいます。
※『愚者』を見ました。
※幻想御手はまだ使っていません。
※ウェイブの知り合いを把握しました。

【小泉花陽@ラブライブ!】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大)、右腕に凍傷(処置済み、後遺症はありません)
[装備]:音ノ木坂学院の制服
[道具]:デイパック、基本支給品、スタミナドリンク×5@アイドルマスター シンデレラガールズ
    スペシャル肉丼の丼@PERSONA4 the Animation
[思考・行動]
基本方針:μ'sのメンバーを探す。
1:C-5に立ち寄って凛(星空の方)を探す。
2:音ノ木坂学院へ向かう。
3:穂乃果と一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期はアニメ第一期終了後。

【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品、スピリタス@ PSYCHO PASS-サイコパス-
[思考・行動]
基本方針:お姉様や初春などの友人を探す。
1:出来るならばみんなのフォローに回りたい。
2:エンヴィーは倒すべき存在。
3:御坂を始めとする仲間との合流。
4:マスタングに対して――。
[備考]
※参戦時期は不明。

【ウェイブ@アカメが斬る!】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、左肩に裂傷、怒り、悲しみ
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、タツミの写真詰め合わせ@アカメが斬る!、魔獣変化ヘカトンケイル@アカメが斬る!
[思考・状況]
基本行動方針:ヒロカワの思惑通りには動かない。
0:キンブリーは必ず殺す。
1:ひとまず休息する。マスタングや黒子と情報を交換したい。
2:地図に書かれた施設を回って情報収集。脱出の手がかりになるものもチェックしておきたい。
3:首輪のサンプル、工具、グランシャリオは移動の過程で手に入れておく。
4:盗聴には注意。大事なことは筆談で情報を共有。
5:仲間たちとの合流。
6:今後の方針を固める。
[備考]
※参戦時期はセリュー死亡前のどこかです。
※クロメの状態に気付きました。
※ホムンクルスの存在を知りました。

【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(極大)、精神的疲労(極大)、左肩に穴(止血済み)、両足に銃槍(止血済み)、右前腕部切断(焼いて止血済み)
[装備]:魚の燻製@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[道具]:ディパック、基本支給品、冷凍されたロイ・マスタングの右腕
[思考]
基本:この下らんゲームを破壊し、生還する。
0:穂乃果と、そして仲間たちと話してみる。
1:エンヴィーを殺す。
2:エドワードと佐天の知り合いを探す。
3:ホムンクルスを警戒。
4:ゲームに乗っていない人間を探す。
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後。
※学園都市や超能力についての知識を得ました。
※佐天のいた世界が自分のいた世界と別ではないかと疑っています。
※即席発火手袋は本来のものに比べて材質や作りが劣るため使い捨てとなっています。 → 使い切りました。


  ◆


後藤の視界は先ほどと違う光景を捉えていた。
どうやら最後に受けたあの攻撃で違う場所に飛ばされたのだと、朧気ながら理解する。

「やってくれる。あれも人間の工夫か」

身体の各所に大したダメージがないことを確認し、後藤は黙々と歩き出した。
戦うに値する敵を求めて。


【H-3/アインクラッド/1日目/早朝】

【後藤@寄生獣 セイの格率】
[状態]:両腕にパンプキンの光線を受けた跡、全身を焼かれた跡、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、首輪探知機、拡声器、不明支給品0~1
[思考]
基本:優勝する。
1:泉新一田村玲子に勝利。
2:異能者に対して強い関心と警戒(特に毒や炎、電撃)。
3:セリムを警戒しておく。
[備考]
※広川死亡以降からの参戦です。
※首輪や制限などについては後の方にお任せします。
※異能の能力差に対して興味を持っています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※探知機の範囲は狭いため同エリア内でも位置関係によっては捕捉できない場合があります。
※デバイスをレーダー状態にしておくとバッテリーを消費するので常時使用はできません。
※凜と蘇芳の首輪がC-5に放置されています。
※敵の意識に対応する異能対策を習得しました。



  • 転移結晶(テレポートクリスタル)@ソードアート・オンライン
 イギーに支給。手に持って任意の場所を指定することでその場所に移動できる。
 対象は一人だけ、一度使えば消滅する。




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高坂穂乃果
小泉花陽
ロイ・マスタング
白井黒子
後藤 092:端緒
最終更新:2015年10月19日 01:24