069
消せない罪 ◆BEQBTq4Ltk
☆
時は既に動いている。
☆
走り過ぎていった電車を見つめていても状況は何一つ変わらない。
発想の転換に繋がることもなく、次の行動への第一歩に繋がることもない。
よって雪子は何時迄も呆気にとられて立ち止まることを止め、行動を開始する。
突然なモモカの行動に思い当たる節はない。
出会って数分。それだけで彼女の本質を見抜くなど特別な異能が無ければ不可能である。
多重人格的な衝動だったり、最初から他の参加者を殺すことを決めていた。なんてケースも想定出来る。
つまり考えるだけ無駄、黙っているよりも行動を選択する場面であり千枝を追わなければならない。
電車の後を追えばいいのだから簡単に言えば線路を歩けばいい。
しかし背後から電車が迫り轢かれては笑えない冗談になってしまう。
遠巻きから線路の方向へ歩くのが一番だろう。
「じゃあ私は行ってきますね。銀さん」
「うん」
モモカ襲撃の後、雪子と銀は状況を把握しようとしていたが結果は乏しい。
雪子が語りかけても「うん」や「そう」、「わからない」と言った単純な回答しか得られなかった。
元々雪子も自分から多くを語らない人種ではないので詰まる。
ペルソナを所有している自分は危険に晒されてもある程度対応出来る。
判断を下し自分は単独行動を行い、銀はこのまま駅に待機してもらう形になった。
「もしお昼を過ぎても私が戻ってこれなくなったら銀さんも逃げてくださいね」
「何処に?」
「えーっと……このボートパークで」
地図を取り出しながら比較的近い建物を指定する。
首を縦に振る銀を確認しそのままバッグに仕舞い込むと雪子は歩き出した。
少し陽の光を取り戻してきた今ならば視界は先ほどよりも良好だろう。
千枝を探すべく彼女は駅を後にする。
「気を付けて」
「はい。銀さんも」
手を振る銀の姿に微笑みながら再び前を向く。
この会場に知り合いは少なく、味方と呼べる存在全員が参加している訳ではない。
歩けば歩くほど危険に出会す可能性が上昇していくが仕方が無いと割り切る。
エンカウントが発生しないダンジョンなど存在する方が稀である。それと一緒。
去る雪子の姿を見て銀は考える。
観測霊を使えば状況は好転するだろうが彼女は一体何なのか。
ペルソナと呼ばれた能力は見たことがなく、雪子と千枝は姿こそ違えど同じ能力を使っていた。
タロットを壊せば発動するらしいがそれが対価なのか。
これも答えが見つかる話ではなく、彼女は黙ってベンチに座り込んだ。
【C-8/駅/1日目/早朝】
【銀@DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考]
基本:…………。
0:雪子を待つ。
1:黒を探す。
2:千枝たちと朝まで待つ。
[備考]
※千枝、雪子、モモカと情報を交換しました。
◆
ソファーに座るマスタングは考える。
エンヴィーが何故生きているのか。復活しているからだろうが何故復活しているのか。
お父様なる存在が消えた今、ホムンクルスの脅威は世界から消えた筈である。
例外なくホムンクルスが消滅したとは言い切れないがエンヴィーが死ぬ瞬間を彼は見ている。
人類を苦しめた、ヒューズを殺した外道は完全に死んだ。
己の手で止めを刺していない。それでも彼が生命を潰す瞬間をこの眼で見ていた。
(人体錬成……いや人造生命体ならば再び造られたと言うべきか?)
フラスコの中の小人。
人為らざる存在を錬成或いは創り上げられたとしたら。
彼らの国は再び戦火に包まれることになるだろう。
(国……私と鋼のが参加していることを考えると攻められているのか?
戦力を削いだつもりだろうが中尉やアームストロング少佐と少将も居るのだ。そう簡単に落ちることはないと思うが)
自分たちに対する反逆と考えれば少しは納得が行くかもしれない。
ホムンクルスにとってロイ・マスタングとエドワード・エルリックの二名は殺すべき存在だろう。
その二名を殺し合いの会場に放り込むことに違和感を覚えないと確信出来る。
(他の知り合いはキング・ブラッドレイ、セリム、エンヴィー、そしてキンブリー……どれも既に死人と化している。
人体錬成かどうかは知らんが完全に私達を殺しに掛かって来ている……だがエンヴィーの言葉が気になってしまう)
彼らの創造主であり親でもあるお父様。
その計画をエンヴィーはどうでもいいとマスタングの前で吐き捨てたのだ。
親に歯向かうことをしないホムンクルスがそんなことを言うのだろうか。
グリードのような例外もいるため言い切ることは不可能だが謎は確かに存在する。
(お父様の計画がどうでもいいのならこれはエンヴィー達にとってもイレギュラーなのか?
ならば奴らが生きていることにも納得出来るが……おっと)
「あの、お茶……です」
「あぁすまないね。花陽」
「わたくしにも一つ下さいまして?」
「もちろんです!」
長考に老けるのも悪くないがこの空間に居るのは自分だけではない。
何時迄も調達した軍手に錬成陣を記入している訳にもいかないのだ。
346プロの一室内にはまだ幼い少女達が自分にお茶の差し入れをしてくれる。
これを無碍にする程ロイ・マスタングと言う男はつまらなくない。
「こんなシュチュエーションでも無ければもっと良い場所に君たちを誘うんだがね」
「へ? あっ、えっと……」
「マスタングさん。困らせる言い方は違うんじゃないですの」
寧ろ女性とは関係を密にしたい人種である。
仏頂面で対応するわけではなく、出来る限り明るく振る舞うのが大人の努めである。
花陽はお茶を飲んでくれるマスタングを見ていた。
足に傷を負っていた彼の身体が心配であるが、軽口を叩けるだけ大丈夫。
といった判断を出来る筈もなくただただ心配しているだけ。
戦闘や戦場とは無関係だった世界だったため仕方がないことである。
「うむ、美味しい。ありがとう」
「えへへ……」
寧ろ彼は女性とコミュニケーションを密にする人間だ。
軍の回線で会話を行うほどにそれはそれは……。
(中尉が居たら小言の一つや二つ言われそうだがな)
「全く……貴方という人間は調子が良いようですわね」
「……どうも私の周りから小言は消えないらしいな」
「な・に・か・い・い・ま・し・て?」
「いーやなんでもない。それはそうと空気の入れ換えでもしないか? 花陽、窓を開けてくれないか」
女性とは怖い生物である。
弱々しく思いがちだが芯は固く、強く。
同じ人間であり性別だけで差別するなど愚の骨頂と言っても差し支えない。
小さな小言でも積もればメンタルに支障をきたすような大言になってしまう。
マスタングに言われた花陽はソファーから離れ窓に手を掛ける。
少しだけ明るくなっている外を見ると心が落ち着いてきたのを感じる。
夜。
深い闇や暗さは存在だけで人々の心を不安で支配する無意識のスパイスである。
少しでも明かりが灯ればそれだけで心の負担は軽減される。
凛ちゃんや真姫ちゃん、それに穂乃果ちゃん達は無事なのだろうか。
自分と同じように頼れる人間と一緒に行動していれば安心なのだが状況を掴める手段は存在しない。
願うだけ。
今の自分には何も出来ない。
出来るとすれば無事なことを小さく祈るだけ。
神様が居てくれれば叶えてくれるだろうが殺し合いに巻き込まれている時点で見放されているかもしれない。
「――え?」
『誰か助けてクマー!!!!!』
気分転換を兼ねた空気の入れ替えは違った意味合いで場を変様させる。
大切な仲間を思い浮かべていたのもつかの間、聞こえてきたのは助けを求める声。
高さ的に幼さを感じる声だが知り合いの声では無いようで少し安心する。しかし。
(安心しちゃダメだよね……)
それが知らない声だろうと誰かが危険に瀕していることに変わりはない。
安心しては『知らない人なら死んでもいい』極解ではあるが行く着く先はそれになる。
殺し合いに巻き込まれて感覚が一部麻痺してきている。
仕方が無いことであり、生きている間に殺し合いに巻き込まれる可能性は塵の世界である。
自分の気持ちに喝を入れた花陽は後ろへ振り返る。
自分に戦う力は無く、何処にでも居そうな高校生である。
指揮を取るのはマスタングと黒子、戦闘能力を保有している人物に委ねるのが正しい。
「声の聞こえ方からすると……このDIOの館とやらがある方角みたいですわね」
地図を広げながら黒子は指をその地点へ移動させる。
右上、つまり北東の方から救援が聞こえてきた。
建物を目印にするならばDIOの館が一番近い建物になるだろう。
「あの声は君たちの知り合いか?」
「私は違います」
「私も違いますわね……その質問に何か意味があるのでしょうか?」
マスタングの問に黒子は一歩踏み込んだ返しをする。
彼が放った言葉は普通だ。知り合いの安否を確認するのは当然のこと。
けれどマスタングと合流した時、彼の口から語られた人物がどうしても引っかかる。
そして彼の発言から察するに――黒子は返しを待たずに言葉を発する。
「知り合いだったとしてもエンヴィーとやらの可能性が在る……と言おうとしてましたわね」
「……君は幼いながらも頭が切れる人物のようだな、黒子」
「まさかとは思いますけどエンヴィーの可能性が在るから助けには向かわない、何てことは言わないでしょうね?」
「当然だ。救える生命を最初から見捨てるなど私は絶対にせんよ……っと」
足の傷は大分治ったようだ。元から動ける程度には回復していたがある程度走ることも可能だろう。
無論全力疾走を何度も繰り返せば傷口が再度開く可能性が在ることを忘れてはならない。
「では行ってくる」
「誰が待機すると言ったのか……わたくしは解りません」
「な――本気か?」
女性二名を置いて動こうとしたマスタングを止める黒子。
彼女もまた声の方角へ移動しようとしていた。
この行動にマスタングは驚きながら彼女に確認を求めていた。
「ええ、このような状況だろうと自分の役目を全うしなくてはなりませんので」
それだけ短く言い切ると黒子は花陽の方へ視線を向ける。
戦力を持たない彼女まで連れて行けば、言い方は悪いが荷物が増えるだけだ。
しかし一人で残すと言うことは彼女を守る存在が誰一人して消える意味合いを持つ。
花陽の瞳は不安がりながらも黒子に訴えていた、一人にしないで、と。
その意思に気付くと黒子は少し微笑み言い慣れた台詞を放った。
「風紀委員『ジャッジメント』ですの――さぁ行きますわよお二方」
☆
キンブリーはDIOの館から出て来た。
あの館には戦闘痕こそ在るが『其れ以外は何も無い』状況だった。
長居は不要、骸であるクロメと共にその場を後にした。
簡単に言えば時間を無駄にしただけ。
特段急いでいる訳でも無いが大きいイベントに乗りそびれては興が冷めてしまう。
この会場にはホムンクルスも居る、退屈することは余りないようだが。
風を扱う少女、死体を操る刀を持った少女、人形のような存在を使役する犬。
未知に溢れているこの会場はキンブリーの本能を刺激していた。
「ん――」
風の流れが変わる。
その方角には燃え上がる紅蓮の焔が暗い世界を照らしていた。
「クク……もしかすると貴方が其処に居るかもしれませんねぇ」
☆
爆発を操る男と刀を持った無口な女。
二つの危険を目の前にした穂乃果が抱いた感想はまるで映画みたい。
ハリウッド並の身体能力を持った彼らの戦闘は芸術に見える程。
それに剣一つで対向するウェイブやCGのような人形を出すワンちゃんも規格外だ。
ウェイブに至っては至近距離で刀を回避したり爆発を体験してもそれ程辛そうには見えない。
殺し合い何て嘘でこれは映画か何かの撮影なんだろうか、そんな疑問も生まれてくる。
スタントマンと言えば外国人のような風貌をしているし理解出来そうである。
ワンちゃんも英才的な教育を受けた犬と思えばまぁ、理解出来なくもない。
けれど。
(なんで私が此処に居るんだろう)
自分が巻き込まれている理由には繋がらない。
映画の撮影だとして何故自分がこの場所に居るのか。
アイドルだとかドッキリだとか。流石に其れは夢を見過ぎている。
スクールアイドルがこんなビックリドッキリに巻き込まれるなど有り得ない。
ならば広川が告げたとおり殺し合いが起きているのか。
それこそ夢物語のお伽話だ。
何がバトルロワイアルだ馬鹿馬鹿しい。という話になってしまう。
(あぁ! もう! わかるわけないよっ!!)
頭を抱えながら穂乃果は心の中で叫ぶ。
本当は声を大きく叫びたいが状況が状況であり其処は自重する。
大声を出すと他の参加者に居場所が知られてしまう。
そのとおりであるがお世辞にも穂乃果はそんな考えを出来る程の思考を持ち併せていない。
ならば、何故。
「クロメ……ッ!!」
逃げて来てからウェイブは悲しみと怒りに包まれていた。
ある程度走り、安全な場所に辿り着いた今でも彼は近寄り難い雰囲気を出している。
クロメと呟くごとに何回も木を殴りつけ己の無力を噛み締めるように。
穂乃果は思う。
戦闘を遠くで見ていた時から感じていたが知り合いなのだろう。
クロメ。彼から聞いたイェーガーズの仲間の名前である。
話を聞く限りでは白い男に殺されて今はゾンビのように生きていると言う。
それこそハリウッドな話だが茶化せる空気ではない。
「許さねえ、俺はテメェを許さねえ……!」
憎悪の対象は白い男なのだろう。
手を合わせると白い光のようなモノを発し爆発を起こす力を持った男。
アメリカンヒーローのような能力を持ったあの男のことだろう。
大切な存在を殺されたなら、人は変わってしまうかもしれない。
「――で、怪我はないか穂乃果」
「……わ、私?」
振り返るとウェイブは笑顔を浮かべながら穂乃果の心配をしていた。
対する彼女は先程まで殺気を身に纏っていた彼の豹変振りに驚き間の抜けた声を出す。
「私はウェイブさんと違って戦ってもいないし」
「いや穂乃果と犬ころは俺を逃してくれただろ。その時は爆発に巻き込まれていないか?」
「それはそうだけど……って私は怪我なんてしてないしそれを言うなら」
「俺か? 全然動けるし心配すんな!」
腕を大きく回し健在振りを示す彼は笑って言いのけた。
その光景をイギーは鼻で笑いながら見ていた。
まるで「少しでも心配した俺が馬鹿だ」と謂わんばかりの表情で。
「まぁ、あれだ。クロメが死んだって事実は変わらねえ。悲しんだってあいつは戻ってこない。
切り替えろ、って言われてもそう簡単に切り替えられねえさ。
けどよ。俺がモタモタしてる間にもっと死人が出たら本末転倒なんだよ。何のために俺は帝都に来たんだよってな」
その瞳は決意を悲しさを併せ持った美しい潤いで。
けれど言葉には絶対なる意思が込められている。
強い。
この人はとても強い。
そう思う穂乃果であった。
☆
そして時は絡み合う。
☆
「そう言えばお前、強かったなよな犬ころ」
木の麓に座り込んだウェイブが近くで頭を掻いているイギーに声を掛けた。
イギーは特に反応することもなく欠伸をしている。
「あの砂の人形みたいなのってお前の力だよな。まるでコロみてぇな奴だな。
気に喰わない犬ころだけどお前が居なかったら俺も無事じゃなかったし、ありがとうな」
スタンド。
それはウェイブが知らない異能な力。
ヴィジョンなど彼が存在する世界線では現れない未知なる未来。
愚者と呼ばれているソレを今のウェイブが知る可能性は低い。
イギーの仲間達と合流すれば説明してもらえるだろうが。
ウェイブから礼を言われたイギーは驚きの表情を浮かべた。
まさかこの男から礼を言われるなどと思っていただろうか。
純粋に気持ち悪い。
態度で表すように唾を吐き捨てた。
「な!? 可愛くねえ犬だなァおい!」
よりにもよって唾を吐き捨てやがった。
ウェイブは身を乗り出しながらイギーに声を飛ばす。
その光景を見たイギーは鼻で笑い彼を見下していた。
その態度に怒りを積み重ねたウェイブは何度も大地に靴を叩き付ける。
思えばこの靴には犬の糞が……彼の怒りは更に積もって行く。
「フフ……アハハハハ!」
我慢が出来なくなった穂乃果は笑い出す。
ウェイブとイギーの絡みは外から見ているだけで面白い物である。
本人たちからすれば言われたくもない褒め言葉の類であろうことに間違いない。
「仲が良いね、二人共!」
『「ねえ!!」』
叫ぶウェイブと吠えるイギー。
まるで同じ言葉を発しているように息がピッタリである。
二人は目を合わせると直ぐに視線を逸らす。
こんな奴と一緒にするな。そう物語っていた。
しかし比較的和やかな空気は長く続かない。
何もこの会場の時を感じているのは彼らだけではない。
近寄る存在が在る。
ウェイブは剣を取り、イギーはやれやれと謂わんばかりの表情で立ち上がった。
これまで出会った人間はロイ・マスタングとクロメ、そして白い男。
どれも危険人物だ。
近付いて来る人間が温和な人物であることを願いながら――。
「下がれ穂乃果ァ!」
『休ませてくれもいいと思うけどなぁ……ッチィ! 『愚者』!!』
吠えろ、叫べ、己を奮い立てろ。
連戦になるが仕方が無いだろう。
目の前に現れた人物を彼らは知っているのだから。
「随分と手荒い歓迎ですこと……マスタングさん、貴方の知り合いでして?」
「私の顔は広いからな……少なくとも相互関係はないが」
ロイ・マスタング。
彼らを襲撃した悪魔が再びその姿を現した。
違う点を挙げるならば二人の女性を連れて歩いていることか。
女性だからと言って油断することは絶対にしない。
ウェイブは強い女性を何人も体験してきているのだ、油断は許されない。
剣を握り締めその瞳は敵三人誰一人として一挙動作何一つ見逃すつもりなど無い。
「――穂乃果ちゃ、ん?」
「殺気立たせているところ申し訳ないが私達に戦闘の意思はない。武器を収めてくれないか?」
両腕を挙げ戦闘の意思を放棄した軍服の男。
ロイ・マスタングは温和な声でウェイブ達に交渉を持ち掛ける。
佐天涙子を失った時とは大違いであり普段の冷静さを取り戻している。
だがそんなことは彼らに関係ない。
「何巫山戯たこと抜かしてんだよ……ッ!」
武器を収めるどころかウェイブはマスタングに向かって走っているではないか。
これは一体何の冗談だ、マスタングは次から次へと来る問題に溜息を憑く。
「本当に貴方の知り合いではないのですか?」
「違うと言っているだろ。だが――思い当たる節があるのは我ながら嫌になるがなッ!」
呆れた顔で再度促してくる黒子の問に返すとマスタングは掌を合わせる。
そして指を弾くと乾いた音が響くと迫り来るウェイブの目の前に炎が広がり始めた。
「――ッ!?」
「その表情から察するに私を知らないようだが……エンヴィーめ、余計なことをしてくれたものだ」
ウェイブとマスタング。
二つの視線が交差するこの状況には決定的な要因がある。
ウェイブが恨んでいるマスタングはエンヴィーだ。
そして彼の前に存在するマスタングはエンヴィーではなく本物のマスタングである。
別の存在に变化することが出来るホムンクルス、エンヴィー。
彼の存在がこの状況を生み出し、そして混沌に貶ししめている。
「……上!」
黒子の声が突然発せられる。
言葉どおり上を見上げると仮面を付けた異形なる存在がマスタング目掛け急降下している。
その存在に対処すべく行動を取ろうとするが既に遅い。
黒子が彼を掴み座標移動――テレポートを使用していた。
「信じられない力だな、黒子くん」
「貴方の発火能力も中々の物ですけれど……さて」
手を払いながら黒子は頭を悩ませる。
これがマスタングの言っていたエンヴィーとやらの被害だと。
彼の言葉を信じるならばエンヴィーはマスタングに変身し悪事を行ったに違いない、と。
だがどう説明すればいいのか。
花陽は学園都市を知らない。つまり他の参加者も学園都市を知らない可能性がある。
本来可能性は低いはずだがどうも能力者の存在を知らない人間も多くいる気がしてならない。
チラッと花陽の方へ視線を向ける。
テレポートで避難させていたためある程度離れているが怪我は無いようだ。
マスタングの能力は端的に言って強いが味方を巻き込む可能性が在る。
戦う力を持たない彼女は戦線を下がるべきだ。
それは敵側も弁えているのか、一人の少女が後方で此方を伺っているようだ。
少女を保護している彼らが悪い人間だとは思えないが……状況が状況だ。
「信じられないかも知れませんが貴方たちの知っているマスタングさんとこのマスタングさんは別人……かもしれませんわ」
(我ながら何を言っているか自信がありませんわね)
信じてもらえる可能性は低いだろう。自分だって言われたら信じはしないだろう。
答えを表しているのかどうかは不明だが犬が大きな声で吠えている。
喧嘩を売るように、怒りを表すように。
「お黙り!」
「……黙るのはお前らの方だ……ロイ・マスタングゥッァ!」
「聞く耳を持て青年よ!」
ウェイブは剣を大地に引き摺りながら駆けるとソレを振るい上げる。
大地の砂と塵は目眩ましと化しマスタングの視界を奪う。
黒子は彼の手助けに入ろうとするが手を払われてしまう。それは離れろの合図。
「お前の言葉が信じられると思うか?」
「さぁな――ッ!」
接近したウェイブはその剣を縦に振り下ろす。
マスタングの炎は先程の動作から察するに掌を合し指を弾く二つの動作が必要である。
一瞬で見抜いた彼は確信したのだ、この男は接近戦に弱い、と。
問答無用で振り下ろされた剣は――
「目を潰し距離を詰めれば炎は届かない……悪くないが生憎私は目が潰されてもある程度感覚は掴める。それに攻撃も出来る」
パチン。
乾いた音が響くと剣を防ぐように小さい紅蓮の焔が浮かび上がった。
「掌を合わせていねえ!?」
「あの一瞬だけで見抜くとは中々やるではないか。だが錬成陣があれば短縮出来るんだ。最も無駄な消費はしたくないがな」
熱さに耐えれず距離を取るウェイブ。
グランシャリオがあれば話は別だが今の状況でマスタングに勝てる未来が見えない。
流れる動作で繰り出される焔は脅威であり接近戦しか出来ない現状、彼は天敵である。
仮に距離を詰めれたとしても近くにはテレポートを扱う少女も居る。
幸い彼女は見ているだけであるが、戦線に加われば此方が確実に負ける。
イギーのスタンドも強いが圧倒的に速さが足りない。
これでは此方が焼き殺されてしまう。
「少しは話を聞いてくれる状況になったな……黒子くんが言ったとおり君達が出会った私は別人だ」
「……俺達を襲ってきたアンタは炎を使わなかった。こんな力を隠す理由何て無いとは思う」
「話が解るではないか。その男の名前はエンヴィー。人間ではなくホムンクルスと呼ばれる人造生命体だ」
「本気で言って……いるんだよな」
ガイアファンデーション。
嘗てナイトレイドに所有していた一人の悪が使っていた帝具の名である。
能力はマスタングが言うような変身能力。
つまり彼の言い分を信じれる情報をウェイブは持っている。
ホムンクルス。
人造生命体ならば心当たりがある。
つまり、つまり、つまり、だ。
マスタングの言葉を信じる材料は揃っている。
だからウェイブは彼の言葉を――。
「じゃあそのエンヴィーってのは」
「花陽ちゃん!?」
「ほ、穂乃果ちゃん……穂乃果ちゃん!!」
ウェイブが言葉を発する前に穂乃果と花陽と呼ばれた少女が声を挙げていた。
彼女の言葉を借りるなら同じスクールアイドルの仲間であり親友であろう。
こんな状況であろうと知り合いに出会える安心感は偉大だ。
特に戦闘からかけ離れた生活を送っている彼女達なら尚更である。
ウェイブ、黒子、イギー。
彼らはその光景を優しく見守っていた。
「止まれ」
冷たい言葉が駆け寄ろうとする二人を止めた。
その瞳は冷たく、悪を裁くような、暖かさを感じられない悪魔の瞳。
その瞳に黒子は呆れ、ウェイブは難を示し、イギーは警戒する。
「穂乃果と言ったな。お前がエンヴィーじゃない証拠を見せろ」
「え……えぇ!?」
穂乃果は驚く。
エンヴィーとはマスタングが言っていたホムンクルスであろう。
まさか自分が疑われてるとは思ってもいなかった。
もし信じてもらえなければ自分も炎で焼かれるのだろうか。
そう思うと急に青ざめ身の危険を感じ始める。
それは花陽も同様であり折角の再開に水を差されては喜び切れないだろう。
そして頭に過ってしまう。
目の前に居る穂乃果が偽物であり、自分を殺そうとしているならば。
自然に後退してしまう。もう少しで触れる距離だと言うのに。
「マスタングさん。警戒する気持ちは解りますがそれは有り得ない言動ですわ」
「それは俺が保証する。穂乃果はエンヴィーって奴じゃねえ。
襲われてるところを俺は知っている。それに、今のあんたの方が怪しいってことに変わりはねえ」
エンヴィーの脅威を知っている。ならば警戒するのは自然である。
しかし幼い少女達、その感動なる再開に水を差す程であろうか。
黒子もウェイブもイギーも。
彼らの思考はマスタング寄りである。
自分が同じ立場なら同じように確認するだろう。
だが、それは決して言葉に出してはならない。この場合に置いては。
花陽はマスタングと黒子が。
穂乃果はウェイブとイギー……が証明出来るかは不明だが身の潔白を説明出来る。
この状況で勘ぐるのは寧ろマイナスな判断でありウェイブの彼に対する評価は曇ってしまう。
それは黒子も同様である。
彼女もまた心の奥底では彼を信じ切れていない。
彼自身がエンヴィーの可能性も在る。だとすれば。
目の前に居る男は佐天涙子の仇ではないだろうか。
渦巻く思考は誰にも止められない。
少なくとも来訪者に頼るべきだろう。
「すいませーん! 少し話を聞かせて……ってもしかして私、空気が読めていない?」
イギーと似たような人形を携えた女性が空から現れた。
それは天使なのか悪魔なのか。
その光景を見た穂乃果と花陽は何が現実で、何が夢なのか解らなくなっていた。
☆
時は加速する。
☆
「悪いが私は鳴上くんを見ていないし、その千枝と言う子もモモカも知らない」
「わたくしも同じですわ」
「俺も知らねえ、すまない」
「花陽ちゃんも知らないよね?」
「う、うん」
「ワンちゃんも……知らないよねえ」
空から現れた女性の名前は雪子で翼を持った人形はペルソナだと言う。
その説明を受けた彼らの思考は偶然にも重なっていた。
『もう何でも来い』と。
疑っても仕方が無い。
此処には未知しか無い、正解を捕まえるなど不可能に近い。
ある程度の諦めと全てを受け入れる度胸が必要らしい。殺し合いに置いては危険であるが。
「千枝達は電車に乗っていたので……でも電車は此方に来ていないですよね」
「そうですわね。空から見れば解るのではなくて?」
「暗くて何も見えませんでした。光ってもいないので止まってるかもしれません。
私は炎が見えたので誰か居ると思って降りてきたのですが……」
電車の光が見えないと言うことは止まっている、というよりも不祥事が起きている可能性が高い。
黒子がそう言うと穂乃果と花陽は首を縦に振り肯定する。
マスタングとウェイブは電車なる物が解らないため黙っていた。
「わかるか?」
「私は知らん」
アイコンタクトで会話する二人を眺めているイギーは鼻で彼らを笑う。
これだから田舎モンは困るぜ、あぁ恥ずかしい、と。
「結局の手掛かりは何もなしか……今更だが私達はとある声を聞いて行動している」
「助けてー! って声が聞こえたんです」
マスタングが紡ぎ花陽が更に説明する。
プロダクションで休んでいた彼らが行動していた理由は救援を聞いたから。
方角的にはDIOの館がある場所だが、こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。
「それってもしかして……」
穂乃果が不安そうな声を上げる。
その声を知っている、その方角を知っている、その場所を知っている。
その声を聞いて行動していたのは彼女たちも同じである。
そして悲劇が起きたのも知っている。
「その声の持ち主は多分……死んだ」
真剣に呟くウェイブにマスタングは反応する。
「つまりウェイブ。君たちはその声を聞いて確かめたのだな」
「あぁ。そこに居たのは死んだ俺の仲間と白い男だけだった」
白い男。
触れた物を爆発物に変える危険な男。
その思考と言葉から彼は殺し合いに乗った悪なる人物と断言出来よう。
死んだ仲間。
彼が心を許した同じ仲間。
志は違うかも知れないが帝都に蔓延る悪を駆逐する頼れる仲間。
その姿は今でも忘れられない。
まるで目の前に居るように。
「もしかして……ウェイブ?」
「クロメ……? お前、クロメなのか……なぁ!」
走る。
其処には見慣れた仲間の姿が在った。
殺された事実を彼は受け入れられないでいた。
心の何処かでは生きているんじゃないか。あれは偽物なんだ。
目の前に居る彼女は懐かしくて、その声も聞き慣れている。
走るウェイブを見て穂乃果は思った。
何で彼女が生きているんだ、と。
穂乃果はクロメが死ぬ瞬間を見ていないため断言出来ないが不安は残る。
それでも生きていて再開出来るなら。
自分と花陽のように喜びを分かち合えるだろう。
イギーは思った。
お前は何を学んだんだ。
今までのことを思い出せ、この田舎野郎、と。
表情を険しくし彼はスタンドである愚者を具現化させた。
黒子は思った。
感動の再開だろうか。
それは喜ばしいことである。
しかし犬は人形を具現化させた。つまりあの女は危険人物なのだろうか。
雪子は思った。
状況が飲み込めないが知り合いと出会えたのは良いことだろう。
千枝も何処かで無事なら……未だ出会えぬ仲間を想った。
花陽は思った。
自分と穂乃果のように出会えたのは喜ばしいことだ。
知り合いと出会えるのは精神的にも楽になる。
気になることと言えばマスタングが再三言っていたことだ。
マスタングは思った。
彼はエンヴィーの能力を知っているはずだが何一つ警戒していない。
顔写真が含まれている名簿の話をしておくべきだったか、と後悔する。
念には念を置いて発火手袋を履くが出番は思ったよりも早く来そうである。
「ウェイブが無事で何よりだよ」
その聞き慣れた声は精神を安定させてくれる。
出会えた。
それだけで充分だ。
死んだと思っていたお前が現れて俺は嬉しい。
この手でお前を殺せるんだからな。
「クロメは死んだ――巫山戯た真似してっと斬り殺すぞテメェッ!!」
駆ける足を緩めることなくウェイブは勢いを殺さぬまま剣を横に払う。
狙いは首、一撃で殺すべく必殺の一撃を払う。
その攻撃は届かず相手の剣で防がれてしまうが咄嗟の防御では甘すぎる。
腕を飛ばされ無防備となった胴体に蹴りをかまし彼は吠えた。
「もう一度言う……テメェは俺が殺してやるよ、来いや……楽に殺してやる」
彼の怒りは止まらない。
死んだ仲間の姿を騙った悪を殺すまで晴れることはない。
その先の保証はなく、今この場で彼を止める方法など存在しないだろう。
それ程までに大切な存在を穢された今の彼は、強い。
「くっそ……まさか既に死人だとは思ってもいなかったよ。
このクロメって女はさぞかし無能だったんだろうねぇ? ウェイブくん、大佐ぁ?」
立ち上がったクロメと呼ばれた少女は声色を変えながら豹変する。
電流のような禍々しい光が走ると彼女は骨格ごと変化していき、やがては髪や服装までもが変わっていた。
少年のような姿、これがマスタングの言っていたエンヴィーと全員が理解するのに時間は必要ないだろう。
「お前がエンヴィーってのは解ったけどよ、それだけだ。死ね」
「その必要はない、下がれウェイブッ!!」
立ち上がったエンヴィーを見つめながら剣を構えるウェイブ。
蹴りの一つでは収まらないこの怒りは確実に次なる一撃を加えんと。
その終着は死であり、悪を断罪するべくイェーガーズは動き出す。
しかしそれを止めたのはマスタングである。
彼はウェイブを止めると指を弾きエンヴィーを――焼却し始めた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「学習のしない奴だなエンヴィー! そのまま黙って焼き殺されろ!!」
「ぃぃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
苦痛なる叫び声。
ホムンクルスであろうとその見た目は少年と変わらない。
エンヴィーの存在を説明でしか聞かない彼らは現状に困惑していた。
ウェイブは思った。
エンヴィーはクロメを騙った愚かな奴だ。
変装して襲ったつもりだがその作戦は今の彼にとって逆鱗に触れる行為だ。
だがこの光景を見ても心の霧が晴れないのはまだ自分が甘い証拠だろうか。
穂乃果は思った。
このエンヴィーは自分を襲ったマスタングと同一人物なのだと。
ウェイブとイギーが居なければ自分は剣で斬り裂かれ、銃で撃たれていたのだ。
なのに。この光景を見て涙を流しているのは何故なのか。
花陽は思った。
マスタングの話を聞く限りエンヴィーとは極悪人でありホムンクルスである。
悪いことをした人は然るべき罰を受ける、当然である。
なのに。この光景を見て哀しさを抱いてしまう。何故涙は頬を伝うのか。
黒子は思った。
この光景を民間人に見せてはダメだ。
今のマスタングは悪魔のように我を忘れている。
彼女は黙って穂乃果と花陽を避難させるべくその腕を取り後方へ消えた。
イギーは思った。
この無能め。田舎モンよりもお前は判断出来ていねえ、と。
その行いは何一つ間違いではないが限度を知れ。
周囲に炎の影響が出ないように愚者を発動し鎮火作業を始めた。
雪子は思った。
この炎は自分のペルソナを超えているかもしれない。
モモカの力もそうだがこの会場には未知が溢れているようだ。
マスタングを止めるべくペルソナを発動し彼の近くへ移動し始めた。
マスタングは思った。
ヒューズの仇、涙子の仇が目の前に居る。
以前は自分の手で殺せなかったが今は違う。
今度こそ焼き殺してやる、手袋を履き替え何度も何度も指を弾く。
スカー、鋼の、中尉――君たちがこの場に居たら今度は私に何と言うのかね。
そしてエンヴィーの周囲は大きな爆発を起こす。
それに一番驚いたのは他でもない――マスタングであった。
☆
それでも時は止まらない。
☆
「やり過ぎだマスタング……お前、それは殺人鬼と変わらない」
何度も焼き尽くされるエンヴィーを見てウェイブはマスタングに毒を吐く。
焼かれその度に悲鳴を上げるホムンクルスは人間と何が違うと言うのか。
その光景は無垢なる少年が焼き殺されているのと何が違うのか。
「反省はするが後悔するつもりはないぞ……それよりも今の爆発は私ではない!」
「なら誰がやったんだって言うんだ――ッ!?」
マスタングの言い訳に反論する彼の言葉は途中で途切れる。
己に迫る光は見たことが在る危険な光、其れが到達する前に横に飛び回避する。
光はそのまま木々に当たると大きな爆発を引き起こしウェイブは先の戦闘を思い出す。
受け身を取り立ち上がると爆風の奥には見慣れた男が笑っていた。
「これはエンヴィー……もう少しで死ぬ所でしたねぇ」
「キンブリーか……礼を言うよ。これで人間どもを殺せる」
「お前はキンブリー!? エンヴィーと言い貴様と言い一体何がどうなっているんだ」
「これはこれは……焔の錬金術師ことロイ・マスタング大佐ではありませんか。
イシュヴァールの英雄がこんなところで魔女狩りの如く少年を焼いているとは何事ですかねェェ!!」
普通に話すように。そして煽るように言葉を吐くキンブリー。
彼はそのまま掌を合わせ大地に落としこむとマスタング目掛けて光が走る。
爆発の錬金術、それこそが紅蓮の錬金術師である彼の技であり業。
目の前に迫る爆発を炎で防ごうとするがその必要はない。
「済まないな雪子くん」
「私は大丈夫です。あの人達は誰ですか?」
「敵であり悪だ。それでいいか?」
「それだけ聞ければ充分です……でもやり過ぎには気を付けてください」
翼の生えたペルソナでマスタングを回収し空へ避難した雪子。
彼に敵を聞くと、エンヴィーの件を注意し彼らの後方へマスタングを運んだ。
「余所見してんじゃねえええええええええええ」
その光景を見ていたキンブリーにウェイブは雄叫びと共に斬り掛かる。
この男はクロメを殺した男だ、敵だ、悪だ、殺すべき存在だ。
怒りと悲しみ、言葉では表しきれない感情を乘せた剣を振るう。
「っガァ!?」
そこで一つ疑問が生まれる。
彼が殺したクロメは何処に居るのか。
殺したならば死体、つまり元の場所へ還っているのか。
違う。
八房の能力は斬り殺した死人を骸のように操ること。
つまりこの場に居ないクロメは何処かに潜んでいることになる。
「蹴りのお返しだよウェイブくーんッ!」
伏兵であるクロメに左肩を斬り裂かれたウェイブ。
追撃するように交差して現れたエンヴィーが彼の身体を蹴り飛ばした。
受け身を取れず何度も転がるウェイブと笑うエンヴィー。
彼が立ち上がった時、エンヴィーは更なる追撃をしようと右腕を異形に変化させていた。
それは緑色で、大きく、悍ましく、怪物のような。
ウェイブを潰さんと叩き落とされるが彼は既に其処から移動していた。
「た、助けられちまったな」
『何度目になると思ってんだ! もう少し周りを見やがれ!』
愚者が彼を移動させていたのだ。
スタンド、その光景を以前にも目撃していたエンヴィーは笑いながら標的をイギーへ移す。
「大佐の相手はキンブリーならさぁ! もう一回遊んでくれないかなぁ?」
☆
「お前と戦う日が来るとは思わなかったよキンブリー」
「私もあの英雄と戦うとは感激物ですねぇ」
「どうやら牢獄にまた入れられたいらしいな、私の牢獄は熱いぞ?」
パチン。
指が弾かれるとキンブリーの身体が炎に包まれた。
比較的少ない動作で発動される炎は戦闘において絶大的な力を発揮する。
しかしキンブリーは既に移動を開始しているのだ。
(あいつ……石を爆発物に錬成し私の炎を事前に防いだのか)
己に炎が到達する前に。
目の前で爆発を起こし相殺させたキンブリーは孤を描くように移動している。
石を適当に蹴り上げると錬成を行いそれらを蹴り飛ばす。
即席で錬成された爆弾はマスタングに飛んで行くが手合わせ錬成で防がれてしまう。
炎によって防がれたということは目の前が炎に包まれたということ。
視界を塞がれたマスタングに追撃を掛けるべくキンブリーは更なる錬成を行おうとするが闘っているのは彼らだけではない。
「この炎は……チィ!」
「やるではないか、雪子くん」
ペルソナから放たれた炎はキンブリーの左腕を焼いた。
しかし咄嗟の判断で回避されてしまったため、服を焼いた程度に終わってしまった。
「私を忘れないでください!」
「ならばマスタング大佐。貴方も一人、役者を忘れている」
何だと。
声を上げるよりも早く彼の左肩は貫かれてしまった。
苦痛に顔を歪める時間も惜しい、既に履き替えていた手袋を使い捨てるように指を弾く。
火力の調整などしてる暇もなく。
クロメと自分の間に炎を巻き起こし幾分巻き込まれながらも状況を脱した。
「ウェイブの言葉どおりなら死んでいるらしいが……キンブリー、お前は人体錬成をしたのか?」
「まさか。彼女が持っている刀は殺した相手を人形にするらしいですよ。信じるかは――自由ですけどねェ!!」
クロメに追撃を掛けようと手袋を履き替えるも彼女は既にキンブリーの近くへ退避していた。
履き替える動作では随分と戦闘に支障が出てしまう。
手合わせ錬成も時間を一動作消費するためか、やはり近接戦闘に自然と持ち込まれてしまう。
「ぐ……」
最も左肩を貫かれた今、彼の動作は全て遅れてはいるが。
マスタングが錬成を行うよりも先にキンブリーの魔の手が彼に迫る。
気付けても逃げることは出来ない、錬成することも間に合わない。
「マスタングさん、捕まって!」
ペルソナごと空を翔ける雪子が手を伸ばす。
彼の手を握り締め空へ逃げるが爆発は止らず彼らに迫る。
蛇行するように様々な軌道を描くが無駄な足掻きである。
ペルソナを包むように爆発は発生しマスタングは宙へ投げ出された。
「しま――ウェイブッ!!」
間一髪と思われたがマスタングは叫ぶ。
其処にはイギーと協力しエンヴィーと交戦するウェイブの姿。
その声に気付いた彼はイギーに任せた、と告げると急いでマスタングの落下地点へ走る。
「テメェ何やってんだよ!!」
滑り込みながら両腕でマスタングを抱えるウェイブ。
彼の走りでマスタングは無事に着地を成功させた。
「礼を言うぞ」
「るせぇ」
安心していられなく、目の前にはエンヴィーとキンブリー、そしてクロメが揃っている。
この三人を相手するには負傷しているマスタングとウェイブ。
イギーの三人では少々分が悪すぎる戦いである。
だが。
「まとまっていれば都合がいい――手加減なしの火力で焼き尽くされろ!!」
全力で弾かれた指は一帯に音を響かせると紅蓮の業火を発動させた。
その業火は全てを包み、焼き、生を司る前の塵へ誘うように全てを焼き尽くしている。
しかし。
その瞬間を彼らは見逃さなかった。
「きゃああああああああああ!?」
エンヴィーが右腕を変形させ雪子を業火へ引き摺り込んだ瞬間を。
☆
時はそれでも止まらない。
☆
「マスタングさん……なんで……」
黒子のテレポートによって戦場から離れた穂乃果達は木々に身を寄せていた。
口から漏れる言葉はエンヴィーを何度も焼き尽くすマスタングの行いに対してである。
「あれじゃ酷すぎるよ……」
何度も何度も何度も。
指を弾き炎が舞い少年が焼かれる姿を見続けるのは年頃の少女達にとっては辛い。
辛いなんて話ではなく、特別な世界ではなく日常から巻き込まれた彼女達にとってそれは毒だ。
こんな光景、人生の中で一度見るか見ないかの話ではなく、絶対に体験しない光景であった。
其程までに彼女達は日常から巻き込まれたのだ、錬金術もスタンドも帝具もペルソナも存在しない。
学園の仲間と共にアイドルの理想像を目指す彼女達には全く以って無縁の世界である。
「花陽ちゃん、大丈夫……じゃないよね。私も辛い……心が泣いている」
胸が、魂が、心が泣いている。
助けてあげたい、少年を。でも、その少年は、人間を殺すホムンクルス。
それは救う対象ではなくて、裁く対象であり炎で焼かれるのは理に適っている。
「……大丈夫じゃない、で……す。でも、マスタングさんは親友や会場で出会った人を殺されたって言ってました……」
涙を流しながら花陽は話す。
マーズ・ヒューズと呼ばれるマスタングの親友はエンヴィーに殺された、と。
佐天涙子と呼ばれる白井黒子の親友はエンヴィーに殺された、と。
ならば彼の行いも肯定出来るものなのか。
痛みを感じ、叫び声を無視しながら、何度も何度も何度も焼き尽くすことが許されると言うのか。
「じゃあ、マスタングさんは正しいの!? あんなに何度も焼く必要ないじゃない!」
立ち上がり腕を払いながら穂乃果は叫ぶ。
感情のままに。見た光景を脳裏に焼き付けながら叫んだ。
確かにエンヴィーは殺される存在かもしれない。
だが、彼処まで徹底的に行う必要は感じられない。
「そもそもエンヴィーって人がホムンクルスって何よ!
クロメって人から変身したのは人間じゃないと私も思うし、それに私も襲われた。
でも……でも! あんまりだと思わないの!? あんなに何度も何度も焼かれて、平気なの!?」
そもそもマスタングの話を鵜呑みにする必要があるのか。
彼女からしてみれば彼は襲ってきた張本人である。
その正体はエンヴィーであると判明したが『マスタングの姿から襲われた事実』に変わりはない。
つまり、穂乃果に残った結果は『マスタングの姿から襲われた』であり、彼には自然と疑念を向けてしまう。
彼が正論を述べようが、頭では理解しているが、心の何処かで襲われた光景が邪魔をしてしまう。
もしかしたらマスタングはエンヴィーかもしれない。
また自分に襲い掛かり殺されてしまうかもしれない。
その炎でエンヴィーのように何度も何度も何度も焼き尽くされるかもしれない。
一度考えてしまえばそれは迷宮の中と同義であり、疑った者は最後まで疑ってしまうだろう。
「何か言ってよ花陽ちゃん!」
これでは自分一人でマスタングの悪口を言っているみたいだ。
泣いて俯いている花陽に彼女は激のような言葉を飛ばす。
それでも花陽は黙り、少ししてから頭を上げた。
その視線は何とも言い難いもので穂乃果を見つめていた。
「――ッ、マスタングさんがやっていることは人殺しとかわらな――」
「そこまでですの。高坂さん」
感情が高ぶった穂乃果を止めたのは今まで黙っていた白井黒子。
このまま彼女を喋らせていると感情と勢いに任せ思ってもいないことまで叫んでしまう。
見た光景と因果はどうであれマスタングのことを人殺し呼ばわりすることは誰一人として本望ではないだろう。
「す……すいません」
「謝るならわたくしではなくて小泉さんに――危ないッ!!」
酷い言葉を浴びさせてしまった花陽に謝るべきだ。
黒子は穂乃果にそう告げ、彼女も花陽に謝ろうと自分を見つめ直していた。
彼女達の絆はそう簡単に崩れぬ物ではないが小さな綻びを放置しておけば後に取り返しのつかないことになる。
だが言葉を発する前に白井黒子は彼女達の腕を掴みテレポートを試みた。
突然の行動に驚く二人だが、頭が勝手に理解してしまう。
異常なる現象は会場に来てから何度も体験しているがレパートリーが豊富過ぎる。
「こ、氷……?」
テレポートが完了し自分が居た地点を見つめる穂乃果。
座標移動に慣れている自分に違和感を覚えつつも、その感覚は目の前の光景に塗り潰される。
自分達が数秒前まで留まっていた場所は何らかの力によって凍らされていたのだ。
「瞬間移動か……理解出来ない力を持っているな」
そして声の方を見る。方角は更に奥。
其処には一人の男が此方を見ながら黒子の能力に興味を示していた。
初老に見える男は一歩、更に一歩と踏み込み確実に距離を詰めていた。
「止まりなさい、貴方はわたくし達に何か用でもおありで?」
「用? 俺が人間を殺すのに理由が必要だと思うか……その力、見せてみろ」
「警告はしました……ですのッ!!」
その場にしゃがみ込んだ黒子は石を数個握りテレポートを発動させる。
石は男の目の前に現れ、空間を無視した投石を自在に描く。
その弾丸は男の顔や身体に命中し、普通の男性ならば気を失うか、戦意を喪失するか。
少なくても病院の世話になる程度の攻撃をお見舞いしたのだ。
「そうか……手に取った物を移動させる力か」
「効いてないみたいですわね……身体の下は頑丈なのか我慢強いのか解りませんわね」
男は冷静に黒子の能力を分析していた。
石の攻撃を無視するように、平然と、声を発している。
その光景に若干の驚きを見せるも黒子は次の一手を考える。
何も学園都市には有り得ない人間なんて無数に溢れている、今更一人や二人。
次の一手だが、考えるならば穂乃果と花陽を避難させることが先決だ。
彼女達を守れるかどうかは男の力を見ないと判断出来ないが、安全を保証することは出来ない。
先程から何度も焔の光と音が聞こえている今、マスタング達の加勢を期待するのは無駄だろう。
(鳥――?)
此処で考えが一度途切れる。
男の近くに飛んでいる鳥が視界に入ったのだ。
何も外に鳥が居ることは特段珍しいことではない。
ウェイブ達と一緒に行動していた犬も居るのだ。
鳥が居ても何も可怪しいことはない。
(この違和感は一体――?)
だが気になることがある。
犬と鳥以外に他の動物を見ただろうか。
鳥は口を開いている。
思えば犬は首輪を付けていた。
その首輪は自分達と同じ物であり、参加者の証でもある。
つまり、犬は自分達と同じ立場であり、殺し合いに参加している犬だ。
そして鳥も首輪を付けている。
ならばこの鳥も参加者であり、殺し合いに参加していることになる。
襲って来た男は殺し合いに乗っている悪である。確実だ。
その男と一緒に行動している鳥は――気付いてしまった。
「もう一度移動しますわよッ」
光り輝くクチバシから放たれた氷を避けるために黒子は再び能力を発動した。
☆
時の流れは止められない。
☆
豪炎包まれる目の前の光景を彼らは凝視していた。
どんな小さい動作も見逃せない、いや、最悪の結果にならないことを祈っているだけだ。
敵である標的の三人が固まった時、マスタングは渾身の火力で炎を錬成した。
全てを焼き尽くすように、二度と悲劇を繰り返さないようにありったけ。
だが最後の最後にエンヴィーは足掻いたのだ、空を飛んでいた雪子を引き摺り込んだ。
つまり豪炎の中にはエンヴィー達の他にも雪子が存在しており彼女は焼き殺される対象ではない。
その事実を否定したいマスタング達は黙って豪炎を見つめていた。
「……誰か来る」
ウェイブが小さく、それでも全員に聞こえるように呟いた。
豪炎の中から一つ人影が飛び出して来たのだ。
接近戦に優れているのはクロメだろう。
見の軽やかさと類まれなる体術は多くの参加者の中でも上位に分類される。
本来の得物である八房を所有している今、彼女は最大限のポテンシャルを発揮出来る。
「――雪子くん?」
此方に向かって走って来たのは雪子だった。
その見た目は若干焦げているが、生命に別状はないようだ。
どうやって豪炎から逃れたかは不明だが、ペルソナでも使用したのだろう。
何はともあれ生きていた彼女に安心したマスタングは再び指を弾き彼女を炎で包み込んだ。
「バッグから私が錬成した剣が見えているぞ――エンヴィーッ!」
その雪子は本物ではなく偽りの存在。
言うなればエンヴィーが変装した裁くべき悪其の物である。
バッグから飛び出している剣はマスタングが錬成した物。
佐天涙子の目の前で錬成したあの剣だ、見間違える筈もない。
その剣はウェイブとイギーも目撃している。
彼らと穂乃果が襲われた時、マスタングに変装していたエンヴィーが使用していた物だ。
「ああああああああああああああああああ助け――」
「もう遅い――貴様は此処で焼き殺すッ!」
戸惑いも後悔も容赦も情けも必要ない。
パチン。
掌を合わせ指を弾く。
「いやああああああああああああああああああああああ」
パチン。
掌を合わせ指を弾く。
「死んだ人間はその痛みを感じることは出来ない。ならばお前が代りに味わえ」
マーズ・ヒューズが、佐天涙子が。
彼に関わらなければ少なくとも生命の鼓動が潰えなかった二人。
お前が殺した二人は痛みも感じることが出来ないのだ、ならば償え。
この焔でお前を何度も焼き尽くしてやる、苦しんで死ぬがいい。
この場所には中尉もスカーも鋼のも存在しない、止める人間は存在しないのだから。
「あ、ああああああああああああああああああああああああああ」
パチン。
掌を合わせ指を弾く。
「や、めて……マスタングさ……ああああああああああああああああああああああああ」
パチン。
掌を合わせ指を弾く。
「変装が解けないとは随分と賢者の石を貯めこんでいるような――ッ!」
パチン。
掌を合わせ指を弾く。
「私はあああああ……あぁ……ああああああ……」
パチン。
掌を合わせ指を弾く。
「そこまでにしてあげなよ大佐。彼女はホムンクルスじゃないんだ、死んじゃうよ?」
パチン。
「え……エンヴィーだ、と……なら――ッ!?」
認めたくない。
何故お前が別の場所から現れるのだ。
お前は私に焼き殺されている筈だ、そうだ、そうなんだ。
雪子に変身し意表を突いたつもりだが私を欺くには爪が甘過ぎるのだ。
だから、何度も何度も叫びを無視して、何度も何度も炎で焼き尽くしていたのだ。
それなのに。
「バッグからはみ出してた剣はこのエンヴィーがぶっ刺しただけだよ?
その後、ちょいと背中を蹴り飛ばしてあげたんだ。だから走って向かってるように見えたんだよ」
「しゃ、喋るな」
「声が震えているよ大佐? 認めればいいじゃないか! お前は! 雪子って子を間違えて焼いたんだって!」
「喋るなああああああああああああああああああああああああああああああああ」
目の前に存在する悪魔をこの場から焼き尽くし消滅させる。
己の中に生まれてしまった罪から逃げるようにマスタングは錬成を試みる。
しかし。
彼が雪子を焼き尽くしている間にクロメは距離を詰めていた。
マスタングが錬成するよりも早く八房で斬り掛かるが失敗に終わる。
彼女がノーマークで動けるならば、ウェイブも同様に動けているから。
「しっかりしろ、戦いはまだ終わってねぇぞぉ!!」
割り込むようにクロメの一撃を剣で受け止めると力任せに押し飛ばす。
そのままマスタングから離れるように追撃を行い、クロメを彼から引き離すことに成功する。
しかし休む間もなくエンヴィーは右腕を大きな質量を持った異形に変形させ彼を潰そうとする。
それを防ぐのがイギーの役目であり、愚者はその身でエンヴィーの一撃から彼を守り抜いた。
力比べだ。ホムンクルスとスタンドの力比べが始まった。
それはどちらも互いに退かず、エンヴィーは犬の力に驚くが軍配はキンブリーに上がる。
そう、イギーでもエンヴィーでもなくキンブリーに上がった。
豪炎の中マスタング以外の参加者が自由に動けるならば。
キンブリーが動けない理由が存在する訳もなく。
彼はイギーが立っている大地に爆発の属性を付加させ――。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
イギーは大地諸共轟音と共に弾け飛んだ。
☆
やがて時は止まる。
☆
マスタングはウェイブ達が戦闘をしている間、雪子の傍へ移動していた。
エンヴィーの攻撃をイギーが防いでいる時間を利用して彼は自らの罪へ近寄ったのだ。
「ぁ……ぁぁ……」
呼吸も禄に出来ず、発声もままならない。
肺を始めとするあらゆる器官が焼き尽くされている証拠である。
焦げた匂い、嗅ぎたくない物だが何度も嗅いだことのある匂い。
それは死する前の人間が発する物であり雪子もそれの例に漏れないだろう。
「たすぇ……ち、ぇ……なるか……ぁ……ぁぁ……」
「私は…………」
「余所見してんじゃねえ! お前は雪子の分まで生きる義務があんだよォ!!」
雪子が最後に力を振り絞って発した言葉はマスタングに届かない。
既にありとあらゆる器官が潰されている今、声は声とならず呻きとして音になる。
その音を聞かないように。
マスタングは己の中に生まれた罪から逃げようとはしていた。
だが。
今更逃げるのは虫が良すぎる話だ。
雪子が死んだのは判断を誤ったからであり、手を下したのは己である。
悲劇のヒロインを気取るなど誰が赦すのか、軍人には必要ない。
「当たり前だ、私は死ぬ訳にはいかん……だから今は」
戦う。
償うのはその後で。
全てを清算するのは悪を排除し未来を感じれる日が来るまで。
マスタングは近寄って来たウェイブに視線を移し変化を感じる。
一つに彼の左肩が斬り裂かれているのだ。
自分も左肩を貫かれているが犯人は一緒だろう。
彼がクロメと呼んでいた死体の少女、間違いはない。
更に一つ。
彼が抱えているのは黒い犬のイギー。
自分を助けてくれた犬はキンブリーの攻撃が直撃し瀕死状態に陥っていた。
異様なる匂いが霞始め、身体は鮮血で彩られ、呼吸も荒くなっている。
治療を今すぐでも施してやりたいが状況が状況であり不可能だ。
「気を付けてくださいまし、更に敵が――ッ!」
瞬間移動によって移動して来た黒子達を待ち受けていたのは焼き殺された雪子の死体。
理由はどうであれ犯人は独りしか居ないだろう。
花陽は手で口を覆い込み上げてくる何かを必死で食い止めた。
穂乃果は気を失いそうになるも、踏み止まりマスタングへ視線を移した。
そして答えるのはエンヴィー。
「君達ぃ気を付けないと危ないよー? 大佐は仲間を見間違えて殺しちゃう悪魔だからねー!!」
全身全霊全力を込めて煽るように。
憎たらしい笑顔を浮かべながらエンヴィーは現実を彼女達へ突き付ける。
「これは怖いですね……あぁ怖い」
追い打ちを掛けるようにキンブリーが呟く。
その単純なる言葉は恐怖心を煽る最大のスパイスとなる。
現に穂乃果と花陽の顔色は会場に来て一番悪い状態になっている。
仲間だと思っていた人物が仲間を殺していた。
そもそも錬金術だのホムンクルスだの専門知識を並べ信用に欠けていた男が。
穂乃果に至っては一度、偽物であるとはいえ襲って来た人物だ。
信用する方が難しいだろう。
「今は納得してくれとは言わん。だがこの場を切り抜けるまでは大人しく――新手か!」
まずはこの場を切り抜けなくては泣くことも話す機会も設けられない。
覚悟を決め戦況から抜け出すため構えるマスタングとウェイブ、黒子だったが邪魔が入る。
それはエンヴィー達にも予想外であり、黒子は歯を食いしばる。
「あの男は何らかの能力者ですわ……そして鳥は氷を自由に扱いますの」
「鳥が氷……本当かね」
「は、はい……こんな風に……」
「こ、小泉さん……貴方、いつの間に!?」
異様な空気を放っている男の能力は不明だが鳥は氷を扱う。
黒子の説明に難を示すマスタングであるが花陽の説明で信じざるを得なくなる。
其処には凍った右腕を差し出す花陽の姿が在ったから。
「最初に襲われた時に……突然過ぎて右腕の感覚が……ぁ……ないんです」
弱々しい声を聞き、黒子は己の無力さを実感した。
何と無力か。彼女を助けるどころか負傷に気付かず無理をさせていたとは。
襲撃から逃れる術を考えているだけで精一杯であった。そんなものは言い訳だ。
「……マスタングさんとウェイブさん。早く此処から脱出して逃げますわよ」
「――当然だ」
黒子の提案に男二人は声を重ねて答える。
花陽の治療、イギーの治療。
大切な仲間を救うためには五人の襲撃者から逃れなければならない。
此処が正念場――しかし事態は急速に終焉を迎える。
☆
どうして、だ。
どうしてお前が其処に居る。
いや、そんなことはどうでもいい。
よく見れば死にかけているじゃないか、いい気味だ。
死んだ、俺は死んだ。
だがこうして生を再び受け、DIO様ではなくこの男に従っている。
命令は絶対だ、敵は殺さず、戦闘の場を作り出す。
だが。
お前は別だ。
お前には借りが在る。
何倍にもして返してやる。例えお前が死にかけていても。
いや。
お前を殺さないと俺が俺を許さない。
☆
後藤の言い付けを守らずペットショップは急激な速度で彼らへ突っ込んだ。
自分の静止を効かずに行動するペットショップに後藤は何を思うのか。
結果としては何も思わない。
自分の支配から抜け出せた、何てことは思いもしないだろう。
ただ、本能に従って鳥は動いているそれだけだ。
迫るペットショップに対向するべく身構える三人だが氷の対処が出来るのは独りしか居ない。
手合せ錬成からの発火で氷を蒸発させるがペットショップ自体は止まる素振りを見せない。
彼が何を仕掛けるかは不明だが挟まれてはどうしようもない。
「ウェイブ! 私がキンブリーの錬成を防ぐ、お前はあの鳥を頼む!」
「解ったなんて言えねえけどやるしか……ねえ、な」
殺したい程に嫌な笑みを浮かべているキンブリーは爆発の錬成を施していた。
その邪悪なる導火線のような光は対主催陣営目掛けて走り始めている。
マスタングは炎で対抗し、到達する前に燃やし尽くすしかないと考えた。
ならば対処出来るのは自分だけだ。しかし鳥に対応する手段が失くなってしまう。
黒子の瞬間移動基いテレポートは強力だがこの場では役者を活かし切れていない。
ならば頼む相手はウェイブだが自分でも思う。これは無理難題を押し付けている、と。
彼の戦闘技術は完成に近いが異能なる力は持ち併せていない。
本来ならばイギーに頼みたい所だが瀕死で倒れこんでいる彼に頼める訳もなく、今はウェイブを信じるしか無い。
(どうすれば――考えろ)
鳥はクチバシの中に氷柱を構え急速に突撃しようとしている。
つまり接近戦だ、あの鳥は遠距離ではなく近距離で仕掛けようとしている。
ならば剣しかない自分でも対処する術はある。
一撃を一撃で相殺し、追撃を掛け斬り殺すしか手段は無いようだが。
しかし遠距離攻撃のように途中で氷を飛ばされては敵わない。
この場は黒子に頼み穂乃果と花陽、そしてイギーを逃して貰うべきか。
考えても良い案は浮かばず、原始的に斬り裂こうと一歩下がるウェイブ。
「ん……!」
すると雪子のバッグを踏み付け体勢を崩してしまう。
立て直すために剣を大地に突き刺し重心を保つがペットショップに反撃を行う時間は潰された。
黒子は瞬間移動の準備を始めるが、ウェイブはこんな状況でも笑っていた。
雪子のバッグから出て来た其れを彼は知っている。
クロメと同じように彼と志を同じく持った仲間の帝具。
救世主のような登場を果たした仲間にウェイブは声を振り絞り叫んだ。
「あの鳥を喰え!! コロォ!!」
バッグから飛び出したのは小さい犬。
丸い身体をした犬は当たり前のように二足出歩き、四足で歩き。
黒子達の前に飛び出すとその可愛らしい外見とは別の異形へ変化した。
魔獣变化ヘカトンケイル、別名コロ。
巨大化した生物帝具は問答無用でペットショップを口に捉えた。
するとそのまま口を閉じ何回も歯を動かし、鳥を喰わんと動き始める。
ペットショップは突然過ぎて全てを理解していなかった。
イギーに止めを刺そうとしたら自分が別の犬に喰われていた。
全く以て理解不能だが、それでも一つだけ理解出来る事が在る。
それは自分が助からないと言うこと。
翼。
足。
クチバシ。
身体のありとあらゆる部分を噛み殺された自分に残った未来など――ない。
「走るぞ、黒子くんは彼女達を頼んだぞッ」
ペットショップが絶命すると同時に。
マスタングは迫るキンブリーの魔の手を炎で相殺し逃走を促した。
その合図に従い黒子は瞬間移動を行い負傷した花陽と穂乃果を逸早く避難させる。
その後を追うべく走る大佐とウェイブだがクロメはそれを許さない。
「俺の前に現れないでくれ――」
振られた剣に対向するべく斬り返すウェイブ。
その一撃はクロメの重心を崩すことに成功し彼は蹴りの追撃を行い距離を離す。
だが。
その方向はイギーが倒れている場所であり、クロメは何も言わず八房でイギーを貫いた。
「――」
声にならない叫びを上げるウェイブ。
その腕を引張り戦線から離脱するマスタング。
大敗だ。
鳥を独り殺せたが失った物は此方側が圧倒的である。
己の無力を感じた男達はコロを回収し無言で業火の中を走り抜けていた。
◆
後藤が感じたことは一つ。
人間が勝手に盛り上がり、勝手に戦い、勝手に終わっただけである。
自分は何一つ関わっていない。
己の中に眠る謎の欲求を満たす現象は何一つ発生せず。
ペットショップが死んでも何一つ感情を抱かず。
無言で誰も居なくなったその場を去った。
【B-7/北/1日目/早朝】
【後藤@寄生獣 セイの格率】
[状態]:両腕にパンプキンの光線を受けた跡、手榴弾で焼かれた跡、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、首輪探知機、拡声器、不明支給品1~0
[思考]
基本:優勝する。
1:泉新一、田村玲子に勝利。
2:異能者に対して強い関心と警戒(特に毒や炎、電撃)
3:セリムを警戒しておく。
[備考]
※広川死亡以降からの参戦です。
※首輪や制限などについては後の方にお任せします。
※異能の能力差に対して興味を持っています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※探知機の範囲は狭いため同エリア内でも位置関係によっては捕捉できない場合があります。
※デバイスをレーダー状態にしておくとバッテリーを消費するので常時使用はできません。
※凜と蘇芳の首輪がC-5に放置されています。
※敵の意識に対応する異能対策を習得しました。
◆
エンヴィーは嗤う。
楽しくなってきた。あの大佐に仕返しを行える機会を早々に得たのだから。
まさか自分と仲間を見間違え殺すとは嗤い者である。
何が人間だ。
何がホムンクルスだ。
これではどちらが怪物かわかりゃしないじゃないか、と。
キンブリーは嗤う。
遠巻きで炎を見かけた時はまさかマスタング本人が居るとは思いもしなかった。
それもエンヴィーと交戦中など偶然だの奇跡だの安い言葉では例えられない程に面白い。
イシュヴァール人を焼き尽くしたように仲間を殺した彼は実に愉快だ。
堕ちる所まで堕ちて貰いたいが芯の強い彼ならば立ち直るだろう。
敵としての立場ではあるが焔の錬金術師は強い、認めざるをえない。
「そして貴方はまだ息があるのですか……ホムンクルスでもないのにしぶとい犬だ」
数歩進んだ先にはクロメに胴を貫かれたイギーが風前の灯の様に震えていた。
口から息が漏れるように流れており、それは最早呼吸と呼べる程整えられていない。
だがその瞳は死んでおらず、瀕死の今でもキンブリーを睨み付けていた。
この犬は実に興味深い。
謎の人形を使役しホムンクルスの力に対抗出来るのだ。伊達に首輪を嵌めていないと言うことだろう。
「そんなに生きたいのなら私が新しい生命を授けてあげましょう。礼は入りませんからね」
イギーに刺されている八房を抜くと
――その生命を奪うように胴を貫いた。
【B-7/南/1日目/早朝】
【エンヴィー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(中)、火傷(小)、腹に痛み
[装備]:ニューナンブ@PERSONA4 the Animation、ダークリパルサー@ソードアート・オンライン
[道具]:ディパック、基本支給品×2、詳細名簿
[思考]
基本:好き勝手に楽しむ。
1:マスタングの姿になって、彼の悪評を広める。
2:エドワードには……?
3:ラース、プライドと戦うつもりはない、ラースに会ったらダークリパルサーを渡してやってもいい。
4:キンブリーと一緒に行動し他の参加者を殺す。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(小)、高揚感
[装備]:承太郎が旅の道中に捨てたシケモク@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ
[道具]:ディパック×2 基本支給品×2 ランダム支給品0~2(確認済み)
躯人形・クロメ@アカメが斬る! 帝具・死者行軍八房@アカメが斬る!、躯人形・イギー@現地調達
[思考]
基本:美学に従い皆殺し。
1:エンヴィーと共に行動する。
2:ウェイブと大佐と黒子は次に出会ったら殺す。
3:少女(婚合光子)を探し出し殺す
[備考]
※参戦時期は死後。
※死者行軍八房の使い手になりました。
※躯人形・クロメが八房を装備しています。彼女が斬り殺した存在は、躯人形にはできません。
※躯人形・クロメの損壊程度は弱。セーラー服はボロボロで、キンブリーのコートを羽織っています。
※躯人形・クロメの死の直前に残った強い念は「姉(アカメ)と一緒にいたい」です。
※死者行軍八房の制限は以下。
『操れる死者は2人まで』
『呪いを解いて地下に戻し、損壊を全修復させることができない』
『死者は帝具の主から200m離れると一時活動不能になる』
『即席の躯人形が生み出せない』
※躯人形・イギーは自由にスタンドを使えます。
◆
マスタングの背中は小さく見えた。
仲間を誤って殺してしまった罪は未来永劫消える事はないだろう。
だがウェイブと黒子は言葉に出して彼を責めない。
危険なあの状況での彼の判断は間違ってはいないのだ。
もしエンヴィーが雪子に变化していたとしたら。彼は全滅していたかもしれない。
絶対に口には出さず、思いもしたくはないがイギーの犠牲だけで助かったのは奇跡と言えよう。
彼が居なければウェイブと穂乃果は最初のクロメとキンブリーの交戦で死んでいたかもしれない。
彼が居なければマスタングはエンヴィーに潰され死んでいたかもしれない。
彼が居なければ黒子達はキンブリーに四肢を爆破されていたかもしれない。
愚者を司る小さい勇者に救われたこの生命を無駄にする訳にはいかない。
そしてウェイブはいつか穂乃果にイギーが死んだ事実を伝えないといけない。
今の彼女はマスタングに疑惑の視線を向けている。
信じられない、信じられないのだ。
人殺しの彼と一緒に行動していいのか、そう思ってしまうのだ。
花陽は悩む。
本当にマスタングは悪い人間なのか。
初めて出会った時、彼のエンヴィーに対する復讐心と佐天涙子に対する気持ちは本物だった。
それを信じたい。雪子を殺したことは事実だが彼女はマスタングを信じたい。
マスタングは黙って指を弾き花陽の右腕を侵食していた氷を溶かした。
そして振り向くことなく大地に腰を落とし拳を叩き付ける。
何度も、何度も、何度も。
血が浮かび上がる程何度も叩き付ける。
自分の無力を、無能を、力の無さを恥じるように何度も何度も何度も。
その光景を見て誰一人として言葉を発しない。
マスタングの背中は小さく見えた。
【天城雪子@PERSONA4 the Animation 死亡】
【ペット・ショップ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 死亡】
【イギー@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 死亡】
【B-7/東/1日目/早朝】
【高坂穂乃果@ラブライブ!】
[状態]:焦り、疲労(中)、精神的疲労(大)、不安、マスタングに対する恐怖
[装備]:練習着
[道具]:基本支給品、鏡@現実、幻想御手入りの音楽プレーヤー@とある科学の超電磁砲、コーヒー味のチューインガム(1枚)@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、イギーのデイパック(不明支給品1~3)
[思考・行動]
基本方針:μ'sのメンバーを探す。
0:どうすれば……。
1:音ノ木坂学院へ向かう。
2:ウェイブと一緒に行動する。
3:そう言えばワンちゃんは……?
4:ロイ・マスタングを警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくともμ'sが9人揃ってからです。
※イギーを「ただの犬」だと思っていましたが認識が変わってきています。
※イギーの名前を知らず、「ワンちゃん」と呼んでいます。
※『愚者』を見ました。
※幻想御手はまだ使っていません。
※ウェイブの知り合いを把握しました。
【ウェイブ@アカメが斬る!】
[状態]:出血(小)、ダメージ(中)、疲労(中)、左肩に裂傷、怒り、悲しみ、無力感
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、タツミの写真詰め合わせ@アカメが斬る!、魔獣变化ヘカトンケイル@アカメが斬る!
[思考・状況]
基本行動方針:ヒロカワの思惑通りには動かない。
0:キンブリーは必ず殺す。
1:他参加者(工学に詳しい人物が望ましい)と接触。後ろから刺されぬよう、油断はしない。
2:地図に書かれた施設を回って情報収集。脱出の手がかりになるものもチェックしておきたい。
3:首輪のサンプル、工具、グランシャリオは移動の過程で手に入れておく。
4:盗聴には注意。大事なことは筆談で情報を共有。
5:仲間たちとの合流。
6:今後の方針を固める。
[備考]
※参戦時期はセリュー死亡前のどこかです。
※クロメの状態に気付きました。
※ホムンクルスの存在を知りました。
【小泉花陽@ラブライブ!】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大)不安、恐怖心、吐き気、右腕に凍傷(処置済み、後遺症はありません)
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、スタミナドリンク×5@アイドルマスター シンデレラガールズ 、スペシャル肉丼の丼@PERSONA4 the Animation
[思考・行動]
基本方針:μ'sのメンバーを探す。
1:どうすればいいか解らない。
[備考]
※参戦時期はアニメ第一期終了後
【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(中)、無力感
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、スピリタス@ PSYCHO PASS-サイコパス-
[思考・行動]
基本方針:お姉様や初春などの友人を探す。
1:出来るならばみんなのフォローに回りたい。
2:エンヴィーは倒すべき存在。
3:御坂を始めとする仲間との合流。
4:マスタングに対して――
[備考]
※参戦時期は不明。
【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、左肩に穴(止血済み)、両足に銃槍(止血済み)、無力感、けれど覚悟は揺らいでいない
[装備]:魚の燻製@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、即席発火手袋×10
[道具]:ディパック、基本支給品
[思考]
基本:この下らんゲームを破壊し、生還する。
0:悲しむ場面は今ではない。みんなにどう説明するべきか――。
1:エンヴィーを殺す。
2:エドワードと佐天の知り合いを探す。
3:ホムンクルスを警戒。
4:ゲームに乗っていない人間を探す。
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後。
※学園都市や超能力についての知識を得ました。
※佐天のいた世界が自分のいた世界と別ではないかと疑っています。
※即席発火手袋は本来のものに比べて材質や作りが劣るため使い捨てとなっています。
【魔獣变化ヘカトンケイル@アカメが斬る!】
可愛らしいぬいぐるみの犬のような生物型帝具であり、元の所有者は参加者でもあるセリュー。
戦闘時には巨大化し人間だろうと喰い尽くす兵器となる。
身体の何処かにある核を破壊しない限り死なないが、逆に言えば核を破壊すれば一撃で死ぬ。
奥の手は更に戦闘能力を増大させる『狂化』
使用すれば一日間は動けなくなり、制限として二時間後、強制的に破壊される。
最終更新:2016年01月27日 18:23