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The World is Full of Shit,so I will Destroy The World ◆MoMtB45b5k


散々に痛めつけられた体に鞭打ちながら、足立透は走っていた。

(誰も……追ってこねえよな。
 さすがにここまで来れば大丈夫だろ……?)

とにかく、逃げてきた場所にいた連中とはしばらく会いたくない。
後藤とエスデスの2人の化け物はなおさら、特にエスデスはもう二度と顔を見たくない。

(畜生畜生畜生!! マジクソが、何で俺ばっかりがこんな目に合わなきゃいけねえんだよ!)

エスデスに散々振り回され。
首尾よく魔法少女のまどかとかいうガキを殺せたと思ったら、これまたほむらと承太郎とかいうガキに一杯食わされ。
直接殺していないのに殺人者名簿に名前を書かれ、キ○ガイ女セリューに付け回され。
ようやくほむらがくたばったと思ったら、今度は変身する怪獣に襲われ。
立て続けにサリアとかいう電撃女、後藤とかいう化け物の襲撃、トドメとばかりにエスデスのご登場。
振り返ると、本当に不運のフルコースだ。
会った中で辛うじてまともだったのはアヴドゥルとヒースクリフだけか。
今にして思えば、あの2人と行動していれば今頃はこんな目に遭うこともなく、首尾よく無傷でいられた気がする。
エスデスがしゃしゃり出てきたのが全てのケチのつき始めだったのか。
屈辱と殺意を滾らせながら、足立は超能力研究所の中に踏み入っていく。

「出てこい、オラ!」

ある程度奥まで踏み込むと。デイバックの中から両手をネクタイで結ばれた少女――雪ノ下雪乃を取り出す。

「う……」

乱暴に引きずり出され、雪乃はぶり返す脇腹の痛みに顔をしかめる。

「手間かけさせやがって」

途中までは引きずるようにして連れてきた足立だったが、雪乃は疲労と怪我で体力の限界に達してしまう。
一応人質にはなるが、これでは足手まといだ。
このまま連れ歩き、後藤のような人質もおかまいなしの輩に襲われてはたまらない。
業を煮やした足立は、咄嗟に雪乃をデイバックの中に入れることを思いつく。
結果としてそれはうまく行き、なんとか超能力研究所の中に逃げ込むことに成功した。
この研究所。人間の残骸のようなものが目に入ったが、少なくとも今は戦闘の気配は感じない。

「お前には人質になってもらう……けどな」

足立は雪乃に目を向ける。
吐く息は荒く、血に染まった制服が痛々しい。

「お兄さんねえ、ここまで散々な目に遭いまくってイライラしっぱなしだからさあ。
 ちょっとくらいお楽しみがあってもいいよねえ?」

「何をする気……?」

自分を見下ろす視線に、雪乃は思わず腕で身を隠す。

「あっれえー、君もいい年なのにそうやって純粋ぶっちゃうんだ?
 君は怪我をしたかわいい無力な女の子、この通り正義のヒーローとは程遠い俺。
 この状況でやることといったら一つしかないよねえ?」

「下種……!」

雪乃は痛みに耐えながら身をよじり、遠ざかろうとする。
にやにやした視線をきっと見据えながら。

「いいわよ、犯したいなら犯せばいいじゃない。
 ビクビク怯えて本性を隠していたあなたに、そんな大それた真似ができるとは思えないけど」

言い放ち、体に覆いかぶさろうとする足立に唾を吐く。

「――! このクソガキ!」

生意気な行動に怒りの琴線が切れた足立は雪乃に掴みかかり、制服に手を掛ける。
シャツのボタンがちぎれ、下着が露わになる。

(――比企谷君――!)

雪乃がもういない少年の顔を思い浮かべた、その時だった。

「シビュラのお膝元が目前にあるこんな場所で犯罪行為とは、なかなか勇気がある」










2人の目の前に現れたのは白髪で長身の男だった。

槙島聖護……!?」

その姿に、雪乃が反応する。
はっきりと覚えている。
まだ夜のころ音ノ木坂学院に着く前に自分たちの前に現れ、サリアを唆していった男だ。

(ちくしょう、何でこんなところに人がいるんだよ!)

一方、足立は内心で激しく毒づく。
予想だにしなかった新たな人物の登場に楽しみを奪われ、苛立ちは一気に頂点に達する。

「い、いやあ。こいつ、僕を殺そうとか考えてたとんでもない不良のガキでしてね。
 一応僕も警察官なんで、ちょーっとお灸を据えてるうちにこうなったというか、ははは……」

「僕は別に、君が今から行う犯罪行為を止めたいわけじゃない」

足立の苦しい言い訳などは全く耳に入れず、槙島は一方的に語る。

「お望みなら立ち去ろう。僕のことは通りすがりだと思ってくれてかまわないさ。
 君がそうやって強姦を続けたいなら、好きに続けるがいい」

「は?」

突然現れた男のあまりの言動に、足立はその苛立ちも衝動も急激に霧散する。
雪乃もはだけた服を隠すのも忘れ、呆気にとられたように槙島を見つめる。

「シビュラシステムは、社会から犯罪を綺麗に消し去った。もちろん、性犯罪もだ。
 一人暮らしの若い女性が鍵もかけずに眠りにつくのは、もはや当然の光景といえる。
 ――だがそれは、システムの檻の中で飼いならされているに過ぎない。
 システムはついに人間、いや、生物にとって最も重要といえる危険を遠ざけたいという思い、防衛本能すらも飼い慣らした。
 僕はね、人は自らの意思に基づいて行動したときのみ、価値を持つと思っている。
 君が自らの意思と激情によって偽りの檻を食い破り、強姦というタブーを犯そうというなら、僕は止めなどしない」

一方的に語る槙島。
それを聞いていた足立の表情に、変化が現れる。

「……舐めてんじゃねえぞ、クソが」

足立の苛立ちは再び募り、既に逃げてきた時を越え、頂点を貫いてる。
いきなり現れて好き勝手なことをぬかす槙島とかいうこの男は何だ。
強姦しろと言われて、はいわかりましたと答えるマヌケがどこの世界にいるというのか。

「僕は別に、けしかけているわけじゃないさ。
 ――ところで、女性に暴力を振るう男性というのは、内心ではむしろ女性に強いコンプレックスを抱いていることが多いらしいが、君はどうなのかな。
 僕はね、人間が持つそういう暗く後ろめたい感情を否定したりしない。むしろそれこそが魂を輝かせるとすら考えているよ。
 君はシビュラが消し去ったものを見せてくれるのかな」

「……」

足立の脳裏に去来したのは、ここに来る直前に戦っていた少年少女たちの言葉だった。

――『お前は選ばれたんでも何でもない、ただの下らねえ犯罪者だ!』

――『現実と向き合え!』

「……何だよ、クソ共がよってたかって分かったようなこと抜かしやがって」

足立は顔を上げる。

「お前みてえな、何も知らねえ白髪野郎なんかに……」

ポケットの中で、カードに触れる。

「――俺のことを、理解されてたまるかよォォォォ!!!!!!!」

握り潰し、マガツイザナギを召喚しようとして――、
その時にはもう、槙島の体が目前に迫っていた。

「え」

槙島がこのような動きを見せるとは全く思っていなかった足立は受け身もとれず、地面に叩きつけられる。

「……ってえ……!」

痛みをこらえ、足立は起き上がる。

「雪ノ下雪乃といったね。今度は君の番だ」

体を起こそうとした足立の目に入ったのは、拘束を解かれた雪乃がショットガンを自分に突きつけている光景だった。

「君は、キャサリン・マッキノンを読んだことはあるかな?
 読んでみるとといい。ポルノを暴力と規定する彼女の言論は過激で、多くの男性にとって不愉快ですらあるが、一面の真理を突いてもいる」

槙島は、背後から体を支える。

「シビュラが登場する以前、性暴力は極めて重い犯罪として扱われていた。それは何故かな?
 僕はね、それはある意味では殺人よりも人間の尊厳、魂を踏みにじる行為だからではないかと思うよ。
 この距離で僕がこうやって支えていれば、素人の君でも外すことはないはずだ。
 さあ、己を踏みにじった暴力に、自らの意思で牙を突き立てるといい」

「っ!」

疲労困憊で槙島に支えられながらも、ショットガンをしっかりと握りしめる雪乃。
その指に力がこもる。

「え、あ、ちょっと、待てって、雪乃ちゃん」

ついさっきまで己の思うままにされていた少女が、自分の生殺与奪の全てを握っている。
目の前のその光景は足立にとってひどく非現実的に見えた。

「待て待て待て! さっきのはちょっとした冗談だからさ、水に流してくれって」

足立の悪あがきなどは一切聞き入れず、雪乃は足立との距離を詰めていく。

「待てよ! 待てっつってんだろうが!! やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」










「君は、それでいいのかい」

ショットガンの引き金は、ついに引かれなかった。

「……情けをかけたわけじゃないわ。こんなののために自分が人殺しになるのが嫌なだけよ」

失神した足立を一瞥しながら、雪乃は言う。

「僕は殺人を無理強いさせたいわけでもない。君がそう選択するなら、それもまた尊いことだ」

槙島も足立を見下ろしたあと、雪乃に向き直る。

「さて。僕はここの所まともに人と出会えてなくてね。手短に情報交換といきたい。
 あのあと、君はどんな道のりを辿ってきたのかな」

そして、槙島と雪乃はお互いの持つ情報を交換し合う。
図書館と、そしてそこを出てから音ノ木坂学院へ向かおうとしていた間までの、度重なる襲撃の顛末。
雪乃は断片的に語っていく。

「なるほどね。この一日あまりで非常に濃い経験をしていたようだ」

そう言いながら、槙島は雪乃の腹部の傷を見やる。

「その傷、見せてくれないかな。先ほど医薬品を見つけたところだ」

「……人の貞操をダシに好き放題やってくれた相手に治療されるというのも、ぞっとしない話ね」

包帯と痛み止めをちらつかせる槙島に、雪乃は精一杯の皮肉を放つ。
だが、傷を負った今のままではまともに動くことはできないのは明白。
躊躇はあっても、今の雪乃には槙島の提案を受け入れる以外の選択肢などありはしない。

「僕の方は最初に言った通りさ。ここ数時間は誰とも出会えていない……従って、君に与えられる新しい情報もない。
 助言ができるならば、ここの西にある北方司令部には行かないほうがいいということくらいだ。
 巨大な氷を操る化け物が潜んでいるようだからね」

傷に処置を施しながら、槙島は語る。

「氷……エスデスのことかしら。言い忘れたけど、その女ならさっき私たちの前に現れたわよ。南にいるわ」

「……そうやって、僕の知らないことを知っている。やはり君の過ごした時間は僕と比べ物にならないほど濃密だ。羨ましいよ。
 もっとも、羨ましいと思う点はもう一つあるがね。
 奉仕部、といったかな。君は友人たちの死を受け入れ、立ち直ろうとしている。
 それは、悲しみへの対処をストレスケアに依存したシビュラの下では、決してありえないことだ」

「……」

比企谷八幡由比ヶ浜結衣戸塚彩加
逝ってしまった3人の顔が、雪乃の脳裏をよぎる。
だが、思いに浸る間もなく、槙島の次の言葉が放たれている。

「さて、できれば君ともっと語っていたいところだが、あいにく僕には時間がない。
 この辺でお暇させてもらうとしよう。
 これは最後に聞いておきたいんだが――」

その瞬間、槙島の放つ雰囲気が、友好的なものから剃刀のような鋭いものへと急激に変貌し――
あっと思う隙もなく、雪乃の首には背後からナイフが突きつけられていた。

「答えろ。狡噛慎也はどこだ」

「っ!……何の事かしら」

「君は確かに多くの経験を積んだが、それで僕のような人種をどうにかできると思ってもらっては困るな。
 君が何かを隠しているらしいことには気づいていたよ。
 そして、こと僕に対して隠すべきことなどこの場では狡噛慎也のこと以外にはない」

「く……」

図書館での狡噛慎也との会合は短かったが、彼が槙島聖護を殊更に敵視していることは理解できた。
だから、むざむざ彼にその槙島を近付けさせるような真似はしたくなかったのだが、浅はかな考えだったか。
この状況で抵抗できる術など持ち合わせていない。
先ほどの治療の時と同様、ここでも雪乃に残された選択肢は一つしかない。
諦めたようにため息をつくと、語り出す。

「……狡噛さんとは図書館で会ったわ。たぶん、私たちが来たのとは反対でここに向かってると思うけど」

「それだけ聞ければ十分だ。感謝するよ」

槙島は纏わせていた剣呑な空気を解くと、ナイフを下ろす。

「非常に充実した時間だったが、今度こそ本当にお別れだ。
 君もその男が目覚める前に、ここから遠ざかっておくべきだろう。ああ、銃は持っていくといい。できれば、お互い生きてもう一度会いたいものだね。
 ――さて、猟犬を狩りに行くとしようか」

そう言い残し、槙島は研究所のドアを開いて身軽に去っていく。

「私も、助けられたことには感謝すべきなのでしょうね。こっちとしては、できればもう会いたくないけれど」

雪乃はその姿を見送っていたが、足立の姿を目に入れると、自分もドアを出て足早に出ていく。

そして研究所には、未だ倒れ伏している足立のみがその姿を留めた。










数刻後、雪乃の姿は禁止エリアとすれすれの場所にある建物の中にあった。
コーヒーを口に含むと、その甘い感触が全身に行きわたるような錯覚を覚える。

(弱いのね……私は)

文武両道の学校一の美少女。
殺し合いの場では、そんな肩書きなど塵ほどの役にも立たない。
これまでの戦いに加え、易々と誘拐され、あろうことか体を汚されそうなる。
雪乃は、暴力に蹂躙されるだけの、ただの小娘でしかなかった。

(泉君……アカメさん……小泉さん……)

奉仕部の面々に代わり、まだ生きている仲間の顔が脳裏に浮かぶ。
自分が誘拐された時、あの場にはまだエスデスと後藤がいた。戦闘になっているのは確実だろう。
そこにのこのこと自分が出ていけば、気を取られた隙にまとめて全員が殺された、などという事態が起きかねない。
連れ去られた方角は分かっているはず。彼らが生きていれば、必ず自分を探しにくるだろう。
今の自分に出来るのは、少しでも体力を回復させ、彼らの足手まといにならないように努めることだ。
そのために禁止エリアの境界であるこの場所を選んだのも、雪乃なりの精いっぱいの作戦だった。
立て続けに襲撃を受けた図書館の付近は、この会場の真ん中に位置している。
殺し合いの場に安全地帯などないが、真ん中から遠ざかっており、かつすぐそばに禁止エリアのあるこの場所なら多少はマシだろう。

――人という字は2人が支え合ってるというが、よく見たら片方が楽してる

(ふふ……そうね……。支え合ってても、どちらかが楽しなきゃいけない時も、きっとあるのね……)

薄れつつある意識の中に、八幡の台詞がふと思い浮かぶ。
少し安心したせいか、眠気がひどい。
あまりにも色々なことがありすぎ、疲れすぎた。

(会いたい……な……みんな……)

少女は、眠りに落ちていく。





【G-2とG-1の境界付近/建物内/一日目/夕方】

【雪ノ下雪乃@やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(極大)、友人たちを失ったショック(極大) 、腹部に切り傷(中、処置済み)、睡眠中
[装備]:MPS AA‐12(残弾4/8、予備弾倉 5/5)@寄生獣 セイの格率
[道具]:基本支給品、医療品(包帯、痛み止め)、ランダム品0~1
[思考]
基本方針:殺し合いからの脱出。
0:セリューには由比ヶ浜を殺した償いを必ずさせる。
1:体を可能な限り休めたあと、泉新一たちと合流したい。
2:比企谷君……由比ヶ浜さん……戸塚くん……
3:イリヤが心配。
4:サリアさんは……。
[備考]
※イリヤと参加者の情報を交換しました。
※新一、タスクプロデューサー達と情報交換しました。
※槙島と情報交換しました。







(……少し意外だな。自分はかなり強くあの男に執着してしまったらしい)

西に向かって歩みを進める槙島が意外と言ったのは、強硬な手段で雪乃から狡噛の手段を聞き出したことだった。
この場に連れてこられた当初は、あのような行為をしてまで狡噛を追い詰める意思はなかった。

(やはり、フラストレーションがたまっているのかな?)

超能力研究所に辿りついた槙島は結局、幾多の選択肢の中から、研究所に隣接するように建っている潜在犯隔離施設で狡噛を待つことを選択した。
しかし、施設内を探索しながら時間を待つことに費やしても、狡噛はおろか他の参加者すら出てこない。
痺れを切らし、他を探ってみようと裏口から研究所に戻ったところ、2人に遭遇したという顛末だった。

(2人とも、中々面白い人間だった。これはこれで大きな収穫だろう)

足立透。
本人の弁によれば刑事らしいが、強姦というその職能とは真逆の行為に及ぼうとしていた男。
その性質はサリアに似ていなくもなかったが、追いつめられた彼が何かをしようとしていたことに槙島は気付いていた。
気絶した足立の傍に落ちていたカード。あれがその鍵となるものなのだろうかと思い、雪乃には気づかれないよう彼のポケットに戻しておいた。
むろんあの場で息の根を止めることもできたが、あえて放置しておけば彼はまだ面白いことをするという確信があった。

雪ノ下雪乃。
殺し合いが始まってからさほど時間のたっていない頃、わずかな時間ではあるが顔を合わせた少女。
月並みな言い方をすれば、修羅場をくぐったというのが相応しい。
初対面の際は大きな印象は残らなかったが、戦いと喪失を経験した彼女は、明らかに変わっていた。

やはり、この場に集められた人間は興味深い。
誰とも会えずに無駄にした時間が悔やまれる。もっともっと、人間の魂の輝きを見てみたい。

(そのためには、狡噛慎也。君は……邪魔だな)

前時代のいじめか何かのごとく、悪評を振りまかれるのはこれ以上勘弁願いたい。
そういう意味でも、彼は早めに潰しておくに越したことはないだろう。
微笑みながら、バッグから1丁の銃を取り出す。

(少し意外ではあるが、これは僕にも使用できるらしい)

携帯型心理診断鎮圧執行システム、ドミネーター。
誰とも会えず、得物である西洋剃刀も見つけられなかった槙島の唯一の収穫が、ドローンの中にぽつんと残されていたこの銃だった。

(君の本来の武器であるこれで君の命を刈り取るというのも、中々面白い趣向だろう)

槙島はさらに西へ向け歩を進める。
氷柱の主――エスデスと一線交えていたと思しき人物が周囲にはいる可能性もあるが、槙島は意にも介さない。

(危険――リスクという言葉の語源は、一説にはラテン語で「勇気を持ち挑戦する」とか、「断崖の間を航行する」という意味のrisicareにあるといわれる。
 そこに見られるのは、危険に挑んで利益を得るという考え方だ。
 翻って見ると、シビュラシステムによる社会とは、リスクを徹底的に遠ざけた代償として何も得るものが無くなった社会に他ならない)

北端の橋が禁止エリアによって封鎖された以上、西回りで潜在犯隔離施設を目指すルートは一つしかない。
D-2とE-2を結ぶ橋。狡噛は確実にそこに現れるはずだ。

槙島は、満面の笑みをその顔に浮かべる。

「少なくとも僕にとっては、リスクのない人生なんて面白くも何ともないがね」

そこには、これから起こること対する期待と喜びが満ち溢れていた。

「君だってそうだろう? なあ、狡噛慎也」





※潜在犯隔離施設に一丁のみ残っていたドミネーターは持ち出されました。

【E-2/一日目/夕方】

【槙島聖護@PSYCHO PASS-サイコパス-】
[状態]:健康、高揚感
[装備]:サリアのナイフ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
[道具]:基本支給品一式、トカレフTT-33の予備マガジン×1、スピリタス@PSYCHO PASS-サイコパス-、ドミネーターPSYCHO PASS-サイコパス-
[思考]
基本:人の魂の輝きを観察する。
1:西に向かい、狡噛慎也を殺害する。
2:面白そうな観察対象を探す。
[備考]
※参戦時期は狡噛を知った後。
※新一が混ざっていることに気付いています。
※田村がパラサイトであることに気付いています。
※穂乃果、黒子が出会った危険人物の詳細と、友好人物の情報を断片的に得ました。
※D-1でのエスデスとDIOの戦いで生じた50mほどの氷柱を確認しました。
※雪ノ下雪乃が出会った危険人物の詳細と、友好人物の情報を断片的に得ました。







「ふ……ふふ」

静まり返った研究所の中に、男の乾いたような哄笑が響く。

「ははははははは、はははははは!!」

足立は身を起こし、なおも笑い続け――

「ああ!!!」

その拳を、床に叩きつけた。

「ふざけやがって!!」

自分は一体何をしていたのだろう。
気に喰わない連中に小突き回されてボロボロになり。
挙句の果てには、蹂躙されるだけの小娘でしかなかった雪ノ下雪乃に殺されかける始末だ。

「あーあーあー、もうやめやめ。やーめた!」

そもそも、下手に立ち回ろうとするからこんな様を晒すことになったのだ。
いい子ちゃんごっこをやり続けてバカを見るのはここで終わりだ。

「どうせみんな丸ごとシャドウになっちまうんだ。その前にこんなところに連れてこられたなら、せいぜい一発花火でも上げねえとなあ」

身を起こす。
不思議と体が軽い。
体中に負った傷の痛みも、どこかに飛んでしまったかのようだ。

「槙島、てめえは人間の意思がどうとかほざいてたよなあ?
 だったら俺の意思でやってやろうじゃねえか、皆殺しってやつをよぉ!!」





【F-2/超能力研究所/一日目/夕方】

【足立透@PERSONA4】
[状態]:鳴上悠ら自称特別捜査隊への屈辱・殺意 広川への不満感(極大)、全身にダメージ(絶大)、右頬骨折、精神的疲労(大)、疲労(極大)、爆風に煽られたダメージ、マガツイザナギを介して受けた電車の破片によるダメージ、右腕うっ血、アドレナリンにより痛み・疲労を感じていない
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、水鉄砲(水道水入り)@現実、鉄の棒@寄生獣、ビタミン剤or青酸カリのカプセル×7、毒入りペットボトル(少量)、ロワ参加以前に人間の殺害歴がある人物の顔写真付き名簿 (足立のページ除去済み) 警察手帳@元からの所持品
[思考]
基本:優勝する。(自分の存在価値を認めない全人類をシャドウにする)
0:皆殺し。
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期25話終盤の鳴上悠に敗れて拳銃自殺を図った直後。
※支給品の鉄の棒は寄生獣23話で新一が後藤を刺した物です。
※DIOがスタンド使い及び吸血鬼であると知りました。
※ペルソナが発動可能となりました。




153:堕ちた偶像 足立透 164:交差
雪ノ下雪乃
137:自由の刑 槙島聖護 180:望まれないもの(前編)
最終更新:2016年04月02日 20:56