そにぶ? ◆mist32RAEs
「――あなたは日本人ですか?」
とある美女が少年に尋ねた。
その目には妖しく輝く呪いの光が宿っていた。
その眼光と目が合って、少年――
上条当麻はわずかに身じろぎする。
なぜそんなことを今聞くのか、と疑問が浮かんだ。
上条は美女――ユーフェミアとは初対面だ。
だがそんな彼女が全身に傷を負ってここに現れたことで、上条はまず彼女を保護することが先だと考えた。
それは上条当麻の根幹に位置する感情によるものだ。
誰かが目の前で泣いているならば助けたい、いや助けねばならない。
それはすでに彼自身にもどうしようもないほどのことなのだ。
どんなに自分が辛くても、どんなに自分が傷ついても、どんなに自分が報われなくとも。
そしてそのためにどんなに他人が傷ついてもだ。
ゆえに彼をこう呼ぶものは多い――偽善使い、と。
しかし上条当麻の気持ちは本物だ。
誰かを助けたいと願う感情そのものには一片も嘘がない。
だからこそ、その感情に惹かれる者がいるということも、また事実。
むしろそれゆえに始末が悪いということでもあるのだが。
「……なんでそんなことを聞くんだ?」
「え?」
「ひどい怪我じゃねえか。とりあえず手当てしないと」
「あの、貴方は日本人では……?」
今はどうでもいいだろ――と、上条はユーフェミアの手を掴んで近くの建物へと連れて行こうとする。
なんか手当てに使えるものは持っていないか、などの質問を矢継ぎ早に浴びせながら。
その強引なペースに巻き込まれ、元々は天然かつ素直な性格のユーフェミアは、言われるままに質問に答えてしまっていた。
「ないか……とりあえずどこかの建物に入って、救急箱とか探して……いや、とにかく消毒に使えるものとあとは清潔な布地だな」
「あの、ちょっと待ってください」
「なんだよ、そんなに血が出てるんだから急いで手当てしとかねーと」
「ええ、分かりますけど。でも初対面の殿方に見知らぬ場所に連れ込まれるというのは、流石にちょっと……」
沈黙。
しばらく間が空いたまま二人は見つめあう。
そしてその頭上でピンクのどぎついネオンが彼らを照らしていた。
上条がユーフェミアを連れ込もうとした建物の看板だ。
そこには『CLUBはっぴーべりー ウブな素人の若い子揃ってます!』とある……。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!? 違う、違うからな! ごめん、気づいてなかった!
上条さん一生の不覚です! そういうんじゃないから! 本当に間違っただけだから!」
看板の売り込み文句を確認したとたんに上条は顔を真っ赤にして、土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。
はあ、と小首をかしげたユーフェミアが「ここって手当てするところなんですか?」と無邪気に追い討ちをかける。
すると、もうこれは完璧な土下座である。
血まみれのスーツをまとったナイスバディの美女に土下座する男子高校生の図がそこにはあった。
というかそれが上条当麻だった。
「なんつーか、とにかく外は危ないから、どっか中でゆっくり落ち着いて手当てしようと思っただけなんです!
他意はないんですー! 本当ですー! つーか何で住宅街だったのに、いきなりこんないかがわしい店立ってんだよ!
周囲の住人から苦情でまくりだろフツー! おかげで上条さん変態のレッテル貼られそうですよ!?」
もはや謝ってるんだか突っ込んでるんだかわからない有様だが、一貫して完璧な土下座の姿勢は保ったままだ。
それを流石というべきかどうかはともかく、何かとにかく誠意らしきものは伝わったらしい。
「あの、お顔を上げてもらえませんか? よくわからないですけど、もういいですからちゃんとお話しませんか?」
「あ、ああ、許してくれるんすか?」
「許すも何も……何もしてないじゃないですか」
「あー、うん、そ、ソウデスネー、ははは……」
乾いた笑いが静寂の空間に染み渡って消えていく。
その音が完全になくなって、後から気まずい沈黙がやってきた。
それを先に破ったのはユーフェミアの問い。
その目には紅い光。
上条は、まただ――と思い、わけもわからず嫌な予感を抱いた。
「あのー」
「はい」
「上条さんは……日本人なんですか?」
「はあ、そうですけど……なんで……それを聞くんすか?」
ユーフェミアの、日本人かという問いに対して、上条は肯定の返事を返した。
肯定した。
肯定して、しまった。
「そうですか――」
感情のないユーフェミアの声。
虐殺のスイッチが入る。
「では、死んで頂けますか?」
◇ ◇ ◇
とっさに身を引くことができた。
右の耳にざっくりという音がやけに大きく響く。
そして後からやってくる灼熱の感覚。
思わず声を上げた。その声がやけに遠い。
目の前に脇差を構えるユーフェミア。その切っ先は血に濡れている。
触るとぬるりとした液体の手触りがあった。血だ。
真っ赤な血の色で染まる自身の手のひらを見る。
切られたことをようやく理解できた。
「な……」
「あら、外しました」
「なんで……!?」
「だって、日本人には死んでいただかないといけませんから」
そういって上条当麻の眼前で、血まみれの美女は刀を振り上げる。
そういう武術か何かの心得があるのだろうか、その構えはずいぶんと堂に入っていた。
素人やチンピラの類がバットや鉄パイプなどを構えたような間抜けな絵面ではない。
このままでは切られるという確信めいた勘が上条を反射的に動かした。
「……うわあああああああああああああああああ!」
大上段に構えられたユーフェミアの刀がその頭上に振り落とされる前に、上条の右拳が走った。
実戦において、考えながらそのとおりに体を動かすなどできるものではない。
練習で繰り返したとおりに体が勝手に動く、というのはスポーツではよくあることだ。
上条当麻が幾度も潜り抜けた死線の経験が、ユーフェミアの皇族としての訓練経験を上回った。
結果としてはそれだけのことである。
その美しい美貌に無骨な拳骨なめり込んで、肉が潰れた感触が伝わってくる。
あ――と上条が呆然と声を上げたときには、ユーフェミアがどさりと崩れ落ちていた。
K.O!!
【E-5 住宅街と路地裏の間/一日目/真夜中】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(中)精神的疲労(大)右拳に擦り傷、右耳
[服装]:学校の制服
[装備]:なし、
[道具]:基本支給品一式、
御坂美琴の遺体、
[思考]
基本:
インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。御坂の遺体は必ず連れて帰る。
0:とにかくユーフェミアを助ける。
1:
一方通行を探し出す。
2:
戦場ヶ原ひたぎを追い駆ける?
阿良々木暦を探す?戦場ヶ原ひたぎと3匹の猫の安全を確保する?
3:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。
4:壇上の子の『家族』を助けたい。
5:俺の行動は間違っていたのか…。
[備考]
※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。
【
ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:全身打身、肩口に刺傷(中)、疲労(大)、気絶中
[服装]:さわ子のスーツ@けいおん!
[装備]:脇差@現実
[道具]:基本支給品×4、アゾット剣@Fate/stay night、ティーセット@けいおん!、ルイスの薬剤@機動戦士ガンダムOO、
特上寿司×17@現実、空のワインボトル×4@現実、ピザ×8@現実、 シャトー・シュヴァル・ブラン 1947 (1500ml)×25@現実、
ペリカード(3000万ペリカ)@その他、3449万ペリカ@その他、レイのレシーバー@ガン×ソード、
即席の槍(モップの柄にガムテープで包丁を取りつけた物)、シグザウアーP226の予備弾倉×3@現実
[思考]
基本:他の参加者と力を合わせ、この悪夢から脱出する。自分にできる事をする。
特殊:???
1:この島にいる日本人は皆殺し……?
2:安全な場所で怪我の手当てをする。
3:体力の回復、武器の調達を行い、日本人を皆殺しにする為の準備を整える。
4:タワーへ向かう。放送、もしくは通信の機材があれば偽ゼロの情報を伝え、同時に日本人を一ヶ所に集める。
5:スザクに会ったら……。
[備考]
※一期22話「血染めのユフィ」の虐殺開始前から参戦。
※ギアス『日本人を殺せ』継続中。特殊条件を満たした場合、ユフィ自身の価値観・記憶をねじ曲げ発動する。
会場において外部で掛けられたギアスの厳密な効果・持続期間は不明。
ロワ開始時点やアーニャと行動を共にしていた時とは、ギアスの発動条件や効果等に変化が起こっています。
※ギアスの作用により、ヒイロのことは忘れています。
※ギアス発動時の記憶の欠落を認識しました。発動時の記憶、ギアスそのものには気付いていません。
※アーニャの最期の言葉を聴き、『ギアス』の単語を知りました。
※幻想殺しでギアスが解除されたかは次の書き手さんにお任せします
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最終更新:2010年08月16日 01:05