はじまりのおはなし ◆0zvBiGoI0k
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――――――聞かれたことにはすべて答えたわよ。これで満足?
――――――ああ、分かったよイリヤスフィール。君たち魔術師の思想とやらが、僕には全く理解できないことがね。
――――――そうでしょうね。わたしも、理解されたいとは思わないわ。
――――――ああ、君たちの考えは理解出来ないが……君たちが求めるそれが何なのかは十分わかったよ。
――――――え?
――――――あらゆる望みを叶えるんだろう?聖杯は。
――――――………………
――――――そして君は、聖杯の器としての役割を果たしたいと望んでいる。
――――――貴方が、その望みを叶えてあげるとでもいうの?
――――――願望器として死ぬことを望んだ君がこの世界に現れ、叶えてやれるだけの力と、望みを持つ僕と出逢った。
――――――これは運命だと思わないかい?
〇
うっすらと、眼を開ける。
霞がかった視界に映るのは相変わらずの闇。
闇には様変わりも色褪せもなく、覆い尽くす幕であり続ける。
現実に光を閉ざされた空間にいるのか、それともあくまで概念的な暗さなのかは判別できないが、
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは闇に居座っていた。
今のは、夢だろうか。懐かしい記憶を観た気がする。
いや、懐かしい、とはどれくらい前のことをいうのだろう。
一年前だったか、半年にも満たない出来事だったのか。
“はじまり”はいつだったか。そんなことさえもうよくわからない。
この殺し合いが始まった時からか。
そのための準備を始めた時からか
彼と出逢った時からか。
死を、初めて恐れた時からか。
別に、なんでも構わないだろう。
既に、自分の命はかき消える寸前。
じきに時間の感覚はおろか自我すら消えて飛ぶ身だ。
イリヤスフィール自身が動くべきことは終え、することといえばたまに歌を紡ぐのみ。
今を自由に生きられず、未来に希望もないのなら、過去に思いを馳せるしかないのも自然だ。
だから私は思い起こす。このバトルロワイヤルのはじまりのおはなしを。
2人が「共犯者」となったはじまりを。
この地獄の釜を作り出したはじまりを。
おわりのはじまりを。
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――――――………………
――――――うん?おかしい点はあったかい?まあ所詮は素人の空想だ。無理と笑われても仕方のないことだろうけど―――
――――――いえ、理論そのものは有望よ。細部を手直しすれば実現は可能だわ。必要な材料と手間を省けばね。
――――――なんだ、それなら問題はないじゃないか。必要なものは取ってくればいいだけだろう。
――――――簡単に言ってくれるわね。けど―――ええ、それでいいわ。
――――――そうか。では早速準備に取り掛かろうか。時間は多くないからね。
――――――……少し呆れてるわ。断片的に話しただけのことでここまで机上の空論を思い付くだなんて。
――――――お褒めの言葉として受け取っておくよ。さあ、はじめようか。
――――――ええ―――聖杯戦争を、続けましょう。
〇
必要なのは、世界を渡るための門である。
2人がこの計画のために動き出して最初の課題は安定した平行世界への移動だった。
イリヤスフィールの行った移動はかなりの力技に近い。負担も不安も非常に過多だ。
この「準備期間」には時間制限がある。イリヤスフィールの限界という遠くないリミットが。
リボンズらイノベイダー―――イノベイドの技術であるナノマシンによる治療で幾らかは持ち直したが、
イリヤスフィールの肉体はこれ以上―――聖杯戦争以後の生命活動を考慮されてはいない設計だ。
やがて訪れる限界を押し留めただけであって、本体の生命としての寿命を延ばすことは出来ない。
そのため、なるべく早急にそれらを克服できる手段が求められた。
そしてそれに適合するであろうものを、リボンズは知っていた。
ヴェーダ。
ソレスタルビーイングのミッションプランの提示。
一型情報端末イノベイドの生産。
世界の変革の道を指し示すために生み出された演算処理システム。
数百年世界を記録し続けた圧倒的な情報量。人の想念すらもデータ化する光速の演算機能。
それは、一つの小さな聖杯といってもよかった。
その量子コンピューターにイリヤスフィールの意識をアクセスさせ、『魔法』のデータをとめどなく入力した。
もたらせられた全く未知のデータを律儀に、貪欲にヴェーダは読み込んでいった。
理解不能のバグとして処理されたものもあったが、それでも丹念に租借を続け、
ヴェーダは入力された「イリヤスフィールの魔術理論」の記録を完了した。
これにより、明文化された「平行世界の運行方法」の作成に―――多分に荒削りながらも―――成功し、
以前よりは運行が安定させることができた。
いわばイリヤスフィールという海原を往く船の航海図を、ヴェーダに書かせたのだ。
最古の魔術と、最新の科学との結合。
イリヤスフィールを、聖杯を造り出したアインツベルン家が聞けば卒倒しかねない所業だ。
魔術に関しての矜持など持ち合わせず、あくまで数ある手段の一つとしてしか見なさないリボンズならではの行為だった。
そうして、2人は目的の地に辿り着いた。
神を殺す野望を秘めた男が統べる世界、神聖ブリタニア帝国に。
思考エレベーター。またの名をアーカーシャの剣。
嘘にまみれた世界に生きた男が、「嘘のない世界」を作り出すために生み出した、神を殺す剣。
求めたのはその為の神座へ至る門。
全ての人の記憶、過去の死者の想念すらも集まっている集合無意識。
Cの世界、集合無意識と呼ばれる存在とアクセスするための装置だった。
ある意味で、そこはイリヤスフィールら魔術師にとっての悲願の地でもある。
そしてそこは、その性質上世界の「外」に近い地点だ。
現実では届かない離れた世界に辿り着く、土台という名の仮想空間。
ここでならば、より少ない労力で平行世界への運行が可能となる。そうリボンズは目を付けた。
しかして、その目論みは功を奏した。
平行世界への運行の際のイリヤスフィールの消耗が下界での行使よりも格段に抑えることができた。
そればかりか他の世界を「観測」する程度なら、ほぼリスクなしで行えるようにもなった。
こうして、世界を繋ぐ門が製造された。
門をくぐる先は、枝分かれした数多の世界。
根を張り巡らせた大樹のごとく、2人は搾取を開始した。
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――――――受理しました。これより『聖杯降霊』のための知識を『一〇万三〇〇〇冊の魔導書』から検索します。
〇
必要なのは、忠実な駒である。
言うまでもなく、この計画は2人だけで遂行できるものではない。何に於いても数とは重要だ。
思考エレベーターとヴェーダによって負担は多いに削減できたものの、結局は先延ばしに過ぎない。
それに情報の秘匿性においても群を抜く。
こんな計画に好き好んでやってくるような人種は希少だろうし、強制させた人員などたかが知れている。
多量で、リボンズらの命令に絶対かつ精確に動く、優秀な兵隊が即座に必要だった。
そんな余りに都合のいいものが―――どうやら存在していた。
学園都市第3位「超電磁砲(レールガン)」のクローン体、妹達(シスターズ)。
能力は「欠陥電気(レディオノイズ)」、性能はオリジナルの1%にも満たないが、
出力5万ボルトの電撃、外付けの装置での経験、技術の獲得、対人戦闘なら十分に通用する。
同一の脳波パターンを利用した脳波ネットワーク、そしてそれらを統括できる「上位個体」。
どれもがリボンズの目的にかなったものだった。
連れ去ったのは数体のサンプルのみだ。
理由は複数ある。
流石に残数約1万機をまとめて攫っていくのは無理があったこと。
既に日常生活で経験を得た個体が何らかの疎意を見せることを防ぐこと。
なにより元の世界、即ちイノベイドの技術での量産を行うことに大きな意味があった。
イノベイドはヴェーダに造られた人型の情報端末である。
あくまで機械であり自律行動ができないヴェーダに代わり現実世界の情報を送り込む機能がある。
それはヴェーダを介しての情報の共有、支配が可能ということでもある。
これは、妹達の脳波ネットワークに共通するものが多い。
リボンズはこれらを組み合わせて己の意のままに動かせる兵を産み出すことを思いついた。
まず、捕獲したサンプルの塩基配列パターンをヴェーダに登録させる。
そして全個体に全く同じ脳構造に整理した人格、思考パターンに設定し生産を開始した。
学園都市の技術が2000年代の30年先というのならイノベイドの技術は300年先だ。
新たなサンプルの介入による初期の不具合を越えれば、実にスムーズに行えた。
本来妹達の「ミサカネットワーク」は同じ脳構造を持つクローン同士でなくては情報のやり取りに介入できないが、
このミサカ達はイノベイドとして造られたため、接続されているヴェーダを介してリボンズも妹達が集めた情報を共有することができる。
ヴェーダなら情報処理にも事欠くこともない。
また、副次効果としてイノベイドの体を構成するナノマシンで個体の身体能力の上昇にも繋り、
これによりイノベイド製超能力者として妹達の量産が完了した。
同世界に10万3000冊の魔導書、禁書目録(
インデックス)がいたことも福音だった。
かねてより魔術分野をイリヤスフィールに一任していたのは不安があった。
他世界での魔術法則の食い違いも懸念されていたし、その考証として非常に役立つ。
自由に制御できる装置が仕込まれていたのも実に都合がいい。
イリヤスフィールの補佐としてはまさに適任であった。
優れた「駒」と「助手」を得、超越者たちは旅を続ける。
目指す先は、更なる高み。
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――――――此処は。私は。
――――――やあ、目覚めたかい?
――――――何者。
――――――そうあからさまに敵意を見せないでくれ。気持ちは分かるがね
――――――聞きたいことは山ほどあるだろうがまずはこちらの問いに答えてもらいたい。それによって君のこれからの処遇が変わるからね。
――――――………………
――――――分かってくれたようでなにより。では問おう。君は、何者だ。
――――――魔術師、荒耶宋蓮。
〇
必要なのは、霊地を整える魔術師である。
この時点で万能ともいえる力を有したリボンズだが、それでも彼の心は満足に及ばなかった。
全ての基点となっているのはイリヤスフィールであることは依然変わってない。
彼女が死ねば、今まで溜め込んできたものはその殆どが無為に化す。
それはリボンズにも、イリヤスフィールにも望ましくはない事態であった。
そのための儀式、そのための新たな聖杯戦争。
そのための、聖杯降霊の霊地を必要とした。
だがイリヤスフィールに整えさせるにはやはり負担があるし、禁書目録自身に魔術はほとんど扱えないため、
新たな魔術師、それも結界や陣地作成に長じた人材が必要だった。
そうして目的に適う者を探り出している最中、彼は現れた。
網にかかった得物を掬うように。
海から引き上げられた大魚のように、のっそりと。
それは聖杯に接続したヴェーダが検索項目に該当した人物を引き出したからなのか。
それとも、無に落ちても融け切らない程の強靭な意思が吐き出された結果なのか。
頭髪からつま先まで黒に染められた装束。
目は険しく、苦悩に満ちた顔は永遠に解けない命題に挑む賢者のように深く、昏い。
現れた男にリボンズは問い、イリヤスフィールは問い、男は答えた。
何度かそれを繰り返し、リボンズはこの男が目的に足り得ると感じ、協力を申し出た。
男は、それに応じた。
目覚めるまでの間は刹那か、久遠か。
そうして魔術師、荒耶宋蓮は新生した。
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――――――今……!何と言った……ッ?
――――――聞いてなかったのかい?目の前の相手の話を聞き逃すとは、君の仕事に対する姿勢とはそんなものか。
――――――それとも、こんな小娘の話など聞く耳持たぬ、とでも言うのかい?
――――――い、いや……!聞こえていた。一語一句漏らさず俺の耳には入っていた……!
――――――だが、余りに内容が常軌を逸していて……済まないが、もう一度確認したい……!
――――――まあ、仕方ないかな。いいだろう、もう一度言うよ。
――――――現在、帝愛グループは僕が実権を握った。そして君をその総帥の椅子に座らせてあげよう。
――――――……………ッッッ!!!
――――――条件はただひとつ。これから僕が行うあることに協力を惜しまないこと。それさえ済めば、帝愛グループは完全に君のものだ。
――――――それは……何だ……ッ?
――――――何、か。そういえば名称を考えてなかったな。そうだね―――『バトルロワイヤル』、というのはどうだい?
〇
必要なのは、資金を調律するための企業である。
魔術であろうと、科学であろうと、現の世界で事を起こすにはどうしても費用というものが付いて回る。
世界移動についても荒削りであり等価交換の法則からはまだ抜け出せていない。
よって、世界規模で金を回せるような大きな団体が必要だった。
それに選ばれたのが、かの帝愛グループである。
世界に通じるだけのコンツェルンに、幾つもの非合法、非道なギャンブルに手を染めている企業。
狂気の沙汰を起こそうとも、知る者からは新たなギャンブルとしか見なされない。
隠れ蓑として利用するにはうってつけのものだった。
頭を垂れないだろう現総帥の
兵藤和尊と、その片腕
利根川幸雄を蹴落とし、
操るのに都合のいい人物として、帝愛傘下の
遠藤勇次を後釜に仕立て上げた。
そして改革を終えた後、常軌を逸した超人を絡めた極限状態での殺し合いショーとして「バトルロワイヤル」を企画した。
当初は流石に何人か訝しげだったが、幾らか「実演」した結果、すぐさま手のひらを返し、
大勢の好事家達から大金を調達することに成功した。
企画を提案したのは帝愛が存在する世界だけでない。
他にも把握できるだけの他世界に帝愛と、それを催すバトルロワイヤルを紹介し、
資金と、その世界における独自の技術と兵器を効率よく手に入れることもできた。
殺し合いと回りくどい手段になったのはその為。
客受けを良くし、資金と資材をより集めやすくするのと、本来の目的を覆い隠すカモフラージュとして。
経緯こそ違えど、それは儀式から殺し合いへと姿を転じたかつての聖杯戦争と似通っていた。
僅かな皮肉を織り交ぜながら、物語は紡がれていく。
全てが始まる日まで、あと僅か。
●
――――――とまあ、こういうわけだ。どうだね、この「バトルロワイヤル」を、君の手腕でプロデュースしてみないかね……!
――――――何を馬鹿な事を。こうして有無を言わさず連れてきた時点で私に拒否権などある筈もないのに。
――――――そんなことはない。君は拒否する権利がある。無論、その後はしかるべき処置を取らせてもらうが。
――――――それを選択肢がないというのです。……仕方ありません、お引き受けしましょう。
――――――お褒めに預かりなにより。―――ご心配なく、やれと言われた以上妥協はしませんよ。
〇
そこから、計画は仕上げへと入っていった。
当初の計画の立案の大半はリボンズが率先していた。
イリヤスフィールから聞き及んだ情報を基に彼がプランを組み、それを再度イリヤスフィールが検分し、修正を計る。その繰り返しだ。
構成員が増えるたびに作業を分業していき、
最終的に魔術分野を荒耶と禁書目録、科学分野をリボンズが主に担当していった。
更に追加として、スポンサー連中のご機嫌取りと番組編集係として敏腕プロデューサーと可憐な少女たちを、
聖杯戦争の監督役として任を置いていた神父を招き入れた。
前者のプロデューサー―――ディートハルト・リートと少女たち―――
原村和、および
宮永咲に関しては遠藤の入れ知恵だ。
これらをエンターティメントとして成立させるには、こうしたスタッフが必要不可欠とのことらしい。
俗物の考えは俗物のみが知りえる、としてリボンズは許容した。こういった面を含めて彼を登用したのだから。
それと、もう少し魔術分野の人材が欲しいということで
忍野メメという術師が新たに雇われた。
腕は十分にあり金で動くプロでありながらどこか胡散臭い雰囲気を持つ男である。
あまり詳細は伝えないまま、抑止として荒耶との共同作業にあたらせた。
重要な部分は先の幹部級の者と情報漏洩のない妹達で管理し、
雑事は遠藤指示の元黒服で着々と進行していった。
殺し合いを行う会場も整備が整った。
参加者の監視と、力量のバランス調整、脅しと予防策も兼ねた首輪。
会場全体へと仕掛けた結界による2重抑制。
そして物理的に会場を封鎖した閉じた楽園。
参加者がどれだけ力を引き出そうとそれを抜けることは叶わない。
仮に抜け出せたとしてもそこに待つのは黒い闇、暗い死だ。
必要な資材、機械の搬入が完了し、
残された最後の作業、「参加者の選別」に入った。
イリヤスフィールの限界点かつ、願望器として実現可能な世界の孔の数としてヴェーダから提示された世界の数は12。
そのうち大半は今まで渡ってきた世界から選び抜いてきて、残りは5。
そこからは、多様性に富ませる、という点を覗けばほぼリボンズの趣向と気まぐれで決まった。
己の世界と似た、ガンダムで世界を変革させようとした世界。
辺境の惑星で巻き起こるボンクラ達の世界。
街の中でひしめく『怪異』の世界。
群雄割拠、弱肉強食、戦国乱世の世界。
神秘も科学も一切存在しない、本当に平凡な世界。
普通でありながら、どこか常識の枠から外れた法則の世界。
呼び寄せる人間は各世界につき5、6人。
合わせて64名の贄がここに揃えられた。
選定を終え、参加者を連れ去り、終に殺し合いの幕が上がる。
鮮血の血飛沫をファンファーレに、ここに『バトルロワイヤル』は開始された。
血と死骸にまみれた蟲毒の壺。黒より濃い紅海。ハリボテの空。
開幕直後より鮮血乱舞、烏合迎合の果て名優の奮戦は荼毘に付す。
その経緯は、周知の通りの地獄絵図。
●
――――――準備は出来たかい?
――――――ええ、小聖杯の設定も変更を終えたし、召喚の用意も整ったわ。あとはもう、合図を待つだけよ。
――――――そうか。これまでご苦労だったねイリヤスフィール。感謝してもし切れないよ。
――――――……それはどうも。
――――――もう君の手を煩わせることはない。あとは僕らに任せていればいい。
――――――ええ……そうさせてもらうわ。
――――――成就までの約2日間、ゆっくりと休んでくれたまえ。誰もが死に尽くし、君が壊れる、その最期まで。
――――――ええ……そう、そうね。もう―――終わりなのね。
――――――シロウ。
〇
―――そうして、
リボンズ・アルマークは内省を終えた。
意識は光と光と光に包まれた空間にて過去を俯瞰し、過ちがないかを確認する。
この計画を進めてから、常にこうして情報の整理をするのが彼の日課になりつつあった。
殺し合いが始まってからは、放送の度に定期的に観察をしている。
逆説的に言えば、定期交信の際の隙を放送が補ってるといえるだろう。
その姿は遠藤達に見せた妹達の体のまま。
未成熟な肢体に、そこだけ別生物のように輝く金眼。
決して己の姿を捉えられまいとする用心深さからくるものか。
それとも、彼本来の―――リボンズ・アルマークとしての肉体は、どこにもないのか。
思えば、長い道のりであった気がする。
年月で数えればおよそ一年足らず。
不老の存在である彼にとっては瞬きのような短さだが、その密度に於いては過去に並べるべくもないほどに濃い。
違う理に住む聖女との出逢いは滅びの運命にいたこの身を救いだしてくれた。
かつて利用していた男から天使と呼ばれた自分だが、彼女こそまさに彼の天使だろう。
だが、己は天に幸を授けられるだけの存在ではない。
翼の折れた天使を拾い上げ、天界への道を示させた。
彼女が天使なら自分は紛れもなく天を使う者、即ち神の座に就く者に他ならない。
そして手に掴んだ聖なる杯。中身が注がれる時も、間もなく訪れる。
およそ24時間。その間に41の命が殺し合いの中で消えた。
あと半日以内には、確実に決着が付いてるだろう。
その時聖杯は成り、真なる万能の願望器を以て、己の願いを成就させる。
時は近い。
おわりは近い。
はじまりは、近い。
【???/???/二日目/真夜中】
【リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:???
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:聖杯を用いて望みを叶える。
?:妹達とサーシェスを通じて運営を円滑に進める。
[備考]
※妹達と情報を共有しています。各妹達への上位命令権を所持しています。
※妹達はイノベイドの技術によって新造された個体です。
※具体的な望みがなにかはのちの書き手にお任せします。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:限界に近い
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:聖杯としての役割を果たして、優勝者の望みを叶える。
1:この殺し合いを完遂し、優勝者の望みを叶える。
2:それまでは死なない。
3:リボンズの望みを叶える。
[備考]
※参戦時期は本編終了後から一年経過程度です。
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最終更新:2010年09月02日 21:20