機動戦士ホンダム00~ツインドライヴ~ ◆.ZMq6lbsjI



トレーズ・クシュリナーダと別れた刹那・F・セイエイは、エクシアの太陽炉を名残り惜しげに思いながらも移動を再開した。
この争いに乗ると宣言した男は、まだしばらくあの温泉にいることだろう。
再会の約束はしたものの、それは今すぐではない。
拳銃を構え、油断のない足取りで建物から建物へと刹那は密やかに移動していく。
月明かりしか光源のないこの時間、黒髪で割と小柄な刹那の姿を遠目に発見するのは至難だろう。

発電所で確認できたのはエクシアの太陽炉だけだ。探せば他にもあるかもしれないが、どのみち生身の刹那一人では取り外すことはできない。
仲間探しと並行して発電所から太陽炉を取り外せるモビルスーツの入手が当面の目的になる。
ガンダムであれば文句はないのだが、この際フラッグでもティエレンでも構わない。

(しかし……俺だけならともかく、アリー・アル・サーシェスグラハム・エーカー……奴らまでいるのは何故だ?)

アリー・アル・サーシェス。
奴はイノベイターに取り入り、ガンダムの力を己が欲望を満たすために使う、駆逐せねばならない歪み。
どういった立場でここにいるのかはわからないが、どのような行動を取るかは容易に予測できる。
無用な犠牲を出さないよう、見つけ次第排除せねばならないだろう。

グラハム・エーカー。
ガンダムにより歪められた、ソレスタルビーイングが内包する矛盾そのものと言える男。
ヴェーダを押さえるためのイノベイターとの決戦に向かう前、決着を付けたはずだったが。
果たして刹那の言葉を受け、愛や憎しみを超越した――彼自身の言葉を借りるなら、「宿命」――ガンダムへの執着心を捨てられたのだろうか?
どちらにせよ、サーシェスはともかく、このグラハムと言う男とはあるいは戦わずに済むかもしれない。
よしんば刹那とガンダムへの敵意を捨てられてないにしても、彼が望むのはあくまで「ガンダムを越えること」、すなわちモビルスーツでの決闘だからだ。

次に刹那が考えたのは帝愛グループなる主催者がイノベイターと繋がっている可能性だ。
イノベイターがこの殺し合いの黒幕なら、手駒である二人の男を送り込んできたと考えられなくもない。
だが、それなら今こうして刹那が生きていること自体がおかしい。
イノベイターの首魁、リボンズ・アルマークと言う男はダブルオーを欲していた。
かつてOガンダムのガンダムマイスターだったというイノベイター。
ダブルオーが鹵獲されたのなら、その専属マイスターである刹那を生かしておく理由はないだろう。
そしてイオリア・シュヘンベルグの遺したツインドライヴシステム、イノベイターにすら把握しきれていない計画の最秘奥。
もしリボンズ・アルマークが主催者だった場合、ツインドライヴの片翼たるエクシアのGNドライヴを、あんなところに放り出しているはずがない。


(黒幕はイノベイターではない……だとすると、奴らにとっても帝愛グループと言う組織はイレギュラーなのか?)

今の地球圏にソレスタルビーイング、イノベイターとアロウズ、そして地球連邦以外で目立った組織はないはずだ。
カタロン……はもちろん関係ないだろう。そもそも帝愛グループと言う名前は、長くエージェントをやっている刹那でも聞いたことがない。
刹那に全く気付かせずに刹那自身とダブルオーを無力化したその力は、あるいはイノベイター以上かもしれない。

(まさか奴らもイオリア・シュヘンベルグの……いや、断定は危険だ。今は保留しておくべきだろう)

情報が足りない。
戦術予報士ではない刹那には、今の状況から導き出せる答えは現状を打開する決定的な一手には成り得ないようだ。
気を取り直し、思考を切り替える。
いずれ来る接触の時に備え、名簿について考えることにした。

名簿を見た限り、刹那が名を知っているのは前述の二人と先程出会ったトレーズという男。
日系人が割合として多いようだが、中にはC.C.カギ爪の男アーチャーライダーと言ったコードネームとしか思えないような者もいる。
刹那自身この名前は本名ではないから、名前に関しての驚きはなかったが。
とにかく現状では刹那の明確な味方と言える人物はまだいない。
ロックオンやティエリア、スメラギ・李・ノリエガなどが名簿に記されない残りの参加者であれば――

(……いや、巻き込まれたのは俺だけであればいい。サーシェスがここにいるなら、奴らの戦力もかなり低下するはずだ……)

最悪の場合刹那抜きでも対イノベイター作戦は遂行してもらわねばならない。
もちろんダブルオーがいなければ作戦の成功率はかなり落ちるだろう。だがそれでも、仲間達なら不可能ではないはずだ。

型に囚われない柔軟な発想でいくつもの困難な状況を切り抜けてきた戦術予報士。
皮肉屋だが、内に熱い意志を秘めたロックオンの名を継ぐ男。
四年前と比べ、随分と丸くなった――イノベイターであり、しかし四年前からずっとガンダムマイスターであり続けた信頼できる戦友。
ガンダムに乗らずとも共に戦ってきた、ブリッジの面々や子持ちの整備士。
そして、本来戦いとは無縁の世界にいながらも刹那達に協力してくれている、純朴な青年。
彼らならきっとイノベイターという歪みを断ち切ることができるはずだ。

もちろん刹那とて生還を諦めるわけではない。サーシェスを倒しダブルオーを奪還すれば、イノベイターとの戦いにおいてかなりのアドバンテージを得ることができるだろう。
生還とダブルオーの奪還。それがこの場で刹那に与えられたミッションプラン。

大体の方針をまとめた頃、建造物の影は途絶え平地に出た。
遠目に島が見える。だが橋は架かっておらず、行き来は不可能だろう。
しばし物陰で思案する。
もう少し行けば船着き場だがそこまで遮蔽物がなく、誰かに襲われればかなりのリスクを覚悟せねばならない。
もたもたしていれば後ろからトレーズがやってくるだろう。
刹那にその気はなくとも向こうはわからない。少なくともまだ考えは変わっていないだろう。今出会うべきではない。
危険を承知で突っ切るか、と影から乗り出し、周囲を確認する刹那。
その眼が、見上げたある一点で止まる。


「ガン……ダム?」

それはかつて祖国で見た神の使い――Oガンダムと重なる。
夜の女王、黄金の月の中心に一つの黒。
黒は段々と大きくなって、月から降りて接近してくる。明らかに人ではない大きさの何か。
刹那は反射的に身を投げ出し銃を構えた。

(モビルスーツ……違う、オートマトンか!?)

背部から噴射炎らしきものが燃え、その落下速度を殺している。だがその身の巨大な質量に抗しきることは不可能だったようだ。
やがて、燃料が尽きたか。影はぐんと速度を上げ、降下――否、墜落した。
鉄塊が猛スピードで舗装された地面へと激突、轟音と共に爆砕する。
飛び来る破片を伏せてやり過ごす。攻撃と言うには荒いが、それでも生身の刹那には十分すぎる脅威だ。
視界を閉ざす埃の中で刹那は警戒を緩めず、銃を構えたまま飛び出した。
オートマトンにこんな拳銃一挺で対抗できるはずもない。撤退を、と本能が叫んだ。

追撃もないまま50mほど走ったとき、刹那はふと思った。あれはオートマトンなどではないのではないか、と。
足を止め、振り返る。
折りしも風が煙幕を吹き払い、墜ちてきたモノを刹那の前に明らかにした。
人の形はしている。顔らしきものもある。
だが絶対に人ではない。身の丈3mの人間などいるはずがないからだ。
その小型のモビルスーツとでも言うべき巨人は、片膝をつき身体の各部から白煙を噴いていた。
落下の衝撃で受けたダメージではないだろう。装甲……と言っていいだろうその身体には、激しい戦いを思わせるいくつもの傷跡が残っている。
刹那が近付いても反応はない。
まさか人が乗っているということはないだろうと思いつつ、刹那はゆっくりとその前方へと回り込む。
その首元には、サイズこそ違えど刹那のものと同じ首輪。やはり、「これ」も参加者のようだ。

「……俺の名は刹那・F・セイエイ。この声が届いているのなら、対話を求める」

モビルスーツよりもコンパクトなその機体に、刹那は話しかけてみた。
刹那は普段からハロやヴェーダといった高度なAIに触れる環境にいるため、参加者としての立場なら機械といえども自意識はあろうと考えたのだ。
しばし待つと、その人型はよろよろと顔を上げた。

「もう一度言う。お前が何者かは知らないが、戦う意思がないのなら応えてほしい」

二度目の問いかけに、巨人は眼を――多分、眼なのだろう――激しく明滅させる。
その様は人が思考しているように見えなくもなかった。
やがて巨人は立ち上がり、傍らに突き刺さっていた巨大な槍を引き抜いた。
刹那とのサイズ差は歴然。傍からは刹那の窮地に見えただろう。
だが、刹那は不思議と自分が襲われるという心配はもうしていなかった。
巨人の刹那を見下ろす瞳が理性的に感じられたことが一点。
もう一つは、刹那の意識に飛び込んできた波のような思念だ。

「…………」
「……本多忠勝。それが、お前の名か」
「…………!」

巨人――戦国最強と言われた武人(?)本多忠勝は、驚きを持って目前の小さな人間を見つめた。
未だかつて忠勝の意志を完璧に理解できたのは、主たる東照大権現・徳川家康のみ。
供の者ですら忠勝の意志を解せる者は少ない。それとて長年の経験による予測という域を出ない。
だというのに、初めて出会ったこの青年は忠勝の名を見事言い当てて見せたのだ。
驚愕に打たれ立ち尽くす忠勝に、刹那は銃を降ろし、戦う意思はないと告げた。

「何故だろうな。俺にもわからない……だが、俺にはお前の声が聞こえる。たしかに、聞こえるんだ」
「…………!?」
「まあ、話は後だ。少し音を立てすぎた。移動するが、ついてこれるか?」
「…………」
「調子が悪い? そうか、飛べないのか……」

思案すること一瞬、刹那は後方に見える倉庫を指差した。
もうこうなっては危険がどうのと言ってはいられない。
まあ、刹那一人ならともかくこんな厳つい巨人が一緒ならそうそう襲われもしないだろう。

「この先の船着き場へ行こう。ドックがあるなら、お前も隠れられるはずだ」
「…………」

忠勝はゆっくりと立ち上がった。
忠勝自身に無辜の民草を害する意思はないが、降りかかる火の粉は払わねばなるまいと思っている。
この刹那という青年が何を考えているか、なぜ忠勝の意志を理解できるのかはわからないが、優先すべきは情報の入手だ。
もし忠勝の行く手を遮るようなら――砕くしかない。
その意思を隠し、忠勝は先行する刹那を追って足を踏み出した。


     ◆


工業地帯の一角、船着き場に併設された船を格納するドックの中で刹那と忠勝は向かい合っていた。
忠勝は未だ槍を手放してはいないが、対する刹那は銃を床に置き両手を掲げる。

「俺はこの殺し合い――歪んだ世界を破壊したいと考えている。もしお前が奴らに従うを良しとしないのなら、俺に協力してほしい」
「…………」
「ああ、口で言うだけでは信用できないのも無理はない。では……そうだな、取引というのはどうだ?」
「…………?」
「お前は人間ではないな。その身体では再生治療を受けることもできないだろう。
 もっとも、この殺し合いの場にそんなものが用意されているとも考えにくいが……む、話がずれたな。
 俺は……詳しくは言えないが、ある組織でモビルスーツを扱っている。機材と道具さえあれば、お前の修理もできるということだ」
「…………!」

取引という形を取ったが、これは本当のことだ。
刹那達ガンダムマイスターはガンダムによる武力介入が本分であるが、だからと言ってパイロットだけしていればいいという訳でもない。
自分の機体を隅々まで理解していなければ戦場においてその力を活かしきれるはずもなく。
よってガンダムマイスターは、整備士がいないときでも自分でガンダムをケアできるよう、一定の整備技術を習得している。
加えて刹那は四年前のソレスタルビーイング崩壊の後、半壊したエクシアを一人で修理し世界を巡っていたのだ。
トレミーの主任メカニックであるイアン・ヴァスティには敵わないまでも、そこらのエンジニアなど足元にも及ばないほどの技術を持っている。
そして刹那自身はまだ気付いていないが、純粋なるイノベイターとして覚醒しかけているその頭脳は脳量子波という副産物を生み出した。
忠勝の意志を感じ取れるのもこの脳量子波の効能である。
完全な覚醒には至っていないため自らの意志で脳量子波を制御できるとはまだ言えないが、刹那の演算・情報処理能力は既に常人の域を超えているのだ。

「お前をそこまで追い込む敵……おそらく俺では歯が立たないだろう。この島にはそんな奴が他にもいるかもしれない。
 だからこそ、お前の力を借りたい。戦う意思なき者を救い、争いを広げる歪みを討ち、帝愛グループを打倒するために」
「…………」
「もちろん、お前に目的があるというならそれを優先してもらって構わない。
 ただしそれが罪なき者を傷つけ私欲を満たすものであるというなら、いずれ俺がお前を駆逐することになるがな」
「…………!」
「……ああ、済まない。意地の悪い質問だったな。お前がどう動くかわかっているのにこんなことを聞くのは」

刹那には既に、忠勝の正義を執行すべしという意思が痛いほどに理解できていた。
先程、忠勝が墜落したとき――


このままでは終わらぬ。必ずや悪鬼羅刹どもに天誅を
力なき民よ、声を上げよ。この本多忠勝、どこにいようと推参し、その苦境を打破して見せようぞ
我が槍捧げし徳川の旗の下、主君の本懐を遂げるまで忠勝は倒れぬぞ


――と。
鮮烈にして剛毅、不屈の闘志を感じさせる思念が刹那の胸を打ったのだ。
同時に、確信した。この意思の強さ、高潔さはガンダムマイスターになんら劣るものではないと。
だからこそ、危険を承知で忠勝の前に立ち、今もこうして対話を求めている。
刹那は自分を口下手だと理解しているが、それでも今は自分がイニシアティブを握らねばならないと言葉を紡ぐ。

「改めて名乗ろう。俺は刹那・F・セイエイ。ソレスタルビーイングのガンダムマイスター、刹那だ」
「…………?」
「ソレスタルビーイングを知らない、か。お前の素姓も気にはなるが……今はいい。
 お前の主……徳川家康、だったか。俺は知らないが、乱世を鎮め弱きものを護れと言ったのだろう?」
「…………」
「俺も、その理念に賛同する。少なくともこの島にいる間は、俺とお前は敵ではないはずだ。違うか?」
「……………………」

思案する気配。
刹那はこれで言うべきは言ったと、忠勝の反応を待つことにした。
実際、忠勝が協力してくれるなら刹那としては大助かりなのだ。
忠勝の巨体なら発電所のGNドライヴを取り外すこともおそらく可能だろう。モビルスーツを探す手間が省けるというものだ。
そもそもモビルスーツがこの島にはないという可能性すらもあるのだが、それは今はいい。
戦力としても、忠勝は刹那の遥か上を行っている。
もしこの先無力な者を保護した際、忠勝に彼ら彼女らを預けて刹那は身軽に動くということもできる。
もちろんサーシェスといった危険な手合いと戦う時にも力になってくれるだろう。
彼の威容は主催者に抗う者達の希望となるに違いない。

「…………!」

忠勝の返答を待っていた刹那の目前に、おもむろに忠勝の槍が突き付けられた。
ゴウッと風が逆巻き、刹那の髪を払う。
このまま押し込めば刹那の頭はスイカのように弾け飛ぶだろう。それを比喩ではなく現実的な結果として実行できるであろう豪腕。
忠勝はじっと、槍の向こうの刹那を見つめる。
そして刹那も、また。

「…………」
「…………」

沈黙が続き、しかし視線は一瞬たりとも相手から逸らさない。
槍を突き付けた忠勝、突き付けられた刹那。
刹那は驚きも怖れも見せず、ただ静かに忠勝の応えを待っているのだ。

「俺は……ガンダムになる。今度こそ、世界の歪みを断ち切る――本当のガンダムに。
 こんなところで立ち止まってはいられない。所詮俺は破壊者かもしれないが、破壊による再生もあるはずだ」
「…………」
「だからこそ、本多忠勝。お前の力、俺に貸してくれ! 力によって力を制す――いつか罰を受ける時は来るだろう。
 だがそれは今じゃない。この場所じゃない。それをするのは、そうと望む人の心だ。
 その人々の未来すら奪おうとする奴らを――俺は許さない!」
「……………………」
「忠勝!」

刹那の耳をくすぐる、フッと息を吐いたような感触。同時に槍が引き戻され、傍らへと立てかけられた。
もしここで命を惜しむ素振りを見せようものなら、忠勝は即座に踵を返し次なる戦場へと向かうつもりだった。
武人である忠勝に策を弄し、徒党を組むことなど似合わない。
主ならきっとそう言っただろう。忠勝もそう思う。
だが、この青年は一歩も引かず忠勝と渡り合った。

その姿は忠勝にある一人の武人を思い起こさせる。何度打ちのめそうと不屈の闘志とともに何度でも立ち上がってきたあの男。
烈火の将、紅き炎、武田家の若虎――真田幸村のごとき、信念ある瞳。

万の将兵が忠勝の武に畏怖する中、ただ一人恐れることなく挑みかかってきたあの男を思い出し、忠勝は槍を引いた。
刹那・F・セイエイ。
その意思、胆力。戦国最強と肩を並べるに不足なし。

「…………」
「ありがとう。最高の褒め言葉だ」

肩の力を抜き、刹那は笑った。なんとなく、忠勝も笑っているだろうという気がした。


     ◆


ドックにあった機材で可能な限り忠勝のボディを修繕しつつ、刹那と忠勝は互いの知己についての情報を交換した。
刹那側、グラハムとサーシェス。
特にサーシェスには特段の警戒を。
忠勝側はいくらか数がいる。
真田幸村。忠勝と渡り合った、その主君ともども天下に一目置かれる万夫不当の武人。彼ならきっと心強い味方となってくれるだろう。
奥州筆頭、伊達政宗。直接剣を交えてはいないものの、武田と徳川の合戦を利用しようとした。
だがそれが結果的にそれが浅井の横槍を押さえたのだから、敵か味方か未知数といったところだろう。
そして織田信長明智光秀。これは最悪と言っていい敵だと忠勝は警告する。
人を人とも思わぬ蛮行。鬼謀を繰り人心を惑わし、自らの手を汚すことなく戦を招く。
しかも始末の悪いことにそれぞれが一騎当千の武人。忠勝ですら、一度は彼らに敗退したという。
人格と実力は比例しないということか、と刹那は心中に自らを鍛え歪ませた男を思い浮かべる。
そういう奴ほど潰し合ってくれればいいのだが……あまり期待はできない。
ちなみに刹那の世界でもこれらの武人は過去に存在していたはずだが、中東出身であり、日系人風の名前も偽名である刹那には知る由もなかった。

「……よし、これでひとまず応急修理は完了だ。だが、背部のスラスターには手が加えられているようだ。
 済まないが、この設備ではどうにもならない。奴らもあまりに戦局のバランスを崩す要素は排除したいということだろう。
 あまり戦力としては考えない方がいいかもしれないな」
「…………」
「ああ。もっと設備のあるところなら話は別かもしれないが……」
「…………」
「そうだな。俺達がまず目指すべきは人が集まるところ……この島で言えば、南部の都市群だな。
 忠勝、お前がもし行き先に希望がないのであれば俺に任せてもらえないか?」
「…………?」
「急ぐ必要はなくなったとはいえ、ガンダムを見つけられるに越したことはない。
 まずこの工業地帯、ここになければ東の宇宙開発局に行きたいと考えている」

地図を示し、刹那は言った。
どちらの区画も、殺し合いが始まったばかりの時間だから人が集まってくる可能性は高い。
どうせならガンダム探しと仲間探し、両方同時にやっておきたいというのが刹那の本音だ。
この島にモビルスーツがあるという推測はもう大分否定しかけているが、発電所の例もある。
Oガンダムの太陽炉などがあるかもしれない場所は最優先で確認しておきたいのだ。
そして、口には出さないがこの首輪の解除のことも考えなければならないのだ。
設備のある施設として思い当たるのはやはり宇宙開発局だ。

「それと、もし途中で民間人を保護する機会ができたときの拠点にもなるだろうからな。早い内に押さえておきたい場所だ」
「…………」
「この二か所を確認し終えたら、北上し都市部へと向かう。おそらく戦いに乗った者もいるだろうから、戦闘も覚悟しなければならないな」
「…………!」
「そう言ってくれればありがたい。俺達はお前と違って、銃弾一発で死にかねないからな。必要がない限り、戦闘は任せるぞ」

水や食料が必要ない忠勝のデイパックの中身を自分の物へと入れ替え、刹那は出立の準備を終えた。
首輪探知機は既に使用可能だ。これがあれば誰と遭遇しても先手が打てるだろう。

ドックの外で、忠勝が腰を落としスラスターに点火する。
空中を動くことは難しくても、地上を走行する加速器としては何ら問題はない。
忠勝は左手に槍を構え、右手を折り曲げ刹那が乗るスペースを作る。
かつて主を戴いたそこに、主以外の者を乗せることを、主は許してくれるだろうか――そんなことを思いつつ。

「いいぞ、忠勝。行ってくれ」
「…………」

そう言えば、気になっていたのだ。
『忠勝』と。
本多忠勝の名をそう呼ぶのは天下広しといえどもただ一人。
後にも先にも……あってほしくは、ない。

「ん? ああ、そうか……配慮が足りなかったか、済まない。ではこれから、俺はお前を何と呼べばいい?」
「…………」
「名前以外なら好きに呼べ……と言われてもな」
「…………!」
「……フッ。気を遣わせたか? だが、そう呼べというなら俺もお前に応えねばならないな……」

白み始めた空を仰ぎ、弾丸のように飛び出す戦国最強の巨人。
轟、と風を突き破り、目指すは万民が争いなく生きていける世界。
その手に握るは、万物を貫く槍。
その手を取るは、革新の扉を開く人類の先駆け。

二つの輝きは共にある。
住む世界は違えど、確かに通じ合った証として。

「ダブルオーのマイスター、刹那・F・セイエイと!」

刹那・F・セイエイ、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターは宣誓する。

「『戦国最強』のホンダムが!」

刹那の声に合わせ、忠勝が槍を突き上げた。
いつものように。
エクシアと、ダブルオーと共にいた時のように。

(あのときとは違う。だが今ここには、エクシアと、忠勝と――俺がいる!)

未来を切り開く――その意思を込めて。



「「この『戦い』を、駆逐するッ!」」



声が唱和したような気がするのは――きっと、気のせいでは、ない。

【F-3/船着き場前/1日目/黎明】

【刹那・F・セイエイ@機動戦士ガンダム00】
[状態]:健康、イノベイターとして半覚醒
[服装]:私服
[装備]:ワルサーP5(装弾数9、予備弾丸45発)@機動戦士ガンダム00
[道具]:基本支給品一式×2、GN首輪探知機@オリジナル、ランダム支給品0~1(確認済)
[思考]
基本:世界の歪みを断ち切る。ダブルオーガンダムを奪還し島から脱出。
1:工業地帯→宇宙開発局→都市部 の順に移動し、ガンダムを捜索。
2:専守防衛。知り合い、無力な民間人がいれば保護する。
3:サーシェス、グラハム、トレーズ、信長、光秀を警戒。政宗は保留。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン第23話「命の華」から。
※帝愛グループをイノベイターと関わりのある組織、あるいはイオリア計画の遂行者ではないかと疑っています。
※脳量子波により本多忠勝の意思を理解できます。ただし刹那から送信はできません。
 脳量子波の受信範囲は広くても声の届く範囲ほどです。
 脳量子波は忠勝が「考えたこと」だけが受信されます。本人が望まないことは伝わりません(忠勝の意識レベルが低下している時を除く)。



【本多忠勝@戦国BASARA】
[状態]:疲労(小)、胸部装甲破損(鋼板などにより応急修理済み)
[服装]:全身武者鎧
[装備]:対ナイトメア戦闘用大型ランス(コーネリア専用グロースター用)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:デイパック
[思考]
基本:徳川家康(参加者にはいない)の遺志を継ぎ戦国最強の名に恥じぬ戦いをする。
1:織田信長、明智光秀他戦いに乗った者、主催者グループを打倒する。
2:刹那に伴い行動する。真田幸村と合流したい。
3:バーサーカーとはいずれ決着をつけたい?
[備考]
※参戦時期は第12話で安土城へと向かっている途中。
 尚、後述の飛行機能以外は主催者の力で修復された模様。
※バックパック内の装備は没収されているため、原作ゲームにおける攻撃形態、防御形態、援護形態使用不可。
 他、ゲーム版での固有技、バサラ技が使えるかはお任せ。
※主催者側から飛行機能に制限が課せられています。短時間低空飛行には問題ありません。






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022:薔薇アッー! 俺がガンダムなのか!? 刹那・F・セイエイ 080:戦争と平和
019:最強証明―― 本多忠勝 080:戦争と平和


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最終更新:2009年11月13日 20:00