アリー・アル・サーシェスは大いに語り大いにバトルロワイアルを楽しむ ◆40jGqg6Boc



エリアE-4、市街地群。
様々な建物が無数の街頭に照らされている。
室内に明かりがついているものもあればついていないものもある。
そんな中、明かりがついた建物の一つから僅かな音が漏れていた。

「チッ……しけてやがんなぁ」

特に変哲もない民家に男の声が響く。
男の名はアリー・アル・サーシェス
赤いパイロットスーツに身を包む彼は人知れず民家に隠れていた。
椅子に座り、目の前のテーブルに足を投げ出す様子に遠慮は見られない。
何故なら侵入した際に誰も居なかったためだ。
まあ、仮に誰か別の人間が居たとしてもサーシェスはこの場に留まっただろう。
その人間から“ご親切”にデイバックを受け取った後にでも――そう違いない。
何故かオーブンの中に放置されていたタコスを貪りながら、やがてサーシェスは視線を回す。

「ロクなもんがありゃしねぇ。
あんまり期待はしてなかったが……いざこうなると寂しくなるもんよ。
ま、落としちまったナイフの分はこれぐらいでなんとかなりそうだがなぁ」

一言で表せば室内は散乱していた。
キッチンの戸棚、ベッド近くの化粧台など至る所が荒らされていた。
言うまでもなくその犯人はサーシェスだ。
目的は物色。金目のものや利用出来そうなものがないかといったところだ。
しかし、その結果は残念ながら奮わなかったようだ。
愚痴を漏らすサーシェスの様子から容易に想像出来る。

だが、何も収穫がなかったわけではない。
テーブルには文化包丁と鞘付きの果物ナイフが一つずつ、そして作業用のドライバーが数本置かれている。
包丁とナイフは言わずもがなドライバーも投擲に使えるかもしれない。
支給されたナイフを落としてしまったサーシェスは代わりの刃物を調達していた。
それは先刻起きた、片倉小十郎と名乗る男との戦いの結果によるものだ。
そしてサーシェスがこの民家に踏み込んだのも、小十郎との戦いが関係している。

「……あいつはどうしてるだろうなぁ。
別に追ってきてもらってもかまわねぇが、ちぃとばかし骨が折れるんじゃねぇのか。
案外多いぜ、この辺りにある建物の数はよぉ」

サーシェスが小十郎との戦いの末、選択したものは撤退だ。
しかし、ただ走り続け、距離を稼ぐのでは疲労の蓄積が溜まるだけだろう。
まだまだ始まったばかりの現時点で無駄に消耗することは好ましくはない。
それに他者からの襲撃を受ける恐れもある。
深夜といえども無暗に姿を曝け出すのは避けるのに越した事はない。
故にサーシェスはある程度走った後、現在の民家に身を隠した。
周囲に建物が多いのも都合のいい隠れ蓑になることだろう。
流石に一つ一つ、このあたり一帯の建築物を調べる者は居ないと信じたい。
まあ、その時はその時で幾らでも対応のしようがあるのだが。

「そういや――」

そんな時、サーシェスは何を思い立ったのか立ち上がる。
食べかけのタコスをテーブルに放り、向かう先は無造作に床に置かれた自身のデイパック。
屈みこみ、直ぐに目的の品を取り出してパラパラと捲っていく。
それは参加者に配られた名簿だった。

「……知ってる名前はねぇな」

サーシェスに落胆の様子は見られなかった。
知っている名前がなければ自分を知っている人間もきっと居ない。
生憎、無害な一般人であると胸を張っては言えないためその点はやりやすいだろう。
たとえば以前、“ガンダム”を奪取したような口先に頼る状況に陥った時には――
だが、サーシェスはふと考える。
確かに名簿には自分の知っている名前はない。
しかし、それが必ずしも自分が知っている人間が居ないとは限らない。

「いや、絶対に居ねぇとは言い切れねぇか。
クルジスのガキとガンダムのお仲間さんの団体も招待済みかもしれねぇ。
もしそうだったら――こいつは面白れぇコトになりそうじゃねぇか!」

此処に連れてこられるほんの少し前、サーシェスは戦闘を終えていた。
イノベイターに雇われた彼に下った指令はソレスタルビーングへの攻撃だった。
ダブルオーガンダム、ガンダムセラヴィーの二体を自身のアルケーガンダムによる追撃ミッション。
二対一にも関わらず終始押していたサーシェスだが二体のガンダムの出現により撤退した。
あの時、サーシェスと戦闘を行ったガンダムのパイロットは計四人。

「いいねぇ! 続きといこうじゃねぇか!
あいにくガンダムはねぇが……楽しい楽しい戦争ってヤツのパーティをよぉ!!」

その中でもサーシェスが知る限り自分と因縁があるのは二人だ。
四年前の仇打ちを狙ってきた、顔も知らないセラヴィーのパイロット。
そしてダブルオーのパイロットであり、十年前に自分が指揮したテロ組織に少年兵として所属した少年――
自分と同じく、クルジス抗争を生き残ったあのガキも居るかもしれない。
彼らの名前は知らないが、向こうは自分の名前を知っている。
ならば出会いさえすれば向こうが教えてくれるだろう。
その時、借りを返してやればいい。
己の半身を消炭にしてくれた一因である、彼らには相応の借りがあるのだから。

ガンダムマイスター達がこの場に呼ばれている事を願いながらもサーシェスは名簿を閉じる。
知らない名前には特に興味はない。
小十郎の名前がなかったが、これは記されていない例の十二人の事に違いない。
何故十二人だけ伏せるのかは気になるがこれも大きな問題ではないだろう。
自分に都合が悪ければ結局は殺すことになる。
どんな事情を抱えていようが殺してしまえば無意味になるのだから。
閉じた名簿をデイバックに戻し、サーシェスは再び立ち上がる。

「さぁーてどうすっかなぁ」

軽く伸びをしながら今後の動き方に思考を回す。
武器も調達出来、見落としていたガトリングガンの予備弾丸も発見出来た。
配られた食料を使うことなく腹を満たすことも叶った。
小十郎との戦いで負った額の傷も今では止血出来ている。
行動を起こすのになんら問題はない。
いつでもまた戦いに飛び込んでいけるがわざわざデメリットを犯す必要もないだろう。

「しかし勿体ねぇ。
たとえばの話だが三人殺せばボーナスが出る……そんな条件でもあればもっと釣れただろうによぉ。
この俺も含めて、燻ってるヤツらをそれこそ丸ごとなぁッ!」

サーシェスに他人を殺すことに抵抗があるわけではない。
長く戦争屋をしている自分が命の重さなどを口にしたらそれは聖職者に失礼だろう。
だが、これはバトルロワイアルであり最後に勝ち残った者が勝者だ。
途中で幾ら殺そうが死んでしまえばあっけなく終わってしまう。
別に一人も殺さずとも結果的に最後の一人になってしまえばそれでいい。

だからサーシェスはあまり大きな移動をする気にはなれなかった。
もちろん機会があれば人数減らしも兼ねて積極的に殺しにはかかるつもりだ。
小十郎やガンダムマイスターの位置がわかればどこであろうとも向かうだろう。
彼らを仕留める武器は十分にある。
見た目にも関わらずガトリングガンの重量は恐ろしく軽く、片手でも扱えるかもしれない。
刃物類は今しがた調達したばかりであり、更にそれだけではない。
サーシェスに支給された支給品はまだ残っていた。
デイバックからサーシェスが勢いよく引き抜くは一丁の拳銃だ。

「好きだぜ。こういうわかりやすい武器は……殺してやるぜ、って感じになってくるじゃねぇか」

大口径の銃口が二つ覗くそれは“魔王”が使いし銃。
戦国の世に降り立った魔人――第六天魔王織田信長のショットガンが今、サーシェスの手にある。
反動は強そうだが銃口の大きさからその威力は期待出来る。
舌舐めずりをしながらサーシェスはデイバックをテーブルに置く。
初弾の発射の速さにはガトリングガンよりはショットガンの方がいいだろう。
それにどういうことかこのガトリングガンは抜き撃ちに適している。
故に常時持つ得物はショットガンに決めた。
果物ナイフやドライバーはノーマルスーツのポケットにしまい、包丁は鞘などないためデイバックへ。
既に準備は完了済みだがそう焦る事はない。


「だが、時間はまだ十分にある。
特に当てもねぇし、もう少し様子を見ておいてもいい。
ま、なんにせよ――」


じっくりと決めていけばいい。
途中で何人殺そうが最終的な目標は一つだ。
勝ち上がる――特にややこしい注文もない、単純なミッション内容。
食べかけのタコスに手を伸ばし、口に持っていく。



「楽しみになってきたじゃねぇか……神様が居るなら信じてやるぜ。
俺をここへ連れてきたくれた、その神の采配ってヤツをなぁッ!」



最後の塊を一口で喰らいあげ、サーシェスは己の爪を研ぎすます。
戦場で培った、悪意と殺意が入り混じった爪に出番を与えるその瞬間を浮かべながら。






【E-4/北東、市街地群のとある民家/一日目/黎明】
【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:中度の疲労、腹部に打撲の痣、額より軽い出血。
[服装]:パイロットスーツ
[装備]:ガトリングガン@戦国BASARA 残弾数75%  信長のショットガン@戦国BASARA 8/8 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実
[道具]:基本支給品一式、 ガトリングガンの予備弾装(3回分) ショットガンの予備弾丸×80 文化包丁@現実 
[思考]
1:この戦争を勝ち上がり、帝愛を雇い主にする。
2:殺し合いをより楽しむ為に強力な武器を手に入れる。
3:片倉小十郎との決着をいずれつける。
4:何処かへ移動する、もしくは暫く此処で様子を窺う。
【備考】
※第九話、刹那達との交戦後からの参戦です。
※G-5にナイフ@空の境界が落ちています。
※ガトリングガンは予備弾装とセットで支給されていました。

支給品紹介
【信長のショットガン@戦国BASARA】
第六天魔王こと織田信長が使用したショットガン。
一度に二発の銃弾が発射され、連射も可能。



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005:血風大伽藍!小十郎vsサーシェス アリー・アル・サーシェス 065:Murder Speculation Part1



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最終更新:2009年11月06日 02:00