Parallel insistence ◆WWhm8QVzK6
放送が終わった。
つまり、6時を経過したということだ。
朝の光が東から洩れてくる。
アーチャーと
C.C.はそれを別の家で眺めていた。
御坂美琴の亡骸を、壊れた家から運び出して。
二人の間に会話はない。
どちらも押し黙ったまま、美琴が死んでから一言も喋っていない。
表情の顕われに違いはあるが、憂いた顔をしているのは同じだった。
アーチャーはゆっくりと腰を上げ、立ち上がる。
「ここで隠れていろ。しばらくしたら戻ってくる」
静かにドアの方へと向かう。
C.C.はそれを見届け、
「――また同じ過ちを繰り返すつもりか?」
沈黙。
いや、応えはない。
一瞬だけの静寂が染み渡る。
「確かに、あれは私の失態だと認識している。相手が誰であろうと距離的に家に置いておくべきではなかった。
誰も治癒が出来ないというのに、戦闘範囲内に無防備な人間がいてはいけない」
ソファに寄りかかるように座る緑髪の女と、出口の前で背中を向けて佇む赤い男。
お互いを探るかのように、睨み合う。
「そう、私が治療を行えないことは最初に言っておくべきだった。そうでなければ…」
「私が敵を逃がしたようなもの……そう言いたいんだろ、お前は」
疲れたようにC.C.は呟く。
「見ればわかる傷だったよ…。まともな医療設備がないここではどうあってもこいつは助からなかった。
あったところで間に合う負傷でもなかったが……お前を呼ぶべきじゃなかったな…」
自分に目の前の男を止める権利はない。
そう感じていた。それでも、
「答えなど知れている。目の前で人が死ぬのは誰だって嫌だろう。彼女は最期の力を振り絞り
それを実行したに過ぎない。それに何の疑問がある?」
「だが……私は、こんな…」
「貴様の事情は知れないが、あの娘には助けるべき人間として見られていたんだろう。それだけだ」
誰かを助けるのに理由はいらない。
それだけの、事実だった。
磨耗した英霊は嘲笑う。
そう云えば、自分には最初から理由などなかったな、と。
この理想すら借り物でしかなく、まるでロボットのように動いていただけ。
歯車はいずれ擦り切れて、存在を完全に破綻させた。
「ここら一帯は虱潰しに探す。危険人物も含めてな。お前に対する危険は限りなく減るだろう。
それと私が戻るまでここを出ないことが懸命だ。その身体では、おおよそ持つまい」
これが最善。
同じ過ちを繰り返さないというのならば、争いから遠ざけて然るべきだ。
これで見つけられたなら、運が悪いとしか言いようがない。
「ちょうどいいさ。少し独りで考えたかったからな……」
ルルーシュを探したいところだが、この体力で行動しても足手まといになるのは目に見えている。
アーチャーに探させた方が手間が省けるというものだ。
「そうだ、一つ訊いておく」
「何だ?」
少し考え、躊躇い、C.C.は言葉を続けた。
「死者の蘇生が、在り得ると思うか?」
「――――――」
アーチャーは何と捉えただろう。
しかし、それは彼女には気にならない。
「不可能とは言わん。だが、アレはおおよそ実現できない代物だ」
まさに魔法の域。
それを成し遂げる者は、まさに人外の類と云えるだろう。
「魔法、か。まあ期待しないでおくよ…」
「どうした。何か思い当たることでもあるのか?」
「いや、何でもないよ。訊いてみただけさ」
そうか、と言い。
アーチャーは扉を閉めた。足音は遠ざかっていく。
C.C.は、一つ溜息をついた。
「事情を知らなければ……か。当然だな」
本質を知らぬものならば普通に接される。
御坂美琴がC.C.を助けたのも、きっと道に迷った人を助ける程度の感覚でしかないのだろう。
知らないからこそ優しくなれる。
しかしこの少女は、C.C.の本質を目の当たりにしても同じことが出来ただろうか。
答えはわからない。彼女は、もう死んでしまっているのだから。
息絶えた少女はベッドの上に寝かせられている。
それを一瞥し、C.C.は天を仰いだ。
(叶うのならば…訊いてみたいところだな)
死者蘇生は可能か、とアーチャーに問うた理由。
それは、先程の放送にあった。
ユーフェミア・リ・ブリタニア。
C.C.にとって、そしてルルーシュにとって、すでに過去の存在。
死んでしまった人間が、何故存在しているのか――。
【E-5/市街地 一軒家/一日目/朝】
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(大)、左の肩口に噛み傷、わき腹・太腿・頭部から出血(全て徐々に再生中)
[服装]:血まみれの拘束服
[装備]:オレンジハロ@機動戦記ガンダム00
[道具]:基本支給品一式 誰かの財布(小銭残り35枚)@???、ピザ(残り63枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[思考]
基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。
不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――?
1:体力が回復するまで隠れておく
2:ルルーシュと合流する
3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
[備考]
※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『
過去 から の 刺客』の間。
※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。
※E-5から立ち上った超電磁砲の光が周囲から見えたかもしれません。
◆◆◆
自分には叶えられない。
そんなことは初めから分かっている。
ここにいる者をどれだけ救えるだろう。
救われた者がいたとしても、それは自分の所為ではない。
遠い昔に抱いた理想など、とっくに磨耗している。
だから自分の願いは叶わない。
そう、
衛宮士郎の抹殺さえ――。
限りない平行世界で、喩え自分が過去の衛宮士郎を殺したとしてもさしたる意味はない。
守護者の座に登録されてしまった自分の存在は、永遠に消えないからだ。
最初から気づいていた。
衛宮士郎の抹殺など、自己満足でしかないと。
何も変わらないというのに無意味な望みを持つ。
これでは生前と全く同じだ。
つまるところ、今の自分は意味がない。
ただ消え去ることしかできないのだ。
――本当に、そうだろうか。
それでも、自分はこうして存在している。
物事には必ず意味がある。無意味なモノなど存在しない。
今の自分に与えられた意味。それが過去の改竄でないとしたら。
俺には、すべきことがあるんじゃないか――。
少女の死に顔が思い出される。
彼女は何を思い、何を願っていたのだろうか。
それはもうわからない。彼女は、死んでしまったのだから。
だが、確実に分かることは。
そうだ。
死んでも構わないなんて思っていたはずがない。
それを自分の失態で壊してしまった。
そんなことは、もう二度と起こしてはならない。
自分がいくら動いたところで世界は救われない。
それでも、救われる命はあるんじゃないか。
生前の行動は無意味な理想を追い求めるだけだったが、その過程は意味があったはずだ。
もう一度、もう一度だけ、振り向いてもいいだろう。
今の状況は、奇しくも聖杯戦争に似通っている。
もしかすれば、あの時と類似した状況によって何か見つけられるかもしれない。
無駄だと結論付けるのは、思考停止に過ぎない。
自分は、まだ答えを見つけてすらいないじゃないか―――。
前方を見つめる。
周囲の見回りはあらかた終わった。
あの男の姿は見つからなかったが、これからも念入りに探すつもりだ。
あの手合いは生きている限り殺戮を続けるだろう。
今度出遭った時は、どんな手を使っても殺さねばならない。
思えば、最初に救えなかったのは彼女だ。
彼女が未だに聖杯を求めて彷徨っているのだとすればそれはとてもつらいことだ。
彼女にとっても、自分にとっても。
セイバーは、今この場にいる。
ならば会ってみるのも悪くないだろう。自分の真名を告げるかどうかは別として。
はるか遠くには駅が見える。
遠くと言っても、自身の眼にははっきり見える範囲だ。
地図と照らし合わせれば、D-6の駅だと分かる。
放送でも言われていたが、少し調べてみたい。
未だにどのサーヴァントも脱落していない以上、万全を整えるためにあらゆる地形を把握すべきだ。
まあ、念入りにもう一度ここら一帯を調べておく必要はあるか。
そうして、赤い弓兵は朝日を受けながら走り出した。
答えを得られなくとも構わない。もとより死んだ命。
それがここにあるのなら、どう動こうとも無為にはならない筈だ。
もし何かが悟れたのなら、それが、自分が聖杯に望んだ本当の願いなのかもしれない。
【E-5/市街地 /一日目/朝】
【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:健康 魔力消費(小)
[服装]:赤い外套、黒い服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×3
[思考]
基本:本当の“答え”を見つけ出す。
0:もう少し見回ってから、D-6の駅に向かう
1:この場において過去の改竄は無駄。
2:情報を集めつつ、衛宮士郎とセイバーを捜し出す。
3:荒耶、赤毛の男(サーシェス)に対し敵意。
[備考]
※参戦時期は衛宮士郎と同じ第12話『空を裂く』の直後から
※凛の令呪の効果は途切れています
※参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められたと考えています。
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最終更新:2010年01月24日 22:52